気温上昇や花粉飛散…地球温暖化で脱東京、注目される移住先エリアは?
地球温暖化に歯止めが効かないなか、世界中の気温の上昇が止まりません。東京都が2016年に公表した資料によると、過去100年間で世界の平均気温が約0.7℃、日本の平均気温が約1.7℃上昇しているのに対し、東京は約3℃も上昇しているといいます。 しかも2024年の夏は、ラニーニャ現象の影響により最高気温35℃以上の猛暑日が連続する「観測史上最も暑い夏」になるという予想もあり、十分な警戒が必要です。こうした殺人的な暑さを避けるため、脱東京を検討する人も出てきています。 この記事では、地球温暖化による気温上昇や花粉の飛散など、東京で顕著に見られる厳しい環境から逃れる目的で近年人気の移住先やおすすめの移住先を紹介します。
01気温上昇が止まらない東京都心部
冒頭でも紹介したように、過去100年間で日本の平均気温の上昇幅が1.7℃だったのに対し、東京の平均気温は約3℃も上昇しており(2016年時点)、東京の気温上昇の大きさが際立っています。
猛暑だったことが記憶に新しい2023年の夏、東京では64日間連続で最高気温30℃以上の真夏日を記録しました。これは、2004年に観測した40日間を大幅に塗り替えて、過去最長記録です。さらに、最高気温35℃以上の猛暑日も22日観測され、同じく過去最高記録となりました。東京における平年の猛暑日数は4.8日なので、実に平年の5倍近い猛暑日が観測されたことになります。
東京の気象観測地点がある千代田区でも、2020年時点で過去100年あたりの平均気温が約2.5℃と大きく上昇しており、全国で見ても特に気温上昇が著しい状況です。高層ビルや住宅が立ち並び、アスファルトやコンクリートに覆われている東京都心部では、ヒートアイランド現象の影響が大きく、地方や郊外よりも気温の上昇が起こりやすいことが要因として考えられます。
東京ほど顕著ではないにしても、熱帯夜や真夏日、猛暑日の年間日数は全国的に増加傾向です。1927〜2022年の長期変化を見てみると、猛暑日が極端に少ない札幌を除き、横浜、大阪、名古屋、京都、福岡など各地の大都市で軒並み猛暑日が増えています。反対に、冬日の年間日数は各都市で減少傾向です。
最悪シナリオである「4℃上昇シナリオ(21世紀末の平均気温が工業化以前より約4℃上昇した場合)」で推移した場合、東京の年間猛暑日は2020年から約31日増加、冬日は反対に約37日減少すると想定されます。
現実にそのような事態となれば、産業や生態系など幅広い分野への大きな影響と、健康被害の増大が懸念されるでしょう。
花粉症、豪雨、水不足…気温上昇だけではない地球温暖化の影響
地球温暖化の影響は気温上昇だけにとどまりません。
まずは雨の問題です。先ほど紹介した「4℃シナリオ」で推移した場合、東京における1時間30mm以上の大雨の回数は約1.5倍に増加する一方、雨の降らない日も年間約8日増加すると予測されています。つまり、雨の降るときと降らないときの差が極端になるということです。
これにより東京では、豪雨による災害発生に加え、膨大な人口を支えきれなくなって深刻な水不足に陥るおそれも指摘されています。
もう1つ、地球温暖化の影響として想定されるのが、花粉症リスクの増大です。地球温暖化により気温が上昇すると植物がより長く生育できるようになり、飛散する花粉の量も増えるといわれています。実際に「東京都民の2人に1人は花粉症」といわれるほど、都民の花粉症は増加傾向です。
東京で花粉症患者が増えている理由としては、花粉の「再飛散」も挙げられます。再飛散とは、遠くの山間部から飛んできた花粉が地面に落ちた後、再び舞い上がる現象のことです。都心の地面はコンクリートやアスファルトで覆われているため、落ちた花粉が吸収されずに再飛散します。そうして舞い上がった花粉を吸い込むことで、都民の花粉症患者が増えてしまうというわけです。
加えて、花粉は大気汚染物質によって細かく破裂するため、大気汚染の激しい都市部では花粉症が悪化しやすいともいわれます。また、高気密・高断熱によって家の衛生環境が大きく改善した結果、室内で細菌などにさらされる機会が減り免疫に変化が生じたことも、花粉症が増えた理由の1つといわれています。特に細菌に触れる機会が少ない子どもが、花粉飛来の多い時期に外で急激に花粉を浴びると、花粉症を発症しやすいとのことです。
このまま地球温暖化が進行すれば、東京での暮らしにくさを感じる場面が増えるかもしれません。そうした状況を見越して、東京を脱出して地方へ移住する人も増えている状況です。
02脱東京で注目されるエリアとは?
地球温暖化による影響として将来懸念される気温上昇や花粉被害の増大等を避けるため、東京を脱出する人も現れています。脱東京の流れのなかで注目されるエリアはどこなのでしょうか。ここでは、移住先として大きな注目を浴びる2つのエリアを紹介します。
最高気温35度以上の猛暑日が最も少ない「沖縄県那覇市」
脱東京で注目されるエリアの一つ目が「沖縄県那覇市」です。意外に思うかもしれませんが、記録的な猛暑となった2023年8月、全国の県庁所在地で最高気温が最も低かったのが那覇市でした。こうした背景もあり、南国のはずの那覇市が避暑地として注目を集めています。
人気の高まりから、沖縄県内では新築マンションの価格上昇が続いており、那覇市内中心部には販売価格2億円を超える「億ション」も登場しました。購入客の実に8割強が首都圏を中心とする県外客であることからも、那覇市の避暑地としての人気が高まっていることがわかります。
東京カンテイによれば、那覇市の新築マンションの2022年平均坪単価は224.1万円で、2013年の143.5万円から56.2%と大きく上昇しています。同様に、中古マンションも2013年の平均坪単価97.2万円に対し、2022年は163.3万円と68.0%も上昇している状況です。
那覇市のある沖縄本島地方は日差しも紫外線もかなり強く、直射日光の下では体感温度が高いうえ、年間を通して湿度が高くなっています。しかし、陸地が少なく四方を海に囲まれているため、海風の影響で熱がたまりにくいのが特徴です。東京のようにヒートアイランド現象の影響も受けにくいので、極端な気温上昇も起こりにくく、南国でありながら避暑地としての機能を果たしています。
スギ・ヒノキ花粉ゼロの「北海道釧路市」
脱東京の移住先として注目されている、もう一つの都市が「北海道釧路市」です。
釧路市は、北海道の中でも雪が少なく、年間を通じて晴れた日が多いエリアです。沿岸部では海霧が発生する影響で、真夏の8月でも日中の最高気温は20〜25℃程度の日が多くなっています。最高気温30℃以上の真夏日は10年に一度あるかどうかという珍しさで、北海道でも特に涼しい場所として知られます。
また、釧路市は花粉症から逃れられる「避粉地」としても注目のエリアです。そもそも北海道にはスギが自生していませんが、釧路市はさらにヒノキも自生していません。患者の多い2種類の木が生えていないため、花粉症患者でも快適に過ごせるのが魅力です。
なお、標高1200mでスギ・ヒノキが育ちにくい群馬県草津町、スギ・ヒノキが自生していない南国の沖縄県宮古市なども避粉地として適しています。
03前向きな検討したい人はまずは「お試し移住」から試してみよう
脱東京を志向する人が増えているとはいえ、東京で都会暮らしをしている人が、いきなり自然豊かな地方に移住するというのはハードルが高いのではないでしょうか。そこで、地方の自治体が近年推進しているのが「お試し移住」です。
お試し移住とは、その名のとおり、移住を検討しているエリアに短期間住んでみて、土地の魅力を実際に肌で感じてみるというものです。観光のようにホテルや旅館に宿泊するのではなく、自治体が用意した住居で暮らすのがポイントです。その土地の住居で生活を送ることで、生活者目線のリアルな地域事情を体感できます。
お試し移住では住宅費こそ0円の場合が大半ですが、住居までの移動費や日々の食費などは自費負担となるのが基本です。自治体からさまざまなサポートを受けられるものの、持ち出し費用なしというケースはまれでしょう。検討する際は、どのくらいの費用がかかるのかあらかじめ確認しておきましょう。とはいえ、個人で宿泊施設を探して短期滞在するよりは、手間がかからず低コストで済みます。
ちなみに、上で「避粉地」として紹介した釧路市では「くしろお試しワーキングホリデー」という、お試し移住制度を設けています。釧路市内の企業で実際に働きながら、現地に2週間滞在するという制度で、宿泊費は釧路市が全額負担。交通費も5万円を上限に補助が受けられます。
04将来的な移住を検討しているなら、売却しやすい資産価値の高い物件選びを心がけよう
交通の便がよく、便利な商業施設や公共施設がそろっている東京は、日々忙しく働く現役世代にとっては暮らしやすい場所です。しかし、高齢になってくると体力的な衰えなどが原因となり、大都会・東京での暮らしを辛く感じる可能性もあります。
将来的に地方への移住を検討している人は、体力や気力のある若いうちから、移住先として適している地域がどこなのかリサーチしておくのがおすすめです。
地方移住も含めたセカンドライフを充実させるには、自宅の将来的な売却も見据えて、資産価値の高い物件を選ぶことも大切です。資産価値が高いほど売却しやすい点はメリットですが、近年は都心部を中心にマンション価格が高騰しています。日銀によるマイナス金利も解除された今、住宅ローンの利息負担による家計への影響も懸念されます。
充実したセカンドライフを実現するためにも、住宅ローンシミュレーションなどを用いて資金計画をしっかり立てるようにしましょう。
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