ダイヤ改正で「快速」廃止になったら?家の資産価値に影響はある?

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住宅の資産価値は外観や内装、設備といった建物本体の価値だけではなく、周辺環境や公共交通機関の利便性といった外的要因も大きく関係します。特に公共交通機関の路線廃止やダイヤ改正などの変更はそのエリアに住む多くの人に影響があるので、住宅の資産価値に与える影響も大きくなりがちです。 そこで今回は、2024年3月にJR京葉線が蘇我駅から東京駅までの通勤快速を廃止したことで起きた出来事と合わせ、通勤快速が廃止になるなどのダイヤ改正が住宅の資産価値にどのような影響が及ぶのかを、過去の事例を参考にしながら紹介していきます。

012024年3月、JR京葉線のダイヤ改正により「通勤快速」が廃止

2024年3月16日、JR東日本の各路線では一斉にダイヤ改正が行われましたが、その中でも特に注目を集めたのがJR京葉線の「蘇我駅から東京駅間における通勤快速の廃止」です。もともと同区間では、午前9時台までと午後4時台以降の快速(1日合計35本)が運行されていましたが、ダイヤ改正によって早朝の上り2本以外はすべて各駅停車に変更されました。

蘇我駅―東京駅間における朝のラッシュ時間帯の所要時間は、通勤快速で朝の上り線が42分、夕方以降の下り線で37分だったものの、各駅停車になるとそれがいずれも56分になります。また、快速の所要時間は朝夕の上下線ともに45分程度であったものが50分前後となり、結果これまでよりも同区間の所要時間は5~15分程度長くなりました。

このような決定を行った背景としてJR東日本は、以下の3つの理由を挙げています。

  • 混雑の平準化
  • 快速が停車しない駅の利便性の向上
  • 快速の待ち時間がなくなることによる各駅停車の所要時間の短縮

つまり、メインの目的は「経営の効率化」です。実際にJR東日本千葉支社の土沢壇支社長は、2023年12月の記者会見で特に新木場駅までノンストップ運行の通勤快速は利用状況が芳しくなく、各駅停車に比べて7割程度であることから、乗客が集中する各駅停車の混雑をならすための見直しが必要であった旨の発言をしています。さらに、各駅停車しか停まらない駅はダイヤ改正で平日の乗車機会が上下線合わせて30回以上増えて利便性が高まり、快速の待ち時間が必要なくなることで蘇我駅から東京駅間の各駅停車の所要時間が最大7分、平均で2分短縮できるという見通しを発表し、ダイヤ改正の意義を強調しました。

しかし、この決定に対して見直しを求める声が相次いだことで、結果的には2024年9月に再度ダイヤ改正が行われる予定です。具体的には、どのような声が上がったのでしょうか。

異例の対応!2024年9月、再度ダイヤ改正をする方針で収束

JR京葉線のダイヤ改正にはさまざまな意見がありましたが、中でも積極的に見直しを求めたのは千葉市です。千葉市では2024年3月23日から4月末日まで「京葉線ダイヤ改正の影響等に関するアンケート調査」を行い、その結果を同年5月に公表しています。

それによると、今回のダイヤ改正で乗車時間、帰宅時間、混雑具合等に悪い影響があると答えた人はそれぞれ6~7割前後に上りました。また、改正後のダイヤに対する望ましい変化では「通勤・退勤時間帯の快速の増便」(74.7%)が最も多く、次いで「通勤快速の復活」(56.9%)、「新たな快速等の運行(停車駅再検討など)」(31.1%)となっています。以上のように、JR京葉線を利用している人の多くは、それまで運行されていた通勤快速がないと不便だと感じているようです。

さらに、今回のダイヤ改正についての利用状況の変化を問われた項目では多くの人が「乗る電車の変更」(59.2%)を選んだ一方で、「京葉線沿線外への転居」(9.8%)、「京葉線沿線内への転居」(1.3%)を選択する人が合計で1割程度いるなど、利便性を優先して住む場所を変えることを検討している人もいました。このようなアンケート結果を受けて、千葉市ではJR東日本に以下の3点を軸に要望書を提出しています。

  • 通勤快速を含む快速の増便
  • 幕張新都心でのイベント開催時の利便性・速達性の向上
  • 協議の継続

同様の声は千葉市以外からも挙がったこともあり、結果的にJR東日本は一度改正したダイヤを2024年9月から再び見直すことを表明しました。具体的には千葉市側が求めていた都心へのノンストップ通勤快速の運航再開はしないものの、内房・外房線に直通する列車を含む蘇我駅と東京駅を結ぶ一部の各駅停車を快速に変更し、朝夜の通勤・通学帯を中心に増発するとのことです。それによって、快速での所要時間が従来よりも短くなる形で新しいダイヤを編成でき、利用者のニーズに一定程度応えることができるとされています。

02「快速」廃止で家の資産価値への影響は?

今回のダイヤ改正ではさまざまな意見が飛び交いましたが、その中には「単に利便性が低下するだけでなく、ダイヤ改正の影響で住宅の資産価値が下がる」ことを危惧する声もありました。

一般的に物件価格は都心に近くなるほど高くなり、都心から離れるほどニーズが少なくなるため安くなる傾向にあります。しかし特急や急行、通勤快速が止まる利便性が高い駅は都心から離れていても実質的な所要時間が短いことから、都心寄りの特急・急行通過駅より物件価格が高くなることも珍しくありません。

不動産データサービスを手掛ける株式会社東京カンテイの「駅別中古マンション価格 / JR京葉線」(2023年2月7日)によると、JR京葉線の東京―蘇我駅間における中古マンション(ファミリータイプ)の売り出し希望価格をもとに算出した駅ごとの平均坪単価(3.3平米)は以下の通りです。

上記表からは各駅停車しか停まらない「新習志野」は坪単価80万円なのに対して、東京からの距離が最も遠いものの、通勤快速が停まる「蘇我」は坪単価116万円で40万円近く高いことがわかります。ただし、上記の坪単価は22年10月~12月までの3カ月間を集計したものであり、算定期間は2024年3月のダイヤ改正前です。

もしも上記区間で各駅停車しか運行されなくなった場合、新習志野と東京間は32分なのに対して、蘇我と東京間は56分となり、東京からの所要時間は蘇我のほうが2倍近くかかる計算になります。むしろ、「新習志野」のように各駅停車しか停まらなかった駅は、通勤快速の通過による待ち時間が減ることで各駅停車の増便が見込まれ、今までより便利になるかもしれません。すると、蘇我駅の利便性は低下し、相対的にもともと各駅停車しか停まらなかった都心寄りの駅の利便性に注目が集まるでしょう。

仮に今回紹介したような通勤快速の減便といったダイヤ改正が行われると、一般的にはそれまで通勤快速が停まっていた駅周辺の住宅の資産価値が減少する一方で、各駅停車しか停まらなかった駅周辺の坪単価が上がることが予想されます。

2023年にダイヤ改正した東武東上線・志木駅のケース

それでは実際に快速急行の停車駅が変わったケースで、土地価格にどのような影響があったかを見ていきましょう。今回、参考事例として紹介するのは、2023年3月に東武鉄道東上線が行ったダイヤ改正です。そのダイヤ改正では、快速急行の停車駅が志木駅から朝霞台駅に変わりました。

埼玉県の「令和6年地価公示のあらまし-令和5年1月1日から令和6年1月1日までの地価動向」※によると、都市部周辺は軒並み上昇していることもあり、快速急行の停車駅ではなくなった志木市の平米あたりの平均価格(住宅地)は24万8300円で平均変動率+2.8%と上昇しています。しかし、快速急行が停まることになった朝霞市の平米あたりの平均価格(住宅地)は 25万8800円、平均変動率+3.9%と志木市を大きく上回りました。

日本では都市部を中心に地価の高騰が続いていることもあって、2024年1月時点では快速急行の停止が地価の大きなマイナス要因とはなっていないようです。一方で、快速急行が停まることとなった地域では、その事実が地価への確かなプラス要因になっていると考えられます。

03人口減少エリアは要注意!今後増えるダイヤ改正による減便

公共交通機関の運行は、利用者の数と密接な関係があります。特に少子高齢化で人口減少の続く日本では、今後も生産年齢人口の減少が予想されるエリアを中心として通勤快速などの減便が実施される可能性は高いといえます。住宅探しをするときは地価が安く、始発や急行が停まる郊外エリアを探すこともあるでしょうが、その時点で利便性が高いエリアだからといって安心してはいけません。

とはいえ、人口の多いエリアほど地価は高くなりやすいので、都市部で住宅を探すのは予算上、難しいケースもあるでしょう。そこで、これから住宅ローンを組む予定の人は、まず自分の年収をもとに適正な住宅ローンの借入金額を把握することから始めてみてはいかがでしょうか。当サイト内には住宅予算の目安を知るのに役立つ「住宅購入予算シミュレーター」や月々の支払額、ボーナス払い額から予算を逆算できる「借入可能額シミュレーター」など、これから住宅ローンを利用するにあたってイメージをつかむのに便利な各種シミュレーターがそろっているので、ぜひ試してみてください。

新井智美

監修:新井智美

CFP®/1級ファイナンシャル・プランニング技能士

プロフィール

トータルマネーコンサルタントとして個人向け相談の他、資産運用など上記相談内容にまつわるセミナー講師を行う傍ら、年間100件以上の執筆・監修業務を手掛けている。

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