住宅ローンの団信、配偶者特約に同性パートナー適用の商品も。加速する金融機関のLGBT対応

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住宅ローンにおいて、契約者に万が一のことがあったときに頼りになるのが住宅ローン保険(いわゆる団信)です。しかし、これまで団信は保障対象の配偶者として認められるのが「異性パートナーのみ」であり、「同性パートナー」にとって住宅ローン契約の障害となっている事例も珍しくありませんでした。ところが、近年のLGBTへの配慮を求める風潮により、その風向きが変わりつつあります。 例えば、カーディフ損害保険株式会社が取り扱う一部の団信は、2023年6月1日から配偶者の保障対象を同性パートナーまで拡大しました。また、2023年に入ってからはフラット35でも同性パートナーで連帯債務の住宅ローンに申し込めるようになるなど、金融機関によるLGBTへの対応が加速しつつある状況です。そこでこの記事では、住宅ローンの現場におけるLGBTの方への最新の対応について解説していきます。

01団信の配偶者特約、対象範囲を同性パートナーにも拡大

上述したように、カーディフ損害保険会社が取り扱う一部の団信では、2023年6月1日から「配偶者の保障」の対象範囲が同性パートナーまで拡大されました。具体的には、「就業不能信用費用保険」に付帯する「配偶者の保障」という特約に適用されています。「配偶者の保障」とは、住宅ローン契約者の配偶者が支払事由に該当する(死亡、病気、けが、がんなど)状態になった場合、配偶者に給付金を支払うという特約です。

これまでは法律婚や事実婚におけるパートナーのみが、配偶者の対象でした。しかし今後はそのような縛りがなくなり、より幅広い人が給付金を受け取れるように配慮されています。以前から死亡保険では同性パートナーを保険金受取人に指定できる商品がありましたが、団信の配偶者特約で同性パートナーが対象となったのは今回が初めてです。

2023年6月1日時点では提携金融機関7行(鹿児島銀行、熊本銀行、十八親和銀行、八十二銀行、肥後銀行、福岡銀行、みなと銀行)のみで適用となっているものの、今後は順次対応金融機関を拡大していく予定です。

022023年1月~フラット35で同性パートナーと連帯債務での借り入れが可能に

昨今のLGBTを取り巻く問題への関心の高まりを受け、LGBTカップル向けの住宅ローンは数年前から続々と登場しており、従来よりもLGBTカップルがマイホームを取得しやすい環境が整ってきています。LGBTカップル向けの住宅ローンの詳細については、関連記事で紹介しているので、そちらを参考にしてください。

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また、2023年1月からは住宅金融支援機構が提供するフラット35においても、同性パートナー同士で連帯債務の借り入れ申し込みができるようになりました。連帯債務とは収入合算の1つで、パートナーと収入を合算して契約し、パートナーが連帯債務者となる、いわゆる連帯債務型の住宅ローンタイプです。

パートナーは主な契約者と連名で住宅ローンを契約することになり、それぞれが全額の返済義務を負いますが、住宅ローン控除が2人分適用されたり、双方に所有権が発生したりするといったメリットがあります。ペアローンと収入合算(連帯保証型)、収入合算(連帯債務型)といった住宅ローンタイプの違いについて興味がある方は、以下の記事も参考にしてください。

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その他にもLGBTの方がフラット35を利用するメリットとしては、同性パートナーでも夫婦連生団信の契約ができる点も挙げられます。一般的に連帯債務の場合、団信に加入できるのは契約者とそのパートナーのどちらか片方だけなので、加入できなかった人は別途生命保険を契約して万が一に備えることが多いです。しかし、夫婦連生団信なら連帯債務契約を結んでいる人のうち、どちらかに万が一のことが起こったらフラット35の返済が不要になるので、別途生命保険を契約する必要性は低くなります。

03加速する金融機関のLGBT対応、ただし別の課題も

ここまで述べてきたように、全国の金融機関でLGBTカップルに向けて住宅ローンの要件を緩和する動きが加速しつつあります。そうした動きはもともと社会問題への関心が高いメガバンクを中心に見られたものの、近年では地方銀行にも波及しており、今後も対応する金融機関が増えていくことが期待されています。

また、今回は住宅ローンの動向を主に取り上げましたが、そのほかにも自動車保険や生命保険、信託、クレジットカードといった信用分野でも、同性パートナーを異性同士のパートナーと同様に扱うサービスも増えてきました。日本では同性パートナーに対して、自治体が独自に「結婚に相当する関係」を証明する「パートナーシップ制度」がここにきて広がりを見せていることもあり、LGBTカップルの金融サービスを利用するハードルが徐々に下がってきているのは間違いありません。

しかし、依然として解決されていない問題もあります。例えば、税制面での不平等です。例えば、相続税における「相続税の配偶者控除」や「小規模宅地の特例の適用」が挙げられます。いずれも、「配偶者の取得する財産は1億6000万円(または法定相続分)まで非課税」「相続税の計算をする際に土地の評価額を最大80%減額できる」など、相続税の計算に大きく影響する制度ですが、同性パートナーの相続に適用することは想定されていません。

もともと、相続税は基礎控除額を超えた相続が発生した場合に納税義務を負い、その計算式は「3000万円 +(600万円 × 法定相続人の数)」です。つまり、亡くなったパートナーに法定相続人がいない場合でも、3000万円以下の相続に相続税はかかりません。そのため、実際に相続税が発生するケースはそれほど多くないものの、相続財産には生命保険の保険金もみなし相続財産として含まれるため、高額な契約をしている場合には気を付けたほうがよいでしょう。

相続税は現金一括納付が基本なので、もしも基礎控除額を超える財産を譲り受けた場合、手元に現金が残っていないと高額の相続税を支払うことができず、せっかく手に入れたマイホームを手放すことになるかもしれません。LGBTの方が住宅を購入しやすくなっているのは事実ですが、現状ではそうした課題があることも認識しておいてください。

04LGBTカップルのマイホーム購入こそ、綿密な資金計画が必要!

LGBTカップルの社会生活におけるさまざまな問題は世間的に大きな課題として認識されつつあり、今後は法律の整備によって解決する日がやってくるかもしれません。しかし、現状ではLGBTカップルが税制面で不利な場合もあるので、不動産を購入する際は将来的な資金計画をしっかり立てておいたほうが安心です。 当サイトでは住宅購入に関するお金の悩みや心配を解決するのに役立つ各種シミュレーターを用意しています。例えば、「毎月の返済額シミュレーター」では住宅購入予算や金利などから、月々の住宅ローン返済額がいくらくらいになるかを試算できるうえ、諸費用の目安まで簡単に算出できます。利用料金は無料なので、ぜひお気軽に試してみてください。

新井智美

監修:新井智美

CFP®/1級ファイナンシャル・プランニング技能士

プロフィール

トータルマネーコンサルタントとして個人向け相談の他、資産運用など上記相談内容にまつわるセミナー講師を行う傍ら、年間100件以上の執筆・監修業務を手掛けている。

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