植田日銀総裁、金融緩和政策のさらなる修正も?住宅ローンへの影響はある?
住宅ローンの金利には、日本銀行(以下、日銀)の政策金利が大きな影響を与えています。実際、欧米などの先進国ではコロナ禍からの脱却やウクライナ紛争などの影響による過剰なインフレを抑えるために金利を上げているところも多く、日本への金利上昇圧力も高まっています。もしも、金融緩和政策が見直され、日本でも金利上昇が始まった場合は住宅ローンへ大きな影響を及ぼすかもしれません。そこでこの記事では、金融緩和政策が修正された場合に住宅ローンへどのような影響があるかを解説していきます。
01植田日銀総裁、異次元の金融緩和政策の維持を決定
2023年4月28日に開催された金融政策決定会合において、全会一致で決定された政策の中身は以下の通りです。
- 短期金利をマイナスにする
- 長期金利をゼロ%程度に抑える(変動幅をプラスマイナス0.5%程度に維持)
- 大規模な金融緩和政策を維持する
これらの政策は前日銀総裁である黒田東彦氏の金融緩和路線を継続するものであり、総裁交代のタイミングで大幅に住宅ローン金利が変動するという懸念は払拭されることになりました。ただし、同会合では、「1990年代後半から続けられてきた金融緩和政策について、1年から1年半程度の時間をかけて多角的なレビュー(検証)を行う」ことも決定されています。
それによって、日本で長期間デフレが続いた要因や金融緩和政策の効果および副作用を検証し、今後の金融政策運営に活かすのが狙いです。以上のことから、これからすぐに変動するリスクは少ないものの、今後は数年単位で考えると金融緩和政策の見直しとともに住宅ローン金利が上昇する恐れが高まっています。
02固定金利が今以上に上昇する可能性も!
日銀は前総裁の黒田東彦氏のもと、「安定した2%の物価上昇率」を目標に2013年から異次元と呼ばれるほど大規模な金融緩和政策を実行してきました。2022年の物価上昇率は前年度比で目標値を超える3%も上昇しており、日銀もその点は把握しているものの、「まだ安定的ではない」として今回の会合では金融緩和政策の維持が決定されました。もともと金融政策決定会合では、景気や物価を安定させるために、金利水準や国債発行額のコントロールについて議論しています。
一般的に、日銀はインフレが進んで物価上昇率が高くなり過ぎるなど、景気に過熱感が出た場合には金利を上げて市中に出回るお金の量を減らそうとします。反対に、物価が下がり、景気が冷え込んでいると判断した場合には金利を下げて企業の積極的な投資を促し、市中に出回るお金の量を増やそうとすることが多いです。4月の会合で日銀は金利を引き上げる判断をしませんでしたが、今回の議論では「現行の金利水準のコントロールに問題があるのではないか」という指摘がありました。その問題とは「長期金利を低く抑えるための国債の大量購入(指値オペ)」です。
2023年5月現在、日銀は長期金利の変動幅が0.5%程度を上回らないように、大規模な国債の買い入れを実施しています。しかし、すでに日銀による国債の保有残高は500兆円を超え、発行残高の半分を日銀が保有している世界的に見ても異例の状況です。こうした状況に対して検証が必要であるといった声が日銀内部でも徐々に高まっています。検証した結果、仮に金融政策に修正が必要だと判断すれば、国債購入額の減額やストップが発表されるかもしれません。その場合、長期金利が上昇することが予想され、長期金利に大きな影響を受ける住宅ローンの固定金利も連動して上昇することが考えられます。
変動金利への影響は?
日銀が2023年4月に開催した会合では、金融緩和政策の維持とその現状について検証することを決定しました。これはつまり、現在実施されている短期金利のマイナス金利解除をしばらく行わないことも示唆しています。その結果、住宅ローンへどのような影響があるかというと、「日銀の短期金利に連動する住宅ローンの変動金利は当面の間、低い状態が続く」ことが考えられます。ただし、そうした状況がこの先もずっと続くとは限りません。先述したように、日銀は金融緩和政策の目標を「2%の物価上昇率を安定して達成する」こととしています。ウクライナ紛争や円安などの影響によって、日本では2022年途中から2%以上の物価上昇率を記録するようになっており、いつ日銀が目標を達成したという判断に転じるか予断を許さない状況です。
とはいえ、急激な金利上昇は経済にとって悪影響を及ぼす恐れがあります。そのため、実際に短期金利のマイナス金利が解除されるのは、国債の大量購入や当座預金への付利調整といった金利を低く抑えるために日銀が実施しているイールドカーブ・コントロール(YCC)の撤廃後である可能性が高いです。
検証期間が1年から1年半後を目安にしていることを考えると、日銀が短期金利の修正に着手するのは2024年以降になるでしょう。また、仮に金利を引き上げるとしても最初のうちは現在の-0.1%から0.0%にするなど、市場の様子を見ながら段階的に実施する可能性が高いといえます。そのため、住宅探しにおいてはあまり慌てすぎないことが大切です。自分に合った住宅を見つけるために、しっかりしたリサーチが重要になるのは、これまでと変わりありません。
03固定金利で住宅ローンを借り入れするなら今がチャンス!毎月の支払額をシミュレーションでチェックしよう
2023年4月の金融政策決定会合では、これまでの金融緩和政策の維持が決定されたものの、1年から1年半にわたってレビュー(検証)が実施される運びとなりました。検証の結果次第で今後は、金融緩和政策の修正が行われる公算が大きくなってきています。
ただし、金利上昇局面において先に変動するのは、短期金利ではなく長期金利です。長期金利をコントロールしている国債の指値オペをストップしてYCCが撤廃されたら、次に短期金利を徐々に上げていくという流れが予想されます。そのため、住宅ローンにおいては、長期金利に影響を受ける固定金利から上昇していく可能性が高いです。固定金利での借り入れを考えている人は、早めの判断が大切になるでしょう。 とはいえ、住宅ローンの固定金利は変動金利に比べて、契約当初の金利が基本的に高いです。そのため、毎月の返済額をあらかじめチェックしておくなど、適切な資金計画を立てておくことが重要になります。当サイト内には「住宅購入予算シミュレーター」「借入可能額シミュレーター」「毎月の返済額シミュレーター」など、無料で利用できる各種シミュレーターを用意しているので、住宅購入を考えている人はぜひ試してみてください。
監修:新井智美
CFP®/1級ファイナンシャル・プランニング技能士
プロフィール
トータルマネーコンサルタントとして個人向け相談の他、資産運用など上記相談内容にまつわるセミナー講師を行う傍ら、年間100件以上の執筆・監修業務を手掛けている。
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