「2050年カーボンニュートラル宣言」でどう変わる?環境に優しい住宅を選ぶメリットとは

2021.07.20 15

政府は2050年までに温室効果ガスの排出量を実質ゼロにするという目標に向け、住宅分野での取り組みを強化する方針を示し、国を挙げてのプロジェクトを進めています。住まいや建物に関する制度の改正も予想され、今後の住宅探しにも影響がありそうです。今回は関連する制度の内容を確認し、環境に優しい住まいを選ぶメリットについて考えてみましょう。

01政府の「カーボンニュートラル宣言」とは?

2020年10月26日に行われた第203回臨時国会の所信表明演説で、菅義偉首相は「2050年までに、温室効果ガスの排出を全体としてゼロにする、すなわち2050年カーボンニュートラル、脱炭素社会の実現を目指す」ことを宣言しました。現在、日本国内で年間12億トン超を越える温室効果ガス(二酸化炭素、メタン、一酸化二窒素、フロンガス)の排出量を2050年までに実質ゼロにする目標を掲げたのです。もちろん、排出量を完全にゼロにすることは現実的に難しいため、排出せざるを得なかった分については、同じ量を「吸収」または「除去」することによって、差し引きゼロ(ネット・ゼロ)を目指すということで、カーボン「ニュートラル(中立)」という言葉が使われています。

この宣言以降、政府では脱炭素社会を実現するための様々な施策を打ち出し、産業構造の変革やライフスタイルの転換を促しています。日本の二酸化炭素排出量の約16%を占める「住まい」からの二酸化炭素排出量(年間1億9200万トン、1世帯あたり年間3.4トン※1)を減らすための取り組みも始まっています。

※1 出典:環境省「COOL CHOICE

02「脱炭素社会に向けた住宅・建築物の省エネ対策等のあり方検討会」設置

2021年4月には環境省、国土交通省、経済産業省が有識者らによる「脱炭素社会に向けた住宅・建築物の省エネ対策等のあり方検討会」を設置し、具体的な議論を始めています。

国土交通省が同検討会で提示した資料(※2)によると、新築戸建住宅のうち省エネ基準に適合している住宅は、2019年時点で約85%、新築共同住宅では約72%となっています。しかし、約5000万戸ある中古物件では、省エネ基準に適合している住宅は2018年度時点で約11%にとどまっている上、無断熱の住宅が約30%にのぼっており、二酸化炭素削減のためには、これらの中古物件に対しての省エネ対策が急務とされています。

※2 出典:国土交通省説明資料

同検討会では、住宅・建築物における省エネ性能を確保するための規制的措置のあり方についても、具体的な議論が行われています。今後の議論の推移によっては、規制が強化される可能性も十分に考えられます。住宅の資産価値などへの影響も考えられるため、住宅の購入やリフォームについてはカーボンニュートラルの動きやそれに伴う法改正などにも注意しておく必要があるといえるでしょう。

03環境省の「おうち快適化チャレンジ」とは?

カーボンニュートラルに向けた住宅に関する取り組みの一つが、環境省が始めた「おうち快適化チャレンジ」です。このキャンペーンは、家庭の省エネ対策としてインパクトの大きい、断熱リフォーム、ZEH(ゼッチ=ネット・ゼロ・エネルギー・ハウス)化と省エネ家電への買い換えを、関係省庁及び関係業界等と連携して呼びかけ、国民一人ひとりの行動変容を促していくことにより、脱炭素で快適、健康、お得な新しいライフスタイルを提案するもの。おうち快適化チャレンジは「みんなでエコ住宅チャレンジ」と「みんなで省エネ家電チャレンジ」の2つから成り、それぞれ次のような内容となっています。

みんなでエコ住宅チャレンジ

家庭の省エネ対策としてインパクトの大きい、 既存住宅の断熱リフォーム、新築住宅のZEH化を促すものです。

既存住宅の断熱リフォーム

天井・壁・床などの断熱施工や開口部の断熱施工(窓の交換、内窓設置、ガラスの交換など)をすることによって、外気の温度や熱を室内に伝えにくくするリフォーム工事のことです。

新築住宅のZEH化

ZEHとは、「外皮(住宅の外壁、屋根、窓等の外周)の断熱性能等を大幅に向上させるとともに、高効率な設備システムの導入により、室内環境の質を維持しつつ大幅な省エネルギーを実現した上で、再生可能エネルギーを導入することにより、年間の一次エネルギー消費量の収支がゼロとすることを目指した住宅」であり、かつ国が定める要件をすべて満たす住宅のことを指します。要件について詳しくは環境省のホームページで確認することができます。

なお、ZEHには次のようなメリットとデメリットが指摘されていますのであらかじめチェックしておいてください。

ZEHのメリット

  • 経済性に優れている

高い断熱性能や高効率設備の利用により、月々の光熱費を安く抑えることができます。さらに、太陽光発電等のエネルギーを一般家庭などで創り出す「創エネ」で、余った電力を電力会社に売電する場合は、収入を得ることもできます。

  • 快適・健康性に優れている

高断熱の家は、室温を一定に保ちやすいため、夏は涼しくて冬は暖かい、快適な生活を送ることができます。さらに、冬は、効率的に家全体を暖められるので、急激な温度変化が原因の「ヒートショック」による心筋梗塞等の事故を防ぐ効果も期待できます。

  • レジリエンス(強靭さ)を備えている

台風や地震等、災害が原因で地域が停電してしまっても、自宅の太陽光発電や蓄電池を活用して電気が使うことができ、非常時でも安心です。

ZEHのデメリット

  • 建築コストが高い

 太陽光パネルなど国の基準を満たす設備を購入しなくてはならないため、ZEHは一般的な住宅よりも建築費が高くなります。

  • 設備にメンテナンスが必要

  太陽光パネルなどの設備を維持管理するためのメンテナンスが必要です。

  • 太陽光の発電量が不安定

  太陽光発電は天候に左右されるため発電量が不安定で、天候不順が続くと発電量が不足するおそれがあります。

みんなでエコ住宅チャレンジの補助金

みんなでエコ住宅チャレンジの対象である既存住宅の断熱リフォームか新築住宅のZEH化の工事を行った場合、申請して認められれば、次のような補助金を受けることができます。

  • 既存住宅の断熱リフォームの補助金

高性能な断熱材やペアガラス、高断熱サッシなどを用いて断熱性を高める改修を行い、一定の要件を満たす場合に補助金を受けられる制度です。補助金の上限は1戸当たり120万円。令和3年度2次公募の公募期間は2021年6月7日~2021年7月26日となっています。

詳しくは補助事業者である公益財団法人北海道環境財団のホームページで確認できます。

  • 新築住宅のZEH化の補助金

ZEHの基準を満たす住宅が対象の補助金で、上限は1戸あたり60万円です。

令和3年度3次公募は2021年8月30日(月)10:00 ~ 2021年9月24日(金)の期間で行われます。補助事業の申請金額の合計が予算に達した日の前日をもって公募を終了します。

詳しくは補助金執行団体である一般社団法人環境共創イニシアチブのホームページで確認できます。

みんなで省エネ家電チャレンジ

家庭の省エネ対策としてインパクトの大きい、省エネ家電(エアコン、テレビ、冷蔵庫、LED照明、温水洗浄便座)への買換えを推奨し、脱炭素で快適、健康、お得な新しいライフスタイルの実現を目指す取り組みです。補助金などは特にありませんが、今使っている家電と最新式の家電とで、どれくらいの省エネやコストダウンができるかを誰でも簡単に比較できる省エネ製品買換えナビゲーション「しんきゅうさん」などのサービスを、環境省の特設サイトで利用できるようになっています。

04長期優良住宅に注目が集まる

カーボンニュートラルに向けた住宅に関連する取り組みとして、「長期優良住宅」にもあらためて注目が集まっています。長期優良住宅は一定の基準を満たした住宅を国が認定し、税金の優遇措置などを設けているものです。

長期優良住宅の認定基準

長期優良住宅(新築)の認定を受けるためには、以下の認定基準を満たす必要があります。

性能項目など 認定基準の考え方
劣化対策 数世代にわたって住宅の構造躯体が使用できること
耐震性 大規模地震力に対する変形を一定以下に抑制する措置を講じていること。免震建築物であること
可変性 居住者のライフスタイルの変化等に応じて間取りの変更が可能な措置が講じられていること
維持管理・更新の容易性 構造躯体に比べて耐用年数が短い内装・設備について、維持管理(清掃・点検・補修・更新)を容易に行うために必要な措置が講じられていること
バリアフリー性 将来のバリアフリー改修に対応できるよう共用廊下等に必要なスペースが確保されていること
省エネルギー性 必要な断熱性能等の省エネルギー性能が確保されていること
居住環境 良好な景観の形成その他の地域における居住環境の維持及び向上に配慮されたものであること
住戸面積 少なくとも1の階の床面積が40平方メートル以上(階段部分を除く面積)かつ、以下に適合すること
一戸建て住宅
75平方メートル以上( 2人世帯の一般型誘導居住面積水準)
共同住宅等
55平方メートル以上(2人世帯の都市居住型誘導居住面積水準)
維持保全計画 建築時から将来を見据えて、定期的な点検・補修等に関する計画が策定されていること

長期優良住宅のメリット

長期優良住宅の認定を受けると、以下のようなメリットが期待できます

税制の優遇が受けられる

長期優良住宅の場合、一般の住宅に比べて次のような税制優遇を受けることができます。

税制の種類 優遇のポイント 一般住宅の場合 長期優良住宅の場合
住宅ローン減税 控除額の上限 4000万円 5000万円
登録免許税 保存登記の際の税率 0.15% 0.1%
移転登記の際の税率(戸建て) 0.3% 0.2%
移転登記の際の税率(マンション) 0.3% 0.1%
不動産取得税 控除額 1200万円 1300万円
固定資産税 減税措置適用期間(戸建て) 1~3年(1/2減額) 1~5年(1/2減額)
減税措置適用期間(マンション) 1~5年(1/2減額) 1~7年(1/2減額)

出典:東京都住宅政策本部

フラット35の金利優遇が受けられる

長期優良住宅の取得に民間金融機関と住宅金融支援機構が提携して提供する全期間固定型住宅ローン・「フラット35」を利用する場合、一般的なフラット35よりも低い金利(年-0.25%)のフラット35S(当初10年間、金利が引き下げられる金利Aプラン)が適用されます(2022年3月31日申し込み受付分まで)。

リセールバリューが高い

長期的に住み続けることを想定した高品質な住宅のため、売却時に一般的な住宅よりも高く売れる可能性があります。

長期優良住宅のデメリット

一方で長期優良住宅には以下のようなデメリットも指摘されています。認定を受けるかどうかは、デメリットも考慮した上で判断するようにしましょう。

建築コストが高くなる可能性がある

認定基準を満たすために追加工事や設備が必要になります。大手ハウスメーカーの場合は標準仕様で長期優良住宅の認定基準を満たすことができるためコストが高くなるケースは多くありませんが、中小の工務店の場合はコストが20~30%程度高くなることも珍しくありません。また、一般的な住宅に比べて建築期間が長くなります。

申請手続きが煩雑

申請手続きが極めて煩雑で手間と時間がかかります。自治体によって異なりますが自ら申請する場合は5~6万円程度の費用がかかります。ハウスメーカーなど不動産業者に代行を依頼できますが、その場合は別途コスト(20~30万円程度)が発生します。

マンションの認定事例が少ない

戸建て住宅では認定数が伸びていますが、マンションでは、まだ長期優良住宅に認定されている物件は多くありません。

定期的に点検をしなければならない

長期優良住宅認定時に策定した維持保全計画に従って、定期的に点検を行い、必要に応じて修繕やメンテナンスを行う必要があり、そのコストを負担しなければなりません。

05環境に優しい住宅を選ぶメリットは?

このように国が様々な優遇措置を打ち出して環境にやさしい住宅の普及・推進を図っているのは、温室効果ガスの排出量を減らして地球環境を守り、持続可能な社会を実現するためです。こうした住宅は地球環境だけでなく住む人にも優しい住宅であり、主に次のようなメリットを得ることができます。

光熱費が安くなる

太陽光発電など自然エネルギーを活用することによって、光熱費を抑えることができます。

1年中を通じて快適に過ごせる

断熱性・気密性に優れた資材で建てられる住宅は、一般の住宅に比べて外気の寒暖差による影響を受けにくく、夏は涼しく、冬は暖かく暮らすことができます。

様々な優遇が受けられる

先に紹介したとおり、さまざまな補助金や税制優遇制度を利用できます。

環境にやさしい住宅は一般的にはコストが高い、建築期間が長いなどのデメリットもありますが、長い目でみると、概して住みやすく、経済的にも優れた住宅だと言えそうです。マイホームを選ぶ際の選択肢の1つに加えてみてはいかがでしょうか?

相山華子

監修:相山華子

ライター、OFFICE-Hai代表、2級ファイナンシャル・プランニング技能士

プロフィール

1997年慶應義塾大学卒業後、山口放送株式会社(NNN系列)に入社し、テレビ報道部記者として各地を取材。99 年、担当したシリーズ「自然の便り」で日本民間放送連盟賞(放送活動部門)受賞。同社退社後、2002 年から拠点を東京に移し、フリーランスのライターとして活動。各種ウェブメディア、企業広報誌などで主にインタビュー記事を担当するほか、外資系企業のための日本語コンテンツ監修も手掛ける。20代で不動産を購入したのを機に、FP(2級ファイナンシャル・プランニング技能士)の資格を取得。金融関係の記事の執筆も多い。

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