3500万円の住宅ローンを組むなら年収いくら必要?頭金や月々の返済額をシミュレーションして解説

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住宅ローンを利用してマイホーム購入を検討する際、「自分の収入でどれくらい住宅ローンを借りられるのか」というのは多くの人が気になるところでしょう。実際に3500万円程度の住宅ローンを組む場合、年収はどれくらいあればいいのでしょうか。 この記事では、3500万円前後の住宅ローンの借り入れを検討している人に向けて、必要な年収の目安や年収ごとの返済シミュレーションを紹介します。年収が低くても余裕を持って返済するためのポイントも解説します。

013500万円の住宅ローン計算に必要な要素

3500万円の住宅ローンを組むといっても、実際に3500万円を返済すればいいわけではありません。また、3500万円の住宅ローンで3500万円の住宅を購入するのか、あるいは自己資金を除いた3500万円を住宅ローンで借り入れるかによっても、最終的な返済金額が変わります。

3500万円の住宅ローンを組むとき、返済額や必要な年収額の変動要因となるのは次のような要素です。

  • 返済期間(返済期間が長いと毎月の返済負担は軽くなるが、返済総額は多くなる)
  • 借入金利(金利が高いと、毎月の返済額や返済総額が高くなる)
  • 頭金の有無(一定の頭金を入れると金利が低くなる場合がある)

返済計画はこうした複数の要素に左右されるため、今後のライフステージや家計状況の見通しなどを踏まえて、借り方を慎重に検討する必要があります。

023500万円ローンの支払いに必要な年収は350万円が目安

それでは、3500万円の住宅ローンを借りるにはどれくらいの年収が必要なのでしょうか。

住宅ローンの借入額を年収から導き出すための指標として「返済負担率(返済比率)」が挙げられます。返済負担率とは、年収に占める年間ローン返済額の割合のこと。金融機関の多くは、返済負担率の上限を30〜40%に設定しています。

3500万円の住宅ローンの年間返済額を求めるため、当サイトの「毎月の返済額シミュレーター」を使用して、以下の条件での返済額を求めてみましょう。

借り入れ条件

借入金額 3500万円
返済期間 35年
ボーナス返済 なし
金利 1.5%
金利タイプ 全期間固定金利
返済方式 元利金等返済

上記で計算すると、総支払額は4505万円、毎月の支払額は10万7164円となります。借り入れるのは3500万円ですが、1.5%の金利が適用されるので1005万円の利息支払いが発生するのです。

毎月の支払額から、年間のローン支払額は128万5968円です。返済負担率40%とすると年収が約321万円なので、ほかの借り入れを含めても350万円程度年収があれば、3500万円の住宅ローンを組める可能性があるといえます。

「年収の10倍」は住宅ローン借入上限額の目安ともいわれており、まさにそのとおりの結果となりました。

適正年収を算出する「返済負担率」とは?

上で紹介した「返済負担率」について詳しく紹介しましょう。上述のとおり、返済負担率とは年収に占める年間ローン返済額の割合のことで、「年収 ÷ 年間ローン返済額 × 100」で算出可能です。

金融機関が設定している30〜40%というのは、あくまでも「この年収ならギリギリ返せる」という上限の目安であって、実際には20〜25%以下に抑えるのが理想的といわれています

返済負担率の計算には、自動車ローンや教育ローン、カードローンといった住宅ローン以外の返済額も含む必要があるうえ、住宅を購入するにはローン返済以外の諸費用や維持費なども見込まなければならないからです。

3500万円の住宅ローンを借り入れるにあたり、返済負担率が25%となるようにする場合、必要年収は514万3872円です。20〜25%以下に抑えるには、少なくとも年収550万円程度は必要という結果になります。

つまり、住宅ローンを「ギリギリ返せる年収」と「余裕を持って返せる理想的な年収」には大きな開きがあるのです。

返済負担率についてはこちらの記事で詳しく解説していますので、併せてチェックしてみましょう。

無理のない返済負担率を知ろう!住宅ローンの年収別借入可能額
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03年収別!3500万ローンの毎月支払額と総支払額

ここからは具体的なイメージを膨らませるため、3500万円の住宅ローンの返済シミュレーションを年収別に見ていきましょう。

前提として、3500万円の住宅ローンの返済額を返済期間・金利別に想定してみます。試算には先ほどと同様、当サイトの「毎月の返済額シミュレーター」を使用します。

3500万円借り入れたときの毎月返済額

借入金利/返済期間 1.0% 1.5% 2.0% 2.5%
20年 16万963円 16万8890円 17万7059円 18万5466円
25年 13万1905円 13万9977円 14万8349円 15万7015円
30年 11万2573円 12万792円 12万9366円 13万8292円
35年 9万8799円 10万7164円 11万5941円 12万5123円
※2024年3月時点 いずれも全期間固定金利、元利金等返済、ボーナス払いなし

上記の数値をベースに年収別の返済負担率を確認していきます。

年収500万円の場合の返済シミュレーション

年収500万円の人が3500万円の住宅ローンを借り入れるとき、返済負担率の目安は次の表のとおりです。

年収500万円で3500万円借り入れたときの返済負担率

借入金利/返済期間 1.0% 1.5% 2.0% 2.5%
20年 38.6% 40.5% 42.5% 44.5%
25年 31.7% 33.6% 35.6% 37.7%
30年 27.0% 29.0% 31.0% 33.2%
35年 23.7% 25.7% 27.8% 30.0%

年収500万円の人の場合、返済期間25年以上であれば、ある程度金利が上がっていても3500万円を借り入れられる可能性はあるといえます。ただ、返済期間や借入金利によって返済負担率が30%を超える場合があり、負担が重過ぎるかもしれません。

年収600万円の場合の返済シミュレーション

年収600万円の人が3500万円の住宅ローンを組むと、返済負担率は次のようになります。

年収600万円で3500万円借り入れたときの返済負担率

借入金利 /返済期間 1.0% 1.5% 2.0% 2.5%
20年 32.2% 33.8% 35.4% 37.1%
25年 26.4% 28.0% 29.7% 31.4%
30年 22.5% 24.2% 25.9% 27.7%
35年 19.8% 21.4% 23.2% 25.0%

年収600万円の場合、返済期間30年以上の長期で借り入れれば、金利が多少高くなっても返済負担率20〜25%前後の適正値で借り入れることが可能です。ただ、返済期間を短めに設定すると負担が重くなるため注意しましょう。

年収700万円の場合の返済シミュレーション

次に、年収700万円の場合でも同じように返済負担率を見ていきましょう。

年収700万円で3500万円借り入れたときの返済負担率

借入金利/返済期間 1.0% 1.5% 2.0% 2.5%
20年 27.6% 29.0% 30.4% 31.8%
25年 22.6% 24.0% 25.4% 26.9%
30年 19.3% 20.7% 22.2% 23.7%
35年 16.9% 18.4% 19.9% 21.4%

年収700万円の場合、返済期間を30年に設定しても返済負担率が25%を下回る可能性が高く、比較的余裕を持って返済できるでしょう。家計への影響をできるだけ小さくしたいなら、返済期間は30年以上にしておきたいところです。

年収800万円の場合の返済シミュレーション

年収800万円で3500万円の住宅ローンを借り入れると、返済負担率はどのようになるのでしょうか。

年収800万円で3500万円借り入れたときの返済負担率

借入金利/返済期間 1.0% 1.5% 2.0% 2.5%
20年 24.1% 25.3% 26.6% 27.8%
25年 19.8% 21.0% 22.3% 23.6%
30年 16.9% 18.1% 19.4% 20.7%
35年 14.8% 16.1% 17.4% 18.0%

年収800万円だと返済期間25年で組んでも、金利が一定の範囲内であれば返済負担率25%以内に収まる結果になりました。家計に余裕があるようなら返済期間を短めに設定して、早期に完済してしまうのも手かもしれません。

年収900万円の場合の返済シミュレーション

最後に、年収900万円の人が3500万円の住宅ローンを組んだときの返済イメージを見てみましょう。

年収900万円で3500万円借り入れたときの返済負担率

借入金利/返済期間 1.0% 1.5% 2.0% 2.5%
20年 21.5% 22.5% 23.6% 24.7%
25年 17.6% 18.7% 19.8% 20.9%
30年 15.0% 16.1% 17.2% 18.4%
35年 13.2% 14.3% 15.5% 16.7%

年収が900万円あれば、返済期間20年でも返済負担率が25%を下回る可能性が高く、ある程度余裕を持って返済できるでしょう。返済期間が30年以上になると20%未満の低い負担率となっており、ローンを返済しながらも豊かな暮らしが送れると考えられます。

04年収が低くても後悔しないための返済計画のポイント

年収別の返済負担率を比較すると明らかですが、年収水準によって住宅ローン返済の負担の重さは大きく異なります。年収が低い人でも後悔せず返済を続けるためには、どのような点に気をつけて住宅ローンを組むべきなのでしょうか。返済計画を立てるうえでのポイントを4つ紹介します。

頭金や繰り上げ返済を活用する

頭金を入れると住宅ローンの借入額を減らせるので、将来の返済負担を軽減できます。加えて【フラット35】のように融資率(取得価格に対する借入額の割合)によって、適用金利を変えている商品もあるため、頭金を入れて融資率を下げれば、総返済額を下げられる可能性もあるでしょう。

今後ライフステージの変化などによって収入減や支出増が見込まれる場合、繰り上げ返済を行って、先々の負担を軽くするのも有効です。

なお、頭金を自己資金から捻出した結果、手持ち資金に余裕がなくなるのは危険です。病気やケガなどで収入が一時的に落ち込んだ際、最低限の生活を維持できなくなる可能性があります。生活費の半年分程度は緊急予備資金として手元に置き、残り分の可能な範囲で頭金を入れるようにしましょう。

繰り上げ返済についても、手数料を確認し、無理のない範囲で検討することが重要です。

以下の記事で、マイホームのために頭金をいくら貯めるべきか解説しているので、併せてご覧ください。

夢のマイホームのために頭金はいくら貯めるべき?返済額とのバランスで考えよう
[基礎知識] 2020.09.04

税金や諸費用、住宅ローン控除を考慮する

マイホーム購入でかかる費用は住宅ローンの返済費用だけではありません。購入時には、仲介手数料・不動産取得税・登録免許税・印紙税・火災保険料(地震保険料)などの諸費用がかかるほか、購入後も固定資産税・都市計画税や建物の修繕費用などがかかります。

ローン返済費用しか考えずに資金計画を立てると、上記の費用負担がのしかかり、生活に大きな影響を及ぼしかねません。住宅取得にかかる税金や諸費用の項目やコストはしっかり確認しておきましょう。

また住宅ローンを利用した場合、住宅ローン控除を利用できる可能性があります。最長13年にわたり、年末のローン残高の0.7%分が所得税から控除されるというお得な制度なので、適用要件を確認して上手に活用しましょう。

住宅ローン控除の基本はこちらで詳しく解説しています。

【2022年最新版】「住宅ローン控除(減税)」の基本と計算方法
[税金] 2022.01.12

返済期間を長くする

先ほどの表からもわかるように、返済期間を短くすると月々の返済額は高くなります。年収が低く、月々の返済負担が重くなるようなら、できる限り返済期間を長く設定するようにしましょう。

ただし、返済期間を長くすると金利の影響を受ける期間が長くなり、総返済額が高くなる点には要注意です。

返済期間を短くすべきか長くすべきか気になる人は、こちらの記事をご覧ください。

住宅ローンの繰り上げ返済で損をしないための賢い利用法
[返済] 2024.10.23

夫婦での「収入合算契約」「ペアローン契約」を活用する

1人の収入では十分な借り入れができないときは、世帯収入で審査してもらえる「収入合算契約」や「ペアローン契約」を活用するのも一つの方法です。

収入合算契約とは、夫婦のいずれか一方が主債務者となり、もう片方が連帯保証人もしくは連帯債務者として返済義務を負うローン契約のことです。夫婦の合算収入をベースに審査が行われるため、1人の契約よりも多くの金額を借り入れられます。

ペアローン契約とは、夫婦それぞれで別々の住宅ローンを組み、お互いが連帯保証人となるローン契約のことです。住宅ローンが2本になるため、住宅ローン控除をそれぞれで受けられるなどのメリットがあります。

どちらも夫婦の片方の収入が減少すると、途端に返済負担が大きくなるリスクがあるため、不動産会社や金融機関に相談のうえ慎重に検討しましょう。

05住宅ローンを組むときは余裕のある返済計画を立てよう

3500万円の住宅ローンは年収350万円程度ある人なら組める可能性があるものの、上限値で借り入れると返済に苦慮する危険性があります。返済負担率を20〜25%以下に収め、余裕を持った返済計画を立てるためには、年収550万円程度はほしいところでしょう。

年収が少ない人でも後悔なく住宅ローンを組むには、頭金を入れる、返済期間を長くするなど工夫をして、少しでも月々の返済負担を軽くすることが重要です。それでも無理のある返済計画になるようなら、予算の見直しも考えましょう。

新井智美

監修:新井智美

CFP®/1級ファイナンシャル・プランニング技能士

プロフィール

トータルマネーコンサルタントとして個人向け相談の他、資産運用など上記相談内容にまつわるセミナー講師を行う傍ら、年間100件以上の執筆・監修業務を手掛けている。

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