抵当権設定登記とは?費用感と手続きの流れを紹介
住宅ローンを利用して不動産を取得した際に行う、抵当権設定登記。抵当権設定登記は、そもそも何のために行うものなのでしょうか?また、どのくらいの費用がかかるのでしょうか?登記手続きの流れや費用についてもあわせて解説します。
01そもそも抵当権とは?
金融機関から住宅ローンを借りて不動産を購入すると、金融機関は借主がローンを返済できなくなった際に備えて、その不動産に抵当権(その不動産を担保にして優先的に弁済を受ける権利)を設定します。ローンの返済ができなくなると、抵当権が設定された不動産は金融機関によって競売にかけられ、その売却代金は強制的にローンの返済に充当されることになります。つまり、抵当権を設定することによって、金融機関は貸し出した資金を確実に回収でき、いわゆる「貸し倒れ」を回避できるというわけです。なお、売却額がローンの残額に満たない場合は、債務者はその残額を引き続き金融機関に返済し続けなくてはなりません。当然ながら、住宅ローンが滞りなく返済されている限り抵当権が実行されることはありませんし、全額返済されると抵当権は抹消されます。
抵当権付きのローンを借りて不動産を購入した場合は、その不動産に抵当権が付いていることを公にするための手続きとして、法務局(登記所)で「抵当権設定登記」を行わねばなりません。
02抵当権設定登記にかかる費用は?
抵当権設定登記にかかる費用は、登録免許税(登記料)と司法書士等に支払う報酬などで、具体的な金額の目安は、それぞれ次のとおりです。
登録免許税(登記料)
登録免許税は登記を行う者(不動産の所有者)が国に納める税金で、抵当権設定登記の場合の税額は、原則として次の計算式で求めることになっています。
抵当権設定登記にかかる登録免許税額=住宅ローンの借入額✕0.4%
したがって、たとえば4000万円の住宅ローンを借りて不動産を購入した場合の抵当権設定登記にかかる登録免許税額は、4000万円✕0.4%=16万円ということになります。
なお、一定の要件(※)を満たす住宅であれば、住宅ローンを使って購入し、2027年(令和9年)3月31日までに抵当権設定登記を行った場合、登録免許税の税率が本来の0.4%から0.15%に引き下げられる特例措置を受けることができます。したがって、この期間中に4000万円の住宅ローンを借りて条件を満たす住宅を購入し抵当権設定登記をした場合の登録免許税額は、4000万円×0.15%=6万円ということになり、通常の住宅を購入したときの約3分の1に抑えられることになります。
※抵当権設定登記の特例の適用要件
【新築住宅の場合】
- 自己居住用の住宅であること
- 新築又は取得後1年以内に登記されたものであること
- 床面積50㎡以上であること
【中古住宅の場合】
- 自己居住用の住宅であること
- 取得後1年以内に登記されたものであること
- マンション等の耐火建築物は25年以内、木造等耐火建築物以外は20年以内に建築されたもの。築年数がこれを超えている場合は、その住宅が新耐震基準に適合していることについて証明されたもの、既存住宅売買瑕疵保険に加入している一定のものであること
- 床面積が50㎡以上であること
登録免許税は、原則として税務署や銀行など日本銀行歳入代理店の金融機関で納付することができ、その領収書を登記申請書に貼り付けて法務局に提出することによって、登記の申請を行います。ただし、納税額が3万円以下の場合のみ、登録免許税額分の収入印紙を購入して、それを登記申請書に直接貼り付けることによって納付することも認められています。
司法書士に支払う報酬
抵当権設定登記には専門的な知識が必要なため、一般的に登録免許税の納付をはじめ一連の登記の手続きは、司法書士に一任するケースがほとんどです。その際の費用はローンの金額や司法書士によってさまざまですが、おおよそ5万円から10万円であることが多いようです。
登記手続きに必要な印鑑証明書の取得手数料(1通450円)や登記事項証明書の取得手数料(1通600円)といった経費は司法書士に支払う報酬に含まれていることがほとんどですが、別途請求されることもあるので、法務省のホームページで確認しておきましょう。
03抵当権設定登記手続きの流れ
続いて、抵当権設定登記を行う際の手続きの流れについて見ていきましょう。抵当権設定登記の当事者は不動産の所有者、そして所有者と住宅ローン契約を結んだ金融機関ですが、実際の登記手続きは両者に委任された司法書士が行うのが一般的です。手続きに特に期限は設けられていませんが、実際には抵当権設定契約締結後、すぐに申請が行われます。
STEP1 住宅ローン契約を結ぶ
住宅ローン契約(金銭消費貸借契約)を借主と金融機関との間で締結します。
STEP2 抵当権設定契約を結ぶ
住宅ローン契約に基づき、抵当権設定契約を締結します。
STEP3 必要書類を揃える
抵当権設定登記には、以下の書類が必要です。
<通常は金融機関側で準備するもの>
- 抵当権設定契約書
- 司法書士への委任状
- 会社の法人番号がわかる書類
など
<借主側で準備するもの>
- 不動産所有者の実印
- 印鑑証明書(発行後3カ月以内のもの)
- 不動産の権利証(登記済証)
など
STEP4 抵当権設定登記申請をする
原則として、対象不動産の所在地を管轄する法務局で、窓口申請や郵送により抵当権設定登記申請を行います。
STEP5 登記事項証明書を取得し、金融機関に提出する
登記申請後、1~2週間で登記手続きが完了します。完了したら法務局で登記事項証明書を取得し、抵当権者である金融機関に提出します。
04抵当権設定登記は自分でもできる?
前述したように、一般的に抵当権設定登記は司法書士に委任して行います。そうすると当然、司法書士への報酬を支払わねばなりませんから、中には報酬分を節約するために自分で抵当権設定登記の手続きをしたいと思う人もいるでしょう。抵当権設定登記の手続きには特に法律で定められた資格などは必要ないので、不動産の所有者本人が行うことは不可能ではありません。しかし、抵当権設定登記の手続きは煩雑で専門的な知識も求められる上、法務局の審査も厳しいため、本人が自分で手続をした場合、登記完了までにはかなりの時間と労力を費やすことになってしまいます。そのため、抵当権者である金融機関が不動産の所有者本人による抵当権設定手続きを認めないケースも多く、金融機関が指定した司法書士が金融機関・所有者双方の委任を受けて手続きを行うケースがほとんどです。
なお、仮に金融機関が不動産所有者本人による登記を認めたとしても、やはり自力で手続きを行うのは得策ではありません。たとえば登記申請に必要な書類に不備があると修正して再提出する必要があるため、場合によっては何度も法務局に足を運ばねばならず、特に不動産所在地から離れた場所に住んでいると、交通費もかさんでしまいますし、抵当権の設定も遅れてしまいます。司法書士への手数料は5万円から10万円程度であることが一般的です。自分で手続きする手間暇や交通費を考えると、謝礼を支払ってでも、登記のプロである司法書士に手続きを委任したほうがより確実かつ速やかに、場合によってはより安価に、登記を完了できます。無理をして自分で手続きを行おうとするよりも、司法書士に依頼したほうが賢明だと言えるでしょう。
どうしても司法書士への報酬を安く抑えたい場合は、複数の司法書士事務所から見積もりを取って最も安価なところに依頼するか、手続きの一部を自分で行い、手数料を安くしてもらえるよう交渉する方法が考えられます。
監修:相山華子
ライター、OFFICE-Hai代表、2級ファイナンシャル・プランニング技能士
プロフィール
1997年慶應義塾大学卒業後、山口放送株式会社(NNN系列)に入社し、テレビ報道部記者として各地を取材。99 年、担当したシリーズ「自然の便り」で日本民間放送連盟賞(放送活動部門)受賞。同社退社後、2002 年から拠点を東京に移し、フリーランスのライターとして活動。各種ウェブメディア、企業広報誌などで主にインタビュー記事を担当するほか、外資系企業のための日本語コンテンツ監修も手掛ける。20代で不動産を購入したのを機に、FP(2級ファイナンシャル・プランニング技能士)の資格を取得。金融関係の記事の執筆も多い。
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