子どもが多い世帯ほど住宅ローンの金利優遇へ!2024年度から実施される見通し
2023年6月13日、次元の異なる少子化対策の実現に向けて「こども未来戦略方針」が閣議決定されました。そこで示された「こども・子育て支援加速化プラン」の一つとして、子育て世帯を対象とする、住宅支援機構の住宅ローン「フラット35」の金利引き下げが盛り込まれました。この施策は2024年度から実施される見通しです。 子どもの数が多い世帯ほど住宅ローンの金利が引き下げられる点が主な内容ですが、もし実現した場合、どのくらい家計の負担軽減につながるのでしょうか。この記事では、フラット35の子育て支援型を参考にしつつ、今後予定される子育て世帯への金利優遇措置により、どの程度の負担軽減が見込めるのか解説します。
01子育て世帯への住宅ローン金利優遇、2024年度の予算編成で検討
少子化が解消する見通しが立たないなか、政府は「次元の異なる少子化対策」の実現に向け、2023年6月13日に「こども未来戦略方針」を閣議決定しました。
その中で示された「こども・子育て支援加速化プラン」の具体的な取り扱いについては、2024年度の予算編成の過程で検討するとし、予算要求のルール(概算要求基準)の例外とする方針が示されました。これにより、児童手当や奨学金の拡充など、3年間で年3兆円台半ばを投じるとしています。
「こども・子育て支援加速化プラン」の一つに掲げられている、子育て世帯を対象とした住宅支援機構「フラット35」の住宅ローン金利引き下げも、2024年の予算編成の過程で具体的に検討が行われ、早ければ2024年度から実施される見通しです。
02今後3年間で重点的に取り組む「加速化プラン」の内容
上述のとおり、多子世帯を中心とした子育て世帯への住宅ローン金利優遇プランは「こども・子育て支援加速化プラン」の一環として示されています。今後3年間で重点的に行うとされる「加速化プラン」の概要を見ていきましょう。
「加速化プラン」が掲げられた背景には、歯止めの利かない少子化に対する政府の危機感があります。今のペースで少子化が進めば、日本の若年人口は2030年代には現在の倍速で急減すると見込まれているのです。こうした事態を避けるには2030年代に入るまでの取り組みが重要と考えられます。今後3年間を集中的に取り組む期間とし、その間にできる限り前倒しで少子化対策を実施すべく「加速化プラン」が掲げられました。
「加速化プラン」に盛り込まれている施策は以下のとおりです。
- 所得制限撤廃や高校生までの支給期間延長といった児童手当の拡充
- 出産等の経済的負担の軽減
- 子ども医療費等の負担軽減
- 高等教育費の負担軽減
- 個人の主体的なリ・スキリングに対する直接支援
- 年収の壁(106万円、130万円)への対応
- 子育て世帯に対する住宅支援の強化
住宅ローン金利優遇は、最後に挙げた「子育て世帯に対する住宅支援の強化」に該当します。このポイントの内容は以下で詳しく解説しましょう。
住宅支援で子育てしやすい住宅の取得を後押し
子どもを多く持てない理由の一つとして、若い世代などから「家が狭いから」という声が挙がっています。その声を受け、政府は少子化対策の一つとして、若者世帯や子育て世帯に対する住宅支援の強化を打ち出しているのです。特に広さ・安全面ともに良質な住宅を必要とする多子世帯に対し、子育てしやすい住宅の取得を後押しするのが大きな目的といえます。
まず、子育て世帯が居住できる住宅を増やすため、子育て世帯が居住可能な公的住宅を今後10年間で約20万戸確保する方針です。
また、空き家の活用を促す区域を設定し、所有者に対して空き家の活用を働きかけ、改修やサブリースを促進。空き家を子育て世帯向けのセーフティネット住宅に登録するよう促すことなどにより、子育て世帯が居住できる空き家を今後10年間で約10万戸確保するとしています。
住宅の確保とともに重要なのが、住宅取得時の金利負担の軽減です。子育て世帯等が良質な住宅を取得する際のハードルを下げるため、住宅金融支援機構の長期固定金利住宅ローン「フラット35」の金利優遇を行う方針も掲げられました。現状のポイント制を活用して実施し、広い住宅を必要とする多子世帯へ特に配慮しつつ、2024年度までのなるべく早期に支援を大幅に充実するとしています。
フラット35の金利引き下げ制度(ポイント制)とは?
政府の金利優遇策では、フラット35の「ポイント制」を活用する旨が公表されています。ポイント制とは、2022年10月から取り入れられているフラット35の金利引き下げ制度のこと。金利引き下げメニューごとにポイントを設定し、合計したポイント数によって引き下げ幅や引き下げ期間が決まるという仕組みです。
「住宅性能」「管理・修繕」「エリア」の3グループから、該当するメニューを1つずつ選択し、合計ポイントを算出します。下の表で一例を見てみましょう。
グループ | 金利引き下げメニュー | ポイント |
---|---|---|
住宅性能 | 【フラット35】S(ZEH) | 3ポイント |
管理・修繕 | 長期優良住宅 | 1ポイント |
エリア | 子育て支援 | 2ポイント |
合計 | 6ポイント |
上記のケースでは合計ポイントが4ポイント以上となるため、当初10年間、年0.50%の金利引き下げが受けられます。
政府による住宅支援策ではこのようなポイント制が活用され、子どもの数が多ければ多いほど金利が引き下げられる仕組みとなる見通しです。
フラット35、子育て世帯への金利優遇の具体的な内容は?
「加速化プラン」で掲げられた子育て世帯向けのフラット35金利優遇とは、具体的にどのような内容なのでしょうか。
結論からいうと、現在検討中であり具体的な内容は決まっていません。フラット35で現状取り入れられているポイント制の活用がうたわれているものの、具体的な金利の引き下げ幅については明らかになっていないのです。
現在発表されているのは制度の対象世帯のみです。金利優遇の対象となるのは、フラット35申込時点で18歳未満の子どもがいる子育て世帯、もしくは現状子どもがいなくても夫婦いずれかが39歳以下の若年夫婦世帯も対象とされています。
新規でフラット35を借り入れる世帯が対象となり、所得制限は設けられない予定です。多子世帯の住宅取得支援の側面が強いため、子どもの数が多ければ多いほど手厚い支援になるとしています。
なお、金利優遇案についてはこちらの関連記事で詳しく解説しているので、あわせてご覧ください。
03どのくらい負担軽減される?自治体の実例を参考にチェックしよう!
多子世帯向けの住宅取得支援策として、各都道府県でも住宅ローンの利子補助が行われています。こうした自治体の事例をもとに、支援によってどのくらい負担が軽減されるのか見ていきましょう。
内閣府が都道府県に対して行った、多子世帯支援の取り組みに関する調査によると、都道府県によっては多子世帯に対する利子補給を実施しています。ある都道府県では18歳未満の子どもが二人以上いる世帯について、新築住宅取得時に民間金融機関の住宅ローン利子の一部を助成。助成額は5年間で総額最大23.1万円になるといいます。
市区町村でも独自の住宅取得支援策を実施しているところがあり、例えば福岡県福岡市では「令和5年度子育て世帯住替え助成事業」として、子育てしやすい良好な住宅への住み替えを支援しています。助成されるのは、既存住宅の購入費用、礼金、仲介手数料、引越し運送費用といった初期費用の一部です。さらに、この事業を使った既存住宅購入時に【フラット35・地域連携型】を利用することで、当初10年間、年0.25%の金利引き下げを受けられます。
福岡市の例のように、自治体と住宅金融支援機構「フラット35」が連携して行う金利優遇は「地域連携型(子育て支援)」と呼ばれます。これは自治体独自の施策であり、今回政府が行う金利優遇とは別のものです。
多子世帯向けに金利優遇する金融機関も
少子化が進行する中、地域への若者世代定着を狙いとして、独自に多子世帯向けの住宅ローン金利優遇を行う金融機関も出てきています。
新潟県南魚沼市にある塩沢信用組合では、2023年5月から、子どもの人数に応じて金利を引き下げる住宅ローンの取り扱いを独自に開始しました。内容は18歳未満の子ども1人につき、住宅ローンの固定金利を年0.05%引き下げるというものです。借入期間中に子どもが生まれた場合も対応し、最大で6人分、年0.3%が引き下げられます。
利用対象者は18歳から39歳までの人で、借入期間は最長51年と長期間の設定です。信用組合が営業する地域に住宅を建てることなどが条件となっており、地元の工務店を通じて断熱性の高い住宅を建てた場合には、さらに最大で年0.3%金利が引き下げられます。
このような取り組みは福岡県北九州市「福岡ひびき信用金庫」、愛媛県四国中央市「川之江信用金庫」でも行われており、今後広まっていくのか注目されています。
当初10年間、年▲0.50%でどのくらい支払額が変わるかシミュレーション
では、実際に金利優遇によってどれくらい負担が軽減されるのでしょうか。ここでは、フラット35で当初10年間、年0.50%金利が引き下げられたケースにおける支払額の変化をシミュレーションしてみます。
条件 借入希望額:4000万円 融資率:9割以上 返済期間:35年 元利金等返済 ボーナス払い:なし 金利:年1.86%(2023年8月現在の最も多い金利) ※当初10年間は年0.50%引き下げとなるので適用金利は年1.36% |
これらの条件における試算結果は次のとおりです。
金利 | 毎月の返済額 | |
---|---|---|
当初10年間 | 年1.36% | 12万円 |
11〜35年目 | 年1.86% | 12万7000円 |
総支払額 | 5246万円 |
年0.50%金利が引き下げられると、毎月7000円の負担軽減になることがわかります。1年あたり8.4万円、当初10年間で合計84万円の負担軽減につながるのです。
今回の金利優遇措置では、子どもの数が多ければ多いほど金利が引き下げられるため、多子世帯はさらなる負担軽減が期待できます。
04子育て世帯こそ、資金計画が立てやすい固定金利という選択肢を!
昨今、建材費の高騰などを受けて、住宅価格そのものが上昇傾向にあります。価格が上がれば借入金額も増えるため、ローン返済の負担も大きくなるでしょう。長期金利の上限が引き上げられたこともあり、今後の住宅ローンの金利動向に不安を抱く人も多いかもしれません。超低金利により変動金利の人気が高まっていましたが、昨今は金利動向が不透明であり、将来的に金利が上昇するリスクも否定できません。
固定金利だと、変動金利に比べて月々の支払額や総支払額は高くなりますが、今回紹介した国や自治体、金融機関の金利優遇を活用することで支払いを抑えられます。変動金利・固定金利の違いにより、どのくらい月々の返済額に差が出るのか気になる方は、当サイトが提供する「毎月の返済額シミュレーター」をぜひ活用してみましょう。
監修:新井智美
CFP®/1級ファイナンシャル・プランニング技能士
プロフィール
トータルマネーコンサルタントとして個人向け相談の他、資産運用など上記相談内容にまつわるセミナー講師を行う傍ら、年間100件以上の執筆・監修業務を手掛けている。