「建てる前」に差がつく防災住宅|約8000人調査でわかった「在宅避難できる家」の条件
家を購入する際、判断基準として意外と後回しになりやすいのが「災害後にその家で暮らし続けられるか」という視点です。 株式会社つなぐネットコミュニケーションズが2026年7月、集合住宅居住者8181名を対象に行ったインターネット調査では、災害時に在宅避難を希望する人が87.3%に上りました。一方で、停電や断水などのライフライン停止を具体的に想定すると、「自宅で生活を続けられる」と考える人は46.6%にとどまりました。 在宅避難の希望と現実の間にあるギャップは、建物というより「災害後の生活インフラ」への不安から来ていると考えられます。 この記事では、上記の調査データをもとに、戸建て・マンション別に「在宅避難できる家」のチェックポイントを解説します。購入時の資金計画に盛り込むべき防災コストも紹介するので、これから住宅ローンを組む予定の方は参考にしてください。 出典:株式会社つなぐネットコミュニケーションズ「【マンション住民約8,000人への防災調査】在宅避難への認識に変化 ライフライン停止を想定すると、自宅での生活継続が可能との回答が60.6%から46.6%へ減少」
01調査でわかった「在宅避難したいのにできない」というギャップ
同調査では、大規模災害で被害が生じた際、87.3%の人が「できるだけ自宅で生活を続けたい(在宅避難したい)」と回答。しかし「自宅で生活を続けられると思うか」という問いに対して「続けられる」との回答は60.6%で、在宅避難の希望を26.7ポイント下回りました。
さらに、現在の防災対策状況や、ライフライン・設備の停止・復旧見込みについて質問した後に、再度同じ質問をしたところ、「続けられる」と回答した割合は46.6%にまで低下しました。
多くの人が在宅避難を望みつつ、実現には不安を感じているといえるでしょう。
不安の正体は「建物」より「ライフライン」にある
災害後に自宅で生活を続けられないと回答した人にその理由を尋ねたところ、次のような回答が上位に挙がりました。
- 1位:「ライフラインの復旧には時間がかかると思う」(59.9%)
- 2位:「生活に必要な備えが不足している」(49.4%)
- 3位:「防災設備が十分ではない」(36.7%)
上位には、ライフラインの復旧や備蓄・防災設備の不足に対する不安が挙がっています。回答者全体でも、水洗トイレの復旧時期が「分からない」と回答した人は57.1%にも上り、生活インフラの復旧見通しの不透明さが、在宅避難への不安に直結していることがうかがえます。
住まい選びにおいては、建物自体の耐震性能だけでなく「被災後も生活を続けられるか」という視点が欠かせません。
02購入前に確認したい「在宅避難できる家」の4つのチェックポイント
立地や設備は後から変えたり追加したりするのが難しいため、購入前のチェックは重要です。ここでは全物件共通・物件タイプ別・立地の観点から、防災面でのチェックポイントを紹介します。
【全物件共通】耐震性能を確認する
どの物件でも、大前提として建物の耐震性能をチェックしておく必要があります。
まずは、1981年6月以降の建築確認で適用されている「新耐震基準」を満たしているか、木造戸建てであれば、2000年6月以降に適用されている「2000年基準」を満たしているかを確認しましょう。1981年5月以前に建築確認を受けた住宅や、2000年5月以前に建築された木造住宅の中古物件では、耐震診断や耐震補強工事の履歴・結果も確認しましょう。
新築の場合、耐震性を1〜3の3段階で表す「耐震等級」も確認したいところです。耐震等級3は、極めて稀に発生する地震による力の1.5倍の力に対して、倒壊・崩壊しない程度の性能を持つとされています。国の調査でも、2016年の熊本地震において震度7を2回記録した益城町中心部の耐震等級3の木造住宅は、大きな損傷が見られず、大部分は無被害だったと報告されています。
一定の耐震性能を満たす住宅は、【フラット35】Sの金利引き下げ対象となる場合があり、地震保険料も等級に応じて割引されるため、購入後の家計負担の軽減にもつながるでしょう。
【マンション】生活インフラの継続力を見る
マンションの場合、停電・断水時に生活インフラが機能するかどうかをチェックしましょう。ポイントは次のとおりです。
| 確認すべき項目 | 内容 |
|---|---|
| 非常用電源の有無 | 停電時にエレベーター、給水ポンプ、共用部照明が使えるか |
| 給水方式 | 受水槽方式か直結方式かだけでなく、停電・断水時にどこまで給水できるか、非常用電源で給水ポンプを稼働できるか |
| エレベーター | 復旧の優先順位、閉じ込め時の対応手順 |
| 共用部の防災備蓄 | 管理組合での飲料水・災害用トイレ・非常用発電機などの備蓄状況 |
| 災害時のトイレ使用ルール | 管理組合で使用ルールや点検手順が定められているか、中古の場合は給排水管の更新工事が行われているか(災害後は、排水管や排水設備の安全が確認できるまで、水洗トイレを使用しないルールになっているか) |
特に高層マンションでは、停電時にエレベーターや給水ポンプなどの設備が停止すると、生活への影響が大きくなる可能性があります。上記の項目は管理規約・使用細則や重要事項説明書、長期修繕計画、中古なら修繕履歴などで確認できるので、不動産会社に問い合わせてみましょう。
【戸建て】エネルギーと水の自立度を高める
注文住宅であれば、断水・停電に備える設備をどうするか、自分で選ぶことができます。建売(分譲)住宅の場合も以下の設備がある物件を選ぶことで、在宅避難の実現性を高められるでしょう。
| 確認すべき設備 | 内容 |
|---|---|
| 太陽光発電+蓄電池 | 停電時に、対応する回路で電気を使える |
| エネファーム | 対応機種・条件下で停電時にも電気やお湯を使える |
| 電気自動車+V2H機器 | 電気自動車を電源として使える |
| 雨水タンク・井戸 | 断水時の清掃・洗浄などの生活用水として活用できる場合がある |
こうした設備の導入には初期費用がかかるため、防災コストとして資金計画に盛り込んでおくことが大切です。
【立地】ハザードマップでリスクを把握する
立地は購入後に変えられないため、購入前の入念なチェックが求められます。
国土交通省「ハザードマップポータルサイト」で、洪水・内水氾濫・土砂災害・津波・高潮・地震の揺れやすさ・液状化などのリスクを確認しましょう。「わがまちハザードマップ」から、購入予定地の自治体の詳細なマップを見ることもできます。万一に備え、避難場所や避難経路も確認しておきましょう。
同じ地域でも、地点によって災害リスクが変わることも珍しくありません。マップ上だけでなく、実際に現地でもリスク要因がないかを確認してください。
なお、災害リスクは、住宅の購入後の暮らしや売却時の評価などにも関わる可能性があります。
03「災害コスト」も資金計画に入れておく
先ほどの調査では、在宅避難で重要な災害用トイレを「ほとんど備蓄していない」と回答した人が49.1%に上りました。備蓄や設備には入居後も費用がかかるため、住宅購入時から資金計画に盛り込んでおく必要があります。
購入後にかかる「見えない防災コスト」を洗い出す
主な防災コストとして次の項目が挙げられます。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 地震保険料 | 都道府県や建物構造で金額が変わる |
| 防災備蓄の購入費 | 飲料水・食料・災害用トイレ・非常用電源などの備蓄品の購入費用。 家族構成に応じた必要量を備蓄 |
| 修繕積立金(マンション) | 毎月の固定費。防災設備の維持・更新費用も含まれる |
| 創エネ・蓄電設備の導入・維持費(戸建て) | 導入費に加え、定期点検、メンテナンスにかかる費用。 保証内容によって異なる |
これらの多くは、住み続ける限り継続的にかかる費用です。資金計画に盛り込んでおかないと、住み始めてから家計を圧迫するおそれもあるため注意しましょう。
地震保険で「被災後の再建資金」に備える
大規模災害時には公的支援も受けられますが、それだけで生活再建費用を賄うのは難しいのが実情です。地震・噴火またはこれらによる津波を原因とする損害に備えるためには、火災保険とセットで地震保険に加入する必要があります。
地震保険は、国と保険会社が共同運営する公共性の高い制度です。そのため地震保険の基本的な補償内容や保険料率は、保険会社によって大きくは異なりません。耐震等級(1〜3)に応じて地震保険料の割引を受けられるので、家計負担を抑えられます。
地震保険の補償額は火災保険金額の30〜50%の範囲で設定し、上限額は建物5000万円・家財1000万円です。再建費用の全額は賄えないものの、地震や津波などで被害に遭ったとき、建物・家財の損害区分(4段階)に応じた保険金を受け取れます。
04防災も資金計画も、まず「総予算」から逆算しよう
現在の年収や家賃から住宅購入の適切な予算をシミュレーションしておけば、防災コストまで含めた現実的な資金計画を立てられます。返済負担率に余裕を持たせておけば、金利上昇時だけでなく、被災後の修繕費や生活費の負担にも対応しやすくなるでしょう。
「スゴい住宅ローン探し」の住宅ローンシミュレーターで、無理のない計画を検討してみてはいかがでしょうか。
- 属性や年収・貯蓄額から予算を試算する「住宅購入予算シミュレーター」
- 現在の家賃から借りられる額を試算する「借入可能額シミュレーター」
- 希望するローン内容から返済額を試算する「毎月の返済額シミュレーター」
05災害に強い家は「被災後も暮らせるか」で選ぶ。備えと資金計画はセットで
災害に強い家を選びたいなら、耐震性能だけでなく「被災後も生活を続けられるか」という視点を持つことが重要です。マンションは生活インフラの継続力、戸建てはエネルギーと水の自立度をチェックするとともに、立地のリスクも慎重に確認しましょう。
防災設備の導入費に加え、地震保険や防災備蓄といった継続的な防災コストも資金計画に組み込む必要があります。無理なく備えるには、購入前に予算シミュレーションを行うことをおすすめします。
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監修:新井智美
CFP®/1級ファイナンシャル・プランニング技能士
プロフィール
トータルマネーコンサルタントとして個人向け相談の他、資産運用など上記相談内容にまつわるセミナー講師を行う傍ら、年間100件以上の執筆・監修業務を手掛けている。






