中古マンション選び、年収で異なる重視点 価格・交通利便性から資産性・管理状態へ
近年、首都圏では新築マンションの価格高騰もあって中古マンションの人気が高まっています。しかし、中古マンションを選ぶときに価格・立地・将来の資産価値といった条件のなかで「何を最優先にすればいいか」と迷う人も多いようです。 大和ハウスグループの株式会社コスモスイニシアが1000人を対象にした調査によると、実は世帯年収によって「何を重視するか」がはっきり分かれることが分かりました。そこでこの記事では、年収別の重視ポイントの違いを手掛かりに、中古マンション選びの優先順位の決め方を、これから住宅ローンを組む予定の方に向けて解説します。
01中古マンション購入時に重視するポイント、最多は「価格」
まずは株式会社コスモスイニシアが2026年8月31日〜9月4日にかけて行ったインターネット調査(一都三県在住の20〜69歳、直近2年以内の中古マンション購入者500名・検討者500名)の結果を見てみましょう。
中古マンションを検討・購入するにあたって「最も重視する(した)こと(単一回答)」の上位は次の通りです。
- 第1位「物件価格」・・・18.2%
- 第2位「交通利便性(駅からの距離・利用可能な路線など)」・・・13.0%
- 第3位「資産性(売却・賃貸のしやすさ)」・・・10.5%
- 第4位「生活利便性(商業施設・学校・病院等の近さなど)」・・・10.4%
多くの人が気にしがちな物件価格は最多でも2割弱にとどまっており、立地や将来の売却・賃貸のしやすさを最も重視した人が一定数いることが分かります。しかし、これはあくまでも全体の平均値です。世帯年収別ではどのような違いがあるのでしょうか。
年収別に見る中古マンション選びの重視点
世帯年収別の「最も重視する(した)こと」は次の通りです。
- 世帯年収1000万円未満:「物件価格」が最多(26.5%)
- 世帯年収1000万〜1500万円未満:「交通利便性」が最多(12.5%)
- 世帯年収1500万〜2000万円未満:「資産性」と「交通利便性」が最多(ともに17.5%)
- 世帯年収2000万〜3000万円未満:「資産性」が最多(20.9%)で「交通利便性」(18.6%)が続く
- 世帯年収3000万円以上:「資産性」が最多(19.2%)で「管理状態・共用部の状態」と「交通利便性」(ともに15.4%)が続く
年収水準が上がるにつれて最重視項目が「物件価格」から「交通利便性」を経て「資産性や管理状態」にシフトしていることが分かります。比較的年収が低い層では購入予算にかかわる「価格」、中間層では日々の暮らしやすさにつながる「交通利便性」が重視されている一方、高年収層ではそこでの暮らしはもとより、将来の売却・賃貸までも視野に入れた「資産性」や「管理状態」が重視されているようです。
ただし、これらの傾向は今回の調査対象者だけのものであり、世帯年収のみで物件選びの基準が決まるわけではありません。あくまでも家族構成や居住予定期間、住み替えの可能性なども踏まえて自分に合った条件を考えることが大切です。
02なぜ年収によって重視するポイントが異なるのか
中古マンション選びで重視するポイントが世帯年収によって異なるのは、「購入予算や今後のライフプランがそれぞれ違うから」です。中古マンションに限らずマイホームの購入では、まずは「無理なく購入できるかどうか」が重要な判断基準になります。そのうえで、通勤・通学など日常の移動のしやすさを確認し、購入予算とのバランスを考えながら暮らしやすい立地を選ぶのが基本です。
一方、高年収層が資産性や管理状態を重視する背景には、予算に余裕があるからこそ将来の売却や賃貸まで見据えた長期的な視点で不動産購入を検討できる事情が関係していると考えられます。
調査結果からは年収が高い世帯ほど価格以外の項目を重視する傾向があるのは確かですが、年収が上がったからといって価格の制約がなくなるわけではありません。では、高年収層が注目する「資産性」や「管理状態」とは、具体的にどのような点を指すのでしょうか。
高年収層が重視する「資産性」と「管理状態」とは
高年収世帯では将来売却したり賃貸に出したりする際の需要や価格にかかわる「資産性」が重視されています。資産性には駅からの距離や周辺環境、建物の管理状況など複数の要因が影響します。また、都心への通勤利便性によって中古マンションの価格上昇率が分かれているという分析もあります。
同様に、建物を長く維持するための管理体制や、エントランス・廊下といった共用部の状態も、資産性への影響は大きいといえます。管理状態を重視する人は、修繕積立金の残高や長期修繕計画、管理組合の運営状況(総会の開催など)、管理計画認定の有無などを事前に確認しておくとよいでしょう。管理が不十分なマンションは建物の維持に支障が出るだけでなく、将来的に修繕費の負担が増える可能性もあるので注意が必要です。
実際に国土交通省の「令和5年度マンション総合調査」では、長期修繕計画に対して修繕積立金が「不足している」と答えた管理組合が36.6%に上っており、管理状況はあらかじめチェックしておきたいポイントの1つです。
また、株式会社コスモスイニシアの調査によると「管理状態・共用部の状態」は購入時の重視項目(複数回答)で8位(26.6%)ですが、購入後の後悔ポイントでは4位(11.6%)まで順位が上がっています。このことからも、管理状況は購入前に見落とされやすく、住んでから気づきやすい項目だといえるでしょう。
なお、中古マンションの管理状況を効率よく調べるためのポイントは以下の記事で解説していますので、興味のある方はあわせてご覧ください。
03中古マンション選び、迷ったときには何を優先すべきか
ここまで紹介してきたように、中古マンション選びでは年収別に重視するポイントが異なるようです。そこで、ここからは年収別の傾向を、自分の優先順位を決める判断材料としてどう活用すればよいか整理していきます。
優先順位を決める際に気を付けたいポイントは「①月々の総負担」「②住む期間」「③後から変えにくい条件」の3つです。それぞれについて確認していきましょう。
① 月々の総負担で予算を考える
マンション購入の支出では住宅ローンの返済だけでなく、管理費や修繕積立金などのコストも毎月かかります。公益財団法人東日本不動産流通機構(通称:東日本レインズ)の首都圏中古マンション2025年度成約分のデータでは、管理費と修繕積立金の合計が月平均2万7805円(管理費1万3895円・修繕積立金1万3910円)で、特に修繕積立金は前年度比5.6%も上昇したとのことです。
一般的に1㎡あたりの修繕積立金は築年数が10年を超えると上がる傾向にあり、マンション購入後に増額される可能性をあらかじめ見込んでおくことが大切です。また、LIFULLの調査によると東京都の築11〜20年の中古マンション(60㎡換算)では、修繕積立金と管理費の合計が2010年の2万2395円から2025年には2万8748円へ上昇しており、近年のインフレによるコスト増も意識しておく必要があります。
マンションを購入するときは、住宅ローンの返済額にこれらを加えた「月々の総負担を無理なく払い続けられるか」を事前に確認しておくことが、後悔しないマイホーム選びの第一歩になります。
② 住む期間を想定して、重視する条件を絞る
マイホームとして長く住み続ける場合、通勤・通学のしやすさはもちろん、買い物環境や医療機関へのアクセスなど日々の暮らしやすさを重視することが大切です。
国土交通省「令和7年度住宅市場動向調査」によると、三大都市圏で中古マンションを取得した世帯が住宅を選んだ理由(複数回答)は、「価格が適切だったから(64.2%)」に次いで「住宅の立地環境が良かったから(46.6%)」が多く、「交通の利便性が良かったから」も36.1%が挙げています。また、子育て世帯では「子育てに適した環境だったから」が全体より15.4ポイント高く、家族構成によっても重視する条件は変わるでしょう。
一方、将来の住み替えも考えている場合は資産性・管理状態に加え、周辺の賃料相場や近隣マンションの成約価格を調べたうえで売却や賃貸の需要まで確かめておくと安心です。成約価格については国土交通省「不動産情報ライブラリ」や「レインズ・マーケット・インフォメーション」で調べられるので、一度チェックしてみることをおすすめします。
③ 後から変えにくい条件を優先する
株式会社コスモスイニシアの調査で購入時に重視した項目(複数回答)の1位(45.6%)だった「物件価格」は、購入後に後悔したポイントでは9位(9.0%)まで下がります。それに対して、「広さ・間取り」(重視42.4%→後悔14.4%で1位)、「交通利便性」(重視40.0%→後悔12.6%で2位)は購入後も後悔の上位に残っています。
また、リフォーム・リノベーション済み物件の購入者が選んだ理由では「立地が良いから(31.2%)」が「価格が割安だから(29.7%)」を上回りました。内装はあとからお金をかければリフォームで変えられますが、立地や広さを購入後に変えることは簡単ではありません。
このことからも、物件選びで迷ったときは、後から変えにくい条件を優先して検討するほうが、後悔しにくい物件探しにつながるといえます。
04何を優先するかを決めて、無理のない返済計画を立てよう
今回紹介した調査からは、中古マンション選びで重視するポイントは世帯年収によって異なり、年収が上がるにつれて「価格」から「資産性」「管理状態」へと重視点が移る傾向が見られました。とはいえ、こうした傾向はあくまでも参考なので、まずは予算やライフプランなどを踏まえて、自分にとって譲れない条件を整理することが大切です。
そのためには、希望条件を書き出して「譲れない条件」と「妥協できる条件」に分けておくと比較しやすいでしょう。そのうえで購入時の価格だけでなく、月々の総負担と将来の売却・賃貸の可能性まで含めて検討すれば、購入後の後悔を減らしやすくなるはずです。そして、優先したい条件が見えてきたら、理想をかなえるための無理のない資金計画づくりを始めましょう。
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監修:新井智美
CFP®/1級ファイナンシャル・プランニング技能士
プロフィール
トータルマネーコンサルタントとして個人向け相談の他、資産運用など上記相談内容にまつわるセミナー講師を行う傍ら、年間100件以上の執筆・監修業務を手掛けている。
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