共働き世帯に広がる「建売シフト」 コスパ・タイパが優れる“ちょうどいい家”が選ばれる理由
マンション価格高騰を背景に、共働き世帯の「家に求める価値観」が大きく変わりつつあります。不動産経済研究所によれば、東京23区の新築マンション平均価格は1億円を大きく超える一方、平均専有面積は約64㎡にとどまり、十分な広さを確保しにくい状況です。 こうした中、これまで共働き世帯の定番だったタワマンや駅近マンションから、建売住宅へと人気がシフトしています。建売住宅は、新築マンションと同じ価格帯で広さや大容量収納、駐車場など、生活の質に直結する要素を手に入れやすいのが魅力です。 この記事では、パワーカップルや一般の共働き世帯が建売住宅を選ぶ理由と、これから家を探す際に知っておくべきポイントをわかりやすく解説します。
01なぜ今、建売住宅に注目が集まるのか?
不動産経済研究所が公表した「首都圏 新築分譲マンション市場動向(2025年11月)」によると、東京23区の新築マンション平均価格は1億2420万円、㎡単価は201.3万円でした。
同研究所の別の調査によると、首都圏における新築マンションの専有面積は、近年大きな拡大は見られていません。
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2021年上半期
- 平均専有面積:66.65㎡
- 中央値:70.07㎡
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2023年上半期
- 平均専有面積:67.17㎡
- 中央値:68.61㎡
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2025年上半期
- 平均専有面積:66.37㎡
- 中央値:69.18㎡
このように、年ごとの多少の増減はあるものの、専有面積は狭まったまま横ばいの状態が続いていることが分かります。結果として、高い価格を支払っても、十分な広さを確保しにくい状況が続いています。
また、今や1300万世帯を超えるとされる共働き世帯は、時間価値を重視する傾向にあります。マンション価格高騰が続く中、家事・子育て・通勤を効率化するため、同じ予算でも広くて実用的な住まいとして、建売住宅を選ぶパワーカップルが見られるようになりました。
大手ハウスメーカーも「億戸建て」の建売住宅を続々投入していますが、この流れは富裕層に限った話ではありません。広さ・家事のしやすさ・子育てのしやすさは、すべての共働き世帯に刺さる価値です。パワーカップルの建売シフトは、共働き世帯における住まい選びの価値基準そのものが変化していることを示す象徴といえるでしょう。
02共働き世帯の「悩み」に建売住宅が刺さる理由
建売住宅は、共働き世帯が抱えやすい代表的な3つの悩みを解決できる住まいといえます。建売住宅がどのようなアプローチで悩みに応えてくれるのか、順番に見ていきましょう。
家が狭い・収納が足りないという悩みを一気に解決できる
共働きのマンション暮らしでありがちなのが、「部屋が足りない」「収納が足りない」といった広さに対する悩みです。先ほど紹介した不動産経済研究所のデータでも、首都圏のマンションの平均専有面積は約66㎡にとどまっています。
一方、住宅金融支援機構「フラット35利用者調査 2024年度」によると、首都圏の建売住宅の平均面積は97.6㎡となっており、マンションに比べて約30㎡も広くなっています。多くの建売住宅は100㎡前後の広さがあるため、部屋数や収納計画にもゆとりが生まれるのです。
玄関土間収納やパントリー、ファミリークローゼットなどの使い勝手のいい収納が備わっている物件も多く、荷物が増えがちな子育て世帯にとっても安心な住まいといえます。
「時短動線」で毎日の家事がラクになる
共働き世帯は、育児・家事・仕事が重なって「毎日が時間との戦い」になりがちです。近年の建売住宅は、こうした共働き・子育て世帯がメインターゲットであるため、多くの家族が効率的で便利だと感じる生活動線が検討・反映され、標準仕様として間取りに落とし込まれています。そのため、育児や家事をしやすい間取りを自分で考える必要がないのも大きな魅力です。
例えば、帰宅後の手洗いや身支度がスムーズな玄関→洗面所の直行動線、「洗う・干す・しまう」を1ヶ所で完結できる洗濯動線など、時短に直結する間取りが最初から整っています。建売住宅は、日常生活におけるタイパを重視する共働き世帯との相性がいい住まいといえるでしょう。
注文住宅のように事前の打ち合わせ時間が要らない
自分たちのこだわりを間取りや仕様に反映できる注文住宅は魅力的です。しかし、間取り・設備・仕様を決めるのに、合計数十時間以上の打ち合わせが必要になることも珍しくありません。育児と仕事の両立で忙しい共働き世帯にとって、この時間負担は家づくりの大きなネックになるでしょう。
対する建売住宅は、完成したプランや住まいを見ながら購入を判断できるため、時間をかけずに具体的な暮らしをイメージできます。設備や仕様もおおかた決まっているので、検討プロセス自体も短時間でスムーズに進行。実際の空間を確認しながら、住みやすさにつながるポイントをチェックできるので、限られた時間でも後悔しにくい住まい選びが可能です。
忙しくても無理なく理想に近い家探しができる点も、建売住宅がタイパを重視する共働き世帯に支持される理由です。
03建売住宅が“お金の面”でも選ばれる理由
建売住宅は、資金計画の面でも共働き世帯から支持されています。どのような点で支持されているのか、具体的に解説しましょう。
土地の価値が残るから、将来の資産計画が立てやすい
建売住宅を含む戸建ての強みといえば、購入価格の多くを占める土地の資産価値が、相対的に残りやすい点にあります。タカマツハウスが2025年に行った調査では、戸建て住宅購入予定者のうち81.7%が資産価値を重視すると回答しており、戸建て住宅を優良資産としてとらえる傾向がうかがえます。
マンションの場合、価格の多くを占める建物部分は築年数とともに価値が下落しやすいうえ、管理状況や大規模修繕計画によって、将来的なコスト負担が左右されるリスクも抱えています。一方、建売住宅の資産のベースは土地なので、将来の売却や住み替えも視野に入れやすいのが特徴で、長期的な家計戦略にも組み込みやすいといえます。
共働き世帯は「子どもの成長」「転勤」「親の介護」など、住み替えの可能性も十分にあるため、資産価値を保ちやすい建売住宅は、安心感のある選択肢となるのです。
マンションより総支出が読みやすく、家計管理と相性がいい
マンションに住んでいると、管理費・修繕積立金・駐車場代などを毎月支払わなければなりません。築年数が経過すると、管理費や修繕積立金が値上がりすることも珍しくなく、将来にわたる固定費が見通しにくいという問題があります。
これに対し、戸建てには共用部分がないため、毎月の固定支出は比較的シンプルです。固定資産税や都市計画税は毎年課税されますが、極端に金額が変動することはほとんどありません。また、購入時も建売住宅は「土地+建物の総額」があらかじめ提示されており、注文住宅のように予算オーバーになるリスクも少ないでしょう。
教育費・車の維持費など支出の多い共働き世帯にとって、固定費が安定しやすい建売住宅は、家計管理と相性のよい住まいといえます。
ただし、建売住宅でも定期的な修繕は必要なため、ご自身で将来に渡った修繕計画を別途立てておきましょう。
04建売住宅を選ぶなら“資金計画の見える化”で安心を手に入れよう
新築マンションに代わり、共働き世帯の家選びにおける新たなスタンダードになりつつある「建売住宅」。間取り・収納量・家事動線などがあらかじめ最適化されており、すぐに快適な暮らしをスタートできるのが大きな魅力です。
建売住宅はコストパフォーマンスにも優れていますが、そのメリットを最大限に活かすには「無理のない返済計画」を立てることが欠かせません。事前に月々の返済額や総返済額を把握しておき、予算オーバーや家計の圧迫を防ぎましょう。
毎月の返済額や総支払額を把握したい場合は、金利ランキングを確認しながら、返済額や総支払額まで一度に確認できる最新金利ランキングを活用してみましょう。自分たちがどれくらい金融機関から借りられるのかを知りたい場合は、借入可能額がすぐに分かる「スゴ速住宅ローン保証審査」や「SBIアルヒの家探し前クイック事前審査」の利用がおすすめです。
建売住宅の購入を検討しているなら、シミュレーションを通じて「自分たちの返済力」を事前に明確にしておくことで、安心して住まい選びを進められるでしょう。
監修:新井智美
CFP®/1級ファイナンシャル・プランニング技能士
プロフィール
トータルマネーコンサルタントとして個人向け相談の他、資産運用など上記相談内容にまつわるセミナー講師を行う傍ら、年間100件以上の執筆・監修業務を手掛けている。






