住宅ローン、地方銀行でもついに変動金利を引き上げ 家計への影響は?

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日銀は消費者物価指数の高止まりなどインフレ傾向が続いていることを受けて、2024年7月末に追加利上げに踏み切りました。それを受けて、全国の地方銀行でも続々と貸出金利の基準となる「短期プライムレート(以下、短プラ)」を引き上げる動きがみられています。短プラの引き上げはすでにメガバンクやネット銀行の一部で広がりつつありましたが、今回の追加利上げによって全国の地方銀行へも波及した形です。 短プラが引き上げられることで、住宅ローンを組む人たちにどのような影響があるのでしょうか。この記事では地方銀行の短プラの引き上げ状況をまとめつつ、家計へ与える影響について解説します。

01日銀が8月に追加利上げを実施!全国の銀行で波及する短プラの引き上げ

日銀は7月31日に行われた金融政策決定会合で、従来は0~0.1%程度としていた政策金利(無担保コール翌日物レート)を0.25%まで引き上げることを決定しました。それによって、メガバンクやネット銀行がまず短プラの引き上げを行いましたが、その波は徐々に地方銀行にも広がっています。

そもそも、なぜ短プラが上がると住宅ローンに影響があるかというと、基本的に短プラと変動型住宅ローンの金利は連動しているからです。短期プライムレートとは、「金融機関が資金を貸し出すときに、業績のよい最優良企業に対して示す最優遇金利のうち、1年未満の短期貸出金利」のことを指します。一般的に変動型住宅ローンは主要銀行の短プラに1%程度の利率を上乗せして基準金利を決定し、そこから各金融機関が設定する優遇金利を差し引いて適用金利が決まるため、ベースである短プラが上がると金利も上昇するというわけです。

実際に、日銀の追加利上げの実施※を受けて、9月2日からメガバンクの三菱UFJ銀行、三井住友銀行、みずほ銀行の大手3行は短プラを年1.475%から年1.625%に引き上げることを発表しています。日本では長らく低金利政策が取られてきたこともあって、今回のメガバンクの短プラ引き上げはおよそ17年ぶりのことです。また、それに続いてりそな銀行も9月2日から短プラを年 1.725%から年 1.875%に引き上げ、10月1日よりローンの基準金利を見直すと発表しました。こうした動きは以下のように、ネット銀行にもすでに広まっています。

短プラの見直しを発表した主なネット銀行

金融機関名 変更前(年) 変更後(年) 改定幅(年) 実施日
SBI新生銀行 1.475% 1.625% +0.15% 2024年9月2日
楽天銀行 1.475% 1.625% +0.15% 2024年9月2日
住信SBIネット銀行 1.725% 1.925% +0.2% 2024年10月1日

また、以下のように短プラの引き上げだけでなく、変動型住宅ローンの基準金利引き上げを発表したネット銀行もあります。

変動型住宅ローンの基準金利の見直しを発表した主なネット銀行

金融機関名 変更前(年) 変更後(年) 改定幅(年) 実施日
auじぶん銀行 2.341% 2.591% +0.25% 2024年10月1日
ソニー銀行 1.807% 2.007% +0.2% 2024年8月1日
イオン銀行 2.470% 2.620% +0.15% 2024年10月1日
PayPay銀行 2.280% 2.430% +0.15% 2024年10月1日

日銀の追加利上げによる住宅ローンへの影響については、下記の関連記事で詳しく取り上げているので、興味がある方はこちらも参照してみてください。

日銀が追加利上げを実施!ついにメガバンクが変動型住宅ローン金利基準を引き上げに
[ニュース] 2024.08.07

02地方銀行にも広がる短プラの引き上げの動き

上述のように、すでにメガバンクを中心に日銀の利上げに伴う短プラや変動型住宅ローンの金利引き上げを始める金融機関が出ています。そうした動きに追随して、全国の地方銀行でも短プラの引き上げを実施するところが増えている状況です。

そこで以下では、当サイトの「住宅ローン保証審査」と提携している地方銀行を中心に、短プラを地域別にまとめました。なおデータは8月末時点のもので、まだ検討段階のところや当面引き上げる予定がない金融機関がある点にも留意してください。

北海道・東北地方

都道府県 金融機関名 変更前(年) 変更後(年) 改定幅(年) 実施日
北海道 北洋銀行 1.975% 2.125% +0.15% 2024年8月23日
岩手県 岩手銀行 1.975% 2.125% +0.15% 2024年9月2日
福島県 大東銀行 2.475% 2.675% +0.15% 2024年10月1日

関東地方

都道府県 金融機関名 変更前(年) 変更後(年) 改定幅(年) 実施日
茨木県 常陽銀行 1.975% 2.125% +0.15% 2024年9月2日
栃木県 足利銀行 1.975% 2.125% +0.15% 2024年9月2日
栃木銀行 ※2.050% ※2.200% +0.15% 2024年9月2日
群馬県 群馬銀行 1.975% 2.125% +0.15% 2024年9月2日
埼玉県 埼玉りそな銀行 1.725% 1.875% +0.15% 2024年9月2日
武蔵野銀行 1.850% 2.000% +0.15% 2024年9月9日
東京都 きらぼし銀行 2.025% 2.175% +0.15% 2024年9月2日
東京スター銀行 2.750% 2.900% +0.15% 2024年9月2日
※栃木銀行は貸出基準金利の変更

中部・近畿地方

都道府県 金融機関名 変更前(年) 変更後(年) 改定幅(年) 実施日
新潟県 第四北陸銀行 1.975% 2.125% +0.15% 2024年9月2日
岐阜県 十六銀行 1.975% 2.125% +0.15% 2024年9月2日
愛知県 名古屋銀行 1.975% 2.125% +0.15% 2024年9月2日
三重県 百五銀行 ※2.600% ※2.750% +0.15% 2024年10月1日
大阪府 池田泉州銀行 2.175% 2.325% +0.15% 2024年9月2日
※百五銀行は変動型住宅ローンの基準金利の変更

中国・四国・九州地方

都道府県 金融機関名 変更前(年) 変更後(年) 改定幅(年) 実施日
岡山県 中国銀行 1.975% 2.125% +0.15% 2024年9月2日
広島県 広島銀行 1.975% 2.125% +0.15% 2024年9月2日
香川県 百十四銀行 1.975% 2.125% +0.15% 2024年9月2日
愛媛県 愛媛銀行 2.425% 2.575% +0.15% 2024年9月2日
福岡県 福岡銀行 1.975% 2.125% +0.15% 2024年10月1日

ご覧のように、変更後の金利や実施日は各金融機関で異なるものの、改定幅については一律0.15%であることがわかります。これは、日銀が7月末の金融政策決定会合で決定した0.15%の追加利上げと同値です。このことからも、住宅ローンの金利において、日銀の政策金利が大きな影響を与えていることがわかるでしょう。そのため、これから住宅ローンを組む予定の人は、日銀の金融政策に関するニュースにも敏感になっておいたほうが無難です。

また、こうした動きは地方銀行よりも一般的に資本的規模が小さい信用金庫や信用組合にも拡大しつつあります。そこで、次段落では信用金庫や信用組合で起きている短プラ引き上げの動きについて紹介します。

03信用金庫や信用組合なども短プラ引き上げの動きあり

信用金庫で短プラの引き上げを発表した金融機関には、京都信用金庫や尼崎信用金庫が挙げられます。具体的な引き上げ幅と実施日などについては以下のとおりです。

金融機関名 変更前(年) 変更後(年) 改定幅(年) 実施日
京都信用金庫 2.800% 2.950% +0.15% 2024年9月2日
尼崎信用金庫 1.900% 2.050% +0.15% 2024年9月2日

ネット銀行や地方銀行に比べると、信用金庫で短プラを引き上げたところは多くありませんが、時間の問題でやがて引き上げる金融機関は増えていくでしょう。また、JAと労働金庫についてはどちらも基準金利を引き上げる動きは今のところありません。これは、JAは長期プライムレート、労働金庫は労金プライムレートを基準として、それぞれ変動型住宅ローンの金利が決まっているからだと考えられます。ただし、いずれにせよ日銀の政策金利の影響は受けるため、インフレが続く状況が長引けば長引くほど金利リスクが高まることは覚えておいてください。

04短プラ引き上げによる家計への影響は?

住宅ローンを組んでいる人にとって、変動型の金利上昇につながる短プラの引き上げは決して喜ばしいものではありません。しかし、その一方でネット銀行や地方銀行の大半が短プラの引き上げと同時に普通預金の金利を引き上げており、場合によっては政策金利の上昇が家計にプラスの影響をもたらす可能性があることは頭に入れておきましょう。

みずほリサーチ&テクノロジーズ※が2027年度までに政策金利が2.8%へ上昇したケースを試算したところ、金利上昇にともなって家計の住宅ローンの利払い負担は増すものの、預金や有価証券といった金融資産からの利子・配当収入も増加し、全世帯平均では年間トータルで最大7.7万円のプラスが見込まれるとのことです。

ただし、この試算はあくまでも全世帯平均であり、負債保有世帯に限定したシミュレーションではやはりマイナスの影響が大きく、特に低・中所得者層や若年者層で金利上昇のデメリットが生じやすいことも指摘されているので注意してください。

例えば、最もマイナスの影響が大きくなると予想されているのは資産形成が十分に進んでいないうえ、住宅ローンなどの負債を借り入れて間もない30~39歳の世帯です。この世帯では、上述のシミュレーションで利子・配当収入が年間7.6万円増加する一方、住宅ローンの利払い負担増は年間63.1万円に達すると予想されています。

つまり、差し引きで年間55.5万円(1カ月当たり4.6万円)のマイナスです。そのため、変動金利型住宅ローンを利用する人は若者世帯を中心として、やはり金利上昇時のリスクについては常に意識しておかなければいけません。

変動型住宅ローンの多くに採用されている「5年ルール」や「125%ルール」が適用されれば急激に返済額が増えるリスクは減るものの、最終的に未払い利息が発生する可能性があります。これから住宅ローンを借り入れする場合は計画的な返済をしやすい固定型住宅ローンを検討するのも有力な選択肢になるでしょう。

05年収倍率は高くても7倍以内に抑えよう!まずは借入可能額を確認しよう

金利が上昇すると毎月の返済額が増えてしまうので、それを抑えるために35年以上という長期間の住宅ローンを利用する人も増えてきています。特に最近は若者需要を狙って最長50年の住宅ローンを扱う地方銀行が出てくるなど、各金融機関は金利のある世界への対応を進めている状況です。ただし、いくら変動型住宅ローンに5年ルールや125%ルールが適用されるとはいえ、返済期間が長くなればなるほど、合計で支払う利息は増える一方になります。

そのため、無理のない返済計画を立てるためにも、借入額は高くても年収の7倍以内に抑えておくほうがよいでしょう。近年の不動産価格高騰を受け、東京都区部における2023年のマンション1戸あたりの平均価格は平均年収のおよそ13倍となっています。いくら夢のマイホームを手に入れるためでも高額の住宅ローンを組んで返済が負担となり、毎月の暮らしが充実しなくなるのは本末転倒です。住宅価格が高騰している昨今では年収倍率が上がりやすいとはいえ、まずは自分の年収から7倍以内でどれくらい借り入れできるのかシミュレーションしたうえで、マイホーム探しを始めることをおすすめします。

当サイト内には、自分の年収からいくらまで借り入れできるかを簡単にシミュレーションできる「住宅購入予算シミュレーター」があるので、まずは試してみてはいかがでしょうか。また、審査に不安がある人は、物件を決める前にいくらまで借りられるかわかる「住宅ローン保証審査」、固定金利を希望する人はフラット35の事前審査を受けられる「ARHUIの家探し前クイック事前審査」がおすすめです。各種サービスを上手に利用して、理想のマイホーム探しにつなげてください。

新井智美

監修:新井智美

CFP®/1級ファイナンシャル・プランニング技能士

プロフィール

トータルマネーコンサルタントとして個人向け相談の他、資産運用など上記相談内容にまつわるセミナー講師を行う傍ら、年間100件以上の執筆・監修業務を手掛けている。

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