住宅ローン控除、お得なのはペアローンと連帯債務型!ただし注意点も

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これまで住宅ローン控除は、一定額の所得税や住民税の節税に役立つ制度として、多くの消費者に利用されてきました。しかし、そんな住宅ローン控除が2024年1月から大きく変わることをご存じでしょうか。これからの住宅ローン控除は、購入する住宅が省エネ基準に適合していることが必須要件になるうえ、控除上限も従来の制度に比べて減額されます。そのため、今後は今まで以上に制度を上手に活用することが求められるでしょう。 例えば、新しい制度では従来の制度に比べて、単独ローンよりもペアローンを活用したほうがお得になるケースも増えてきます。そこで今回は、住宅ローン控除を有効活用したい人に向けて、住宅ローンの選び方でどれくらい控除額が変わるか、また夫婦2人で住宅ローンを契約するときの注意点などを解説していきます。

012024年1月から変わる住宅ローン控除のルール

まず、大前提として2024年以降の住宅ローン控除では、省エネ基準に適合しない新築住宅(以下、その他の住宅)はそもそも制度を利用することができなくなりました。以下の表のように、これまで「その他の住宅」では制度を利用できる借入金の上限額が3000万円ありましたが、2024年以降に入居する場合は原則0円です。また認定住宅やZEH水準省エネ住宅、省エネ基準適合住宅も従来に比べて、借入金の上限額は500万~1000万円ほど減額されることになりました。

住宅ローン控除が適用される借入金の上限(新築住宅の場合)

住宅性能 2023年入居 2024年入居 2025年入居
認定長期優良住宅・認定低炭素住宅 5000万円 4500万円
ZEH水準省エネ住宅 4500万円 3500万円
省エネ基準適合住宅 4000万円 3000万円
省エネ基準に適合しない「その他の住宅」 3000万円 0円※
※2023年末までに建築確認を受けた場合2000万円。2024年6月末までに竣工済みの住宅については、省エネ基準に適合しない場合にも特例の適用がある場合あり

なお、中古住宅の場合は「その他の住宅」であっても2025年末まで現在と同様に2000万円の控除上限額が適用されますが、利用にあたっては諸要件をクリアしている必要があります。2024年以降の新しい住宅ローン控除の詳細について知りたい方は、以下の関連記事を参考にしてください。

住宅ローン減税、2024年~2025年に控除額引き下げ!省エネ基準非適合は対象外
[ニュース] 2023.10.06

022024年1月以降も「ペアローン」と「連帯債務型」が有利

ペアローンとは、夫婦それぞれで契約する住宅ローンの一種です。夫婦のどちらかが単独で契約するよりも高額の借り入れがしやすいほか、住宅ローンの契約が2本になることで、それぞれが住宅ローン控除の恩恵を受けることができます。

また収入合算の連帯債務型は、住宅ローンの契約者は夫婦どちらかの1本の契約ですが、主債務者ではないほうが連帯債務者となることでやはり高額の借り入れをしやすく、住宅ローン控除も夫婦ともに利用することが可能です。

このように住宅ローン控除では、これまでも単独ローンより夫婦2人のペアローンもしくは連帯債務型の住宅ローンを組む方が世帯単位で見たときの控除額の上限が増えていました。2024年1月以降の控除額の引き下げによって、今後は高額の借り入れをする予定の人が住宅ローンを組む場合、これまで以上にペアローンや連帯債務型を選んだほうがよいケースが増えてきます。

例えば、年収1000万円の夫(妻は専業主婦)が単独で6000万円の住宅ローンを借りる場合、住宅ローン控除の控除額は最大でも4500万円(認定長期優良住宅または認定低炭素住宅)しか適用されません。一方で、年収500万円ずつの夫婦が夫4500万円、妻1500万円で合計6000万円の住宅ローンを契約すれば全額控除の対象になる場合があります。

このように高額の住宅ローンを組む予定の人は、高収入のどちらか片方だけでなく、夫婦2人で住宅ローンを借りたほうが住宅ローン控除の恩恵を受けられる可能性は高いでしょう。ただし、どちらかの年収が極端に低い場合には十分な恩恵が受けられなくなる恐れがある点に注意してください。なぜなら、所得税や住民税は所得に応じて課税されるので、所得が少ない人は控除額が所得税を上回って上限額まで控除されないケースがあるからです。

また、連帯債務型では、団体信用生命保険に加入できるのは1人だけです(フラット35を除く)。そのため、団体信用生命保険に加入していない方が死亡もしくは高度障害になった際の保障を別途民間の保険などで確保しておく必要があります。

夫婦2人での住宅ローンの組み方には収入合算の「連帯保証型」もありますが、こちらは住宅ローン控除の対象ではありません。夫婦2人ともに住宅ローン控除の対象になるのは「収入合算の連帯債務型」なので、契約の際には金融機関の担当者によく確認しておくことをおすすめします。

03夫婦2人で住宅ローンを借りる際の注意点

上述のように、これからの住宅ローン控除では夫婦2人分の控除額を活用したほうが有利になることが増えてきます。しかし夫婦2人で住宅ローンを借りるにあたっては、いくつかの注意点があるため押さえておきましょう。

どちらかが仕事を辞めても返済の支払いは続く

夫婦2人で住宅ローンを組むときの注意点1つ目は、「片方が仕事を辞めたときのこともしっかり考えておくこと」です。

住宅ローン控除は年末時点での住宅ローン残高に控除率をかけて計算し、所得税や住民税の節税につながる制度です。ここでポイントになるのは、所得税や住民税は一定額以上の収入がある人しか対象にならない点です。つまり仕事を辞めて無収入になる人は、そもそも所得税や住民税がかからないので、住宅ローン控除で節税することはできません。

仮に将来的に夫婦の片方が仕事を辞める可能性がある場合は単独ローンのほうが節税できるケースもあるので、住宅ローンを組む前にライフプランについてもよく検討しておいてください。

また、どちらかが仕事を辞めたあとの住宅ローンの支払い方法についても注意が必要です。例えば、妻が退職して無収入になったあと、夫の収入や貯蓄から住宅ローンの支払いをすることもあるでしょう。仮にその金額が年間で110万円を超えた場合には、夫婦間のお金の移動であっても贈与税の対象になる可能性があるので、気を付けてください。

共有持分の割合と住宅ローン返済の負担割合を同じにしておく

夫婦2人で住宅ローンを組むときの注意点2つ目は、「住宅ローンの返済割合と登記上の共有持分を同じにしておくこと」です。

上述したように住宅ローン控除を有効活用するために夫婦2人で住宅ローンを組むときの方法としては、主に「ペアローン」と「連帯債務型」の2種類があります。しかし前者は、契約が2本分になるため手数料などのコストが高くなりがちなので、コストを抑えたい人は後者を選ぶケースが多いといえます。

連帯債務型の住宅ローンを組むときは住宅ローン控除の恩恵を受けるためにも、不動産の所有権はほとんどの人が共有名義を選びます。共有名義の不動産を所有すると、その所有権の割合を「共有持分」として、所有者間で自由に登記することが可能です。例えば、住宅ローンの返済負担額にかかわらず、登記上の所有権割合を夫と妻がそれぞれ1/2ずつにすることも認められています。

ただし、この共有持分は基本的に住宅ローンの負担割合と同じ割合にしておくことをおすすめします。なぜなら、連帯債務型の住宅ローンを組んだ不動産で、住宅ローンの負担割合と共有持分の割合が異なると贈与税が発生する可能性があるからです。

例えば、4500万円の連帯債務型の住宅ローンを夫2/3:妻1/3という負担割合で契約し、共有持分の割合を夫1/2:妻1/2で登記した場合を考えてみましょう。このケースでは実際に負担している住宅ローンは夫が3000万円(4500万円 × 2/3)、妻が1500万円(4500万円 × 1/3)です。しかし、共有持分の割合から考えると、本来負担すべき金額は夫も妻も2250万円(それぞれ4500万円 × 1/2)となります。

その結果、妻は本来負担すべき金額の2250万円より少ない1500万円の負担しかしていないとみなされ、差額の750万円は夫から妻への受贈金として贈与税の対象になる可能性があるというわけです。

04住宅ローンの適用金利より控除額が上回ったら繰り上げ返済も検討しよう

住宅ローン控除の今後の利用にあたっては、金利の動向にも気を付けておく必要があります。現在の日本では日銀の金融緩和政策によって、変動金利についてはいまだにかなり低い水準です。しかし、日銀は早ければ2024年5月ごろにも金融緩和政策を修正するのではないかといわれており、それに伴って変動金利も上昇する可能性があります。

住宅ローン控除の控除率は0.7%であるため、仮に変動金利が0.7%以上になった場合には、制度を利用して戻ってくる税金よりも金利の支払いが多くなるでしょう。そうなったときは住宅ローン控除の期間終了まで待たずに繰り上げ返済を行って住宅ローン残高を減らしたほうが、結果的に返済負担は軽くなることがあります。

例えば、住宅ローン残高3000万円で変動金利が1%まで上昇した場合を考えてみましょう。このケースで繰り上げ返済をしなかった場合の年間の金利負担額の目安は9万円(3000万円 ×(金利1% – 住宅ローン控除率0.7%))です。一方、500万円の繰り上げ返済をして住宅ローン残高を2500万円に減らした場合の年間の金利負担額の目安は7.5万円(2500万円 ×(金利1% – 住宅ローン控除率0.7%))になります。

もちろん繰り上げ返済にも手数料がかかるため、それとの比較検討は必要ですが、上記のケースでは繰り上げ返済をしたほうが年間1.5万円の金利負担軽減につながることが分かります。なお、住宅ローン控除は12月末時点での住宅ローン残高を元に計算するため、繰り上げ返済をするのであれば、控除額が確定した翌年1月に行うのが制度を賢く利用するためのポイントです。

05ペアローンまたは連帯債務型での住宅ローン借り入れを検討してみよう

2023年11月時点では消費者物価指数の2%以上の上昇などにより、日銀の金融緩和政策が2024年5月ごろにも修正されるのではないかと言われています。とはいえ、変動金利は低いままなので、現時点ではまだ住宅ローン控除の恩恵を受けられる状況です。2024年1月以降の入居については基本的に控除額が引き下げられるものの、少しでも制度をお得に利用しようと考えるなら、ペアローンや連帯債務型での借り入れを検討してみるとよいでしょう。

ただし、本文でも伝えたように、夫婦2人で住宅ローンを組むときは返済途中でどちらか片方が支払いできなくなるリスクを考えておく必要があります。そのため、ライフプランや団信などの保険の補償額も含めて、夫婦間でよく話し合っておきましょう。もしも、夫婦2人での住宅ローン審査に不安がある人は当サイト内にある「住宅ローン保証審査 Powered by 全国保証」で、事前にいくらまで借りられるかチェックしてみることをおすすめします。

また、当サイト内には金利の違いで月々の支払額がどれくらい変わるかを確認できる「毎月の返済額シミュレーター」、月々の支払額から予算を簡単に逆算できる「借入可能額シミュレーター」など、住宅ローンを借りたときのイメージをつかむのに役立つ各種シミュレーターもあるので、合わせてチェックしてみてください。

新井智美

監修:新井智美

CFP®/1級ファイナンシャル・プランニング技能士

プロフィール

トータルマネーコンサルタントとして個人向け相談の他、資産運用など上記相談内容にまつわるセミナー講師を行う傍ら、年間100件以上の執筆・監修業務を手掛けている。

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