【新築住宅】フラット35、省エネ基準を満たさないと利用できなくなる!?
新築住宅を建設・取得する際、多くの人に使われている長期固定金利の住宅ローン商品が住宅金融支援機構の「フラット35」です。 広く普及しているフラット35ですが、2023年4月以降、すべての新築住宅について省エネ基準が要件化されることになりました。つまり、フラット35が定める省エネ基準を満たす新築住宅でないと、フラット35を利用できなくなるということです。 これは、脱炭素社会の実現に向けた国の取り組みとして2025年度より実施される、全新築住宅に対する省エネ基準適合の義務化に先駆けて行われる制度変更です。 この記事では、フラット35の省エネ基準がどのように見直され、利用するにあたってどのような影響があるのかについて解説していきます。
01フラット35、2023年4月から省エネ基準が要件化!
国際的に脱炭素社会の実現が叫ばれる中、日本でも法整備が急がれています。住宅・建築物についても例外ではなく、2025年4月から新築住宅の省エネ基準適合が義務化される予定です。これに先駆け、2023年4月からフラット35を利用できる新築住宅の要件変更が予定されています。
フラット35は、民間金融機関と住宅金融支援機構が提携して提供する、最長35年の全期間固定型による住宅ローン商品です。35年にわたり返済金額が一定で返済計画が立てやすいことなどから、幅広い人に利用されています。
そんなフラット35ですが、先述のとおり2023年4月からすべての新築住宅について、省エネ基準を引き上げることが決定しています。従来であればフラット35の対象になった住宅でも、2023年4月以降新たに取得する場合には適用されなくなる可能性があるため注意が必要です。
フラット35の省エネ基準はどう引き上げられる?
2023年4月からフラット35の省エネ基準が引き上げられると紹介しましたが、具体的にはどのように変更されるのでしょうか。
現行の制度では、省エネ基準として「断熱等性能等級2相当以上」であることが求められています。断熱等性能等級2は1980年に制定された基準であり、制定されてから40年以上が経過しています。現在の技術水準からすれば省エネレベルは低いと言えることから、フラット35の性能基準が次のとおり引き上げられることになりました。
2023年4月からのフラット35における新築住宅の省エネ技術基準
次のいずれかを満たす住宅であること
- 断熱等性能等級4以上かつ一次エネルギー消費量等級4以上
- 建築物エネルギー消費性能基準
1つ目の断熱等性能等級4は2016年に改定された基準であるものの、1999年に制定された改定前の「次世代省エネ基準」とほぼ内容が変わっておらず、脱炭素社会を目指す先進国の中では最低レベルと言われています。
しかし、2023年4月以降にフラット35を利用する場合、従来の等級2クラスの住宅では適用範囲外となるため、新築住宅を建築・取得する際には、これまでよりも厳しい省エネ基準が求められるようになると言えるでしょう。
022022年10月、断熱等性能等級に「等級6」と「等級7」が創設
前項で紹介した断熱等性能等級とは、「住宅の品質確保の促進等に関する法律(品確法)」で規定された「省エネ性能」を表す基準のことです。等級が高いほど、対象となる建物の断熱性が高いことを表しています。
これまでは2016年に定められた「等級4」が最高等級でしたが、2022年4月に品確法の一部が改正され、「等級5」が新たに設定されました。等級5は「ZEH(ゼッチ)基準」と同等の水準であり、等級4よりも高い断熱性能が求められます。
さらに、国土交通省と消費者庁が2022年3月に「日本住宅性能表示基準」の一部改正を告示し、同年10月からより上位となる「等級6」および「等級7」が新設されました。これらの等級を満たすには、ZEH基準を上回る断熱性能が求められます。
断熱等性能等級 | 新設時期 | 基準の内容、特徴 |
等級1 | ― | 無断熱 |
等級2 | 1980年 | 40年以上前の基準であり省エネレベルは低い |
等級3 | 1992年 | ・一定の省エネ性能を確保することが求められる ・通称「新省エネ基準」 |
等級4 | 2016改定 ※最初の制定は2011年 |
・窓や玄関ドアといった開口部についての断熱も基準化 ・2011年制定後、2016年に改定されており、通称「次世代省エネ基準」 |
等級5 | 2022年4月 | 「ZEH基準」相当の断熱性能を求められる |
等級6 | 2022年10月 | 暖房・冷房に要する一次エネルギー消費量を30%程度削減できるレベルの断熱性能 |
等級7 | 2022年10月 | 暖房・冷房に要する一次エネルギー消費量を40%程度削減できるレベルの断熱性能 |
断熱等性能等級が上がると、家づくりにおいてどんな影響がある?
省エネ基準として求められる断熱等性能等級が上がると、家づくりにおいてどのような影響があるのでしょうか。メリット・デメリットをそれぞれ見ていきましょう。
断熱性能等級が上がることによる家づくりのメリット
- 過ごしやすい家になる
断熱性能が高いと、夏は涼しく、冬は暖かい快適な住まいになります。
- 光熱費が抑えられる
断熱性能が高い家では冷暖房を使用する頻度が下がるため、年間を通じて光熱費の削減が期待できます。
- 補助金を受けられる
省エネ性能が高い家は、国による補助金を受けられる場合があります。また、2022年からスタートした「こどもみらい住宅支援事業」など、省エネ要件が設けられている補助金制度もあり、省エネ性能が高いと手厚い補助を受けられるケースもあります。
- 住宅ローンの金利が安くなる
省エネ性能が高い家を取得する場合、それ以外の家よりも住宅ローンの金利が安くなることがあります。フラット35でも「フラット35S(ZEH)」など、省エネ住宅向けに優遇措置が受けられる制度を設けています。
- 家の資産価値が高くなる
断熱等性能等級が高い家は資産価値が高くなり、将来手放す際に高く売却できる可能性があるでしょう。
断熱性能等級が上がることによる家づくりのデメリット
- 初期費用が高くなる
高い断熱性能をクリアするには、高性能な断熱材や建材を使用する必要があるので、建築費用が高くなる傾向にあります。
- 施工できる会社が限られる
断熱性能等級の高い家づくりには専門的な技術や知識が求められるため、全てのハウスメーカーが施工できるとは限りません。依頼できる施工会社が限定されるのはデメリットと言えるでしょう。
- 家づくりに時間がかかる
断熱性能を高めるために工程が増えれば、当然工期も長くなります。また、たとえば長期優良住宅を建てる場合、認定を受けてから施工しなければならず、通常の住宅に比べて1週間〜1カ月、あるいはそれ以上時間がかかることもあるので注意が必要です。
省エネ性能が高い家ほど住宅ローン控除額も大きい!
住宅ローン減税は、2022年度から4年間の延長が決定しました。2022年度の税制改正後、現行の制度では10〜13年間、年末の住宅ローン残高の0.7%相当額が控除されます。省エネ性能が高い家だと、住宅ローン減税による控除額が大きくなる点も大きなメリットです。
2023年末までに新築住宅に入居する場合、控除対象となる借入限度額が通常の住宅で3000万円であるのに対し、省エネ基準適合住宅は4000万円、ZEH水準の省エネ住宅は4500万円となります。さらに、長期優良住宅や低炭素住宅であれば5000万円まで控除対象となります。
2024〜2025年になると、省エネ基準に適合しない住宅は住宅ローン減税の適用外となることが決まっています。長期優良住宅や低炭素住宅の上限額も4500万円に引き下げられるものの、省エネ性能が高い家であれば引き続き控除を受けられます。
03変動金利と固定金利、住宅ローン選びで迷っているならシミュレーションしてみよう
最長35年間、全期間固定型で借り入れられることで人気のフラット35ですが、2023年4月以降は現在よりも厳しい省エネ基準が要件化されます。これにより、利用にあたってのハードルは以前よりも上がると言えるでしょう。加えて、昨今の世界的なインフレの影響もあり、固定金利は上昇傾向にあります。
こうした背景から、住宅ローンを固定金利にするか変動金利にするか迷っている人も多いのではないでしょうか。もし金利タイプで迷っているなら、まずは住宅ローンのシミュレーションをしてみるのがおすすめです。
当サイトが提供する「毎月の返済額シミュレーター」を使えば、金利タイプ別にどのくらいの物件が購入できるのか簡単に試算ができます。また今支払っている家賃くらいで買える物件はどのくらいか知りたい人は「借入可能額シミュレーター」を試してみましょう。さまざまなシミュレーターを使えば、選ぶ金利によってどのくらい支払い総額が変わるのか把握できるようになります。
監修:新井智美
CFP®/1級ファイナンシャル・プランニング技能士
プロフィール
トータルマネーコンサルタントとして個人向け相談の他、資産運用など上記相談内容にまつわるセミナー講師を行う傍ら、年間100件以上の執筆・監修業務を手掛けている。
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