2031年以降に新築住宅の太陽光発電義務化!? 太陽光発電の現状とメリットとデメリットは?

2021.09.16 11

政府は2021年8月、温室効果ガスの排出を全体としてゼロにする「カーボンニュートラル」の達成を目指して、新築一戸建て住宅への太陽光発電設備義務付けについて検討することを表明しました。実現した場合、義務付けは早くとも2031年以降になると見られていますが、そもそも今の段階で住宅用の太陽光発電はどの程度普及しているのでしょうか?太陽光発電の設備のメリットやデメリットとあわせて確認しておきましょう。

01新築住宅の太陽光発電設備の設置義務化を検討へ

国土交通省と経済産業省、環境省の「脱炭素社会に向けた住宅・建築物の省エネ対策等のあり方検討会」では、2021年8月、「2050年カーボンニュートラルの実現に向けた住宅・建築物の対策」を取りまとめ、「脱炭素社会に向けた住宅・建築物における省エネ対策等のあり方・進め方」を公表しました。

2030年に目指すべき住宅・建築物の姿

その中で、省エネ性能の確保・向上による省エネルギーの徹底と、太陽光発電などの再生可能エネルギーの導入拡大により、「2030年に目指すべき住宅・建築物の姿」として省エネ、再エネの面から下記の二つが示されました。

  • 省エネ:新築される住宅・建築物についてはZEH・ZEB基準の水準の省エネ性能(※1)が確保される
  • 再エネ:新築一戸建て住宅の6割において太陽光発電設備が導入される

このうち、太陽光発電の活用については「将来における太陽光発電設備の設置義務化も選択肢の1つとしてあらゆる手段を検討し、その設置促進のための取組を進める」とし、今後、太陽光発電設備の設置義務化を検討する方針であることが明らかにされました。仮に義務化が決定された場合、2030年に目指すとしている「新築一戸建て住宅の6割に太陽光発電設備導入」を達成した後、つまり2031年以降にも義務化が行われるものとみられます。もちろん、今はまだ検討段階であり、義務化が決定したわけではありませんが、将来、一戸建て住宅の新築を考えている人は、議論の行方に注目しておく必要があります。

※1 再生可能エネルギーなどを除いた一次エネルギー消費量を、住宅については現行の省エネ基準値から20%削減、建築物については用途に応じて30%または40%削減(小規模の場合は20%削減)するという省エネ性能

02住宅用太陽光発電の現状は?

では、今の段階で住宅用太陽光発電はどの程度、普及しているのでしょうか?

一般社団法人太陽光発電協会の報告(※2)よると、住宅用太陽光発電設備の新規導入件数は、2012~2014年度には年平均約31万件で推移していましたが、その後減少に転じ、2019年度には約15万件に落ち込んでいます。特に、ここ数年は既存住宅への導入件数が減少傾向にあり、新規導入件数のうち新築住宅への導入件数と既存住宅への導入の割合は、8:2となっています。

また、普及率で見てみると、全一戸建て住宅のうち太陽光発電設備が導入されている住宅の割合は約9%にとどまっており、普及率の伸びは低調と言わざるを得ない状況が続いています。

※2 出典:一般社団法人太陽光発電協会「太陽光発電の状況」P3、P4

03住宅用太陽光発電のメリットとデメリット

では、なぜ住宅用太陽光発電の普及は進んでいないのでしょうか?太陽光発電のメリットとともに、普及のブレーキとなっていると思われるデメリットについても、改めて確認してみましょう。

メリット

電気代を節約できる

太陽光発電設備で発電した電力を自宅で使用できるため、電力会社から購入する電力の量を抑えることができ、電気代が節約できます。

売電による収入を得ることができる

設置から10年間は発電した電力のうち、自宅で使わない余剰分を電力会社に販売し、収入を得ることができます。太陽光発電で得た電力の買い取り価格は国の「固定価格買い取り制度(FIT)」によってパネルを設置した年やパネルの出力に応じて定められており、2021年度の住宅用太陽光発電(出力10kWh未満)の買い取り価格は19円/kWhです。つまり、2021年から10年間は、1kWhあたり19円を維持したまま、売電することができるということです。

例えば年間6000kWhの電力を太陽光発電で発電し、そのうち80%にあたる4800kWhを電力会社に売電した場合、9万1200円(=4800kWh×19円)の収入を得られることになります。

停電時も電力が使える

自然災害や電力会社のトラブルで停電してしまった場合も、太陽光発電により発電した電力を使うことができます。

設備を長く利用できる

太陽光発電の設備は高額ですが、構造がシンプルで動作する箇所も少ないため、故障が少なく、長く使えるのもメリットの1つとされています。メーカーにもよりますが、太陽光パネルには一般的には20年以上の出力保証がついているケースも珍しくありません。

地球環境保全に貢献できる

太陽光発電による電力を使うことが一次エネルギー(石油・石炭・天然ガス等の化石燃料などのエネルギー)の消費量削減につながり、結果として地球環境の保全や、国の掲げるカーボンニュートラルの実現に貢献できます。

断熱効果が得られる

屋根にパネルを設置することにより、直射日光の熱から屋根が守られるため、夏は家の中の温度上昇を防ぐことができます。逆に冬には家の中の温かい空気が屋根から出ていってしまうのを防ぎ、家の中の温度低下を防いでくれます。

デメリット

初期費用がかかる

太陽光発電に必要なパネルの面積や形状は、設置する屋根の形状や面積に応じて変わるため、太陽光発電設備は原則としてオーダーメイドであり、設備の購入や工事費用はパネルの面積や出力数によって異なりますが、総額200万円以上に上ることも珍しくありません。自宅を新築・購入する際に太陽光発電設備を設置する際には、自宅の新築・購入費に加えて設置費用の分も予算に入れて計画を立てる必要があります。

売電価格が低下傾向にある

国の固定買い取り価格、いわゆる売電価格は年々低下傾向にあり、2021年度の19円/kWhは10年前の半額以下となっています。この先も売電価格が高騰することは考えにくいので、「電力を売って稼ぎたい」という目的だけで自宅に太陽光発電設備を設置すると、期待通りの収入を得られないおそれもあります。

メンテナンス費用がかかる

太陽光発電設備は、長く安全に使うために定期的なメンテナンスが推奨されています。メンテナンスの費用や推奨頻度はメーカーによって異なるので、購入・設置前にメンテナンス費用の目安をメーカーに確認して比較検討するようにしましょう。

04ZEH住宅なら補助金も

国は冒頭に紹介した「2050年カーボンニュートラルの実現に向けた住宅・建築物の対策」の中で、太陽光発電の活用を推進するための施策として「ZEHへの融資・税制の支援の拡充」を掲げています。ZEHはネットゼロエネルギーハウスの略で、簡単に言うと省エネ・断熱・創エネ(エネルギーを自ら作り出すこと)によって「年間のエネルギー収支ゼロ」を目指す家のこと。国では2018年に閣議決定された「第5次エネルギー基本計画」で「2030年までに新築住宅の平均でZEHの実現を目指す」との目標を設定し、その推進に力を入れています。ZEHの実現には太陽光エネルギーによる発電=創エネが欠かせないことから、今後ZEHが増えていけば、それに伴って太陽光発電の普及率も伸びていくものと考えられます。

なお、国ではZEH推進を目的に、ZEHの定義を満たす住宅を新築・取得・改修する人を対象にした補助金制度を設けているので、マイホームの新築・取得に際して太陽光発電設備の設置を検討している人は、太陽光発電だけでなく省エネ・断熱性能も兼ね備えたZEHを検討してみるのも良いでしょう。

補助金の額はZEHの性能によって次のように異なります。

ZEH

一次エネルギーの消費量を省エネ基準より20%以上削減する住宅のこと。

補助金額:60万円/戸+α

対象となる住宅に蓄電システムを導入する場合は、2万円/1kWh、もしくは補助対象経費の1/3か20万円のいずれか低い額が加算されます。

ZEH+

一次エネルギーの消費量を省エネ基準より25%以上削減するのに加え、断熱性のさらなる強化と電気自動車などを導入している住宅のこと。

補助金額:105万円/戸+α

ZEH補助金を受けるためには様々な条件があり、補助金申請のスケジュールも年ごとに定められています。詳細はZEH補助金事業を運営する一般社団法人環境共創イニシアチブのホームページで確認してください。

05マンションでの普及状況は?

一戸建て住宅に設置されるイメージが強い太陽光発電ですが、一部ではマンションへの設置も進んでいます。マンションでの太陽光発電設備の設置の方法には、大きく分けて次の2つがあります。

個人が自家用に小型パネルを設置する

マンションの区分所有者または賃貸人が個人的に太陽光発電装置をベランダやバルコニーなどに設置、発電した電気を自家用に使用するケースも見られます。ただし、ベランダやバルコニーは原則としてマンションの共用部分なので、管理規約によってはパネルの設置ができない場合もあります。設置後にトラブルにならないように、設置の可否を管理組合に確認してから設置するようにしてください。

管理組合がマンションの共用部分にパネルを設置する

最新の新築マンションでは、マンションの屋上や駐車場・駐輪場の屋根などに管理組合が太陽光発電設備を設置し、発電した電力を主に共用部分の照明や冷暖房の電力として活用するケースも増えています。今はまだ導入事例は多くありませんが、マンション開発事業者を対象にしたZEH補助金が整備されたこと、災害時の予備電力としての価値が注目されていることなどから、導入件数は今後増加していくものと考えられます。

06住宅購入時の検討材料の1つに

日本ではまだ普及率が伸び悩んでいる太陽光発電ですが、今後、脱酸素社会に向けて国による住宅・建築物の省エネ・再エネ対策の取り組みが強化されることによって、新築住宅では普及が一気に進むものと考えられます。今回報道されたように2031年度以降、新築一戸建て住宅への太陽光発電設備の設置が義務化される可能性もあります。義務化されると、一戸建てでは、太陽光発電設備設置が標準的なものになっていきます。資産価値を保つという面からも、新築をする場合は太陽光発電設備を設置も検討しておくと良いかもしれません。

実際に住まいの購入を検討するときは、物件が決まっていなくても、住宅ローンの審査が可能で、借入可能額がわかる「スゴ速」を利用してみてください。

相山華子

監修:相山華子

ライター、OFFICE-Hai代表、2級ファイナンシャル・プランニング技能士

プロフィール

1997年慶應義塾大学卒業後、山口放送株式会社(NNN系列)に入社し、テレビ報道部記者として各地を取材。99 年、担当したシリーズ「自然の便り」で日本民間放送連盟賞(放送活動部門)受賞。同社退社後、2002 年から拠点を東京に移し、フリーランスのライターとして活動。各種ウェブメディア、企業広報誌などで主にインタビュー記事を担当するほか、外資系企業のための日本語コンテンツ監修も手掛ける。20代で不動産を購入したのを機に、FP(2級ファイナンシャル・プランニング技能士)の資格を取得。金融関係の記事の執筆も多い。

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