2022年度の税制改正で住宅ローンの控除額が少なくなる!? 恩恵を受けるにはいつまでに契約が必要?
2022年度の税制改正により、住宅ローン控除は控除額が見直される公算が高くなっています。現行制度の恩恵を受けるためには、いつまでに何をしておけば良いのか、事前に確認しておきましょう。 12月10日に発表された税制改正に関する最新情報はこちら!(2021/12/13 公開)
01住宅ローン控除とは?
住宅ローン控除(正式名称「住宅借入金等特別控除」)は、個人が住宅ローンを利用してマイホームを新築・取得・増改築などした場合に、以下の要件を満たせば、一定期間の間、年末時点でのローン残高の1%(原則最大40万円)が所得税から差し引かれ、還付される制度です。
住宅ローン控除の主な適用要件
- 返済期間が10年以上のローンであること
- 新築又は取得の日から6カ月以内に入居し、適用を受ける各年の12月31日まで引き続いて住んでいること
- 新築又は取得をした住宅の床面積が50平方メートル以上であり、その2分の1以上が自らの居住用であること(ただし、2021年度の税制改正で床面積の要件が一部変更)
- 特別控除を受ける年分の合計所得金額が、3000万円以下であること
- 生計を一にする親族などからの購入でないこと
控除の適用期間が延長
現行の制度では、控除期間は最長10年間ですが、消費税の8%から10%への引き上げに伴い、2019年10月1日~2020年12月31日までに消費税10%が適用されるマイホームを取得・新築して入居した場合は、控除期間が10年間から13年間に延長される特例措置が取られました。その後、コロナ禍の影響で入居が遅れた人も特例措置が受けられるよう「新型コロナウイルス感染症等の影響に対応するための国税関係法律の臨時特例に関する法律(通称、新型コロナ税特法)」が制定され、控除期間13年の特例の適用期間が1年間延長されました。
さらにその後の2021年度税制改正でも再延長され、その結果、当初は2020年12月31日までだった入居の対象期間が2年間延長され、2022年12月31日までとなっています(※1)。
※1 出典:財務省「住宅ローン減税制度の概要」
なお、2021年度税制改正による控除期間13年間の特例を受けるには、次の要件を満たす必要があります。
2021年度税制改正による適用要件
- 注文住宅は2021年9月30日までに契約締結済みであること
- 分譲住宅・既存住宅・増改築は2021年11月30日までに契約締結済みであること
- 2022年12月31日までに入居すること
なお、いずれの場合も控除期間のうち最初の10年間については年間の控除上限額は40万円(長期優良住宅などの場合は50万円)ですが、11~13年目については、控除限度額は次の「1」と「2」のうち、いずれか少ない方が適用されることになります。
- 年末残高(上限5000万円)×1%
- 住宅取得価格―消費税(上限5000万円)×2%÷3
床面積の要件が「40平方メートル以上」に緩和
2021年度の税制改正では住宅ローン控除について、適用期間延長だけでなく適用要件の緩和も行われました。これまで住宅ローン控除の対象となる住宅は床面積が50平方メートル以上の住宅に限られていました。
しかし、2021年度の税制改正により、控除期間13年間の特例措置が受けられる人、つまり消費税率10%が適用される住宅を取得する人については、40平方メートル以上の住宅も控除の対象とされることになりました。ただし、この床面積の要件の緩和が適用されるのは、その年の合計所得金額が1000万円以下の人に限られます。
所得制限があるとはいえ、これまで住宅ローン控除の適用対象外だった50平方メートル未満のコンパクトマンションや小型住宅なども対象となることから、住宅ローン控除の適用範囲が拡大したといえます。
02住宅ローン控除の控除率が見直される?
このように2021年度の税制改正では住宅ローン控除制度の拡充が盛り込まれましたが、2022年度の税制改正では一転して恩恵が少なくなる可能性があります。その背景にあるのが、住宅ローン控除のいわゆる「逆ザヤ」問題です。
近年、日本ではマイナス金利政策の影響で住宅ローンの金利が著しく低下しています。金融機関の金利引き下げ競争も激化しており、住宅ローン控除の控除率である1%よりも低い金利の住宅ローンが数多く登場しています。逆ザヤ問題とは、控除率の1%よりも低い金利の住宅ローンを借りて住宅ローン控除を受けた場合、毎年の住宅ローン控除額が金利支払い額を上回り、実質的にマイナス金利で住宅ローンを借りていることになることです。
国の予算が適正に使われているかどうかを監視する機関である会計検査院は、「平成30年度決算結果報告」の中で、この逆ザヤ問題に言及し、「必要がないのに住宅ローンを組む動機づけになったり、住宅ローン特例の適用期間が終了するまで敢えて住宅ローンの繰り上げ返済をしない動機づけになったりすることがある」との懸念を示しました(※2)。
※2 出典:会計検査院「平成30年度決算結果報告概要」P3~4
これを受けて自民党・公明党が2021年度の税制改正大綱で「ローン年末残高の1%を控除する仕組みについて、1%を上限に支払利息額を考慮して控除額を設定するなど、控除額や控除率のあり方を2022年度税制改正において見直すものとする」と明記したことから(※3)、2022年度の税制改正で控除額や控除率が引き下げられる可能性が高いとみられているのです。
※3 出典:令和3年度税制改正大綱(抄録)P11
2021年12月13日追記:
2021年12月10日に、税制改正にともなう控除制度の変更内容が決定されました。
03現行制度の恩恵を受けるにはどうすべき?
現行制度の恩恵を確実に受けるためには、控除適用要件となっている以下の期間内に、マイホームの新築・取得・増改築の契約を締結しなくてはなりません。
契約時期:新築注文住宅=2021年9月30日、分譲住宅・既存住宅・増改築=2021年11月30日まで
入居時期:2022年12月31日まで
ただし、控除率や控除額の引き下げが決定したわけではなく、現状でわかっているのは、あくまでも2022年度の税制改正で議論される可能性が高いということです。また、総選挙の結果次第で、税制改正が昨年同様のスケジュールで進むかどうかも現時点では不透明です。
したがって、確実に現行制度の恩恵が受けたいという場合は契約を急ぐべきですが、そうでなければ住宅ローン控除制度の改正だけに左右されることなく、慎重に判断したいものです。
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監修:相山華子
ライター、OFFICE-Hai代表、2級ファイナンシャル・プランニング技能士
プロフィール
1997年慶應義塾大学卒業後、山口放送株式会社(NNN系列)に入社し、テレビ報道部記者として各地を取材。99 年、担当したシリーズ「自然の便り」で日本民間放送連盟賞(放送活動部門)受賞。同社退社後、2002 年から拠点を東京に移し、フリーランスのライターとして活動。各種ウェブメディア、企業広報誌などで主にインタビュー記事を担当するほか、外資系企業のための日本語コンテンツ監修も手掛ける。20代で不動産を購入したのを機に、FP(2級ファイナンシャル・プランニング技能士)の資格を取得。金融関係の記事の執筆も多い。