駐車場付きマンションでも要注意?購入前に必ず確認しておきたい駐車場のこと
マンションの駐車場は、物件によって種類や利用条件が異なり、場合によっては駐車場を利用できないこともあります。マンションの完成前には見ることができないため、駐車場を利用したい場合は、内覧会などの機会を利用して駐車場について確認しておくことが大切です。今回はマンションの駐車場の種類やそれぞれのメリットとデメリット、注意点などについて紹介します。
01マンション内覧会、駐車場のチェックも忘れずに
マイカーを持っている人にとって、駐車場の有無はマンション選びの重要なポイントです。多くの自治体が条例でマンションの規模に応じた駐車場の設置率を定めていますが、すべての住戸それぞれに1台分の駐車場が付いている設置率100%の物件はあまり多くはありません。広告などに「駐車場あり」と表示されている物件でも、必ず駐車場が利用できるわけではないということです。新築マンションの場合は、設置率が100%でない場合、希望者が多いと入居者間で抽選が行われることが一般的です。抽選で当選しても、ずっと使用できるところばかりではなく、期間を決めて契約期間終了前に改めて抽選するというマンションもあります。敷地内の駐車場を利用できない場合は、近隣の駐車場を借りることになります。
また、後述のとおり、マンションの駐車場にはさまざまな種類があり、必ずしも自分にとって使い勝手の良い駐車場が備わっているとは限りません。新築マンションの場合は、建物完成後にしか実際の駐車場の様子を見ることはできないので、駐車場の利用を検討している場合は、必ず購入検討者対象の内覧会などで駐車場の利用方法、種類や広さ、使い勝手などを確認する必要があります。
02駐車場設置率は減少傾向に
首都圏では近年、マンションの発売戸数のうち、用意されている駐車場の台数の割合を示す駐車場設置率は著しく低下しています。株式会社不動産経済研究所の調査(※1)によると、首都圏の新築分譲マンションの駐車場設置率は2007年の77.3%をピークに下落が続いており、2017年上半期には42.2%にまで落ち込んでいます。50戸のマンションだと21台程度の駐車場しか用意されていないということです。特に東京23区は設置率が低く、2017年は29.5%でした。
車離れが指摘され、環境意識の高まりやカーシェアリングの普及などを背景に車を所有しない人は増えてくると考えられることから、不動産経済研究所では「マンションの駐車場設置率は引き続き緩やかに低下し続ける」と分析しています。そうなると、「敷地内駐車場が使えること」をマンション探しの必須条件とした場合、希望通りの物件を見つけるのは難しくなってしまうかもしれません。駐車場付きのマンション購入を検討している人はそうした状況も頭に入れておくことが必要です。
03分譲と賃貸で異なるマンションの駐車場
マンションの駐車場は原則として共用部分であり、ほとんどの場合はマンションの管理組合が希望者に有料で貸し出す仕組みとなっています。駐車場を利用する人は、駐車場使用料を管理組合に支払い、使用料は管理組合の収入となります。
一方、数は少ないのですが、部屋と一緒に駐車場も分譲されるマンションもあります。この場合、その駐車場は共有部分ではなく購入者の専有部分となるので管理組合に使用料を支払う必要はありませんが、その代り、駐車場分の購入費、不動産登録税、固定資産税、駐車場の管理費などが自己負担になることに注意が必要です。
04マンション駐車場の種類とそれぞれのメリット・デメリット
マンションの駐車場には、大きく分けて次の3つの種類があり、物件によっては複数の種類が併用されている場合もあります。駐車場付きのマンションを探す場合は、どの種類の駐車場が採用されているのかを確認し、種類ごとのメリットとデメリットをよく比較検討した上で判断するようにしましょう。
平面駐車場
マンションの敷地内の土地の一部を駐車場としたもので、平置き駐車場とも呼ばれます。
メリット
- 比較的駐車しやすく車の出し入れがスムーズ
- 一般的にはさまざまな車種の入庫が可能
- メンテナンス費用がほとんどかからないため、管理組合から見ると他の種類の駐車場に比べ管理に関わるコストが低い
デメリット
- 他の種類の駐車場に比べ外部から侵入しやすく防犯性が劣る
- 屋根がないことが多く、車が汚れやすい。雨の日は乗り降りの際に濡れやすい
自走式駐車場
機械を使わず、自動車を運転して出入りする立体駐車場のこと。マンションの場合、敷地内に別棟(駐車棟)として設置されるケース、マンションの地下階に設置されるケースがあります。
メリット
- 比較的駐車しやすく車の出し入れがスムーズ
- 屋根や壁があり、車が汚れにくく、雨を避けられる
- 防犯性が優れている
デメリット
- 駐車場から自室までの移動に時間がかかるケースがある
- 別棟に設置されている場合、最上階には屋根がないケースがある
機械式立体駐車場
機械を使って車を出し入れするタイプの駐車場で、エレベーターのような装置で車を上昇させて収容する「タワー式」と、1台分の駐車スペースを多層化して車を乗せるパレットを上昇または横移動させて収容する「多段式」などがあります。
メリット
- 狭い土地でも多数の車を収容でき、他の車との接触の心配もない
- 車の出し入れに操作が必要なため、地上に接するところの車以外は盗難やいたずらのリスクが低い
デメリット
- メンテナンスのコストがかかる
- 車の出し入れに時間がかかる
- 駐車できる車のサイズに制限がある
05機械式立体駐車場の注意点
このようにマンションごとに駐車場の種類は様々で、それぞれメリットとデメリットがありますが、特に機械式立体駐車場には注意が必要です。機械の誤作動による事故のリスクがあることと、さらに管理組合(居住者)に経済的な負担をもたらすリスクがあるからです。
機械式立体駐車場は他の種類の駐車場に比べてメンテナンスのためのランニングコストが高く、修繕積立金の額に影響する可能性があり、さらに駐車場の利用者が減ってしまうと、駐車場使用料でそれらのコストを賄えなくなり居住者側の持ち出しとなってしまいます。駐車場を利用するかどうかにかかわらず、機械式立体駐車場のあるマンションの購入を検討する際は、こういったリスクも把握した上で判断するようにしたいものです。
監修:相山華子
ライター、OFFICE-Hai代表、2級ファイナンシャル・プランニング技能士
プロフィール
1997年慶應義塾大学卒業後、山口放送株式会社(NNN系列)に入社し、テレビ報道部記者として各地を取材。99 年、担当したシリーズ「自然の便り」で日本民間放送連盟賞(放送活動部門)受賞。同社退社後、2002 年から拠点を東京に移し、フリーランスのライターとして活動。各種ウェブメディア、企業広報誌などで主にインタビュー記事を担当するほか、外資系企業のための日本語コンテンツ監修も手掛ける。20代で不動産を購入したのを機に、FP(2級ファイナンシャル・プランニング技能士)の資格を取得。金融関係の記事の執筆も多い。
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