物件見学で防犯性の高さをチェック!進化するマンションのセキュリティ事情
一戸建て住宅に比べてセキュリティ面で優れていると言われるマンションですが、当然ながら100%安全というわけではなく、空き巣などの侵入窃盗、侵入強盗などの被害が後を絶ちません。 また、近年ではストーカーやSNS上のトラブルなど、プライバシー侵害に関係する犯罪も頻発していることから、マンションの購入の際にセキュリティを重視する人も増えています。今回は犯罪被害に遭いやすいマンションの特徴を探るとともに、最新のセキュリティ事情、マンション選びでチェックしたいポイントなどをご紹介しましょう。
01犯罪者に狙われやすい住宅は?
日本では住宅への侵入窃盗の認知件数は減少傾向にあり、警察庁の調査によると2019年の侵入窃盗の認知件数は前年比7.9%減の5万7808件と17年連続で減少しています(※1)。侵入窃盗全体のうち、店舗や事務所などを除いた住宅への侵入窃盗も減少しており、2018年は前年比8.2%減の2万8936件でした。とはいえ、まだ1日あたり約79件もの住宅が侵入窃盗の被害に遭っていることになり、決して数が少ないというわけではありません。
侵入窃盗の発生場所として最も多いのが、「一戸建て住宅」で全体の43.9%に上っています。マンションなどの「共同住宅」は、「3階建て以下」が10.7%、「4階建て以上」が4.1%で階数が低い住宅の方が侵入窃盗の被害に遭いやすいことがわかりました。
なお、侵入窃盗の手口として最も多いのは「空き巣」で全体の33%、夜間に家人が就寝したころを見計らって侵入する「忍び込み」が13.7%、家人が食事や昼寝をしている隙に侵入する「居空き」が2.5%でした。つまり、全体の16.2%は在宅中の犯罪であり、家人が在宅中に犯罪者がこっそり住宅内に忍び込んで金品を盗んでいることになります。
また、凶器などを示して家人を脅して金品を強奪する「侵入強盗」の認知件数もここ数年は減少傾向にあり、2019年は前年比20%減の461件、発生場所は「商店」が最も多く、全体の46%を占めました。住宅では「一戸建て」が最も多く、全体の20.2%。共同住宅(4階建て以上)が8.5%、共同住宅(3階建て以下)が6.3%となり、侵入強盗の場合は階数が高い方が被害に遭う可能性がやや高くなっていることがわかります。
侵入口として最も多かったのは一戸建てと3階建て以下の共同住宅では「窓」で、それぞれ全体の57%と36.9%を占めました。4階建て以上の共同住宅では「表出入り口」が最も多く、全体の57%に上っています。
侵入犯罪者の侵入口(多い順)
1位 | 2位 | 3位 | |
一戸建て | 窓 | 表出入り口 | 非常口 |
共同住宅(3階建て以下) | 窓 | 表出入り口 |
非常口 |
共同住宅(4階建て以上) | 表出入り口 | 窓 | 非常口 |
窓からの侵入が難しい4階建て以上の共同住宅の場合は、窓からではなく表出入り口や非常口から侵入するケースが多く、高層階のマンションでも侵入窃盗や侵入強盗の被害に遭う可能性が決して低くないことがよくわかります。特に高層階のマンションでは、「窓から入ってこられるわけがない」という思い込みから窓を施錠していない人も多いため、屋上や非常階段から目当ての部屋のベランダに侵入してしまえば、居室への侵入は困難ではありません。ベランダから居室に侵入して金品を盗み、何食わぬ顔で玄関から逃走するというケースも報告されています。
出典 ※1:警視庁「住まいる防犯110番」
02マンションの基本的なセキュリティ
マンション選びの際にセキュリティ面を重視する人は多く、そのニーズに応えるための設備やサービスを備えたマンションが増えています。セキュリティのレベルは物件によって異なりますが、一般的な分譲マンションであれば、以下の設備やサービスを備えているケースが多いようです。
オートロック
オートロック付きのマンションは、建物の出入り口にある共用玄関が常時施錠されており、居住者が鍵や暗証番号などを用いるか、居住者に内側から開錠してもらわないと、建物内に入ることができないため、高い防犯効果が期待できます。
防犯カメラ
敷地の入り口や共用玄関、ロビーやエレベーターなどに設置することによって、万が一、犯罪が起きた場合に証拠となる映像を記録できるだけでなく、犯罪の抑止効果も期待できます。
有人管理
マンションのロビーに管理人やコンシェルジュ、警備員などがいることで常に人の目があることによる犯罪の抑止効果が期待でき、住民の安心感も増します。
モニター付きドアフォン
インターフォンが鳴ったときに、共有玄関や居室前に誰がいるのかをモニターで確認した上で開錠できるシステムです。知らない人を誤って建物や居室に入れてしまうリスクを避けることができます。
これらのセキュリティ設備・サービスは、最近の新築分譲マンションでは、もはや標準仕様と言っても過言ではありません。特にオートロックの普及は著しく、総務省の「平成30年住宅土地統計調査(※2)」によると、2018年現在、オートロック式の共同住宅の棟数は全国に32万9100棟と、10年前の2008年(20万3400棟※3)に比べて12万件以上増えていて、およそ38%のマンションがオートロック付きとなっています。
出典:
※2 総務省「平成30年住宅土地統計調査」第156表
※3 総務省「平成20年住宅・土地統計調査」第38表
03進化するマンションのセキュリティ
マンションのセキュリティは日々進化しています。特に高級分譲マンションには、次のような最新のセキュリティ設備やサービスが備わっている物件が多くみられます。
フロアセキュリティシステム
各居住者が所有する非接触キーや非接触カードでしか、玄関ドアの開錠やエレベーターの操作ができないようにするシステムです。万が一建物内に不審者が侵入しても、エレベーターを操作できないので、居室フロアへの立ち入りができません。
24時間常駐警備
一部の高級マンションでは、管理人やコンシェルジュのほかに24時間体制で警備員が常駐している物件もあります。警備服に身を包んだ警備員がエントランスを始めとした館内を巡回・警備することによる防犯効果も期待できます。
エレベーター内防犯カメラ
エントランスやロビーだけでなく、エレベーターの内部にも防犯カメラを設置、管理人室等で内部の様子を常時確認できるようにしている物件も増えています。密室であるエレベーター内に防犯カメラを設置することで、トラブルや犯罪の抑止効果が期待できます。
ディンプルキー
住宅への侵入犯罪の手口として「合鍵」が使われることも珍しくなく、警察庁の「住まいる防犯110番」によると、3階建以下の共同住宅への侵入犯罪の手口のうち全体の8.8%が、4階建以上の共同住宅の場合は16.6%が「合鍵」による侵入でした。職場や出先で不用意に放置した鍵を知らぬ間に複製され、侵入されてしまうケースもあるようです。こういった背景から、最近のマンションでは、ディンプルキーを採用するところが増えています。ディンプルキーは鍵の表面に大きさや深さが異なる凹凸が複数つけられているカギで、複製やピッキングが難しいため、一般的な鍵に比べて防犯性が高いと言われています。
スマホ連動の人感センサー
各居室の玄関などに人感センサー付きの電灯(人の気配を察知すると自動的に点灯する電灯)を設置、留守中にセンサーが作動すると居住者のスマホに通知が届くシステムを導入している例もあります。留守中に玄関に近づいた人の有無を確認できるほか、家族の帰宅を把握するのにも便利です。また、玄関に近づくと突然点灯するため、侵入者を驚かせ、侵入をあきらめさせる効果も期待できます。
04物件を決める前に、セキュリティはここをチェック!
マンションのセキュリティ設備については、必ず広告や物件パンフレットなどで確認するほか、物件見学やモデルルーム見学時に必ず自分自身の目で確かめ、不明点は不動産業者の担当者に確認し、説明を受けましょう。
また、玄関やロビーだけでなく、モデルルームの見学ではわからない、屋上や自転車置き場、駐車場などのセキュリティも必ず担当者に聞いてチェックします。特に以下のポイントに着目して実際の設備を見てみましょう。
屋上
- 屋上への出入り口にドアがあるか、施錠されているか
- 屋上に柵がなく、居室のバルコニーに侵入できるようになっていないか
自転車置き場
- 照明や防犯カメラはあるか
- 駐輪場の内部が外から見えない構造になっていないか
- サイクルラックなどの防犯設備があるか
- 自転車置き場の建物がベランダに侵入する「足場」とされるおそれはないか
駐車場
- 居住者以外の車が容易に入れる構造になっていないかどうか
- 照明や防犯カメラはあるか
ごみ置き場
- 照明や防犯カメラはあるか
- ごみ置き場の建物がベランダに侵入する「足場」とされるおそれはないか
- 適正に管理されているか(ごみを他人に荒らされるおそれがないか)
柵や塀など
- 柵や塀、植栽と建物との間が死角になっていないかどうか
- 柵や塀がベランダに侵入する「足場」とされるおそれはないか
- 高さは十分か(容易に乗り越えられないか)
セキュリティ面で大切なのは、設備やサービスだけではありません。現地の状況をチェックしておくことが必要です。モデルルームが現地と離れている場合は、必ず実際にマンションが建てられる地域に足を運び、周辺の人通りや交通量、街灯の有無、治安の状態などを確認することが大切です。できれば自身や家族の通勤や通学の時間帯に出向いて、通勤・通学路の様子を確認しておくと安心です。
監修:相山華子
ライター、OFFICE-Hai代表、2級ファイナンシャル・プランニング技能士
プロフィール
1997年慶應義塾大学卒業後、山口放送株式会社(NNN系列)に入社し、テレビ報道部記者として各地を取材。99 年、担当したシリーズ「自然の便り」で日本民間放送連盟賞(放送活動部門)受賞。同社退社後、2002 年から拠点を東京に移し、フリーランスのライターとして活動。各種ウェブメディア、企業広報誌などで主にインタビュー記事を担当するほか、外資系企業のための日本語コンテンツ監修も手掛ける。20代で不動産を購入したのを機に、FP(2級ファイナンシャル・プランニング技能士)の資格を取得。金融関係の記事の執筆も多い。
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