新築マンションの平均価格4年連続上昇が背景に?高まる一戸建て志向

2021.04.28 11

首都圏を中心に、一戸建て住宅への人気が高まっています。その背景にあると言われているのが、ここ数年の新築マンション価格の上昇と新型コロナウイルスによる生活様式の変化です。今回は、新築マンション価格の上昇や生活様式の変化が住まい選びに具体的にどのような影響を及ぼしているかを検証してみましょう。一戸建てとマンション、それぞれのメリットとデメリットについても確認します。

01マンションの平均購入価格が過去最高に

不動産専門のデータ会社・東京カンテイの「マンションデータ白書2020」によると、首都圏の新築マンションの平均価格は6055万円で1956年の調査開始以来、初めて6000万円を超えました。前年から2.6%、4年連続の上昇となり、新型コロナウイルスの感染の拡大にもかかわらず上昇傾向が続いています(※1)

<首都圏新築マンションの価格推移>

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※1出典:東京カンテイ「マンションデータ白書2020

一方、株式会社リクルート住まいカンパニーが2020年1月~2020年12月に首都圏(東京都・神奈川県・埼玉県・千葉県)で新築分譲マンションの購入契約者5139人を対象に行った「2020年首都圏新築マンション契約者動向調査(※2)」によると、2020年に首都圏で購入した新築分譲マンションの平均専有面積は、「70~75㎡未満」が最も多く全体の36.1%、次いで「60~70㎡未満」が27.3 %、「75~80㎡未満」が9.5%となりました。2001年の調査では22.5%だった専有面積70㎡未満の割合が2020年には、倍近い44.5%にまで増えています。平均専有面積も67.3㎡と、2001年以降最も小さくなっていることがわかりました。

※2出典:リクルートすまいカンパニー「2020年首都圏新築マンション契約者動向調査

新築マンション、価格上昇の理由は?

では、首都圏ではなぜ、購入するマンションの専有面積が小さくなっているのに、価格は上昇しているのでしょうか?

その理由については、主に以下のような点が指摘されています。

東京オリンピックの影響

2021年夏に開催される予定の東京オリンピック関連の施設の建設やインフラの整備で工事が増えたことから、土地や建設資材の価格、工事にかかる人件費が高騰、その影響でマンションの価格も上昇していると言われています。

立地の良い物件を好む共働きカップルの増加

購入者に共働き世帯が増えていることも、マンション購入価格の上昇に影響を与えていると言われています。「首都圏新築マンション契約者動向調査」で契約世帯主の属性を調べたところ、購入者全体における既婚共働き世帯の割合は72.1%と、2001年の調査開始以来最高に。

<マンション購入者における共働き世帯の推移>

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世帯総年収が1000万円を超える共働き世帯が全体の44.3%に上り、共働き世帯の平均年収は1044万円でした。夫婦のうちどちらか一方だけの収入では手が届かない高価格の物件も、夫婦2人で協力し合えば購入が可能になり、結果として平均購入価格の上昇につながっていると考えられます。

<共働き世帯の年収分布>

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実際、同調査によると、共働き世帯のおよそ49.3%がペアローン(夫婦それぞれで組むローン)を利用しています。

続く低金利

日銀の金融緩和政策に伴う市場金利の低下を受け、各金融機関とも住宅ローン金利の低い状態が続いています。金利が下がると毎月の返済額や総返済額が抑えられるため、借入金額を増やすことができ、結果として購入価格の上昇に繋がっていると考えられます。

東京オリンピック後は土地や建築資材、人件費の高騰が一段落することから、新築マンション価格の上昇も緩やかになるのではないか、もしくは低下するのではないかと言う声も聞かれますが、その一方で、共働き世帯の増加や金融緩和政策による低金利はこの先も続くとみられていることから、特に首都圏では新築マンション価格が急激に下がることはないという見方も有力です。

02新築一戸建て、中古マンションが人気に

マンション価格の上昇を受けて、注目を集めているのが、新築一戸建て中古マンションです。

株式会社リクルート住まいカンパニーが首都圏で2020年1月~12月に新築分譲一戸建ての購入契約者3345人を対象に行った「首都圏新築分譲一戸建て契約者動向調査」(※2)によると、マイホームの購入にあたって「新築一戸建てのみを検討した人」は全体の39.3%と、ここ数年上昇傾向にあり、新築一戸建てとマンションなど他の種類の住宅と並行検討する人の割合が減っていることがわかりました。

一戸建ての人気が高まっている背景には、マンションの価格と比較した時の割安感もありそうです。この調査によると、新築一戸建ての平均購入価格は3825万円と、前年に比べて約80万円安くなっています。平均価格が6000万円を超えた新築のマンションは無理でも、一戸建てなら手が届くかもしれないと、価格の上昇が続く新築分譲マンションの購入をあきらめて一戸建ての検討をする人が増えているのかもしれません。

(※2)出典:2020年首都圏 新築分譲一戸建て契約者動向調査

緊急事態宣言以降、購入意識や検討の内容に変化も

また、新型コロナウイルスによる生活様式の変化も、一戸建て人気の一因と考えられています。同調査によると、新築分譲一戸建てを購入した理由として「もっと広い家に住みたかったから」と答えた人は、1回目の緊急事態宣言期間(2020年4月7日~5月25日)とほぼ重なる2020年4月~6月は38.5%、続く7月~9月は38.7%、10月~12月は37.9%と、いずれも緊急事態宣言前の1月~3月(34.7%)を上回りました。

逆に物件を選ぶ上で重視した項目として、「最寄り駅からの距離」、「通勤アクセスの良いエリア」を挙げた人は、それぞれ56.6%(前年比-0.8%)、30.9%(同-3.7%)と、いずれも前年を下回りました。緊急事態宣言を機に在宅ワークや在宅学習のために自宅で過ごす時間が増えた影響で、交通の利便性や職場へのアクセスよりも、ストレスなく過ごせる広さやゆとりを重視する人が増え、結果として、新築分譲マンションより広くて価格の安い一戸建てを選ぶ人が増えたものと考えられます。コロナ禍を機に、オフィスに毎日通うことが前提のワークスタイルから在宅勤務も選べるワークスタイルへのシフトが進めば、一戸建て志向はますます高まっていく可能性があります。

なお、新築分譲一戸建て購入にあたっては、小規模開発の分譲地が選ばれる傾向にあり、同調査では21区画以上の大規模分譲地で購入した人の割合は前年より2ポイント少ない9%にとどまり、1~5区画の小規模開発の分譲地で購入する人が59%と、過半数を超えたことも明らかになりました。東京23区に限ると、1~5区画の分譲地での購入割合は75%を占めています。

また、新築マンションの価格上昇を受け、中古マンションの人気も高まっています。前述の「2020年首都圏新築マンション契約者動向調査」によると、2020年に新築分譲マンションを購入した人のうち、マイホーム選びにあたって新築分譲マンションと中古マンションを並行検討した人は全体の51.7%に上り、2003年以降で初めて半数を超えました。一般的に中古マンションは、立地や広さなどの条件が同じでも新築分譲マンションよりも販売価格が安いので、「新築は無理でも、中古で良い物件が見つかるかもしれない」と考え、中古マンションを購入候補として検討する人が増えているものと考えられます。
ただ、中古マンションの平均価格も前述の東京カンテイ「マンションデータ白書」によると、2014年から7年連続で上昇し、2020年は前年比2.7%の上昇となる3487万円となりました。同社では「新築マンション価格が根強く上昇を続けたこと、新築マンションの供給が新型コロナウイルスの影響による販売自粛などで大きく減少したことで中古マンション市場が住宅購入の受け皿になった」と分析しています。ここでもマンション価格上昇の影響が及んでいます。

03一戸建てとマンション、それぞれのメリットとデメリット

このように一戸建ての人気が高まっていますが、住宅選びでは価格だけが決め手ではないことに注意が必要です。一戸建てとマンションには、それぞれ主に次のようなメリットとデメリットがあり、一概にどちらのほうが良いと断定はできません。どちらかを選ぶ際には価格だけでなく、自分や家族にとってデメリットを許容するに値するメリットがあるかどうかについても、十分に検討する必要があります。

一戸建てのメリット

一戸建てには下記のようなメリットがあります。

  • マンションのような管理規約や管理組合がないので住まい方や建物の使い方に関する制限がなく、ペットの飼育や自宅の事務所利用なども自由
  • 騒音トラブルが少ない
  • 管理費や修繕積立金を支払わなくて良い
  • 敷地内にスペースがあれば駐車場代がかからない

一戸建てのデメリット

一方で下記のようなデメリットもあります。

  • 一般的に防犯面がマンションよりも脆弱。セキュリティサービスを利用する場合は費用が自己負担となる
  • 建物の維持管理や修繕は自分で行わねばならず、費用は自己負担となる
  • 一般的にマンションに比べ駅から離れた場所にあることが多い
  • 管理人がいないため、近所とのトラブルなどにすべて自分で対応しなくてはならない

マンションのメリット

マンションには下記のようなメリットがあります。

  • 共用部の管理や清掃、建物の修繕は管理会社に任せられる
  • 24時間ゴミ出しが可能な場合が多い
  • 室内がフラットで高齢者にも住みやすい
  • オートロックが導入されているケースが多く、セキュリティ面で一戸建てより優れている
  • 物件によっては便利な共用施設(ライブラリーやキッズルームなど)が利用できる
    物件によってはコンシェルジュサービスが受けられる

マンションのデメリット

一方で下記のようなデメリットがあります。

  • 管理規約や管理組合による制限を受ける
  • 上下左右の部屋と騒音や振動のトラブルになりやすい
  • 管理費や修繕積立金を毎月支払わねばならない
  • 近隣地域との関係が希薄になりやすい
  • 駐車場を利用する場合は原則として別途利用料がかかる

マンションよりも価格が安いからと言って、安易に一戸建てを選んでしまうと、後々「こんなはずではなかった」と後悔することになりかねません。一戸建てとマンション、それぞれのメリット・デメリットをよく比較検討した上で、自分や家族のライフスタイルに適したマイホームを選ぶようにしましょう。

相山華子

監修:相山華子

ライター、OFFICE-Hai代表、2級ファイナンシャル・プランニング技能士

プロフィール

1997年慶應義塾大学卒業後、山口放送株式会社(NNN系列)に入社し、テレビ報道部記者として各地を取材。99 年、担当したシリーズ「自然の便り」で日本民間放送連盟賞(放送活動部門)受賞。同社退社後、2002 年から拠点を東京に移し、フリーランスのライターとして活動。各種ウェブメディア、企業広報誌などで主にインタビュー記事を担当するほか、外資系企業のための日本語コンテンツ監修も手掛ける。20代で不動産を購入したのを機に、FP(2級ファイナンシャル・プランニング技能士)の資格を取得。金融関係の記事の執筆も多い。

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