20代でもマンションを購入したほうがよい?必要な年収と注意すべきポイント

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できるだけ早くから生活基盤を整えたい、あるいは資産形成を始めたいと考える人が増えています。20代でまだ年収が低くても、マンションを購入することはできるのでしょうか。今回は20代でマンションを購入するうえで必要となる年収や注意すべきポイントについて解説します。

0120代でもマンションは購入できる?

結論から言うと、20代で住宅ローンを組むことは可能です。住宅金融支援機構の「住宅ローン利用者調査」によると、2023年4月から10月までに住宅ローンを借り入れた人の18.7%が20代でした。過去数年単位で見ても12~15%の間で推移しているため、若いうちから住宅を購入する方は一定数存在することがわかります。

多くの金融機関では住宅ローンの借入要件を「20歳以上」と設定されており、返済能力さえあれば年齢がネックになることはありません。

ただし、一般的に20代のうちはまだ収入も低く、預貯金も少ないのが現実です。実際のところ、年収の低さはローン審査でのマイナス要素となってしまいます。さらに、20代だと将来の状況があまりに不透明です。結婚や転職、子どもの誕生などによって、購入したいマイホームの条件も変わってくるでしょう。

したがって、どうしても20代のうちにマイホームを手に入れたい場合は、将来起こりうるライフイベントなどを想定したうえで年収に見合った購入予算を設定し、無理のない借入額での住宅ローンを組む必要があります。

0220代でマンションやマイホームを購入する人の割合

実際にマイホームを購入した人のうち、20代の人の割合はどれくらいでしょうか。国土交通省の「住宅市場動向調査報告書(令和4年度版)」によると、マイホームの種類ごとでの20代購入者の割合は次のようになっています。

【住宅購入者(一次取得者)における20代の割合】

  • 注文住宅(新築) … 15.6%
  • 分譲戸建て住宅 … 15.2%
  • 分譲集合住宅  …  9.0%
  • 中古戸建住宅  …  7.4%
  • 中古集合住宅  …  8.5%

購入者の割合で見ても12~15%ほどで推移しているので、先ほど説明した住宅ローン利用者調査の結果(住宅ローン利用者の12~15%前後が20代)とほぼ一致します。

20代のうちはまだ将来的な不確定要素が多いにもかかわらず、新築の注文住宅や分譲戸建て、分譲マンションを購入する人も比較的多いようです。

03マンションを初めて購入する場合の購入資金と年収の目安

20代のマンション購入で大きな課題となるのが、年収の低さと自己資金の少なさです。年収に対する購入価格の倍率を「年収倍率」といいますが、一般的な目安として年収倍率は5~7倍程度が適正とされています。ここ最近は都市部における不動産価格高騰の影響で、年収倍率が10倍以上でのマンション購入も増えています。しかし、あまりに身の丈に合わない高額マンションの購入はリスクが大きいでしょう。

20代にとって現実的な年収倍率がどれくらいか、利用者の多い「フラット35」のデータを参考に見てみましょう。住宅金融支援機構の「2022年度フラット35利用者調査」によると、新築マンションの年収倍率、平均価格の割合は以下の通りです。

【新築マンション購入者の平均年収倍率】

世帯年収(平均)
購入価額(平均)

年収倍率
全国 844.2万円 4848.4万円 7.2倍
首都圏 821.6万円 5327.7万円 7.8倍
近畿圏 832.0万円 4973.9万円 7.3倍
東海圏 909.6万円 4434.9万円 6.4倍
その他の地域 872.9万円 4018.5万円 6.2倍

※2022年4月から2023年3月までのフラット35利用者の集計

首都圏は新築マンションの平均価格が1億円を超える東京23区も含まれているため、他のエリアに比べて年収倍率が高めです。20代の平均収入が300万円未満であることを考えると、新築マンション購入のハードルはなかなか高いといえます。

0420代でマンションやマイホームを購入しておくメリット

20代のうちからマンションやマイホームを購入する上でのメリットについて解説しましょう。

返済期間を長く組めるため、月々の返済が楽になる

20代でマンションを購入する最大のメリットは、返済期間を長期間に設定できる点です。返済期間が長くなると毎月の返済額を減らすことが可能となり、無理のない家計のやりくりを実現できます。

無理のない返済かどうかは、「返済負担率」で判断します。「返済負担率」とは、「年収に占める年間返済額の割合」のこと。一般的に額面収入の15%前後、手取り収入の20%以下で余裕のある家計のやりくりができるとされます。

返済期間が長期間になればなるほど1カ月当たりの返済額は減りますので、手取り収入の20%以下という数字はそれほど難しい数字ではありません。将来的に結婚や子育てなどで費用がかかってきますから、20代から住宅ローンを組む場合は返済負担率をできるだけ低めに設定したほうが無難です。

早めに返済が終わるため、老後の貯蓄に回せる期間が長くなる

20代のうちから返済を開始すれば、早めに返済が終わります。仮に35年間の返済だとしても定年退職前には完済できるでしょう。ローン完済後は住居費が浮きますので、定年退職後の資産形成へ向けて十分な老後資金を確保できます。

また、住宅ローンの繰り上げ返済が可能です。住宅ローンの返済期間そのものを延長することはできませんが、繰り上げ返済によって返済期間を短縮することができます。ローンの返済期間を調整しやすい点も、20代でローンを組む際の大きなメリットです。

賃貸物件に払う金額が少なく済む

早めにマイホームを購入することにより、生涯における賃貸期間を短くできます。宅地建物取引業協会連合会による「一人暮らしに関する意識調査(2018年)」によると、20代の一人暮らしの家賃平均は5.7万円、年間の賃料平均は約70万円でした。新築マンションの一次取得者の平均年齢は39.9歳ですので、仮に大卒1年目23歳から40歳まで賃貸で暮らした場合の賃貸費用を計算すると、1260万円=18年×年間家賃平均(約70万円)となります。

結果として、1200万円を超える住居費が賃料に消えていることが分かります。これだけの費用があれば、新築マンション購入費用の頭金や手付け金などを十分支払うことができるはずです。同じ住居費でもマンション購入費用であれば自分の資産となるので、できるだけ賃貸期間を短くしたほうが長期的な資産形成には有利です。

0520代でマンションやマイホームを購入する際のデメリット・注意点

20代でマイホームを購入する際のデメリットや注意点についても解説します。

結婚、出産、離婚、転勤などによってライフプランが変わる可能性がある

20代の段階では、将来どのような家族構成になるのか、転職や転勤があるかなどが未知数です。結婚や出産、離婚など、ライフプランが全く読めないうちにマイホームを購入してしまうリスクは大きいと言わざるを得ません。

マイホームはいったん購入してしまうと、安易な理由で転居できなくなります。マイホームを手放せないことが足かせとなって、自由なキャリアを形成できなくなるのは本末転倒でしょう。

また若いころは理想の住まいだったとしても、高齢になっても快適に過ごせるとは限りません。20代のうちに購入した住まいが、長く住み続けられないケースも考えられます。

返済期間を長くすると利息負担が重くなる

返済期間を長くすることで月々の返済負担を抑えることができますが、トータルで見た場合に利息の支払い分は増えてしまいます。返済期間が長期になると利息の発生期間も伸びてしまうので、利息の支払い分はそれだけ大きくなってしまうのです。

また、同じ住宅ローンであっても返済期間によって金利が変わります。例として「フラット35」の金利基準を期間ごとに比較してみましょう。

金利の範囲(融資率9割以下)
フラット20(借入期間20年以下) 年1.360%~年2.970%
フラット35(借入期間21年以上35年以下) 年1.840%~年3.450%
フラット50(借入期間:36年以上50年以下) 年2.200%~年2.670%

もちろん金融機関によって条件は異なりますが、ほとんどの住宅ローンで返済期間が長期間になればなるほど金利は上がる傾向です。このように、長期ローンを組む場合は利息の支払い分の負担が重くなる点に注意しましょう。月々の返済負担だけでなく、トータルでお得な住宅ローンとなるかを比較して検討することが大切です。

借入可能額が低い

20代は年収が低く、預貯金もあまりありません。自己資金を十分用意することができないので、頭金や手数料なども住宅ローンに含めた借り入れに頼りがちです。頭金や手数料の合計は物件価格の20%近くになることを想定すると、マンションに購入に充てられる借入可能額の上限は下がってしまいます。

借入可能額の上限が下がると、物件選びでも妥協を迫られます。特に新築マンションは価格上昇の傾向が続いていますので、予算が限られてしまうと立地や間取りをグレードダウンせざるを得ません。

同じ20代でも勤続年数が2~3年経つと、年収が300万円台になる可能性もあります。25歳以降に年収ベースが上がってくると自己資金も用意できますので、借入先となる金融機関の選択肢も一気に増えるでしょう。選択肢の限られる状況のまま、あわててスペックの低いマンションを購入しないように気をつけてください。

06まとめ

20代でのマンション購入では、月々の返済負担を少なくできるなどのメリットのある一方、ライフプランの変化に対応しにくい、年収の低さがネックとなって借入上限が低くなるなど、デメリットもあります。

どれくらいの予算があって住宅ローンはいくら借りられるかなど、しっかりとシミュレーションをしたうえで購入計画を立てることが大切です。当サイトの住宅ローンシミュレーションを活用して、ぜひ理想のマイホームを見つけましょう。

新井智美

監修:新井智美

CFP®/1級ファイナンシャル・プランニング技能士

プロフィール

トータルマネーコンサルタントとして個人向け相談の他、資産運用など上記相談内容にまつわるセミナー講師を行う傍ら、年間100件以上の執筆・監修業務を手掛けている。

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