申込証拠金とは?手付金との違いを解説
マンションや戸建て住宅などの購入を申し込むと、多くの場合、不動産業者や売主に「申込証拠金」の支払いを求められます。申込証拠金は必ず支払わねばならないのでしょうか?またいったん支払うと返還してもらえないのでしょうか?今回は申込証拠金の概要と手付金との違い、注意点について詳しく解説します。
01申込証拠金とは?
申込証拠金とは、マンションや戸建て住宅など不動産の購入を申し込む際に、申し込みの意思を明確に示すために、売主や売買契約を仲介する不動産業者に支払うお金のことで、「予約金」もしくは「申込金」とも呼ばれます。申込証拠金は法的な定めがあるものではないため、金額についても決まりはなく、一般的には1万~10万円くらいであることが多いようです。
申込証拠金は必ず支払わなければならないものではありませんが、支払うことによって、他の購入希望者よりも優先して物件を売ってもらえる可能性が高くなることが期待できます。例えば、もう少し詳しく物件について調べたい場合や購入資金調達に時間がかかる場合、住宅ローンの審査の結果を待たねばならない場合に、申込証拠金を支払っておくことで、その物件が他の人に売られないように一時的に押さえてもらうことができるのです。ただし、一般的な有効期間は1週間から10日程度です。
一方、売主は購入希望者に申込証拠金の支払いを求めることによって、「冷やかし客」対策をすることができます。本気で購入する気がない人に口先だけで安易に申し込みをされ、キャンセルをされてしまうと、本当に購入を希望する買主を逃してしまうおそれがあります。このため、売主は申込証拠金を支払ってもらうことによって、購入希望者の本気度を確認し、安易な申し込みやキャンセルを防ぐ効果を期待しているのです。
なお、申込金は、あくまでも一時的に売主や仲介の不動産業者に預けているだけのお金であり、物件購入の「前払い金」ではありません。したがって、購入申し込みをキャンセルした場合は原則として全額が返還されることになります。
02申込証拠金と手付金の違い
申込証拠金と同じく、不動産売買の決済前に支払うお金として「手付金」があります。しかし、申込証拠金と手付金は、まったく別の意味合いのお金であり、支払いタイミングや法的拘束力も異なります。申込証拠金と手付金を取り違えると売主と買主の間でトラブルに発展してしまうので、相違点をしっかり確認しておきましょう。
支払いのタイミング
申込証拠金:購入申し込みの意思を示すもので、契約前に支払う
手付金:売買契約締結時
目的
申込証拠金:購入申し込みの意思表示として、他の人に売られないように買主から売主に支払う。契約前は購入代金の一部にはならない。
手付金:契約の証として買主から売主に支払う。購入代金の一部になる。
金額の目安(相場)
申込証拠金:物件価格に関わらず1~10万円程度。法的な制限はない。
手付金:物件価格の5~20%程度。物件価格の20%を超える手付金を受け取ることは法律で禁じられている。
法的拘束力
申込証拠金:なし。あくまでも一時的に預けているお金であり、売主は別の顧客に物件を売ることができる
手付金:あり。宅地建物取引業法により効力が保証されている。手付金を支払った際には、すでに契約が成立しているため、その後のキャンセルは「解約」扱いとなる。
買主の事情で解約した場合、手付金は解約金として扱われるため、買主には戻らない。
売主事情で解約した場合、手付金の2倍の額を買主に支払わねばならない。
なお、売主が不動産業者(宅地建物取引業者)の売買契約において、手付金の金額が物件価格の10%(未完成物件の場合は5%)を超える場合、もしくは1000万円を超える場合は、売主の不動産業者に手付金の「保全措置」の義務が生じます。
保全措置とは、不動産の売買契約後に売主の不動産業者が倒産して物件の引き渡しができなくなったときに備えて、手付金を買主に返還できるように講じておく措置のことで、具体的には「不動産業者と金融機関などの間で保証委託契約または保証保険契約を結ぶ」、「指定保管機関と委託契約を結び手付金の保管を委託する」などの措置がとられます。なお、申込証拠金の場合は、金額がいかに高額になったとしても、このような保全措置の義務は生じません。
03申込証拠金が返還されないことはある?
先にも述べたとおり、申込証拠金は購入の意志の証として購入希望者から売主に一時的に預けられるだけのお金であり、購入申し込みをキャンセルしたときには原則として全額が売主から買主に返還されることになります。
ただし、購入申込金を支払った後に正式にその物件の購入を決め、売買契約を締結する場合には、売主や不動産業者に預けていた申込証拠金が手付金や印紙税など契約にかかる諸費用、もしくは購入代金の一部に充てられる場合もあります。
04申込証拠金に関する注意点
ここまで見てきたとおり、申込証拠金には法的な拘束力や取り決めがなく、金額にも制限がありません。購入希望者と売主との間で自由に金額を決められる手軽さがある一方、規制がないが故に「キャンセルしたのに、申込証拠金が返還されない」「不動産業者に事務手数料という名目で、一部を差し引かれてしまった」というようなトラブルも発生しています。申込証拠金をめぐるトラブルに巻き込まれないために、支払う際には買主・売主間で以下を徹底しておくようにしましょう。
預かり証をもらう
申込証拠金を支払う場合は、必ず売主から日付と金額などを明記した預かり証(書面、署名捺印済み)を受け取るようにします。預かり証がもらえない場合は、申込証拠金の支払いを再考したほうが良いでしょう。
有効期限を確認する
申込証拠金を支払う際には、必ず売主・飼い主の間で協議して、申込証拠金の有効期限を確認し、双方が納得・同意した上で証拠金を授受するようにしましょう。また、受領証に売主が独断で期限を記載しているケースもあります。受領証を受け取ったらすぐに期限が書き込まれていないかを確認し、期限に納得できない場合は、その旨を売主に伝え、変更してもらうようにしましょう。購入希望者が知らない間に期限が切れてしまうと、売主が他の人にその物件を売却してしまうおそれがあります。ただし、その場合も申込証拠金には法的拘束力がなく、申込証拠金の支払い=売買契約の締結ではないので、売主に他の人への売却をやめさせたり、解約違約金を求めたりすることはできません。
キャンセル時の返金を確約しておく
購入希望者は申込証拠金を支払う際には、キャンセル時には全額返金する旨を売主に確約してもらいましょう。後でトラブルにならないよう、受領証にその旨一筆書き添えてもらうなどして、書面で残しておくことが大切です。 そもそも申込証拠金は法律で支払いを義務付けられているものではなく、道義的な拘束力を持つものにすぎないとされています。最近では不動産売買契約の仲介にあたって、申込証拠金を必要としない物件や不動産業者も増えています。申込証拠金に関するトラブルを避けるために、そういった物件や業者を選ぶことも一案です。
監修:相山華子
ライター、OFFICE-Hai代表、2級ファイナンシャル・プランニング技能士
プロフィール
1997年慶應義塾大学卒業後、山口放送株式会社(NNN系列)に入社し、テレビ報道部記者として各地を取材。99 年、担当したシリーズ「自然の便り」で日本民間放送連盟賞(放送活動部門)受賞。同社退社後、2002 年から拠点を東京に移し、フリーランスのライターとして活動。各種ウェブメディア、企業広報誌などで主にインタビュー記事を担当するほか、外資系企業のための日本語コンテンツ監修も手掛ける。20代で不動産を購入したのを機に、FP(2級ファイナンシャル・プランニング技能士)の資格を取得。金融関係の記事の執筆も多い。
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