新築住宅を建てる前に覚えておきたい減税制度一覧

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新築住宅の建設にあたっては、さまざまな税金がかかります。しかしいくつかの税金には、減税制度が用意されているので、上手く活用すれば大幅な節税ができる場合があることはご存じでしょうか。そこでこの記事では、新築住宅を建てる際にかかる税金の種類と利用できる軽減措置について紹介していくので、マイホーム建設の参考にしてください。

01新築する時にかかる税金はどのようなものがある?

新築住宅を建てる時にかかる税金の中には「新築する時だけにかかるもの」と、「新築した後に毎年支払い続けなければいけないもの」の2種類があるので、それぞれの概要についてよく理解しておきましょう。

印紙税

印紙税は契約書を作成するときに納める税金で、必要な金額の印紙を契約書に貼って消印することで納付します。新築住宅の建設時においては不動産売買契約書や工事請負契約書、住宅ローンを組むときの金銭消費貸借契約書でそれぞれかかります。印紙税の特徴は、契約書に記載されている金額によって納税額が変わる点です。例えば「1,000万円を超え5,000万円以下」の場合は2万円、「5,000万円を超え1億円以下」なら6万円という具合になっています。ただし不動産売買契約書や工事請負契約書については軽減措置(後ほど詳しく解説)があり、適用されれば実際に納める税金は少なくなります。

登録免許税

登録免許税は登記をする際に必要な税金です。新築住宅の建設時において、購入する土地の所有権移転登記や建築する住宅の所有権保存登記の際に支払う必要があります。登録免許税は固定資産税評価額(課税標準)に一定の税率をかけて算出する仕組みです。土地を購入した際に行う所有権移転登記における基本税率は2%で、建物を新築した際に行う所有権保存登記の基本税率は0.4%になります。

ただし、2021(令和3)年3月31日までの間に登記を受ける場合は印紙税と同じく、軽減措置(後ほど詳しく解説)が適用されます。また登録免許税は現金納付が基本で、金融機関の窓口で支払った後に発行される領収証書を登記申請書に貼付しなければいけませんが、納税額が3万円以下の場合は収入印紙による納付も認められています。

不動産取得税

不動産取得税は土地や建物といった不動産を取得したときにかかる税金です。計算方法は「取得した不動産の固定資産税評価額(課税標準)×4%」となっていますが、2021(令和3)年3月31日までに取得した場合に限り、軽減措置(後ほど詳しく解説)の対象です。軽減措置が適用されると土地は「取得した土地の固定資産税評価額(課税標準)×1/2×3%-控除額※」、建物は「(取得した建物の固定資産税評価額(課税標準)-1,200万円)×3%」になります。

※控除額は4万5,000円、もしくは土地の1㎡当たりの固定資産税評価額(課税標準)×住宅の床面積×2(200㎡が限度)×住宅の取得持分×3%で計算した額のどちらか大きい方

消費税

消費税は住宅建設時の部材や工事代金に対してかかります。ただし、消費税がかかるのはあくまでも建物やそれに付属する設備だけで、土地に対して課税されることはありません。土地は建物や設備と違って「消費されないもの」として区分されているからです。税率は10%で、食品などに適用されている軽減税率の対象にはなりません。代金支払い時に、建物部分と一緒に支払います。

固定資産税

固定資産税は、新築した後に毎年支払い続けなければいけない税金の一つです。毎年1月1日時点において不動産を所有している人に課されます。計算方法は「固定資産税評価額(課税標準)×1.4%(標準税率)」です。固定資産税にも軽減措置(後ほど詳しく解説)が設けられており、2020(令和2)年3月31日までに新築した住宅に関しては適用対象となります。

都市計画税

都市計画税も、新築した後に毎年支払い続けなければいけない税金の一つです。都市計画事業または土地区画整理事業などの費用に充てるための目的税で、購入する土地が市街化区域内にある場合に限り対象になります。固定資産画税と同じく地方税の一種であることから、納税もまとめて行われるのが特徴です。計算方法は「固定資産税評価額(課税標準)×0.3%(制限税率)」となっています。ただし都市計画税についても軽減措置(後ほど詳しく解説)が適用されれば、納める税金が少なくて済むケースがあります。

02新築住宅を建築したら利用できる減税制度一覧

それでは、新築住宅の建築時に利用できる減税制度について紹介します。なお、今回はできるだけたくさんの制度を紹介する都合上、それぞれの制度については簡潔に記してあります。詳しい条件について知りたいときは、公開記事がある場合はそちらを参照してください。

住宅ローン控除(住宅借入金等特別控除)

住宅ローン控除は、住宅ローンの借り入れによる金利負担を軽減するための制度です。毎年の年末時点における住宅ローン残高と住宅の取得費用のうち、いずれか少ない方の金額を対象に10年間、その1%にあたる金額が所得税から控除されます。控除される上限額は10年間トータルで400万円となり、所得税から控除しきれなかった場合は住民税からも控除される仕組みです。ただし住宅ローン控除の適用を受けるためには、確定申告をしなければいけません。サラリーマンの場合は年末調整で清算されますが、初年度だけは自分で確定申告する必要があります。

投資型(自己資金)減税(認定住宅新築等特別税額控除)

構造などから「認定優良住宅」「認定低炭素住宅」と認められた住宅を建設し、確定申告時に「認定住宅新築等特別税額控除」を申請すると、原則的にその年分の所得税額から最高で65万円が控除される制度です。ただし住宅ローン控除との併用ができない点に、気を付けなければいけません。一般的には住宅ローン控除を活用する方がお得なケースが多いので、どちらかというと自費でマイホーム購入する人に向けた軽減措置になります。住宅ローンを利用しない人は、こちらを選んで所得税の減税に役立てましょう。

印紙税の減税制度

印紙税の中でも不動産売買契約書や工事請負契約書については軽減措置があり、2022(令和4)年3月31日までの間に作成される契約書が対象になります。例えば「1,000万円を超え5,000万円以下」の場合における本来の税額は上述の通り2万円ですが、軽減措置が適用されれば1万円です。印紙税の軽減措置については、「家を買う時と買った後でどんな税金が発生する?軽減措置も合わせて紹介」で詳しく紹介しています。

家を買う時と買った後でどんな税金が発生する?軽減措置も合わせて紹介
[税金] 2023.12.20

登録免許税の減税制度

新築住宅を建設するときに必要な「所有権保存・移転登記」や、住宅ローンを組む時に担保となる不動産につける「抵当権設定登記」にかかる登録免許税には減税制度があります。軽減措置が適用されると、例えば建物の所有権保存登記の税率は本来の0.4%から0.15%まで下がります。登録免許税は基本的に建設時の一度だけしか課税されませんが、原則的に現金納付です。そのため、手持ち資金が少ない人にとってはありがたい減税制度になるでしょう。ただし軽減措置を受けるには、細かな条件が設定されています。条件の詳細については、記事「家を買う時と買った後でどんな税金が発生する?軽減措置も合わせて紹介」や「登録免許税っていくらかかる?計算方法と軽減措置を紹介」を参考にしてください。

不動産取得税の減税制度

不動産取得税の税率は本来4%ですが、軽減税率が適用されると3%になります。また、土地建物それぞれに控除額も設定されているので、条件次第ではまったくかからない場合もあります。軽減税率の適用にあたっては基本的に各都道府県の県税事務所などで自ら申請する必要があり、自治体によって申請期間が違う場合があるので注意しましょう。申請後は都道府県から送付される納税通知書を使って金融機関で納付する流れになります。なお、「家を買う時と買った後でどんな税金が発生する?軽減措置も合わせて紹介」や「不動産取得税とは?軽減はあるの?いくらかかるか計算方法も解説」で不動産取得税の詳しい軽減措置について解説しているので参考にしてください。

固定資産税の減税制度

固定資産税の軽減措置は、建物と土地のそれぞれに設定されています。土地は条件に応じて評価額が6分の1または3分の1になり、建物は課税床面積が120㎡までの部分の納税額が3年もしくは5年にわたって2分の1になる制度です。ただし、固定資産税そのものは不動産を所有している間ずっと支払い続けなければいけません。そのため、建物については軽減措置の適用期間が終わったあとに納付する税額が大きく増えるケースがあるので注意しましょう。

固定資産税の納税方法については、毎年4月ごろに不動産のある市区町村から納税通知書が送られてくるので、それをもとに年度内で4回に分割(一括支払いも可能)して納付します。固定資産税の軽減措置の詳細について知りたい人は、「家を買う時と買った後でどんな税金が発生する?軽減措置も合わせて紹介」や「固定資産税の計算方法を解説!どうすれば安く抑えられる?」を確認してみましょう。

都市計画税の減税制度

都市計画税は住宅用の土地に対してのみ軽減措置が用意されていて、適用されれば土地の評価額が3分の1、または3分の2になる仕組みです。固定資産税のように建物部分に対する軽減措置はない点に注意しましょう。納税時期は各自治体によって異なりますが、基本的には固定資産税と一緒で、6月、9月、12月、翌年の2月の4回に分けて納めます。より具体的な条件や内容を知りたい人は「家を買う時と買った後でどんな税金が発生する?軽減措置も合わせて紹介」や「都市計画税とはどんな税金?固定資産税との違いをあわせて解説」を確認してみることをおすすめします。

住宅取得等資金に係る非課税措置

祖父母や両親(いわゆる直系尊属)から土地や建物を贈与によって取得した場合、たとえ住宅建設用だとしても贈与税の対象になることがあります。贈与税は相続税と同じく、日本の税制の中でもかなり高額な税率が課されているのが特徴ですが、「住宅資金等取得贈与の非課税措置」と「相続時精算課税制度」などを活用すれば納める税金を少なくすることが可能です。贈与で住宅用地を取得する可能性がある人はあらかじめ「住宅取得時の贈与税はいくらまで非課税になる?」や「土地の贈与税はいくらかかるのか?生前贈与の流れも合わせて解説」をチェックしておきましょう。

すまい給付金

すまい給付金は厳密にいうと減税制度ではなく給付金制度で、もともとは2014(平成26)年4月1日から消費税が8%に引き上げられたことをきっかけに、住宅購入者の経済的負担を軽くする目的で創設されました。しかし2019(平成31・令和元)年10月に消費税が10%に引き上げられたことによって、2021(令和3)年12月31日までに引き渡しが完了する住宅まで対象となるように、期限が延長されています。申請は国土交通省の管轄「すまい給付金事務局」宛てに行い、給付金額は各世帯によって変わりますが、目安として世帯年収400万円だと最大50万円がもらえます。より詳しい内容を知りたい人は「家を買う時と買った後でどんな税金が発生する?軽減措置も合わせて紹介」や「『すまい給付金』とはどんな制度?―条件・給付額・申請手順―」で確認してみてください。

03低炭素住宅や長期優良住宅とは?

新築住宅の減税制度を知る上で、理解しておきたいのが低炭素住宅や長期優良住宅です。いずれも建物の構造や消費するエネルギーなど、一定条件を満たした住宅を建築または購入した場合に軽減措置の適用があります。ここからは、それぞれの住宅の特徴とどれぐらい優遇されるかの目安について紹介します。

低炭素住宅とは?

低炭素住宅とは簡単にいうと、二酸化炭素の排出量を減らす工夫が施された住まいのことです。地球温暖化に対する国民の意識の高まりを受けて、二酸化炭素排出量が少ない住宅の普及を促す目的で制定されました。低炭素住宅として認められるためには国が定めた省エネ基準を満たしたうえで、一次エネルギー消費量を2008(平成20)年時点の一般的な住宅より10%削減することが条件になっています。また節水便器や省エネに貢献する太陽光発電設備といった、設備の導入においても条件に該当すれば申請可能です。申請方法は所管行政庁(都道府県および市、または区)に対して行い、認定されれば利用できます。

一般住宅と比較してどれだけ優遇されるの?

低炭素住宅として認められると「住宅ローン控除の控除額の拡大」「登録免許税の軽減措置の適用」といったメリットがあります。住宅ローン控除は10年間で最大400万円が所得税から控除される仕組みです。しかし低炭素住宅として認められた住宅に住んでいる場合は、対象のローン限度額が5,000万円に増えることから、所得税から控除される金額も10年間で最大500万円に増えます。また登録免許税の税率は一般の新築住宅の場合、軽減税率を適用しても所有権の保存登記の税率は0.15%ですが、低炭素住宅の場合は0.1%まで引き下げられます(2022[令和4]年3月31日までに取得した場合)。

さらに住宅ローンを利用していない人は「認定住宅新築等特別税額控除」によって、所得税からの控除を受けることが可能です。この場合、1年のみ「標準的なかかり増し費用の限度額×控除率10%(控除限度額65万円)」が適用されますが、上述のとおり住宅ローン控除との併用はできない点には注意しましょう。そのほかにもフラット35を利用する場合には、一般的な金利より低い金利でローンを組めるメリットもあります。

長期優良住宅とは?

長期優良住宅とは簡単にいうと、一般の住宅よりも長い期間にわたって安心して暮らせる住まいのことです。頻繁に建て替える必要がないため、低炭素住宅と同じように地球環境にやさしいという観点から、減税制度や補助金などでさまざまな恩恵が受けられます。ただし劣化対策や耐震性、バリアフリー性、省エネルギー性など、多様な性能項目を所轄行政庁に認められた場合に限り利用できます。

また長期優良住宅は個人で申請することも可能ですが、手続きが煩雑で大変な点にも注意しましょう。申請する際には図面や審査書類を自分で用意しなければならず、審査のための手数料も数万円程度かかります。住宅を建築する場合はハウスメーカーに代行してもらうことも可能ですが、さらに手数料が上乗せされてしまって20~30万円程度かかることも珍しくありません。あらかじめ申請にかかる費用や手間をよく確認した上で申し込みましょう。

一般住宅と比較してどれだけ優遇されるの?

長期優良住宅も住宅ローン控除の上限が拡大される点で、低炭素住宅と同じです。対象のローン限度額が4,000万円から5,000万円に増えることから、所得税からの最大控除額も10年間で400万円から500万円にアップします。さらに、「不動産取得税の控除額の増額」や「固定資産税の減額期間の延長」といった優遇措置が受けられる点はメリットです。不動産取得税の控除額は一般住宅の場合は1,200万円ですが、長期優良住宅であれば1,300万円を評価額から差し引いて計算できるようになります。一方、固定資産税については床面積が一定の条件内である場合に3年間2分の1になるという軽減措置がありますが、長期優良住宅ならその期間が5年(新築マンションは7年)に延びます。

そのほかにも、「登録免許税の所有権保存登記の税率が0.1%になる」「フラット35利用者には金利優遇措置がある」というメリットも低炭素住宅と同じです。また長期優良住宅に認められるように、住宅をリフォームする際には最大で300万円の補助金が支給される制度もあります。

04新築住宅を建てる前に減税制度を把握しておこう

新築住宅を建てるときに活用できる減税制度はたくさんあり、すべてを覚えるのは大変かもしれません。しかし上手に活用することで大幅な節税につながる可能性もあるため、これから新築住宅を建てる予定のある人はしっかりチェックしておきましょう。ただし、新築住宅の減税制度について詳しくなっても自分がどれくらいの住宅ローンを組めるかが分からなければ、実際に自宅を建設するステップに踏み出すことはできません。そこで新築住宅の建設を前向きに検討している人は、減税制度について調べるのと並行して、サイト内の「住宅ローンシミュレーション」を試してみることをおすすめします。住宅ローンシミュレーションなら、自分にピッタリの住宅予算をシミュレートしてくれますよ。きっと新築住宅の建設へ一歩前進するはずなので、試してみてはいかがでしょうか。

新井智美

監修:新井智美

CFP®/1級ファイナンシャル・プランニング技能士

プロフィール

トータルマネーコンサルタントとして個人向け相談の他、資産運用など上記相談内容にまつわるセミナー講師を行う傍ら、年間100件以上の執筆・監修業務を手掛けている。

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