不動産を持ったら覚えておきたい確定申告のやり方や必要書類を解説

2020.09.04 13

不動産を所有していると、確定申告が必要になる場合があります。今回は、確定申告が必要になるケースを3つに分けて紹介するとともに、確定申告の手順や必要な書類について解説します。

01どのような場合に確定申告が必要になる?

確定申告とは、毎年1月1日から12月31日までの1年間に生じた所得とその所得に対して課される所得税の額を、原則として翌年2月16日から3月15日の間に、住民票がある納税地を管轄する税務署に申告することです。会社員などの給与所得者は、毎月の給与から所得税が源泉徴収されており、勤務先の企業等が年末調整を行うことで所得税の納税手続きが完了しているため、原則として確定申告をする必要はありません。しかし、不動産を所有している人で、次の3つに該当する人は、給与所得者であっても、確定申告をする必要があります。

不動産を売却して譲渡益を得た人

土地や建物など不動産を売却して利益(譲渡益)を得た場合、その譲渡益である譲渡所得に所得税と住民税が課されます。譲渡所得は給与所得など他の所得とは別に税額を計算しなくてはなりません。

譲渡所得税額の求め方は以下のとおりです。

譲渡所得税額=譲渡価額―(取得費+譲渡費用―特別控除 ※1)✕税率

※1 特別控除は一定の条件を満たせば受けられる控除で、居住用不動産の場合は最高 3000万円となります。特別控除により、譲渡益がゼロになるときでも申告をしなければならい点に注意が必要です。

なお、譲渡所得税の税率は、その不動産を所有していた期間が5年以下か5年超かによって、次のように異なります

  • 不動産の所有期間が5年以下の場合:税率39%(所得税30%、住民税9%)
  • 不動産の所有期間が5年超の場合:税率20%(所得税15%、住民税5%)

所有していた期間は、その不動産の取得日(物件の引渡し日もしくは契約日)から売却した年の1月1日現在までの期間を指し、この期間が5年を超えていないと、税率が19%も高くなってしまうことに注意が必要です。

また、2013年から2037年までの各年に生じた譲渡所得については、上記の税率で求めた所得税額✕2.1%の復興特別所得税も合わせて課されます。

なお、譲渡所得にかかる住民税の納付方法には、自分で納付する「普通徴収」か、勤務先の企業等が給与から差し引いて本人の代わりに納付する「特別徴収」の2つがあり、確定申告の際にどちらの方法で納付するかを選ぶことができます。普通徴収を選んだ場合は、確定申告後、5月以降に市区町村から送られてくる納付通知書にしたがって納付することになります。

不動産収入がある人

不動産収入とは、家賃収入、管理費収入、共益費収入、礼金収入、駐車場使用料収入などのことです。

土地や建物などを貸して得た不動産所得(総収入―必要経費)は確定申告をしなくてはなりません。不動産所得税額の求め方は以下のとおりです。

所得税額=課税所得金額×税率―控除額

不動産所得の税率は、課税所得金額により5%から45%と異なります。

課税される所得金額と税率、控除額は以下の通りとなります。

課税される所得金額 税率 控除額
195万円以下 5% 0円
195万円を超え330万円以下 10% 97,500円
330万円を超え695万円以下 20% 427,500円
695万円を超え900万円以下 23% 636,000円
900万円を超え1,800万円以下 33% 1,536,000円
1,800万円を超え4,000万円以下 40% 2,796,000円
4,000万円超 45% 4,796,000円

出典:国税庁 No.2260 所得税の税率

住民税は課税される所得金額に対して一律10%です。

総収入に含まれるもの

  • 賃料
  • 礼金、更新料など
  • 敷金や保証料のうち返還しなくても良いもの
  • 共益費、管理費など

必要経費として認められる主な経費

  • 税金(不動産取得税、登録免許税、固定資産税など)
  • 損害保険料
  • 修繕費
  • 共用部分の光熱費など
  • 減価償却費
  • 借入金の利子(不動産を取得するために借り入れた借入金の利子)
  • 仲介手数料(賃貸にあたって不動産業者の仲介サービスを利用した場合に係る費用)
  • 広告宣伝費(賃貸人を募るために広告宣伝を利用した場合に係る費用) など

なお、貸しているマンションやアパートの部屋が10部屋以上、もしくは貸家が5棟以上ある場合は、事業的規模と認められ、不動産賃貸に係る同一生計の親族への給与が必要経費として認められ、後述する青色申告の特別控除の控除額が10万円から55万円(一定の要件をみたすときは最高65万円)に増額されるなどの特典を受けることができます。

住宅ローンを利用して不動産を購入した人

住宅ローンを利用してマイホームを購入した人は、確定申告をすることによって、所得税の住宅ローン控除を受けることができます。

住宅ローン控除とは、住宅ローンを利用してマイホームを購入もしくは増改築し、かつ以下の要件を満たしている場合に、入居の年から10年(令和1年10月1日から2年12月31日までの入居については一定の要件を満たす場合は13年)、毎年末の住宅ローン残高又は住宅の取得対価のうちいずれか少ない方の金額の1%が所得税から控除されるもので、年間の控除額は一般住宅の場合は最大40万円、認定住宅(新築の長期優良住宅など)の場合は最大50万円となります。

住宅ローン控除を受けるための主な要件

  • 自ら居住する住宅のために借りたローンであること
  • 返済期間が10年以上のローンであること
  • 取得した日から6か月以内に居住し、控除の適用を受ける年の12月31日まで引き続き居住していること
  • 床面積が50㎡以上で、その2分の1以上が自分の居住用であること
  • 控除の適用を受ける年の合計所得金額が 3000万円以下であること
  • 耐震基準を満たしていること(中古住宅の場合)  など

なお、住宅ローン控除をその年の所得税から控除しきれない場合は、控除しきれなかった分が翌年度の住民税から控除されます。

控除額は「住宅ローン控除可能額―所得税から控除できた額」または「所得税の課税総所得金額✕7%(最大13万6500円)」のうち低い方の額です。

02青色申告と白色申告の違い、それぞれに必要な書類は?

確定申告には、青色申告と白色申告の2つがあり、不動産所得がある人は事前に手続きをすれば、青色申告をすることができます。

青色申告は不動産所得または事業所得、山林所得に係る取引を正規の簿記の原則(一般的には複式簿記)により記帳し、その記帳に基づいて作成した「貸借対照表」「損益計算書」を確定申告書に添付して確定申告を行う方法で、主に以下のような特典を受けることができます。

青色申告の主な特典

  • 不動産所得の青色申告特別控除(最高65万円)を受けることができる
  • 親族に支払う給与を必要経費として計上できる
  • 売掛金や貸付金などが回収できなくなった場合にそなえて、年末の売掛金や貸付金の残高の一部を引当金として必要経費に計上することができる
  • 赤字を翌年に繰り越し、翌年以降3年間の黒字の所得から控除することができる
  • 赤字の年の前年が黒字であった場合には、赤字を前年分に繰戻して、所得税額の還付を受けることができる

なお、青色申告をするには、その年の3月15日まで(1月16日以降に事業を開始した場合は、開始した日から2カ月以内)に青色申告承認申請書を所轄税務署に提出し、承認を受ける必要があります。なお、青色申告の承認申請書は国税庁のホームページからダウンロードすることができます。

一方、白色申告は青色申告をしない場合の通常の確定申告のことで、確定申告書収支内訳書を提出して行います。

白色申告の場合、青色申告のような特典は受けられませんが、事前承認などを受ける必要がなく、帳簿の記帳が簡単というメリットがあります。なお、以前は白色申告の場合は帳簿の記帳義務がありませんでしたが、2014年以降は白色申告の場合でも、不動産所得、事業所得、山林所得のある人には、帳簿の記帳と保存(7年間)が義務づけられたことに注意が必要です。

03確定申告の手順

続いて確定申告の手順についてみていきましょう。不動産所得の青色申告の場合は、前述のとおり事前に税務署に申請書を提出して承認を受ける必要がありますが、承認取得後の流れは白色申告とほぼ同じです。

(1)書類を準備する

 確定申告に必要な書類を準備します。

  • 給与所得や公的年金等の源泉徴収票(原本)
  • 私的年金等を受けている場合には支払金額などが分かるもの
  • 医療費の領収書等、社会保険料(国民年金保険料)控除証明書
  • 生命保険料の控除証明書、地震保険料(旧長期損害保険料)の控除証明書
  • 寄附金の受領証 など

(2)確定申告書を作成する

確定申告書にはAとBがありますが、不動産の所有に係る所得税の申告にはBを使用します。確定申告書は税務署や市区町村の窓口で受け取るか、国税庁のホームページからダウンロードすれば入手できます。また、確定申告書の書き方の詳細は、国税庁の「所得税及び復興特別所得税の確定申告の手引」で確認することができるほか、同じく国税庁のホームページの「確定申告書作成コーナー」で画面の案内にしたがって必要事項を入力すれば、確定申告書を作成することもできます。

(cap)確定申告所B第1表の記載例(国税庁「所得税及び復興特別所得税の確定申告の手引」より引用)

出典:国税庁「所得税及び復興特別所得税の確定申告の手引 確定申告書B用」

(3)確定申告書を提出する

必要な書類が揃い、確定申告書の記入が終わったら、青色申告の場合は「貸借対照表」と「損益計算書」を添えて、白色申告の場合は「収支内訳書」を添えて、以下のいずれかの方法で確定申告書を提出します。

  • 税務署の窓口に持参する
  • 税務署に郵送する
  • 国税庁の「e-tax」を利用してオンラインで提出する

(4)納税する

確定申告を行っても、税務署等から納付書や納税通知書等のお知らせなどが送付されるわけではありません。納税すべき税額がある人は、以下のいずれかの方法で自ら納税をする必要があります。なお、所得税の納付期間は3月15日までです。

  • 税務署の窓口で現金で納付する
  • 預貯金口座からの自動振替により納付する
  • 国税庁の「e-Tax」を利用して、スマートフォンやパソコンからオンラインで納付する
  • 国税庁のホームページ上で作成できるQRコードを使ってコンビニエンスストアの店頭で納付する

04確定申告の期限は?確定申告をしないとどうなる?

前述のとおり、確定申告は原則として2月16日から3月15日までの1カ月間に行わねばなりません。3月15日が土曜・日曜・国民の祝日・休日にあたる場合は、その翌日が期限日になります。

期限内に確定申告をしない場合、以下のようなペナルティが課されます。

無申告加算税が課される

確定申告を行わなかった場合、本来納めるべき税金に「無申告加算税」が加算されます。無加算税の税率は、以下のとおりです。

  • 税務署の指摘前に自主的に期限後申告した場合:5%
  • 税務署の指摘後に申告した場合:原則として納税額のうち50万円までが15%、50万円を超える部分は20%

延滞税が加算される

期限内に確定申告をせず、納税が遅れた場合は、遅れた日数に応じて延滞税が課されます。延滞税の税率は遅延した日数などにより異なります。延滞税額は国税庁のホームページ上で必要情報を入力すれば、確認することができます。

青色申告の特別控除が受けられなくなる

期限後に確定申告をすると、節税効果の大きい青色申告特別控除(最高65万円控除)が受けられなくなります。また、2年連続で期限内に確定申告をしなかった場合、青色申告の承認が取り消されることにも注意が必要です。

このように期限内に確定申告を行わないと、さまざまなデメリットを被ることになってしまいます。一見、難しそうな確定申告ですが、国税庁の手引を参考に行えば意外と簡単にできるだけでなく、オンラインで手続きを行えば税務署等に出向く必要もありません。確定申告期間中に税務署などで行われる無料の相談会に参加して、申告内容や申告書の記載方法について相談することも可能です。また申告に必要な帳簿付けなどは日頃からこまめに行っておけば、ギリギリになって作業に追われなくて済むはずです。余計な税金を支払うことを避け、節税効果を無駄しないためにも計画的に準備を進め、必ず期限内に確定申告を行うよう心がけましょう。

相山華子

監修:相山華子

ライター、OFFICE-Hai代表、2級ファイナンシャル・プランニング技能士

プロフィール

1997年慶應義塾大学卒業後、山口放送株式会社(NNN系列)に入社し、テレビ報道部記者として各地を取材。99 年、担当したシリーズ「自然の便り」で日本民間放送連盟賞(放送活動部門)受賞。同社退社後、2002 年から拠点を東京に移し、フリーランスのライターとして活動。各種ウェブメディア、企業広報誌などで主にインタビュー記事を担当するほか、外資系企業のための日本語コンテンツ監修も手掛ける。20代で不動産を購入したのを機に、FP(2級ファイナンシャル・プランニング技能士)の資格を取得。金融関係の記事の執筆も多い。

関連キーワード

ご利用上の注意

  • 本記事は情報の提供を目的としています。本記事は、特定の商品の売買、投資等の勧誘を目的としたものではありません。本記事の内容及び本記事にてご紹介する商品のご購入、取引条件の詳細等については、利用者ご自身で、各商品の販売者、取扱業者等に直接お問い合わせください。
  • 当社は本記事にて紹介する商品、取引等に関し、何ら当事者または代理人となるものではなく、利用者及び各事業者のいずれに対しても、契約締結の代理、媒介、斡旋等を行いません。したがって、利用者と各事業者との契約の成否、内容または履行等に関し、当社は一切責任を負わないものとします。
  • 当社は、本記事において提供する情報の内容の正確性・妥当性・適法性・目的適合性その他のあらゆる事項について保証せず、利用者がこれらの情報に関連し損害を被った場合にも一切の責任を負わないものとします。本記事には、他社・他の機関のサイトへのリンクが設置される場合がありますが、当社はこれらリンク先サイトの内容について一切関知せず、何らの責任を負わないものとします。本記事のご利用に当たっては上記注意事項をご了承いただいたものとします。

0