不動産売却にかかる税金はいくらかかる?計算方法を解説

2020.10.06 17

不動産を売却した時に得る収益のことを「譲渡所得」と言います。一般的な給料と同じく税法上は「所得」扱いとなり、不動産の売却で得たお金は「課税対象」です。今回は、不動産の売却で発生する「譲渡所得」に関する基礎知識とその課税の仕組みについて解説していきます。

01土地や建物などの不動産を売却したときに生じる「譲渡所得」とは?

「譲渡所得」とは、さまざまな保有資産を譲渡することによって得た所得のことです。資産の種類は土地や建物などの不動産だけでなく、株式などの有価証券、ゴルフ会員権、車や貴金属、宝石なども含まれます。「譲渡所得」に対しては、税法上定められた税率で課税される仕組みで、対象となる資産の種類や保有期間によって細かく計算方法が異なります。

なお、資産を「譲渡」するとは、「売買」だけでなく「交換」「贈与」「財産分与」「寄付」「競売」「収用」、さらには「補償金の受け取り」や「相続の限定承認」など、かなり広い範囲での法律行為が該当します。ただし、譲渡所得のうち、生活の用途で必要となるもの(家具、備え付けの家電、通勤用の車など)や、破産や滞納により住宅ローンなどの支払いができなくなった資産を強制的に競売などで譲渡した場合の所得、公益目的での寄付などは非課税です。

マイホームの買い替えなどで不動産の売却益を得た場合は、譲渡所得として課税対象となります。しかし、多くのケースでは新たな住まいの購入と連動しているため、その負担が大きくならないようにさまざまな軽減措置が用意されています。

譲渡所得のポイントは「不動産の所有期間」

「譲渡所得」に対する税率は、「何年保有したか」「いつ譲渡したか」という点が基準となり定められています。土地や建物などの不動産についての所有期間の基準は、「譲渡した年の1月1日時点で、何年経過したか」です。所有期間が5年以下のものを「短期譲渡所得」、5年以上のものを「長期譲渡所得」と言い、それにより税率が大きく変わります。居住用不動産についての税率は、以下の通りです。

  • 短期譲渡所得(保有期間5年以下):39.63%(所得税30.63%、住民税9%)
  • 長期譲渡所得(保有期間5年以上):20.315%(所得税15.315%、住民税5%)

「長期」か「短期」かの違いで税率に2倍近くの差が出ることが分かりますね。つまり、不動産の売却を検討する場合は、そのタイミングをよく検討する必要があるのです。しかも、長期譲渡所得に関しては、10年以上保有していた不動産にさらなる軽減税率の特例があります(これについては後ほど解説します)。

それでは簡単な実例を交えながら、実際の税額の計算方法などを解説していきましょう。

02譲渡所得や税額の計算方法は?

譲渡所得に対する所得税や住民税は、事業所得や給与所得として分離して計算します(これを分離課税と言います)。譲渡所得による収入から所得費用と譲渡にかかった諸経費、そして特別控除額を差し引いた金額が「課税対象となる譲渡所得の額(課税譲渡所得金額)」です。計算式にすると、以下のようになります。

課税譲渡所得金額=収入金額-(取得費+譲渡費用)-特別控除額

ここでの「収入金額」とは、不動産の売主が買主から受け取る金銭の額のこと。まだ代金決済が完了していない場合も、収入としてカウントされます。それだけでなく、固定資産税の精算金も「収入金額」として計上されるので、忘れないように注意してください。

「取得費」とは、売却する不動産を取得したときに必要となった購入価額に加えて、その後に投資した設備費や改良費などを合計した費用です。ただし、不動産の建物部分は、何年か保有することによる「減価償却費」が発生します。この減価償却費分は資産価値の目減り分ですので、購入金額に加えて設備費と改良費の合計から減価償却費を差し引き、残った金額が「取得費」として計上される仕組みです。

取得費については、以下の方法で計算します。

取得費=(購入金額+設備費・改良費)-減価償却費

ただし、「取得費」の計算方法は、土地と建物で異なります。それぞれの計算方法については、以下の通りです。

土地の取得費の計算方法

土地の取得費=土地の購入代金+土地の取得に係る費用

土地の取得に係る費用については、仲介手数料などの諸費用や、土地や建物を購入したときに納めた登録免許税、不動産取得税、特別土地保有税(取得分)、印紙税なども含まれます。

建物の取得費の計算方法

建物の取得費=(購入金額+建築代金や税金などの諸費用)-減価償却費相当額

減価償却費相当額については、以下の計算式で求めます。また、減価償却費相当額については、建物の購入金額の95%が上限となっています。

減価償却費相当額=建物の購入代金×90%×償却率×経過年数

この計算で使用する償却率については、建物の建築材料や構造により、以下のように異なります。

区分 木造 木骨
モルタル
(鉄骨)鉄筋
コンクリート
金属造① 金属造②
償却率 0.031 0.034 0.015 0.036 0.025

金属造①とは、軽量鉄骨造のうち骨格材の肉厚が3㎜以下の建物を指し、金属造②とは、軽量鉄骨造のうち骨格材の肉厚が3㎜超4㎜以下の建物を指します。

また経過年数については、6カ月以上の端数は1年とし、6カ月未満の端数は切り捨てて計算します。

購入代金を証明する書類が紛失しているなどで、取得費を計算することが困難な場合、売却費の5%を取得費として見なすことができます。

「譲渡費用」は、不動産の譲渡にかかった諸費用、例えば「仲介手数料」や「収入印紙購入費」、登録免許税などの税金や建物の引き渡しにかかった修繕費や違約金などの合計額です。

そして、税額を大きく左右する点で重要になるのが「特別控除額」です。

03土地・建物の譲渡所得の特別控除額とは?

マイホーム売却で極めて重要な「特別控除制度」について、主なものについて簡単に説明していきましょう。

マイホーム譲渡時の3,000万円特別控除

マイホーム譲渡時に必ず活用される控除です。この特別控除を受けるためには、以下の5つの適用要件を満たす必要があります。

  1. 自分が住んでいる家屋を売るか、家屋とともにその敷地や借地権を売ること
  2. 以前住んでいた家屋や敷地で、住まなくなった日から3年経過する日の属する年の12月31日までに売却するものであること(取り壊した場合などは、譲渡契約を結ぶまでに駐車場利用などの土地利用をしていないことが要件)
  3. 譲渡契約時に住まいとして利用している家屋と敷地であること
  4. 売手と買手が、親子や夫婦など特別な関係でないこと
  5. 売った家屋や敷地について、他の特例の適用を受けていないこと

実際に住んでいたマイホームを売却する場合は3に当てはまります。注意すべきは「適用を受けられない事例に当てはまっていないか」ということです。例えば、この3,000万円特別控除を受ける目的だけに一時的に入居していた家屋、仮住まいとして一時入居していた家屋、別荘のように保養・娯楽のために所有していた家屋は対象外となります。

10年超所有軽減税率の特例

さきほど譲渡所得税は、保有期間が短期(5年以下の保有:税率39.63%)の場合と、長期(5年以上:税率20.315%)で税率が大きく変わることを説明しました。この基準に加え、居住用不動産の場合、さらに10年以上の保有物件に対して特例の軽減税率の適用があります。

特例の軽減税率

  • 譲渡所得のうち6,000万円以下の部分の税率が14.21%
  • 譲渡所得のうち6,000万円超の部分の税率が20.315%

この軽減税率は、譲渡益が出ているケースなら3,000万円特別控除と併用することが可能です。ただし軽減税率の適用を受けるためには、確定申告が必要。その際には6,000万円超の部分は税率20.315%になります。

その他の特別控除制度

一般的なマイホームの売却ではあまり関わりのない特別控除もいくつかあるので、簡単に説明しておきましょう。

公共事業のために家を売却した場合の特別控除

土地収用によって国に用地を売却した場合は、税額の計算を行う際に5,000万円、特定土地区画整理事業などのために売却した時は2,000万円の特別控除を受けることが可能です。特定住宅地造成事業のために売却した場合は、1,500万円の控除となります。

2009(平成21)年および2010(平成22)年に取得した土地等の売却における特別控除

2009(平成21)年と2010(平成22)年の土地を対象に政策として実施された特別控除ですが、いまだに利用されるケースが多いため、参考までに記載しておきます。特別控除額は1000万円で、2009(平成21)年に取得した土地は2015(平成27年)以降に譲渡すること、2010(平成22)年に取得した土地は2016(平成28)年以降に譲渡することが条件です。なお土地が対象なので、マンションの場合は敷地権のみが対象となります。

農地保有の合理化などのための土地売却出の特例

マイホーム売却にはあまり関連ありませんが、800万円の控除が可能です。

なお、これらの特例控除額は、要件を満たせば他の控除と併用できますが、その場合も合計5,000万円が控除額の上限になります。また、そもそも譲渡所得がマイナスになったというケースでは、譲渡損失の損益通算や繰越控除の特例といった税制措置の利用ができます。

04不動産売却時に課税される税金とは?

不動産の売却において、経費として掛かる税金に「印紙税」と「登録免許税」があります。その2つの税金について解説します。

印紙税

「契約書」を作成した際にかかる税金で、契約内容が5万円以上から課税されます。不動産売買で関係する「不動産売買契約書」に課される金額は、取引金額が10万~50万円以下は200円、50万~100万円以下は500円、100万~500万円以下は1千円、500~1,000万円以下は5千円、1,000万~5,000万円以下は1万円、5,000万~1億円以下は3万円、そして1~5億円以下は6万円です。なおこの金額は軽減税率が適用されたものなので、2014(平成26)年4月1日から2022(令和4)年3月31日までの間の売買が対象となります。

登録免許税

不動産売買では、買主に家の名義を移転する「所有権移転登記」を申請します。この登記手続きに課税されるのが「登録免許税」です。基本税率は、課税標準価格に対して20/1000を乗じた金額、つまり2%となっています。不動産の課税標準価額は固定資産税評価額をベースにするので、取引金額よりは低額です。とはいえ、それなりに大きな金額に対して課税されるので、経費としては大きい額になります。

ただし、2021(令和3)年3月31日までの登記手続きについては、軽減税率が適用されます。軽減税率は土地部分が1.5%、建物部分は0.3%です。

特別復興税

マイホームを売却した場合に課税される税金には、譲渡所得税、印紙税、登録免許税の他に、もう1つ「特別復興税」があります。この税金は2011(平成23)年に発生した東日本大震災で被災した人を支援する目的で施行されたもの。2013(平成25)年1月1日からの所得税や住民税、法人税に上乗せする形ですが、マイホームの売却で関係してくるのが「復興特別所得税」と「復興特別住民税」です。

復興特別所得税は、2013(平成25)年1月1日から2037(令和19)年12月31日までの25年間実施されることになっていて、課税額は基準所得額の2.1%分です。例えば、マイホーム売却で2,000万円の取得を得た場合、復興特別所得税は42万円となります。ただし、復興税の算出基準となる譲渡所得額は、特別控除や取得費などを差し引いた金額となるので、一般的なケースではそれほど大きな納税額にはならないことがほとんどです。

「復興特別住民税」は、2014(平成26)年度から2023(令和5)年までの所得に対して課税されますが、都道府県民税、市区町村民税それぞれ500円ずつ、つまり合計1,000円が加算されるという小規模なものです。

譲渡所得の税額をシミュレーションしてみよう

簡単な事例でシミュレーションしてみましょう。

〈事例〉新築購入した戸建て住宅(マイホーム)を売却

土地部分の譲渡額:2,000万円 取得額:1,200万円
建物部分の譲渡額:1,500万円 取得額:2,000万円(減価償却費相当額1,000万円)
譲渡費用:100万円

課税譲渡所得金額の計算式は以下の通りです。

課税譲渡所得金額=収入金額-(取得費+譲渡費用)-特別控除額

まずこのケースでの収入金額は、土地と建物を合わせた売却益の3500万円です。ここから取得費と譲渡費用を差し引くのですが、まずは取得費を計算してみましょう。取得費の計算式は上で説明した内容を踏まえ、以下のようになります。

取得費=(購入金額+設備費・改良費)-減価償却費

今回は設備費と改良費を考えないものとします。すると、取得費は「2,200万円=3,200万円-1,000万円」となります。

次に、特別控除額を差し引く前の課税譲渡所得金額を計算しましょう。譲渡費用は100万円ですから、課税譲渡所得金額は「1,200万円=収入金額(3,500万円)-取得費・譲渡費用(2,200万円+100万円)」となります。

特別控除がない場合であれば、長期譲渡所得(10年以上)の適用で税率は14.21%(居住用で10年以上保有した不動産の場合、譲渡金額6,000万円以下は14.21%となります)ですから、課税譲渡所得額は「170万5,000円=1,200万円×税率14.21%」です。

ちなみに、短期保有(5年以下)の場合、税率は39.63%ですので475万6,000円、居住用で5年以上10年未満の場合は税率が20.315%となり、243万8,000円が納税額となります。

住まいとして利用していたマイホーム売却では、「特別控除制度」によって大幅に税額負担が軽減されることがほとんどです。併せて、住まいとして利用していたマイホームの売却では、3,000万円の特別控除額が適用されます。今回の事例で特別控除額の適用がある場合、課税譲渡所得額は「-1800万円=収入金額(3,500万円)-取得費・譲渡費用(2,200万円+100万円)-3,000万円(特別控除額)」となり、課税額は0円です。

この事例からも分かる通り、一般的な規模のマイホーム売却では譲渡所得税が課税されないケースがほとんどであると言えます。

05マイホームの売却はタイミングの見極めが重要!

今回はマイホームの買い替えなどで生じる「不動産売買にかかる税金」について説明してきました。土地や建物の不動産売却で得た収益は「譲渡所得」として、普段の給料所得とは別の課税方式(分離方式)で課税対象となること、そして住まいとして利用していたマイホームを売却する場合は3,000万円の特別控除といった軽減措置があること、この2点を基本事項として押さえておきましょう。

もう1つ重要なのは、譲渡所得税は保有期間の長さによって大きく税率が変わるという点です。5年以上保有しているかが大きな分かれ目となっていて、居住用住宅の場合は10年以上保有していた不動産についてはさらに税率が軽減されます。従ってマイホームなどの不動産を売却するときは、そのタイミングをしっかり見極めることが極めて重要と言えるでしょう。

新井智美

監修:新井智美

CFP(R)認定者・一級ファイナンシャルプラン二ング技能士(資産運用)・DC(確定拠出年金)プランナー・住宅ローンアドバイザー・証券外務員

プロフィール

トータルマネーコンサルタントとして個人向け相談の他、資産運用など上記相談内容にまつわるセミナー講師を行う傍ら、年間100件以上の執筆・監修業務を手掛けている。

関連キーワード

事前審査・相談

ご利用上の注意

  • 本記事は情報の提供を目的としています。本記事は、特定の商品の売買、投資等の勧誘を目的としたものではありません。本記事の内容及び本記事にてご紹介する商品のご購入、取引条件の詳細等については、利用者ご自身で、各商品の販売者、取扱業者等に直接お問い合わせください。
  • 当社は本記事にて紹介する商品、取引等に関し、何ら当事者または代理人となるものではなく、利用者及び各事業者のいずれに対しても、契約締結の代理、媒介、斡旋等を行いません。したがって、利用者と各事業者との契約の成否、内容または履行等に関し、当社は一切責任を負わないものとします。
  • 当社は、本記事において提供する情報の内容の正確性・妥当性・適法性・目的適合性その他のあらゆる事項について保証せず、利用者がこれらの情報に関連し損害を被った場合にも一切の責任を負わないものとします。本記事には、他社・他の機関のサイトへのリンクが設置される場合がありますが、当社はこれらリンク先サイトの内容について一切関知せず、何らの責任を負わないものとします。本記事のご利用に当たっては上記注意事項をご了承いただいたものとします。

0