住宅の価格はどうやって決まるの?建築費用の抑え方も紹介
住宅を購入する際、大きな決め手となるのがその価格です。では、住宅の価格はどうやって決まるのでしょうか?今回は住宅の価格を決める要素、住宅の平均価格、購入時の予算の決め方などをご紹介します。
01住宅の価格はどうやって決まる?
住宅には定価のようなものはなく、原則として売り主が自由に価格をつけて良いことになっています。値付けの判断材料も物件によって異なるので一概には言えませんが、「需要」が大きな影響を与えていることは間違いありません。他の商品の価格と同じく、住宅の価格も買い手の需要が高ければ高いほど高価になります。つまり、買い手が重視する条件を備えた物件はそうでない物件よりも価格が高くなる傾向にあるということです。価格を左右する条件には、どのようなものがあるのか見ていきましょう。
駅からの距離
通勤・通学に鉄道を使う人が多い都市部では、駅からの距離が住宅の価格に大きく影響します。駅から徒歩10分以内のいわゆる駅チカ物件は人気が高く、値段も高く設定されています。ちなみに不動産の広告などで「駅徒歩○分」という表記を見かけることがあると思います。不動産の広告を規制する「不動産の表示に関する公正規約」で、徒歩所要時間は、徒歩1分=80mとして計算することが定められています。つまり、「駅徒歩10分」の物件は駅から約800mの距離にあるということです。ただし、同じ徒歩10分でも平坦な道と坂道とでは体への負担が異なりますし、途中に信号や踏切があると所要時間が長くかかる可能性があります。
築年数
中古住宅や中古マンションの場合、一般的には築年数が浅い物件は人気があり、値段も高く設定されています。現在の耐火・耐震基準を満たしていない築40年以上の物件は敬遠されることが多いため、販売価格が低くなる傾向にあります。
敷地の形・間取り
戸建て住宅の場合は住宅が建っている敷地の形が、価格に影響することがあります。たとえば道路に接する面が狭い、いわゆる「旗竿地」は総面積のうち住宅を建てられる面積が狭いため敬遠されがちで、一般的な土地よりも安く販売されているケースが見られます。
また、両サイドを他の住宅に挟まれている住宅よりも、角地に立つ住宅の価格が高くなるという傾向があります。裏表2面以上が道路と接している土地に建つ住宅も人気があります。
間取りも価格に影響する要素ですが、一般的には普通の間取りのほうが売れやすいと言われますが、コロナ禍で在宅ワークが広がる中で、間取りの人気にも変化があるかもしれません。
周辺環境
周囲の環境も住宅の価格に影響を及ぼします。人気の小学校がある学区、公園や緑地の多いエリアは子育て世帯に人気が高く、住宅の価格も高くなる傾向に。逆に治安が悪いエリアや迷惑施設に近い地域は敬遠されやすく、一般的には価格も低くなります。
方位
日当たりの良さを重視する人が多いため、方位も少なからず住宅の価格に影響します。マンションの場合は、リビングの窓の向きが南である物件の人気が高く、他の方位の部屋よりも価格が高く設定されることがあります。
眺望
眺望の良し悪しも住宅の価格に影響します。たとえば同じマンションでも富士山や東京タワーが見える部屋、夜景がきれいな高層階の部屋は他の部屋よりも価格が高めに設定されているケースが珍しくありません。逆に墓地に隣接している住宅や窓を開けても隣の住宅の壁しか見えない・・・という部屋は敬遠されがちで、価格も低めに設定されています。
他にもさまざまな条件がありますが、特殊なケースは別として、一般的な不動産の価格はこれらの条件と周辺の相場価格を参考に決められるケースが多いと考えて良いでしょう。
02住宅の平均価格はいくら?
実際にはどのくらいの価格の住宅が購入されているのでしょうか?長期固定金利の住宅ローン「フラット35」を提供する独立行政法人住宅金融支援機構が利用者を対象に調査したところ、2019年度の購入にあたっての平均所要資金は以下のとおりとなりました。
住宅の平均購入価格(2019年度)
住宅の種類 | 平均購入価格 |
注文住宅 | 3454万円 |
土地付き注文住宅 | 4257万円 |
建売住宅 | 3494万円 |
マンション | 4521万円 |
中古戸建 | 2574万円 |
中古マンション | 3110万円 |
出典:独立行政法人住宅金融支援機構「2019年度フラット35利用者調査」P9
注文住宅とは、文字通り施行主が建築会社に注文してオーダーメイドで建てる住宅のこと。外観のデザインや間取りはもちろん、素材まで施行主が決めることができ、自由度の高い住宅として人気があります。
建売住宅は、原則として土地と建物がセットで購入できる新築一戸建てのこと。既に建物が完成している状態で販売されているケースと、これから建物が建築されるケースがあります。注文住宅に比べて自由度は高くありませんが、注文住宅よりも安く購入できるケースが多く、入居までの期間も短く抑えられるのが魅力です。
特に都市部で人気の高いマンションは、新築・中古ともに戸建て住宅よりも平均購入価格が高くなっています。「マンションの購入を考えて物件を探しているけど、予算に見合った物件が見つからない」という場合は、戸建て住宅にも範囲を広げてみると、予算内で条件の合う物件が見つかるかもしれません。
03住宅購入時の予算の決め方
住宅を購入する場合は、まず予算を決め、その予算の範囲内で購入できる物件を探して建てるのが一般的です。では、住宅購入の予算はどのようにして決めるのが適切なのでしょうか?
予算を決めるにあたって1つの目安になるのが、住宅ローンの借入額です。一般的に全額現金で住宅を買う人は少数で、多くの人が金融機関で住宅ローンを借りて購入します。つまり、住宅ローンで借りる額=住宅購入に当てられる予算ということになるため、住宅購入の予算を決めるには、まずは住宅ローンの借入額を決めると良いでしょう。
住宅ローンの借入額を決めるときは、頭金と毎月の返済額の2つの観点から考えることが重要です。
頭金
住宅ローンを借りる際には、住宅の購入価格の1~2割を頭金として納めるのが一般的ですが、頭金の金額には特に決まりはないので、それより多く支払っても問題ありませんし、逆に頭金ゼロで借りられる住宅ローンもあります。しかし、頭金を支払わないと、その分借入額が増えて返済期間が長くなり、毎月の返済額が高くなるおそれも。また返済期間が長くなると、その分利息の支払いが増え、結果として総返済額が増えてしまいます。住宅ローンを利用してマイホームを購入するのであれば、ある程度の頭金を支払った方がよいでしょう。とはいえ、貯蓄をすべて頭金に使ってしまうと、新居での生活の準備にも支障が出ますし、万が一の病気やケガ、将来への備えも手薄になってしまいます。貯蓄の中から、頭金に回せる金額はいくらかを決め、その上で住宅ローンの借入額を決定しましょう。
毎月の返済額
住宅ローンを借りるには金融機関の審査があり、その審査を経て認められた金額を借りることができます。とはいえ、金融機関の審査で認められた満額を借りるのが必ずしも得策というわけではありません。借入額が多ければ多いほど、毎月の返済額も大きくなって、家計を圧迫してしまったり返済不能に陥ってしまったりするおそれがあるからです。一般的には返済負担率(年収に占める年間返済額の割合)が25%以下であれば安全と言われています。たとえば年収が600万円の人であれば年間の返済額が150万円以下(毎月の返済額は150÷12=12万5000円以下)なら無理なく返済できるということになります。無理なく払える返済額から逆算して住宅ローンの借入額を決めるようにすると安心です。
04購入費用を少しでも抑えるためにはどう工夫すれば良い?
住宅ローンの借入額を減らすためにも、住宅の購入費用は極力抑えたいもの。購入費用を抑える方法にはどのようなものがあるのでしょうか?
希望する立地や築年数の条件を下げる
住宅は、駅からの距離や築年数など条件が良ければ良いほど価格が高くなります。「駅徒歩5分以内」「築10年以内」という条件を少し譲歩すれば、建物そのもののレベルは同程度の住宅が安価に購入できる可能性が高まります。絶対に譲れない条件とそうでもない条件を取捨選択すると、よりリーズナブルな物件が見つかりやすくなります。
建築費用を抑えるための工夫をする
注文住宅の場合は、建材や工法も自分で選ぶことができますが、こだわりを追求すればするほど費用がかさんでしまいます。工事が簡単なシンプルな間取りにする、素材のグレードを下げるなどの工夫をすれば、全体的な建築費用を抑えることに繋がります。
金利の低いローンを選ぶ
住宅ローンの金利が低ければ低いほど、返済総額を低く抑えることができます。返済中なのであれば、より金利の低いローンに乗り換えることで返済総額を減らすことができる場合もあります。
仲介手数料の安い不動産業者を選ぶ
不動産売買の仲介手数料には、売買価格が400万円を超える場合、上限(売買価格の3%+6万円+消費税)は決められていますが、特に下限は設けられていません。不動産業者に交渉すれば。場合によっては仲介手数料を値下げしてもらえる可能性があります。
住宅ローン控除制度を活用する
住宅ローンを使って住宅を購入した翌年に確定申告をして「住宅借入金等特別控除」(通称:住宅ローン控除)を申請すれば、以降10年にわたって年間最大40万円(認定長期優良住宅や認定低炭素住宅等の場合は50万円)分、所得税の控除を受けることができます。なお2019年10月の消費増税への対応として、2019年10月から2020年12月までの間に入居した場合(特別特定取得:住宅取得時の消費税が10%で課される場合に限る)は、通常10年の控除期間が13年に延長される特例措置が取られています。新築・中古、マンション・戸建てを問わず利用できるので、活用してください。
多くの人にとって、一生で最も大きな買い物であるマイホームの購入。物件探しをしていると、つい理想を追い求めてしまうものですが、マイホーム購入の最終的な目的は住宅の購入そのものではなく、購入した住宅で快適に安心して暮らすことにあるはずです。ローンの返済で生活が困窮したり破綻したりしないためにも、適切な予算を見極め、しっかり返済計画を立てて臨むようにしましょう。
監修:相山華子
ライター、OFFICE-Hai代表、2級ファイナンシャル・プランニング技能士
プロフィール
1997年慶應義塾大学卒業後、山口放送株式会社(NNN系列)に入社し、テレビ報道部記者として各地を取材。99 年、担当したシリーズ「自然の便り」で日本民間放送連盟賞(放送活動部門)受賞。同社退社後、2002 年から拠点を東京に移し、フリーランスのライターとして活動。各種ウェブメディア、企業広報誌などで主にインタビュー記事を担当するほか、外資系企業のための日本語コンテンツ監修も手掛ける。20代で不動産を購入したのを機に、FP(2級ファイナンシャル・プランニング技能士)の資格を取得。金融関係の記事の執筆も多い。