過去10年間の土地の価格推移から分かる今後の地価の見通しは?

2020.10.07

土地の価格(地価)は需要と供給によって常に変動していますが、すべての地点が同じように変わるわけではありません。土地の購入を検討するときは、各地域の実情を踏まえた上で、今後の価格推移を見定めることが大切です。そこでこの記事では、首都圏や関西圏、名古屋圏といった都市部を中心に、過去10年間の土地の価格推移を紹介します。2020(令和2)年8月時点における最新情報や今後の地価動向についても解説していくので、土地の購入を考えている人は参考にしてみてください。

01土地の価格はどうやって決まるの?

土地の価格には定価が存在しませんが、価格を表す指標にはいくつかの種類があります。一般的に土地の価格を表す指標として有名なのが「一物四価(いちぶつよんか)」で、「ひとつの物(ここでは土地のこと)に対して4つの価格が定められている」という意味です。4つの価格とは「実勢価格(時価)」「公示地価」「路線価」「固定資産税評価額」を指しています。

実勢価格(時価)

「実勢価格」とは簡単にいうと「実際に不動産市場で取引されている価格」のことで、「時価」とも言われます。よく勘違いされますが、広告などに記載されている価格はあくまでも売主や不動産業者の希望売却価格なので、実勢価格(時価)ではありません。実勢価格は、該当する土地における過去の取引事例によって決まります。

公示地価

公示地価は毎年3月に国土交通省から公表される「国が調査したその地域における標準的な地価」を表す指標で、土地の1㎡当たりの価格を表しています。国が指定した全国約2万6000地点の標準地をさら地の状態(建物が建っていてもないものとして計算)で評価しているのが特徴です。公示地価は国が調査した公的データであるため信用性が高く、公共事業などの用地買収で費用を計算するときに使用されることもあります。

ただし公示地価は、都市部を中心として標準地が設定されるため、郊外のエリアでは土地の価格は分からない点がデメリットです。そのようなときは基準地価を参考にするのもひとつの方法です。基準地価は各都道府県が調査する土地の価格の指標で、調査方法は公示地価とほとんど変わりません。基準地価は毎年7月1日時点における土地価格であり、毎年9月下旬に発表されます。国が公表する土地価格が公示地価であるのに対し、基準地価は都道府県知事が公表する土地価格で、地点数は2万1000~2万2000です。しかし基準地価には、公示地価と違って都市部を中心として調査するというような規則はないため、郊外エリアでも設定されているケースがあり、公示地価を補完する役割も持っています。

路線価

路線価は国税庁が公表している指標のひとつで、「土地の価格は道路に面しているかどうかや地区区分によって変わる」ことを反映しているのが特徴です。公示地価や基準地価は1地点における1㎡当たりの土地価格であるのに対し、路線価は「その道路に面した土地の1㎡当たりの土地価格」という違いがあります。計算の際には土地の周りにある道路に路線価という価格を設定し、それをもとに「土地が面している道路の数」や「奥行価格補正率」など土地の利用効率を考えた数値で補正して算出する方法になります。

固定資産税評価額

固定資産税評価額は、毎年1月1日時点で土地を所有していると課税される固定資産税を算出する基礎になる指標です。各市区町村が「固定資産評価基準」にのっとって決定し、3年に一度評価替えが行われます。固定資産税評価額は基本的に実勢価格のおよそ70%程度に設定されるため、実際の土地取引価格との乖離(かいり)が大きくなりがちな点はデメリットです。

一物四価はいずれも土地の価格を表す指標という点では同じで、過去の取引事例が分かっている場合は実勢価格を参考にするとよいでしょう。しかし固定資産税評価額は、実勢価格との差が大きくなりがちなので、過去の取引事例が分からないときは主に「公示地価」「基準地価」「路線価」の3つが、土地の価格を決定する要素になります。

02全国の地価動向は?

過去10年の全国の地価動向は、2020(令和2)年3月に公表された公示地価までは右肩上がりに上昇を続けてきました。

出典:国土交通省ホームページ「主な主要都市における住宅地の「平均」価格の推移」

この要因として考えられるのは、「雇用環境の改善や低金利化」「インバウンド需要の増加」です。有効求人倍率は2008(平成20)年9月に起きたリーマンショック後に急落しますが、その後は団塊の世代による退職なども影響して新型コロナウイルスによる悪影響が反映される2020(令和2)年初頭まで、基本的に右肩上がりとなっていました。雇用環境が改善すれば安定収入を得られる人も増えて必然的に不動産市場は活発になるので、不動産価格上昇につながることも要因の一つです。

また、アベノミクスによる金融緩和や、日銀の超低金利政策による景気誘導策の影響も見過ごせません。金融緩和によって市場に資金が投入されれば、投資家や大企業はそのお金を元手に投資先を探します。そこに低金利策が加われば、お金を借りても支払う利息は少なくて済むので、不動産市場はより活発になるというわけです。

さらに、金融緩和によって他国通貨に比べて相対的に円安が進み、外国人観光客が訪日しやすい環境が整ったことも不動産市場の活性化を大きく後押ししていました。訪日外国人の数は2009(平成21)年の約679万人から2019(平成31・令和元)年には、およそ4.7倍にあたる 3188万人という過去最高の水準を記録したのです。訪日外国人が増えればホテルや商業施設がにぎわうため、それに目を付けたディベロッパーなどが積極的に開発を行うようになり不動産の価格高騰につながりました。

これらの要因によって日本の不動産価格は2009(平成21)年から2019(平成31・令和元)年までの10年間はほぼ右肩上がりに推移し、2020(令和2)年3月に公表された公示地価では全国の全用途平均が1.4%プラスになったと言えるでしょう。全国の全用途平均がプラスとなるのは5年連続で、日本の特定地域の特定用途だけが上昇しているわけではなく、全国的に住宅地、商業地、工業地のすべてが上昇基調になっていたのが特徴です。

03都市部の地価動向は?

政府によるさまざまな施策やインバウンド需要の増加によって、2020(令和2)年3月に公表された公示地価では全国的に地価が上昇傾向にあることが分かりました。しかし、最新の地価動向について調査する国土交通省の「地価LOOKレポート 令和2年度第2四半期(令和2年4月1日~7月1日)」では、様相が一変しています。それによると、主要都市の高度利用地等100地区では上昇1地区(前回73)、横ばい61地区(前回23)、下落38地区(前回4)となっており、下落または横ばいとなった地区が大幅に増加したのです。調査年月日からすると新型コロナウイルスによる悪影響がついに地価動向にも反映されてきたことが推察されます。そこでここからは2020(令和2)年3月の公示地価と、同年8月に公表された地価LOOKレポートの双方に記載されている情報をもとに、都市部における最新の地価動向を解説していきます。

首都圏の地価動向は?

2020(令和2)年3月に公表された公示地価では、東京都や埼玉県、神奈川県といった首都圏の中心地域における地価は軒並み上昇傾向でした。東京都の地価はリーマンショックの影響によって一時期下落傾向にありましたが、2020年東京オリンピックの開催が決まった翌年の2014(平成26)年からは大きく上昇しているのが特徴です。東京都では全域で住宅地、商業地、工業地のすべてが対前年比変動率でプラスの状況が7年も続いています。東京都の区域全域の平均変動率は2.3%で、前年の2.2%に比べると微増しており、上昇傾向に変わりはありません。

首都圏のなかでは、神川県や埼玉県も公示地価では上昇傾向が続いています。神奈川県の住宅地における年間の地価動向は、横浜市や川崎市、相模原市といった大都市や利便性のよいエリアを中心として3年連続上昇中です。埼玉県も住宅地は1.1%上昇しており、プラスは4年連続となっています。埼玉県は特に都心から30キロ圏内を中心に地価が上昇している傾向が強いです。これは東京都へ通勤している人が多いことが影響しているのでしょう。また千葉県も東京都と隣接する地域を中心として地価は上がっており、全用途の平均変動率は2014(平成26)年以降、上昇傾向にありました。

ところが2020(令和2)年8月に公表された地価LOOKレポートでは、東京圏の上昇は0地区(前回 26)で、横ばい 38 地区(前回 16)、下落5地区(前回1)というように、すべての指標が悪化しています。まだ下落している地区はそれほど多くありませんが、これまでのような上昇傾向から横ばいに変化している点には気を付けなくてはいけないでしょう。

また同じ首都圏でも、栃木県や茨城県、群馬県、山梨県といった周辺地域はもともと公示地価においても下落傾向にありました。その傾向は都心部から離れるほど顕著になっていることから、やはり通勤の不便さが原因だと考えられます。実際に地価が下落しているエリアの多い茨城県でも、守谷市についてはつくばエクスプレス沿線の土地需要が高く、公示地価の上昇は続いていました。総じて、首都圏の地価推移は新型コロナウイルスによる悪影響によって都心部は上昇傾向から横ばいに変わりつつあり、周辺地域はもともと下落傾向だった地価が、さらに下落するリスクが高まっていると言えます。

関西圏の地価動向は?

2020(令和2)年3月に公表された公示地価では、関西圏の地価推移は大阪府や京都府、兵庫県を中心として上昇傾向でした。特に商業地域の好調さが顕著で、大阪府と京都府は7年連続、兵庫県は5年連続で商業地の地価が上昇しています。一方、住宅地についてはバラつきがあり、大阪府は3年連続で上昇しているのに対して、兵庫県は12年連続で下落中です。

公示地価の詳細をそれぞれの地域別で見ていくと、大阪府は住宅地を中心として地価の二極化が進んでいるのが特徴です。吹田市や大阪市といった北摂エリアのなかでも、交通の利便性の高い地域を中心に上昇していますが、駅から徒歩圏外の地域では下落している結果となっています。京都府はインバウンド需要の恩恵が特に強い地域でしたが、商業地の地価の上昇幅は縮小しています。住宅地については京都市内や大阪府への通勤にも便利な長岡京市を中心として上昇している一方で、北部の山間地域は下落傾向です。兵庫県も京都府と同様に公共交通機関が充実している神戸市や芦屋市といった沿岸部を中心に地価は上昇していますが、山沿いの地域ほど下落しているエリアが多くなっています。

また関西圏に含まれる奈良県や滋賀県、和歌山県、伊賀地方を中心とする三重県の一部では商業地において上昇している地点もありますが、住宅地は軒並み下落傾向です。奈良県と滋賀県は12年連続、和歌山県にいたっては29年も連続で住宅地の地価が下落しています。

ここまで紹介してきた公示地価に対して、2020(令和2)年8月に公表された地価LOOKレポートによると、大阪圏の状況は上昇0地区(前回 25)、横ばい8地区(前回0)、下落が17地区(前回0)です。前回はすべての地区が上昇していたのに対して、今回は横ばい、または下落のみとなっており、急激に状況が悪化していることが分かります。

大阪府を中心とした関西圏では、新型コロナウイルスによる悪影響が及ぶまではトータルで地価は上昇傾向にあり、交通に便利な都市部とそれ以外の地方で二極化が進みつつある点は東京圏と同じでした。しかし2020(令和2)年8月に公表された地価LOOKレポートでは、東京圏で横ばいは多かったのに対して大阪圏は下落している地点が多く、新型コロナウイルスによる悪影響が、より早く顕在化している可能性があります。

名古屋圏の地価動向は?

2020(令和2)年3月に公表された公示地価では、名古屋圏の中心地である愛知県名古屋市の住宅地の地価は8年連続、商業地は7年連続で上昇していました。上昇幅が大きいエリアは、鉄道徒歩圏などの公共交通機関での移動に便利な地域で、特に中区では18.5%も前回より上がっています。名古屋圏の地価動向では、自動車産業などの地域経済の好調さを受けて名古屋市以外でも住宅需要が高まっているエリアがあるのが特徴です。

名古屋圏に含まれる三重県北部の四日市市では、住宅地の地価は0.1%(前年-0.1%)上昇しています。近鉄四日市駅周辺には商業施設も集まっており、生活しやすい環境が整っていることから人気が高まって地価の上昇につながっていたようです。四日市市や朝日町で住宅地の地価が上昇するのは実に28年ぶりのことで、公示地価が算定された時点において不動産需要が活発化していたことがよく分かります。

一方で、2020(令和2)年8月に公表された地価LOOKレポートによると名古屋圏は上昇0地区(前回9)、横ばい0地区(前回0)、下落9地区(前回0)です。前回調査ではすべての地区で上昇していたのに対して、今回はすべての地区で下落に転じています。どれくらいの期間に渡って名古屋圏の地価の下落傾向が続くかは分かりませんが、このままでは翌年に公表される公示地価が下落する可能性も高いでしょう。

04今後の地価推移は?

2020(令和2)年3月に公表された公示地価は、同年1月1日時点における土地の価格を表したものです。2019(平成31・令和元)年までの公示地価は政府や日銀による金融政策、インバウンド需要の好調さなどを反映して右肩上がりが続いていました。しかし、2020(令和2)年になってから起きた新型コロナウイルスによる悪影響の数々を反映したものではありません。そのため、2019(平成31・令和)年までの地価と2020(令和2)年以降の地価は別物として考えることが重要です。

実際に同年8月21日の日本経済新聞には、上述した同年8月に公表された地価LOOKレポートをもとにして「新型コロナウイルスによる経済活動の停滞が地価を押し下げ始めたのではないか」と論評する記事が出ました。これからは地価が順調に上昇していた都市部であっても、下落する可能性は高くなるでしょう。特に商業系の地区で下落した地点が多いことから、小売店や飲食店といった店舗を中心に外出自粛の影響が出始めていることが推測されます。今後は商業地を中心として公示価格が実勢価格の下落に追いつかないことが想定されるので、これから土地取引を進める場合には気を付けなくてはいけません。

また今後の地価推移を語る上で避けては通れないのが、東京オリンピックの開催可否についてです。2020(令和2)年3月24日に1年間の延期が発表されましたが、同年8月時点では世界的に新型コロナウイルスの感染拡大は止まっておらず、本当に開催されるかどうかは不透明な状況に変わりありません。徐々に新型コロナウイルスに効くワクチンの開発も進んでいますが、治験結果が十分でないこともあり、すぐに実用化できるかどうかに疑問符が付くのも事実です。政府や大会組織委員会は「再延期はしない」という方針をすでに打ち出しているため、このまま新型コロナウイルスの脅威が取り除かれなければ最悪のケースとして中止もありえます。すると経済効果が32兆円ともいわれるビッグイベントがなくなってしまい、日本経済への悪影響はさらに大きくなるでしょう。もともと不動産価格は東京オリンピック後に下落するのではないかと不安視されていましたが、その状況がさらに悪化する可能性は否めません。

その他にも忘れてはいけないのが、日本では東京オリンピック後にも2025(令和7)年に大阪万博、2027(令和9)年にリニア新幹線(東京~名古屋間)開業予定といったビッグイベントが控えていることです。それまでにワクチンが完成している保証はどこにもなく、仮にワクチンが完成していたとしても一度冷え切った外国人旅行客の訪日マインドを取り戻せるかどうかという別の問題もあります。もしも訪日客が2019(平成31・令和元)年までのような状態に戻らなければ、土地の価格上昇に貢献していたインバウンド需要という大きな柱は失われたままになってしまい、土地の価格が下落する可能性は高くなるでしょう。

ここまで述べてきたように、新型コロナウイルスによる悪影響が長引けば地価が下落傾向になる可能性は高いです。ただし裏を返せば、すべての不安要素はワクチンが完成すれば解決する問題だと言えます。新型コロナウイルスによる脅威さえ取り除かれれば土地需要が再び活発になって、2019(平成31・令和元)年までのように右肩上がりに地価が上昇する可能性はゼロではありません。大切なことは新型コロナウイルスに関する最新情報を入手しながら、相場を注視していく姿勢になります。

05不動産の購入を検討している人は慎重に判断を!

2019(平成31・令和元)年までの過去10年間の土地の価格推移は、都市部とインバウンド需要の高い地域を中心として上昇していました。しかし、2020(令和2)年初頭に発生した新型コロナウイルスによって、すでに悪影響が出始めているところがあり、今後もそうした傾向が続く可能性があります。悪影響が長引けば東京オリンピックや大阪万博の開催も危うくなり、さらに土地の価格が下落する可能性は高いです。不動産の購入を検討している人は失敗しないためにも、日本のみならず世界の新型コロナウイルス感染状況をよく見極めながら慎重に判断した方がよいでしょう。近い将来マイホーム購入を検討している人は、住宅ローンの借入可能額が分かる「住宅ローンシミュレーション」で、今から資産計画を立てておきましょう。

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