住宅の新築に必要な費用はどのくらい?各種資金を紹介
「新築住宅を購入したいけど、どれくらいお金がかかるのかわからないので・・・」と躊躇している人も少なくないのではないでしょうか。確かに新築住宅は中古住宅やマンションより高額な印象がありますが、実際にはどのくらいの費用がかかるのでしょうか?今回は新築住宅にかかる費用の内訳や費用を抑えるためのヒントを紹介します。
01家を建てるために必要な資金
住宅の新築にはさまざまな費用がかかります。特にはじめて家を建てる場合には、必要な資金についてイメージすることは簡単ではありません。具体的にどのような費用がどのくらいかかるのかを見ていきましょう。
土地取得費
相続や贈与ですでに土地を所有している場合や借地をする場合を除いて、住宅新築には土地の購入が欠かせません。
土地を購入するにあたって、広さや立地と並んで問題になるのが、土地の価格です。土地の価格には「定価」がなく、基本的に売り主が自由に設定することができますが、あまりに高い価格をつけると当然売れにくいので、一般的にはそのエリアごとの「相場」にあわせて値付けされるケースがほとんどです。では、その相場はどのようにして決まっていくのでしょうか?
俗に土地は「一物四価」(1つの土地に4つの価値がある)と言われています。四価とは「実勢価格」「公示地価」「相続税評価額(路線価)」「固定資産税評価額」の4つの評価額のことです。これら4つの評価額に「基準地価(基準地標準地価、都道府県調査地価)」を加えて「一物五価」と言われることもあります。これらをもとに値付けされた金額が各エリアの「相場価格」として、土地の値付けの目安となっています。
公示地価と基準地価については国土交通省の運営するサイト「土地総合情報システム」(https://www.land.mlit.go.jp/webland/)で確認することができるので、購入したい土地周辺エリアの相場感を確認してみてください。
なお、住宅ローン「フラット35」を運営する独立行政法人住宅金融支援機構がフラット35の利用者を対象に行なった調査「2019年度フラット35利用者調査」(※)によると、土地付き注文住宅の購入にかかった費用の平均は4257万円でした。注文住宅のみの平均は3454万円だったので、土地の購入価格の平均は約800万円だったと考えることができます。
(※)出典:独立行政法人住宅金融支援機構「2019年度フラット35利用者調査」P9
建築費用
続いて建築費用について見ていきましょう。一口に建築費用と言っても、建築方法によってその金額は大きく違ってきます。
先程も述べたとおり「2019年度フラット35利用者調査」によると、土地付き注文住宅の購入費用の平均は4257万円でした。これに対して建売住宅は3494万円で、両者の間には約760万円もの差があります。
注文住宅とは文字通り依頼主の注文を受けてゼロから建てる住宅のこと。依頼主が所有している、あるいは購入した土地に、希望をもとに家づくりをするため時間も費用もかかりますが、間取りやデザイン、建材や仕様に依頼主の理想を反映できるというメリットがあります。その意味で注文住宅は時間と費用がかかっても、細部にこだわって理想通りの家をつくりたいというタイプの人に向いていると言えるでしょう。
一方、注文住宅よりもリーズナブルな価格で販売されているのが建売住宅です。建売住宅とは、建築済みの状態で売りに出されている建物のことで、ほとんどの場合、土地とセットで販売されています。すでに建物が完成しており、間取りやデザインなども出来上がっているので、別途費用をかけてリフォームしない限り変更はできません。また、土地とセットで販売されているので、土地探しから始める注文住宅に比べて立地選びの選択肢も狭まります。
しかし、建売住宅は注文住宅ほど建築費がかからないため、購入費用を安く抑えることができますし、購入後すぐに入居できるというメリットもあります。立地や間取りについて最低限の条件をクリアすれば細部にはこだわらず、できるだけ費用を抑えたいという考え方の人には、注文住宅よりも建売住宅が向いていると言えるでしょう。
諸費用
家を建てるのに必要な経費は土地代と建築費用だけはなく、別途さまざまな手数料や税金などの諸経費がかかります。立地や広さなどによって異なるため一概には言えませんが、一般的に諸経費の総額は諸費用の総額は、物件価格の5~10%になると言われています。たとえば土地代と建設費用が3000万円の場合は、約150万円から300万円の諸経費がかかると想定しておいたほうが良いということです。新築時にかかる主な諸経費の内訳と金額の目安は次のとおりです。
項目 | 金額の目安 |
---|---|
仲介手数料 | 不動産の価格 × 3% + 6万円(上限、消費税別途)。土地や建物の売買を仲介した不動産業者に支払う。売り主が不動産業者である場合は不要 |
印紙税 | 契約書に貼る印紙代。土地や建物を売買するときの売買契約書、注文住宅を建てるときの建設工事請負契約書、金融機関から住宅ローンを借りるときの金銭消費貸借契約書それぞれにかかる。税額は契約書の種類と、そこでの記載金額によって異なる。例えば記載金額が1000万円超、5000万円未満の場合、売買契約書では1万円、工事請負契約書では1万円、金銭消費貸借契約書では2万円の印紙税がそれぞれ課せられる。2022年3月31日までに作成された売買契約書と工事請負契約書は軽減措置の対象となっていて、上記の税額はそれを適用したもの |
固定資産税・都市計画税の精算 | 固定資産税と都市計画税は、1月1日時点で固定資産課税台帳に登録されている人が納税義務者となる。売主が先払いしている引き渡し以降分の固定資産税と都市計画税を日割り計算して算出した額が精算金で、買主が負担する。起算日は地域の慣行で1月1日とするケースと4月1日にするケースがある。1月1日を起算日とした場合は、買主は引き渡し日から翌年の12月31日までの額を負担する。通常は引き渡し日に精算する。 |
不動産取得税 | 取得した不動産の固定資産税評価額の4%(2021年3月31日の取得までは軽減措置で3%に引き下げられている) |
登録免許税(所有権移転登記料) | 登記手続きの際に国に納める税金。税率は登記の種類によって異なる。所有権移転登記の税率については土地が固定資産税評価額の2%、新築建物は0.4%、中古建物は2%。住宅ローンの抵当権登記は借入額の0.4%(いずれも軽減措置がある) |
住宅ローン保証料 | 金融機関や、借入額、返済年数によって異なる。一般的には一括払いの場合は借入額の2%前後が目安。金利上乗せ払いの場合は、金利に0.2%前後が上乗せされる |
住宅ローン手数料 | 金融機関によって異なる。一般的には3万~5万円、あるいは融資額の2%程度が目安 |
02新築費用を少しでも抑えるためにはどう工夫すれば良い?
ここまで見てきたとおり、新築の住宅を購入するには多額の費用がかかります。少しでも費用を抑えるには、どうすれば良いのでしょうか?
建売住宅の場合はすでに価格が決まっているので、購入費用を抑えるにはより安い物件を探すか、売り主と価格交渉をするのが現実的な方法です。一方、注文住宅は価格が決まっていないので、努力次第で新築費用を安く抑えることができます。費用を抑えたい場合は、以下の方法を検討してみてください。
妥協できる点を見つける
せっかく新築住宅を建てるのだから・・・と言っても、すべての理想を実現しようとすると莫大な費用がかかってしまいます。予算をオーバーしないためにも、妥協できる点は諦めることも大切です。新築時には予算の関係で実現できないことも、後で経済的に余裕ができてからリフォームなどで実現できる可能性もあります。
設備のグレードを下げる
キッチンやトイレ、バスルームなどの設備は高機能なものを選べば選ぶほど高額になります。本当にその機能が必要かどうかを考え、不要な機能やあまり使わないと思われる機能は付けないようにすることで費用を抑えることができます。たとえば、キッチンの生ごみを処理するディスポーザーは頻繁に料理をする人には便利な設備ですが、ほとんど料理をしない場合は、不可欠な設備というわけではないはずです。
低価格の業者を選ぶ
同じ建築工事でも、選ぶ業者によって費用が異なります。できれば複数の業者に見積もりを取って、納得できる価格を提示してきた業者を選ぶようにしましょう。もちろん安ければ良いというわけではありませんが、依頼主の立場に立って、コストカットの努力をしてくれる姿勢を見せてくれる業者を選ぶことが大切です。
すまい給付金制度を活用する
消費税引き上げによる住宅取得者の負担を緩和するために国が創設した制度で、以下の要件を満たした場合、申請すれば国から最大50万円の給付金を受けることができます。
すまい給付金の受給要件
- 住宅の所有者であること
- 購入した住宅に実際に住んでいること
- 年収の目安が775万円以下であること
- 住宅ローンを利用していること(住宅ローンを利用していない場合は、年齢が50歳以上+年収の目安が650万円以下であること)
- 令和3年12月までに引渡され入居が完了した住宅であること
- 床面積が50㎡であること
- 住宅瑕疵担保責任保険へ加入した住宅または住宅性能表示制度を利用した住宅など、施工中に検査を受けていること
など
- 住宅ローン控除を受ける
住宅ローンを借りて新築住宅を取得し、確定申告をすると、「住宅ローン控除」を受けることができ、最長で13年間、年末ローン残高の1%が所得税から控除されます。控除額は1~10年目までと11年目以降とで次のように異なります。ローンの残高が多ければ多いほど控除額が大きくなるお得な制度なので、ぜひ活用してください。
・1~10年目
住宅ローン控除額 = 住宅ローンの年末残高(最大4000万円)× 控除率(1%)
・11~13年目
以下の1または2の計算式でもとめた値のうち、いずれか少ない方の金額
- 住宅ローンの年末残高または住宅の取得額(上限4000万円)のうちいずれか少ない金額の1%
- 住宅取得額 (上限4000万円)× 2% ÷ 3
※新築・未使用の長期優良住宅、低炭素住宅の場合は住宅取得額の上限が5000万円
このほか、自治体によっては新築住宅を建てる人への助成金制度を設けているところもあります。興味がある場合は、住所地の自治体に利用できる制度はないか確認してみるのも良いでしょう。 新築住宅は建築すること自体がゴールではなく、完成した住宅で安心して快適な暮らしを営むことが本来のゴールであるはずです。予算オーバーになって日々の生活が経済的に逼迫してしまうことのないよう、しっかり資金計画を立てた上で建築に臨むようにしましょう。
監修:相山華子
ライター、OFFICE-Hai代表、2級ファイナンシャル・プランニング技能士
プロフィール
1997年慶應義塾大学卒業後、山口放送株式会社(NNN系列)に入社し、テレビ報道部記者として各地を取材。99 年、担当したシリーズ「自然の便り」で日本民間放送連盟賞(放送活動部門)受賞。同社退社後、2002 年から拠点を東京に移し、フリーランスのライターとして活動。各種ウェブメディア、企業広報誌などで主にインタビュー記事を担当するほか、外資系企業のための日本語コンテンツ監修も手掛ける。20代で不動産を購入したのを機に、FP(2級ファイナンシャル・プランニング技能士)の資格を取得。金融関係の記事の執筆も多い。