一戸建てを買う前に考えたい!購入後の維持費はどのくらいかかる?
一戸建ての購入を検討し始めると、物件選びに住宅ローンのシミュレーション、引っ越し業者の手配など準備すべきことや考えることが山積みになってきます。しかし意外に見落としがちなのが、一戸建てに住み始めてからかかる維持費についてです。一戸建ての購入の際には住宅ローンの支払い以外に、どのくらい維持費がかかるのかを事前に把握しておくことも重要です。そこで今回は、一戸建て購入後の維持費に注目し、具体的にどんな費用がかかるのかを解説します。
01一戸建て購入後に必要となる維持費は?
一戸建て購入後に必要な「維持費」は、主に「税金」、「各種保険」、「家の修繕費」、「光熱費」の4つに分けられます。これらの費用は、住宅ローンの返済計画とは別に想定しておく必要がある点に注意しておきたいところです。ではまず、一戸建てを維持するためにまとまったお金が必要となる「家の修繕費」について説明します。
02家の修繕費はどのくらいかかる?
家の修繕が必要になるのは、購入してから「10年」が一つの目安です。10年を過ぎたあたりから、キッチンやバス、洗面所などの水回り部分で修繕が必要になるケースが多くなってきます。水回りは使用頻度の高い部分である上、10年以上経過した場合はキッチンやお風呂の規格自体も古くなっているので、買い替え時としては適切なタイミングといえるでしょう。直近のモデルと比べると節水能力も劣っているケースが多く、交換にかかるコストを将来的に節約できる光熱費でまかなうこともできます。
とはいえ水回りのリフォームは、高額になりがちです。例えばお風呂を全面リフォームすると、おおよその相場は100万~120万円ほど、キッチンを総入れ替えした場合も100万円以上、洗面台の交換だけでも30万円ほどの費用がかかります。
仮にキッチンとお風呂、洗面所の水回り部分を全面リフォームした場合、安く見積もっても200万~250万円ほどが必要な計算になります。250万円を一気に拠出するのが難しい場合、毎年、家の修繕費を積み立てておくと安心でしょう。例えば、この全面リフォームを購入してから10年後に行うと仮定すると、単純に「25万円=250万円÷10年」が毎年の積立金額になります。
しかし、リフォーム対象になるのは水回りだけではありません。水回りと同じくらい修繕が必要になってくるところが、建物の「外装」部分です。特に風雨にさらされ続ける「屋根」や「外壁」に関しては、こちらも10年経過したころから劣化部分が目立つようになってきます。
外壁の修繕は、劣化の程度や新調する素材の種類などによって費用に差が出るものの、一般的には「屋根の張替え」で50万~100万円ほど、外壁の修復はコーキング工事も含めて100万~200万円ほどかかる場合があります。こちらもトータルすると200万~300万円ほどの費用がかかることになるでしょう。
このような事情から一戸建ての修繕は、水回りと外壁を中心におおよそ10~15年に1度くらいのタイミングで、リフォームや修繕工事をする場合が多いでしょう。多少の劣化なら気にする必要はありませんが、修繕費を惜しんで放置して劣化が進んでしまうと、その分修繕費が高くつく可能性があります。つまり費用がかかるからと先送りせずに、時期を見極めて修繕をした方が逆にコストが安く済むということです。一般的には、購入後10~15年に1度くらいのタイミングで、水回りと外壁のトータルで400万~500万円ほどの修繕費が必要となることを想定しておいた方がいいでしょう。
03税金・保険はどのくらいかかる?
マンションを含め、持ち家を所有すると「税金」と「保険」の支払いが必要になります。どちらもマイホームを所有した場合は避けては通れない費用なので、どれくらいの金額がかかるのか、またその基本的な仕組みはどうなっているのかを把握しておきましょう。
固定資産税
固定資産税は毎年1月1日時点で、土地や建物などの不動産を所有している人に対し、各市区町村から課される地方税です。固定資産税は各市区町村が評価した「固定資産税評価額」にもとづき、「土地」と「家屋」に分けて、それぞれの納税額を算出するという仕組みです。細かな計算方法は複雑なのですが、土地、建物ともに購入価格の7割ほどの金額になるように調整されているので、とりあえずは「購入価格の7割が固定資産税評価額」と覚えておくといいでしょう。
ただし、納税額を決める際には軽減措置の適用があります。例えば「土地」の場合、条件に応じて評価額が6分の1、または3分の1になり、「建物」は課税床面積が120㎡までの部分の納税額が3年、もしくは5年にわたって2分の1(その翌年からは適用が外れる)に軽減されるという軽減措置があります(中古住宅は対象外)。
そして肝心な納税額の相場は、家屋の構造や設備、立地などによって違いはあるものの、一般的な規模の一戸建てで年間10万~15万円です。固定資産税は不動産を持つ上できわめて重要な税金なので、もう少し詳しく知りたいという方は以下の記事をご参考ください。
都市計画税
固定資産税とセットで課税されるのが「都市計画税」です。こちらも毎年1月1日時点で、市区町村が定めている「市街化区域内」に土地や建物などの不動産を所有している人に対し、毎年課される地方税です。計算方法は簡単で、「固定資産税評価額(課税標準)×0.3%(制限税率)」で算出できます。
都市計画税も住宅用の土地に対しては軽減措置が用意されているので、適用となると土地の評価額が3分の1、または3分の2となります。マイホームを建てた場合は軽減措置の対象となることが多いため、目安となる納税額は1年間で3万~5万円ほどになると考えておきましょう。
火災保険
火災保険は住宅ローンを組む段階で加入が必須です。そのため、自分たちの家のスペックに合った保険を選ぶことが重要になります。住宅が建つエリア(所在地)や建物の構造、さらに補償対象(家財も含めるかなど)、特約の種類と範囲、保険期間など、保険ごとに契約内容がさまざまなので、相場感をつかむことが難しいでしょう。
例えば東京都内にある一戸建てで、「面積100㎡、保険期間10年、保険の対象建物のみ、さらに補償火災・風災、割引なし」というプランの場合、1年間の保険料は1万5000円程度が相場です。実際には地震保険とも合わせて契約する方が多いので、火災保険だけでも年2万円を切ることはなかなか難しいといえます。もう少し具体的な金額を知りたいという方は、こちらの記事をぜひ参考にしてみてください。
地震保険
地震保険は火災保険とセットで組むことが多く、保険料はどの保険会社においても一律で決まっています。保険料は2019(平成31・令和元)年1月に改定されましたが、建物の構造や所在地によって決まる仕組みです。例えば東京都内にある一戸建てで、「建物評価額を1000万円、家財補償300万円」と想定した場合、地震保険料は非耐火構造の建物で年間2万7430円、耐火構造の一戸建て、年間1万7880円ほどです。自然災害の多い地域ほど、保険料が高くなる傾向にありますが、木造建物は7100~2万5000円、マンションなどは1万1600~3万8900円が相場となっています。
その他にかかる維持費
一戸建てを維持するための費用は、この他にも「光熱費」や「駐車場代」、そして地元の「自治会費」などが挙げられるでしょう。駐車場については持ち家に備え付けられているかどうかで大きな違いはあるものの、総務省統計局「小売物価統計調査」によると、月極駐車場の全国平均は1万円となっています。都心部や大都市内だと相場は上がり、東京都内だと平均2万6219円、大阪市内では平均2万円です(2021[令和3]年1月現在)。
光熱費については、こちらも総務省統計局の「2020年 家計調査報告(家計収支編)」を参考にすると、二人以上の世帯でのひと月あたりの水道光熱費の全国平均額は2万1836円となっています。
さらに自治会費ですが、一戸建てに住むと町内会や自治会に入る方が多いでしょう。費用は安いところで200円、高いところで2万円を納めるケースが多いようです。自治会費は地域やエリアによって違いが大きい点が特徴といえます。
04年間でどのくらいの維持費がかかる?
ここまで紹介してきた金額を目安に、年間どのくらいの維持費がかかるか計算してみましょう。なお、「駐車場代はなし」と仮定します。
- 固定資産税:10万円
- 都市計画税:3万円
- 修繕費:30万円
- 保険料(火災・地震保険):2万円
- 自治会費:2万円
上記を合計すると47万円になります。住むエリアや家のスペックによって、もう少し費用がかさむ可能性もありますが、目安としては年間40万~50万円前後、月換算すると3万~4万円といったところでしょう。
維持費を上手に抑える方法は?
できるだけ維持費は抑えたいところですが、税金や保険などの固定費は抑えようにも限界があります。そこで注目したいのが、修繕費をできるだけ節約する方法です。建築素材の選び方一つでも耐用年数が違ってくるので、建築時から今後を見据えた選択をすることが大事です。
住宅建築時にメンテナンスフリーの建築材を選んでおく
屋根や外壁素材などの建築材は、常に新しい素材が登場しています。そのため、メンテナンスフリーの素材、耐用年数の長い素材を相談して選ぶといいでしょう。一般的にはタイル材、サイディング材、銅板材など耐久力が高い素材です。ただし、どんな素材でも全くメンテナンスが必要のない素材は存在しませんし、耐久力のある素材は比較的高額なので、予算と相談しながら決めていく必要があるでしょう。耐久力が絶対に必要となる屋根に関しては、粘土瓦やガルバリウム鋼板がおすすめです。状態によっては、50年以上の耐用年数を期待できます。
自分でできる範囲でこまめな手入れを心がける
外壁や水回りなど、専門的な技術が必要な部分について自分で修復するのはおすすめしません。熟練の職人でないと施工の難しい部分ですし、下手に素人が手を出すとかえって修繕費がかかってしまうおそれもあります。ただし、フローリングのキズや壁の細かなひび割れなど、自分でもすぐに補修できる部分はこまめに修復しておくといいでしょう、劣化を防ぐことができるだけでなく、後々に大規模な修復をする場合でも費用を抑えることができる可能性があります。
05住み始めてから発生する維持費についても事前に把握しよう
一戸建てを購入するときには、どうしても頭金や住宅ローンの返済費用など、物件の購入費用のことで頭がいっぱいになりがちです。しかし実際に一戸建てを購入して住み始めると、さまざまな維持費が必要になります。こうした費用は、年間40万~50万円という金額になってきますから、しっかりと資金計画に含めておく必要があります。今回ご紹介した点をしっかりシミュレーションして、快適な一戸建ての暮らしを実現しましょう。
監修:新井智美
CFP®/1級ファイナンシャル・プランニング技能士
プロフィール
トータルマネーコンサルタントとして個人向け相談の他、資産運用など上記相談内容にまつわるセミナー講師を行う傍ら、年間100件以上の執筆・監修業務を手掛けている。
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