住宅ローンの「比較なし」契約が6割超、日銀政策転換で浮かぶ家計の想定外リスク
住宅金融支援機構が2026年1月に行った最新調査の結果から、住宅ローン利用者のうち実に65.6%が、他の商品と比較することなく契約している実態が判明しました。 日銀のマイナス金利解除やその後の利上げの影響を受け、住宅ローン利用者の約半数が借入計画を見直している反面、依然として1社のみで決めるケースが主流です。こうした比較不足は、金利上昇局面において、将来の負担の増大や家計の圧迫につながるおそれもあるでしょう。 本記事では同調査のデータをもとに、「金利のある世界」における住宅ローン比較の重要性についてお伝えします。
01住宅ローン比較なしが6割超、提携ローン依存の実態
住宅金融支援機構『住宅ローン利用者調査(2026年1月調査)』によれば、全体の65.6%が「現在借りているローンのみを検討した」と回答しました。複数を比較した場合でも、同じ金利タイプで比較した人が20%以上を占め、異なる金利タイプで比較した割合は13.8%にとどまっています。
この背景にあると考えられるのが「提携ローン」の存在です。物件購入時、不動産会社から紹介されたローンを他のローンと比較せずに、契約しているケースも多いと考えられます。実際、利用した住宅ローンを知った情報源は「住宅・販売事業者」(44.9%)が最も多く、金融機関や住宅ローン比較サイトなどを大きく上回っているのです。
日銀の政策転換により49.7%が設計変更
一方で、2024年3月以降の日銀によるマイナス金利政策の転換は、住宅ローン利用者の意識を大きく変えたということも浮き彫りになりました。
同調査では、49.7%が日銀の政策転換によって、住宅ローン選択に「何らかの変化があった」と回答しています。具体的には「借入額を減らした」という人が最も多く、以下「返済期間を長くした」「返済期間を短くした」という回答が続きます。
こうした動きは「超低金利が続く」という前提に疑問を持つ人が増えた表れであり、多くの人が、契約前にローン設計の見直しを迫られているとも考えられるでしょう。
金利上昇への理解と不安のギャップ
同調査において、今後1年間の金利見通しについて「上昇する」と回答した割合は7割を超えており、2025年4月調査に比べて大きく増えました。しかし、選んだ金利タイプは「変動型」が75.0%と圧倒的であり、その商品を選んだ理由として「金利の低さ」と回答した人は62.0%にも上っています。
つまり、多くの人が高まる金利上昇リスクを意識しつつも、実際の検討や選択の見直しには至っていない状況が見て取れるのです。
金利上昇局面で懸念されるのは、単に支払額が増えることだけではありません。例えば、急激な金利上昇で月々の返済額が利息分にも満たず、元本が減らないまま「未払利息(支払いきれなかった利息)」が積み上がるリスクもあります。また、月々の返済額が増えれば、将来の教育費や老後資金も圧迫されるでしょう。
不安は募る一方、実際の行動につながらないという「認識と行動のギャップ」こそが、金利上昇局面における大きなリスクといえるかもしれません。
02借り入れ前に押さえておきたい住宅ローン比較のポイント
金利上昇への不安と向き合い、しっかり比較したうえで決めるには、どのようなポイントを意識すればいいのでしょうか。ここでは、住宅ローンの借り入れ前に最低限チェックしておきたい3点を紹介します。
金利が一定程度上昇した場合の返済シミュレーションをする
同調査によると、月々の返済額が3万円増加した場合、どう対応すればいいか「見当がつかない、わからない」と回答した人が27.2%いました。月々の返済額が5万円増加した場合だと、その割合はさらに増えて38.4%に上ります。
つまり、金利上昇リスクが高まっていることを認識しつつ、実際に負担が増えた場合をイメージできていない人も少なくありません。想定外の支出増が家計を圧迫する大きな理由は、上がる前に十分なシミュレーションをしていないからなのです。
変動金利の住宅ローンを借りる場合、金利が0.5%、1%上昇した場合の月々の返済額や総返済額の変化もシミュレーションしておきましょう。
金利タイプごとのリスクの違いを知る
「金利の低さ」を理由にローンを選ぶ人が多いと紹介しましたが、金利の高低を比較するだけでは、十分に検討できているとはいえません。重要なのは、金利タイプごとのリスクの性質を理解し、自分や家族のライフプランやリスク許容度に適したタイプを選ぶことです。
人気の変動型は、当初の金利が他に比べて低い一方、金利上昇局面では返済額が上昇するリスクがあります。固定期間選択型は、当初一定期間の支払額が安定するものの、固定期間終了後の再選択にはリスクを伴うでしょう。全期間固定型は、最初から返済額が見通せる安心感が魅力ですが、当初の金利は他の2タイプより高くなります。
目先の負担軽減ばかりを優先していると、将来の家計に大きな影響を及ぼすおそれもあります。金利タイプを選ぶ際は「金利がどう動くか」ではなく、「金利が動いたとき家計はどうなるか」という視点で慎重に検討しましょう。
返済期間変更が総支払額に与える影響を理解する
日銀の政策転換を受けた住宅ローンに関する行動で、「借入額の減額」に次いで多かったのが「返済期間の変更」でした。返済期間を長くすれば月々の返済額を抑えられる一方、全期間で支払う利息額は増えます。反対に短くすれば支払利息は減るものの、毎月の返済負担は重くなるでしょう。
ここで大切なのは、返済期間の設定がライフプランに大きな影響を与えるということです。返済期間を、単なる「月々の返済額や総返済額の調整手段」として捉えるのはリスクがあります。教育費のピークや老後資金の準備など、今後想定される支出が増える時期を見据え、適切な返済期間を設定すべきでしょう。
03住宅ローンは「借りられる額」ではなく「返済し続けられる設計」に
長らく続いた超低金利時代が終わり、住宅ローンの金利環境はまさに転換点にあります。金利上昇が現実のものとなる中、ローン設計で大切なのは「いくら借りられるか」ではなく、「金利が上がっても無理なく継続して返済し続けられるか」という視点です。
今回紹介した調査が示すように、金利環境の変化を認識しつつ、比較を十分に行わないまま契約するケースも少なくありません。長く安心して住み続けるためには、不動産会社の提案を鵜呑みにするのではなく、複数の商品を比較し、将来の金利上昇を見込んでシミュレーションすることが重要です。
複数の商品を比較して、自分に合った住宅ローンを見つけたいなら「スゴい住宅ローン探し」のサービスをぜひご活用ください。
「住宅ローン保証審査」を使えば、まだ物件が決まっていない段階でも「いくらまで借りられるのか」をすぐに審査できます。「住宅ローン最新金利ランキング」でも、具体的な月々支払額や総支払額の目安を見ながら、借入可能額のチェックが可能です。 これからマイホーム検討をスタートするなら、上記のサービスを上手に使って、将来も安心して住み続けられる家づくりを目指しましょう。
監修:新井智美
CFP®/1級ファイナンシャル・プランニング技能士
プロフィール
トータルマネーコンサルタントとして個人向け相談の他、資産運用など上記相談内容にまつわるセミナー講師を行う傍ら、年間100件以上の執筆・監修業務を手掛けている。
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