2026年度税制改正で住宅購入はどう変わる?住宅ローン減税まとめ
2025年12月19日、与党である自由民主党の税制調査会で2026年度の税制改正大綱が取りまとめられました。その中で特に注目されるのは住宅ローン減税の延長と内容の見直しですが、それ以外にも新築住宅の固定資産税軽減措置や登録免許税の特例など、住宅取得全般に関する制度の改正が含まれています。 今回の改正によって、今後は住宅取得時に支払う税金が変わる制度もあるため、後悔しない物件選びのための基準や購入タイミング、無理のない資金計画にも影響が及ぶことが予想されます。そこで、この記事では2026年度の税制改正で「住宅ローン減税の何が変わったのか」を軸に、これから住宅を購入する人が事前に押さえておきたい注意点や考え方をわかりやすく解説します。
01なぜ2026年度の税制改正が住宅購入に大きな影響を与えるのか
2026年度の税制改正では住宅ローン減税をはじめ、固定資産税や登録免許税など住宅取得に直結する制度がまとめて見直されるのが大きな特徴です。また、制度の利用に必要な住宅の省エネ性能や床面積、子育て世帯に該当するかどうかといった適用条件が再整理されたことで、今後は同じ価格帯の住宅でも選び方によって税負担に差が出る可能性があります。そのため、住宅購入予定がある人は、これから紹介する改正後の各制度を前提に購入時期や借入額、返済計画を改めて検討することをおすすめします。
022026年度の税制改正で変わった主なポイント
2026年度の税制改正ではさまざまな項目で見直しが行われますが、住宅購入に関する点で特に注意したいのが以下の7点です。それぞれの内容をよく理解して、物件選びや資金計画に活かしてください。
中古住宅の住宅ローン減税の適用期間が13年に延長され、控除内容が見直された
今回の税制改正による住宅ローン減税の見直しでは、近年購入者が増えている中古住宅への適用拡大が特徴です。もともと、現行の住宅ローン減税の適用期間は2025年12月31日までの入居が対象で、控除期間は新築住宅が13年間なのに対して中古住宅は10年間でした。それが、今後は新築住宅と同水準になる方向で調整されています。
また、これまで適用対象となる限度額は新築住宅の最大5000万円に比べて中古住宅は最大3000万円と低かったのですが、これも最大4500万円まで引き上げられ新築住宅並みとなりました。ただし、控除期間の延長および限度額の適用対象となるには認定住宅(省エネ基準適合住宅やZEH水準省エネ住宅)などでなければなりません。
2030年頃までの継続を視野に入れた制度設計となっており、子育て・若者夫婦世帯には借入限度額が上乗せされる措置が現行のままとなったことも含めて、これまで以上に利用しやすくなったといえるでしょう。
ただし、その一方で「災害リスクが極めて高い一部の区域(レッドゾーン)で建築される新築住宅は対象外」、「ZEHレベルなど性能が最も高い住宅でないと満額の控除を受けられない」といった点には注意してください。
近年は政府を挙げてカーボンニュートラルなどの環境問題に取り組んでいる状況もあり、省エネ性能が低い住宅は受けられる控除が少なくなったり、そもそも利用できなかったりするケースもあります。省エネ基準に適合した住宅は断熱性・省エネ性が一定基準を満たしていれば標準的な控除が受けられるものの、「性能が高い住宅ほど控除額が大きくなる」という方向性が今回の改正でより明確になっています。
住宅ローン減税の床面積要件が見直され、40㎡台の住宅でも使いやすくなった
今回の税制改正でより住宅ローン減税が利用しやすくなった点としては「床面積要件の緩和」も挙げられます。現行制度では「床面積50㎡以上が原則、40~50㎡は所得制限付き」が要件となっていましたが、改正後は40㎡台でも利用しやすくなるよう条件が整理されました。ただし、その年分の所得税に係る合計所得金額が1000万円を超える場合は、適用されない点は現行のままです。
もともと都市部では住宅価格の単価が高いため、予算の関係から40㎡台のコンパクトな物件のニーズも高かったのですが、床面積要件の関係もあってこれまでは住宅ローン減税を利用しづらい環境にありました。しかし、今回の改正で単身層やいわゆるDINKSの方たちも利用しやすくなっています。
先述したように、住宅ローン減税は政府の方針もあって「住宅性能を満たしているか」が重視される方向で、40㎡台でも性能基準を満たしていれば控除額の大きいカテゴリーに入ることが可能です。そのため、コンパクトな高性能住宅が選びやすくなっており、消費者の住まいへのニーズの変化に対応した改正となっています。
リフォーム減税・既存住宅の優遇措置が延長
今回の改正では物件価格高騰によって、ニーズが高まっている中古住宅取得を後押しする優遇措置の期間も延長されます。具体的には耐震・省エネ・バリアフリーなどにつながるリフォームをした際に、所得税や固定資産税を控除、軽減できる現行の特例措置が2年間延長(所得税:令和8年1月1日~令和9年12月31日、固定資産税:令和8年4月1日~令和10年3月31日)です。
この特例が適用されれば、以下の表のように所得税は「標準的な工事費用相当額をもとに算出された額の10%等を所得税額から控除」、固定資産税は「工事完了翌年度の税額を一定の割合で軽減」されるため、これから中古住宅取得を考えている人にとって追い風となるでしょう。
先述した住宅ローン減税の中古住宅への対象額拡大と合わせ、「購入した中古住宅を自分好みにリフォームしたい」という人に向けて取得と改修をセットで支援する制度が継続されることにより、これまで以上に中古住宅を選びやすい環境となっています。
既存住宅のリフォームに係る特例措置
【所得税】標準的な工事費用相当額をもとに算出された額の10%等を所得税額から控除
| 対象工事 | 対象工事限度額 | 最大控除額(対象工事) | |
|---|---|---|---|
| 耐震 | 250万円 | 25万円 | |
| バリアフリー | 200万円 | 20万円 | |
| 省エネ | 250万円(350万円) | 25万円(35万円) | |
| 三世代同居 | 250万円 | 25万円 | |
| 長期優良住宅化 | 耐震+省エネ+耐久性 | 500万円(600万円) | 50万円(60万円) |
| 耐震or省エネ+耐久性 | 250万円(350万円) | 25万円(35万円) | |
| 子育て | 250万円 | 25万円 | |
【固定資産税】工事完了翌年度※1の税額を以下の割合に軽減
| 対象工事 | 税額 |
|---|---|
| 耐震 | 1/2 |
| バリアフリー | 2/3 |
| 省エネ | 2/3 |
| 長期優良住宅化※2 | 1/3 |
・耐震改修をした場合は2年間1/2に軽減
・耐震改修をして認定長期優良住宅に該当することとなった場合は翌年度1/3、翌々年度1/2に軽減
※2 耐震改修又は省エネ改修を行った住宅が認定長期優良住宅に該当することとなった場合
出典:国土交通省「令和8年度税制改正要望事項」
新築住宅にかかる固定資産税の負担軽減が延長
新築住宅の固定資産税を1/2に軽減する措置(戸建て3年間、マンション5年間)についても、現行の特例制度をそのまま2年間延長(令和8年4月1日~令和10年3月31日)されます。同制度を活用すれば新築後の一定期間は税負担が軽くなり、住宅ローン減税など他の控除と組み合わせることで大きな節税効果を期待できます。
その結果、住宅購入直後の税負担を抑えられるので、家具の購入費用や引っ越し代など、何かとかかりがちな入居に必要な家計負担も軽くなるでしょう。特に子育て世帯や初めて住宅を購入する人の負担軽減につながるため、生活に直結する優遇制度だといえます。
住宅購入時の登記にかかる税金の負担軽減も延長
住宅購入費用には、一般的にその住宅が自分のものであることを公的に証明するための登記にかかる費用も含まれます。今回の税制改正では、その登記費用に関する税率の特例措置も現行のまま3年間延長(令和8年4月1日~令和11年3月31日)です。この特例を利用することで、具体的には以下の税率が適用されます。
土地の売買による所有権の移転登記等の税率の軽減
| 登記の種類 | 本則 | 軽減措置 |
|---|---|---|
| 所有権の移転の登記 | 2.0% | 1.5% |
| 所有権の信託の登記 | 0.4% | 0.3% |
住宅用家屋の所有権の保存登記等の税率の軽減
| 登記の種類 | 本則 | 軽減措置 |
|---|---|---|
| 所有権の移転の登記 | 2.0% | 0.3% |
| 所有権の保存の登記 | 0.4% | 0.15% |
住宅取得資金の貸付け等に係る抵当権の設定登記の税率の軽減
| 登記の種類 | 本則 | 軽減措置 |
|---|---|---|
| 抵当権の設定の登記 | 0.4% | 0.1% |
登記費用は住宅購入時に10万~数十万円程度かかるケースもありますが、負担を抑えられる制度が今後も同条件で利用できます。つまり、住宅ローン契約時の初期費用を下げられるメリットが今後も続くということです。
認定長期優良住宅に対する税の優遇が継続
近年、カーボンニュートラルを目指す政府の方針を受けて、住宅業界でも長寿命で性能の高い住宅を建てることが推進されています。そのため、長寿命で性能の高い住宅をランク付けし、取得時や入居後の税負担が一般住宅よりも軽くなる制度がすでにありますが、今後も不動産取得税の減額や固定資産税の軽減措置が一部見直しのうえで引き続き適用されることになりました。
どちらも省エネ性能の高い認定長期優良住宅がより優遇されるように改正されていて、不動産取得税については課税標準からの控除額を一般住宅特例よりも増額(一般住宅:1200万円 → 認定長期優良住宅:1300万円)し、固定資産税については以下のように税額の減額措置(1/2)の適用期間が延長されます。
- 戸建て
- 一般住宅:3年間 → 認定長期優良住宅:5年間
- マンション
- 一般住宅:5年間 → 認定長期優良住宅:7年間
今回の改正では、上記のような内容で特例措置を2年間延長(令和8年4月1日~令和10年3月31日)することになり、耐震性・断熱性・劣化対策など、長く安心して住める住宅を建てやすくなったといえます。
住み替え・買換えで使える税制特例も延長
今回の税制改正では、これから住み替えを検討する人にとって重要な特例の期限も延長されます。それが、「マイホームを売ったときの控除」で、現行の特例措置が2年間(令和8年4月1日~令和10年3月31日)延長されました。
当該制度は自宅を売ったときに3000万円の特別控除を受けられる制度で、この制度を利用すれば自宅を売却して利益が出ても3000万円までは税金がかかりません。
また、売却するのと同時期(売却した年の前年から翌年までの3年間)に次のマイホームを買う場合は、その譲渡益の課税を繰り延べられる「居住用財産の買換え等に係る特例措置」も現行のまま2年間(令和8年1月1日~令和9年12月31日)延長することになりました。
新しい住宅を買い替える際に売却損や売却益を損益通算しやすくなることで、ライフステージの変化に合わせた住み替えが容易になり、住宅市場全体の流動性を高めることが期待されています。
032026年度の税制改正を踏まえて、まずは資金計画を見直そう
2026年度の税制改正では住宅ローン控除や固定資産税の軽減措置など、これまでもあった多くの住宅関連制度が、内容を調整したうえで引き続き利用できる仕組みに改正されます。
ただし、税制改正の詳細は国土交通省や国税庁の公式サイトで、最新情報をチェックすることも忘れないようにしてください。
改正によって、これまで以上に性能の高い認定長期優良住宅を選ぶメリットが明確になるうえ、中古住宅の取得やリフォームに対する優遇措置も継続されたことで、消費者にとって住宅選びの選択肢が広がる環境が整備されたといえるでしょう。
ただし、その一方で住宅ローン控除の対象要件や住宅性能基準など、一部の制度は適用条件が改正されているため、従来の基準のまま利用できると判断すると思わぬ誤算が生じるかもしれません。大切なことは今回の改正を踏まえ、自分にとってどの制度が合っているかをよく確認し、改正後の基準で資金計画を立て直すことです。
購入予算や返済計画の見直しには、サイト内にある住宅ローンシミュレーターが便利です。住宅ローン金利ランキング&最新動向では、ランキングを見ながら毎月の返済額や総支払額を確認することもできます。これから資金計画を立てる予定の人は、ぜひ参考にしてください。
監修:新井智美
CFP®/1級ファイナンシャル・プランニング技能士
プロフィール
トータルマネーコンサルタントとして個人向け相談の他、資産運用など上記相談内容にまつわるセミナー講師を行う傍ら、年間100件以上の執筆・監修業務を手掛けている。
関連キーワード






