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金利変動時代の新しい選択肢!「預金連動型住宅ローン」の利点と見逃せないポイントも
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日本銀行(以下、日銀)は2025年1月に開催した金融政策決定会合で、政策金利を0.5%程度まで引き上げることを決定しました。それに伴い、今後は政策金利と密接な関係にある住宅ローン金利も上昇することが懸念されるなか、東京スター銀行が始めた「預金連動型住宅ローン」への関心が消費者の間で高まっています。預金連動型住宅ローンは金利変動に柔軟に対応できるうえ、返済負担を軽減しながら資産の流動性を確保できるのが特徴です。 このローンは、基本的に預金残高が多い人ほど返済負担が軽くなる仕組みのため、特に資産を持つ層にとって住宅ローンの有力な選択肢となり、新しい資産形成の手段としても注目を集めています。そこで、本記事では、各金融機関が「預金連動型住宅ローン」に力を入れている背景をはじめ、利用する際のメリットや注意するべき点について詳しく解説していきます。
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01預金連動型住宅ローンとは?
預金連動型住宅ローンとは、「同一の金融機関で住宅ローンと預金口座を利用している場合に限り、預金残高に応じて住宅ローンの金利負担を軽減する商品」です。これまで日本では低金利環境下で金融機関同士の顧客獲得競争が激化し、各金融機関は少しでも低い金利を提示したり、独自のサービスや特典を提供したりして差別化を図っていました。そのなかで東京スター銀行が預金連動型住宅ローンの取り扱いを開始し、現在ではその人気の高さから類似商品を他の金融機関でも取り扱うようになっています。
このローンでは、住宅ローンの借入残高のうち、預金残高に応じた金額に対しては金利がかからない、または支払った利息の一部がキャッシュバックされることで、実質的な金利負担を軽減できるのが特徴です。例えば、住宅ローンの借入残高3000万円、預金残高1000万円の場合、差額の2000万円部分にのみ金利がかかる仕組みです。そのため、預金残高が多ければ多いほど金利負担を少なくできます。
預金連動型住宅ローンは比較的新しい商品であり、取り扱う金融機関が限られていることや、契約当初の金利および手数料が従来型の住宅ローンより高めに設定されているケースが多い点には注意が必要です。しかし、その一方で預金を活用することで金利負担を抑えられる仕組みが評価され、住宅ローンを検討する人々の間で関心が高まっています。
「住宅ローン × 預金」の相乗効果を活かせる金融商品
これまでの住宅ローンは、借入残高全体に対して金利が適用されるのが一般的でした。しかし、新しく登場した預金連動型住宅ローンでは、預金残高分の借入残高には金利がかからないため、預金残高が多い人ほど利息負担を軽減できるのがメリットです。預金を手元に残した状態で金利負担を軽減できるため、預金をそのまま緊急時の資金にしやすいなど、流動性の高い資産として確保しておけます。
また、預金連動型住宅ローンでは金利負担が軽減されても住宅ローンの残高自体は減らないため、住宅ローン控除をフル活用できるのもメリットです。住宅ローン残高の減少に伴って住宅ローン控除の控除額が減ってしまう繰り上げ返済とは異なり、高い節税効果を保ちながら金利負担を軽減できます。
02金融機関が預金連動型住宅ローンに注力する背景
預金連動型住宅ローンは「預金残高に応じて金利負担が軽減される」という、これまでにない発想から誕生した住宅ローンで、現在、各金融機関は販売に力を入れています。金融機関が販売に力を入れる背景には、「金利変動への対応」「資産運用とローンの統合ニーズ」などの要因が考えられ、今後、消費者の間でこうした商品が広まっていくかもしれません。ここでは、金融機関が預金連動型住宅ローンの販売に注力する背景を紹介します。
日本の金利環境の変化
金融機関が預金連動型住宅ローンに注力する理由の一つに、日本の金利環境の変化が挙げられます。日本では2013年から景気刺激策の一環として異次元の金融緩和が行われていましたが、世界情勢の変化を受け、日本でもインフレが進み始めたことを背景に、2024年3月にマイナス金利解除に踏み切りました。その後も、日銀の政策金利は段階的に引き上げ、2025年1月には0.25%から0.5%へと引き上げを決定しました。
金利が上昇すると、特に高額な借り入れをしている変動型住宅ローン利用者の返済負担が増加する可能性があります。その点、預金連動型住宅ローンは、預金残高に応じて金利負担が軽減されるため、銀行にとっては借り手の金利変動リスクを緩和でき、住宅ローンの利用を促進しやすくなるという利点があります。
資産運用と住宅ローンの返済を両立させたいニーズの高まり
預金連動型住宅ローンは、預金残高に応じて住宅ローンの金利負担を軽減できるため、預金残高が多い人ほど支払う利息が少なくなる仕組みです。近年、住宅価格高騰に伴い、マイホーム購入を投資と捉える人も増えおり、高所得者層や資産形成を積極的に考えている人にとって、資金の流動性を確保しながら住宅ローンの返済負担を軽減できる預金連動型住宅ローンは、大きな魅力となっています。
手元に現金を残しつつ金利負担を軽減できる仕組みであるため、資産運用の自由度を保ちつつ、浮いた資金を投資に回せるほか、急な出費にも対応しやすいといった利点があります。家計への負担を抑えながら、効率的に住宅ローンの返済ができる預金連動型住宅ローンは、現在の市場ニーズに適した商品といえます。
03預金連動型ローンの注意点
預金連動型住宅ローンは、主に多くの預金を持つ高所得者層にとって魅力的な商品ですが、いくつかの注意点があります。まず、一つ目の注意点は「誰でも利用できるわけではない」という点です。金融機関によって異なりますが、預金連動型住宅ローンは一定以上の預金や資産を持つことが前提条件となっているケースが多く、一部の金融機関では、常に一定額以上の預金を維持する必要があります。そのため、預金残高によっては自由に引き出せない場合があることも注意しましょう。
その他の注意点として、「一般的な住宅ローンより適用金利が高い場合がある」「金融機関ごとに異なる制約がある」といった点が挙げられます。預金連動型住宅ローンの適用金利は、一般的な住宅ローンよりも高めに設定されていることが多く、預金残高が十分にない場合は、むしろ支払う利息が増えてしまう可能性があります。また、金利優遇の条件や、預金とローンの相殺割合は金融機関によって異なるため、利用前に詳細なルールを確認することが重要です。
例えば、東京スター銀行の預金連動型住宅ローンでは、変動金利を選択した際のリスクヘッジとして有効な「5年ルール」や「125%ルール」が適用されません。そのため、一般的な変動金利とは異なる仕組みになっている点を理解し、契約前に詳細を確認しておきましょう。
04預金連動型ローンを提供する主な金融機関
東京スター銀行が初めて導入した預金連動型住宅ローンは、従来にない仕組みの住宅ローンとして注目を集め、現在では複数の金融機関でも取り扱われるようになっています。
預金連動型住宅ローンを取り扱っている主な金融機関(2025年2月時点)
- 東京スター銀行
- 山陰合同銀行
- 関西みらい銀行
- 西武信用金庫
- 琉球銀行
- 北日本銀行
- 荘内銀行
- 愛媛銀行
- JAバンクあいち
そこで、最後に代表的な事例として、東京スター銀行、山陰合同銀行、関西みらい銀行が取り扱っている預金連動型住宅ローンの詳細を紹介します。興味のある方は参考にしてください。
東京スター銀行「スターワン住宅ローン」
東京スター銀行の預金連動型住宅ローンである「スターワン住宅ローン」の特徴は、保証料が不要で、繰り上げ返済や固定金利を選択する際の手数料も無料である点です。また、預金残高がローン残高と同額以上の場合、一般団信に加入しても実質金利年0.204%が適用され、総支払額を抑えられるのも魅力です。
同ローンは、預金連動型住宅ローンの先駆けとして販売されていましたが、金利引き下げ競争の激化により、一時的に取り扱いが停止されていました。しかし、金利環境の変化に伴い競争が落ち着いたことや、消費者からの再販を求める声が高まったことを受け、2025年1月に販売が再開されました。
契約時には、固定金利と変動金利のいずれかを選択できますが、変動金利を選んだ場合、前述のとおり「5年ルール」や「125%ルール」が適用されない点には注意が必要です。
山陰合同銀行「預金連動型住宅ローン」
山陰合同銀行の「預金連動型住宅ローン」の特徴は、普通預金残高に応じて支払ったローン利息の一部を毎月キャッシュバックされる点です。例えば、普通預金残高が500万円あり(預金金利年0.10%、住宅ローン金利年1.10%、住宅ローン残高1500万円の場合)、年間約5万円のキャッシュバックを受けられます。金利タイプは「2段階固定金利型」「金利選択型」「変動金利型」の3つから選べるため、金利タイプの選択肢が多く、柔軟なローン設計ができる点もメリットです。
ただし、利用する際には、「キャッシュバック計算対象額は住宅ローン残高の50%が上限である」などの一定条件があるほか、一般の住宅ローンに比べて金利が年0.2%上乗せされるため、その点には注意が必要です。そのため、普通預金の平均残高が一定額以上ある人はメリットを享受できる一方、預金残高があまり多くない人は一般の住宅ローンのほうが有利になる場合があります。
関西みらい銀行「預金連動型住宅ローン・金利キャッシュバックサービス付き」
関西みらい銀行の預金連動型住宅ローンは、預金残高に応じて住宅ローンの支払利息の一部を3ヵ月ごとにキャッシュバックされるのが特徴です。こちらも一般の住宅ローンに比べて金利が年0.2%上乗せされるため、一定額以上の預金残高がある人ほどメリットを受けやすい点や、変動金利のみの取り扱いとなっている点には注意が必要ですが、家族名義の普通預金残高もキャッシュバックの対象になる点は利点の一つです。具体的には、「登録した本人名義の決済用普通預金残高の100%」と「家族名義の普通預金残高の50%」がキャッシュバック対象となるため、配偶者に貯蓄がある場合、還元額を増やせる可能性があります。
05「スゴ速住宅ローン保証審査」を活用して、住宅ローンの可能性を広げよう!
預金連動型住宅ローンは、現金を手元に残しながら繰り上げ返済と同等の効果が得られる点から、徐々に注目を集め、さまざまな金融機関で、同様または類似の住宅ローンの取り扱いが始まっています。例えば、auじぶん銀行は2025年1月から3年間、普通預金口座の残高の増加幅に応じて住宅ローンの金利分をキャッシュバックするサービスを開始しました。このサービスの申し込み受付は年内までの予定ですが、すでに多数の申し込みが寄せられています。
ちなみに、auじぶん銀行は、当サイトの「スゴ速住宅ローン保証審査」の提携金融機関です。「スゴ速住宅ローン保証審査」は住宅ローンシェアNo.1の保証会社による審査で、物件が決まっていなくても借入見込み額が分かり、パートナーとの収入合算の審査も可能です。借り入れできる金額が分かったら、そのまま提携先の金融機関の住宅ローン審査に申し込むことができます。
また他にも、最大3億円の借り入れが可能なSUUMO提携住宅ローンは、「自己資金が少なくても利用しやすい」「独自の審査基準がある」など、柔軟なプランが特徴です。住宅ローンに興味があるものの、審査に不安を感じる人は、まずは以下のページから詳細を確認し、相談を検討してみてはいかがでしょうか。
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監修:新井智美
CFP®/1級ファイナンシャル・プランニング技能士
プロフィール
トータルマネーコンサルタントとして個人向け相談の他、資産運用など上記相談内容にまつわるセミナー講師を行う傍ら、年間100件以上の執筆・監修業務を手掛けている。