インフレ、賃上げ…2024年前半にマイナス金利解除の可能性も!

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2023年10月時点において日銀はマイナス金利政策を継続しており、その結果、住宅ローンの金利は変動金利を中心として低水準で推移している状況です。しかし消費者物価指数は、18カ月連続で日銀が目標とする2%以上の上昇を達成しています(2023年9月時点)。 また、日銀の植田和夫総裁が金融政策変更の判断材料として重視する賃上げについても、2024年春闘では日本労働組合総連合会(以下、連合)が「5%以上の賃上げを要求する」という報道がなされるなど、マイナス金利解除の環境は整いつつあるといえるでしょう。 そこでこの記事では、徐々に現実味を帯びてきた2024年前半のマイナス金利解除の可能性と、それが住宅ローンにどのような影響を及ぼすのかについて解説していきます。

01マイナス金利が解除される条件とは?

もともとマイナス金利とは、日銀の前総裁である黒田東彦氏がインフレによる好景気を実現する方法として始めた政策です。具体的には、金利を低水準に設定することで市場に資金を供給し、企業や家庭がお金を使いやすい状況を生み出すことを目的にしていました。また、市中に資金を大量供給することで相対的にお金の価値が下がり、物の値段が上がるインフレを起こせば企業の売上もアップし、一般消費者の所得も上がると考えたわけです。

その目標値として、日銀はかねてから賃金上昇を伴う安定的・持続的な2%のインフレを設定していました。実際には2022年4月以降、その目標値を超えるインフレが起こっていますが、これは「ウクライナ紛争の影響」や「コロナ禍からの脱却による一時的な消費の増加」などが原因として、まだ持続的・安定的なインフレが見通せる状況ではないという判断をしています。

しかし上述したように、「18カ月連続で消費者物価指数が目標値を超えた」「連合による5%以上の賃上げ要求」といった状況を受け、植田総裁は2023年9月9日の某新聞のインタビューにおいて、「年内にも判断できる環境が整う可能性がある」と含みを持った内容の発言をしました。同インタビューでは、「物価目標の実現にはまだ距離がある」という趣旨の発言もあったものの、「物価上昇に確信を持った段階でマイナス金利解除も選択肢になる」と述べるなど、従来よりもマイナス金利解除に前向きな姿勢を見せています。

02徐々に収まりつつある、コスト高によるインフレ

消費者物価指数の2%以上の上昇がこれほど長く続いても、日銀がマイナス金利の解除になかなか踏み切ろうとしなかった理由としては、「近年のインフレがコストプッシュ型だったこと」が挙げられます。

インフレには主に、原材料価格などの高騰によって生産コストが増加することで起きる「コストプッシュ型」と、消費者の需要が増えることに起因する「ディマンドプル型」の2種類があります。2022年4月から続く、日本のインフレはウクライナ紛争などによる原油価格高騰や、少子高齢化が原因の人手不足による人件費上昇といった企業にとってのコスト増加が主な原因でした。

仮にコストプッシュ型インフレの進行中に金利を上げると、実質的な賃金上昇につながる前に金融引き締めを始める形になってしまいます。すると、賃金が上昇していない消費者の消費マインドが抑制され、日本経済が再びデフレ方向へ進んで、企業の稼ぐ力が衰えることが懸念されます。

それに対して、日銀が目標としているディマインドプル型のインフレは消費者の需要増によるインフレであるため、販売価格が多少高くなっても消費者の購買意欲が急速に衰えることは考えにくいのです。その結果、企業などは人件費上昇分も価格転嫁しやすくなり、「物価と賃金の双方が上昇する」経済の好循環を生むことが期待できます。

日銀はそうしたディマンドプル型のインフレが、適度に安定した状態になったときをマイナス金利解除の判断材料としているわけです。日本ではここにきてコストプッシュ型のインフレは落ち着きつつあり、日銀のマイナス金利解除のタイミングにより一層の注目が集まっています。

03春闘の賃上げも影響!2024年前半にもマイナス金利解除か?

今後の日銀のマイナス金利解除の判断には、2024年春闘の結果が大きく影響すると予測されています。なぜなら、先述のように賃金の上昇幅はコストプッシュ型とディマンドプル型のどちらのインフレであるかを判断する材料になるからです。仮に賃金の上昇幅が大きければ、日銀がディマンドプル型のインフレが今後も持続的・安定的に進む可能性が高まったと判断して、早期のマイナス金利解除を決定するかもしれません。一方で、賃金の上昇幅がそれほど大きくなかった場合は、まだ十分な環境が整っていないとして、マイナス金利解除をしばらくの間は見送る可能性が高くなるでしょう。

2024年の春闘では、定期昇給と基本給を底上げするベースアップを含めた「5%以上の賃上げ要求」を連合が行う方向で調整しているといわれています。これは28年ぶりの高水準の要求であり、2023年の「5%程度の賃上げ目標」に比べても強い表現です。

こうした連合の強気な姿勢はすでにいたるところに影響が出ており、例えば大手飲料メーカーのサントリーホールディングスは連合の要求を上回る7%程度の賃上げで調整しているという報道もあります。仮に他の大手企業がこの動きに続いた場合には、マイナス金利解除の判断を後押しする大きな材料になるでしょう。つまり、早ければ春闘の結果がほぼ出そろったあとの2024年4月の金融政策会合で、これまでの金融政策が修正されることも考えられます。

加速する円安!抑止のためにマイナス金利解除の可能性も

春闘の結果、賃金の上昇幅が想定よりも小さくなった場合、ディマンドプル型のインフレが十分に浸透していないとして、基本的に日銀はマイナス金利解除の時期を延期すると考えられます。しかし、それとは別の要因によって、マイナス金利解除を決断する可能性も残されています。その要因とは円安です。円と米ドルの関係は主に日米の金利差に左右され、近年アメリカが金融引き締めによる金利の引き上げを実行したことに伴って、2023年10月時点では1ドル=約150円まで円安が進み、その後も150円前後の水準を維持しています。

円安は特にエネルギー関連で輸入に頼る割合の高い日本企業にとって、コスト増の主だった原因の1つです。つまり、コストプッシュ型インフレを加速する要因でもあります。日銀は従来、金融政策決定においては、あくまでも日本経済の状況を中心に考え、為替とは距離を置いてきました。しかし、2022年12月に長期金利の変動幅の上限を引き上げたように、昨年末からは円安による物価高の影響を考慮する様子も見られます。

一部ではアメリカの金融引き締めが長期化するという報道もあり、今後、日本のマイナス金利解除の時期が遅くなればなるほど、円安が進行する可能性は高まるでしょう。そうした状況は当然、日銀も想定していて、仮に春闘の結果が大きな賃金上昇とまではいかなくても、総合的な判断からマイナス金利解除を決断することも考えられます。

04マイナス金利が解除されたら、住宅ローンへの影響は?

ここまで日銀がマイナス金利を解除する可能性について解説してきましたが、実際にマイナス金利を解除すると住宅ローンにどのような影響が及ぶのでしょうか。結論からいうと、すぐに住宅ローンの金利が大幅に上昇することは考えにくいです。なぜなら、急激な利上げは日本経済に悪影響を及ぼすリスクがあるため、日銀は市場の様子を見ながら段階的に金利を引き上げていくはずだからです。そのため、仮に2024年前半にマイナス金利を解除しても、今度は当面の間、政策金利を0%に据え置く「ゼロ金利政策」を維持していくと予想されています。

ゼロ金利政策が維持されている間は、各銀行の住宅ローンの基準金利が大幅に上昇する可能性は低いでしょう。ただし、将来的にゼロ金利政策が解除された場合には、住宅ローンの金利も上昇していくことが考えられます。急激な金利上昇は、金融市場はもちろん、住宅ローンを利用する一般消費者にも大きな影響を与えるため、日銀には適切な金融政策を通して社会的な混乱を防ぐことが求められています。

05金利が上昇する時代に突入か!?住宅ローンの金利選びは慎重に

日本では2022年途中からインフレ傾向が続いており、2016年初頭から始まったマイナス金利政策が2024年前半にもついに解除されるのではないかと噂されるようになりました。仮にマイナス金利が解除された場合でも、すぐに住宅ローンの金利に大きな影響を与えることは考えにくいですが、将来的に金利が上昇していった場合には、住宅ローンの総支払額が大幅に増加する恐れもあります。これから住宅ローンを組む予定の人は、家計に無理のない返済計画を組むためにも、金利タイプや金利の違いによる月々の支払額の差をしっかりシミュレーションしておきましょう。

サイト内には金利タイプや金利の違いで、毎月の返済額がどれくらい変わるかを簡単に把握できる「毎月の返済額シミュレーター」など、住宅ローンの予算把握や返済計画作成に役立つ各種シミュレーターがそろっているので、ぜひ試してみてください。

新井智美

監修:新井智美

CFP®/1級ファイナンシャル・プランニング技能士

プロフィール

トータルマネーコンサルタントとして個人向け相談の他、資産運用など上記相談内容にまつわるセミナー講師を行う傍ら、年間100件以上の執筆・監修業務を手掛けている。

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