変動金利が上がるタイミングは近い?賃金上昇で日銀のさらなる金融緩和政策の修正も!

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昨年末に行われた事実上の利上げの影響を受けて、住宅ローンの固定金利は上昇傾向がみられましたが、現状で変動金利に大きな動きはありません。今のところ、住宅ローンへの影響は大きくないとみてよさそうです。 しかし注目すべきは、「これからの展開」です。日銀の黒田東彦総裁は「企業が賃上げできる環境を整えること」を重視して、今後の金利政策を決定する旨の発言をしています。 短期金利の引き上げは住宅ローンの「変動金利」に直結しますので、マイホームを購入するうえでも大きな影響があります。そこでこの記事では、今後どのようなタイミングで「変動金利」の上昇が起こりうるかについて解説します。

01変動金利、上がる可能性があるタイミングは2つ!

住宅ローンの「変動金利」は、「短期プライムレート(短プラ)」と呼ばれている経済指標と連動します。「短期プライムレート」とは各都市銀行が自主的に決定した短期金利をベースにした金利目標のこと。政策方針もあり「短プラ」は、1995年頃からほぼ一定で(特に2009年からは1.475%のまま)推移してきた経緯があります。しかし、この「短プラ」が今後上昇する可能性があります。上昇のタイミングとしては、主に2つの時期が考えられるでしょう。

1つ目は日銀の黒田総裁が迎える「2023年4月8日の任期満了後」

1つ目のタイミングは、2023年4月8日に日銀黒田総裁が任期満了するタイミングです。異次元ともいわれる金融緩和政策を続けた黒田総裁の交代によって、ある程度の金融引き締め(金利上昇)へと舵を切るのではないかとの予測もあるようです。実際に後任の名が挙がった2月10日には円相場が一時129円台まで上昇し、長期金利の指標となる新発国債10年債の利回りも日銀の目標上限0.5%に達するなどの反応がありました。

次期総裁に就任するのは、1998年から日銀の審査委員を7年間務めた理論派経済学者の植田和男・東京大学名誉教授です。植田教授は非常に実証主義的な考え方の持ち主で、現況のデータに基づいた政策目標を実施するのではないかと予測されています。比較的手堅い政策方針をとるとみられていますが、念のため就任前後の数ヶ月はマーケットの反応に注目しておくといいでしょう。

日銀総裁交代と住宅ローン金利の影響についてはこちらの記事でもう少し詳細に解説していますので、ぜひ参考にお読みください。

2つ目は新型コロナの分類が5類に移行される「2023年5月8日以降」

2つ目のタイミングは、新型コロナの分類が5類に移行される2023年5月8日以降です。新型コロナの5類への移行は、金利政策に影響を与えると推測されています。

その大きな要因の1つが、コロナ禍による各種制限の大幅な緩和です。感染症法上の5類はインフルエンザと同等の扱いなので、これまでのような感染者や濃厚接触者への行動制限、マスクの着用義務、飲食店等への営業時間短縮などはなくなります。これによりレジャーや宿泊、旅行などの消費が増加すると見込まれており、第一生命経済研究所の試算によると1.4兆円もの経済効果があると予測されています。もし経済の回復傾向がみられた場合、コロナ禍で苦境にあえぐ企業を救済するために行われた低金利政策は見直されるかもしれません。

そもそも日銀は2018年7月から導入した「政策金利のフォワードガイダンス(先行き指針)」において、金利の水準は「物価安定の目標」達成のために決定すると示していました。もともと金利政策は、「物価の安定」と紐づけられていたわけです。

ところが2020年3月に新型コロナが大流行したことで、その経済的な影響を最小限に食い止めるための低金利政策を実施せざるを得なくなりました。こうしたコロナ禍への緊急措置的な対応は、新型コロナの5類移行によって順次終了することになるでしょう。

新型コロナの5類移行後は、当初の目標通り「物価の安定」を重視した金利政策に立ち戻ることになるため、今後は物価上昇の動向に注目しながら日銀の判断に注目する必要があります。

02徐々に上昇する賃金も金融緩和政策の修正を後押し

企業の賃上げ状況次第で、金融緩和政策が方針転換される可能性も大きくなっています。

日銀は当初、2023年1月に「消費者物価指数」が上昇しているものの、賃金上昇が見込まれてない状況下での短期金利の引き上げは行わないとの見解を示していました。しかし、厚生労働省の発表した「毎月勤労統計調査(令和4年度11月分)」によると「現金給与総額」は全体で1.0%増となっており、わずかながら賃金の上昇が見られます。この上昇分については2022年10月1日に実施された最低賃金改正の影響が大きいと考えられますが、2023年に入ってから賃上げに対する圧力が各所で強まっていることも事実です。

実際に日本労働組合総連合会(連合)は2023年の賃上げ要求指標を5%(賃上げ分を3%程度、定昇相当分を含む)と公表していますし、春闘の結果を待たない段階で早くも賃上げに動き出す企業も増え始めています。

例えば「第一生命」は社員約5万人の賃金を平均5%上げる方針を示しました。「ファーストリテイリング(UNIQLO)」も国内正社員約8400人を対象に、年収を最大4割引き上げると表明しています。

他にも「キヤノン」は実に20年ぶりのベースアップを実施、警備大手「セコム」は組合員1万4000人を対象に月額2000円の引き上げ、「アイリスオーヤマ」は5%、「AGC」は平均6%のベースアップ、「日揮ホールディングス」や「日本生命」、「サントリーホールディングス」なども軒並みベースアップ方針を示しており、大企業を中心に賃上げの流れが大きくなりつつあるようです。

「コロナ禍の制限撤廃」と「賃上げ」によって経済状態が回復傾向になり、昨年から続くインフレ圧力がさらに強まる恐れがあると日銀が判断した場合は、金利引き上げの方向へ政策を転換する可能性もゼロではありません。今後の経済の動きと日銀の政策方針にも注目しておきましょう。

03住宅ローンの金利タイプを選ぶ際は社会情勢もしっかり考慮しよう!

住宅ローンの金利を固定金利か変動金利にするかは、いつの時代でも悩ましい問題です。ここ20年以上は政策的な理由から超低金利が維持されてきたので、変動金利を選択する人が増加傾向にありました。しかし今後は社会情勢次第で、金利が上がることも視野に入れておくべきでしょう。特に「消費者物価指数」や金融政策の動向、変動金利に先んじて政策変更の影響を受けやすい固定金利の動きに注目しておいてください。

基本的に変動金利は金利変動リスクが大きく、借入額や金利状況にもよりますが、金利が1%上昇するだけで総利息額が数百万円増えることも少なくありません。変動金利は返済期間中に返済額増加といった負担増に対応できる人向けの住宅ローンですから、返済期間中に住宅ローンの返済以外にまとまった支出が予定されている人は固定金利を選んだ方が無難でしょう。

固定金利は、変動金利と比べて高めの利率ではあるものの長い目でみると低リスクです。あえて変動金利を選ぶ場合は金利上昇時にどれくらい金銭的な負担が増えるか、をしっかりシミュレーションしたうえで判断することをおすすめします。

04金利タイプ別で毎月の支払額がどのくらい変わるかシミュレーションしてみよう

20年以上にわたる超低金利の影響で、住宅ローンを「変動金利」で組んでいる人が増えています。ただ、異次元ともいえる超低金利政策への見直しやコロナ禍による緊急措置の終了、賃上げと物価上昇によるインフレへの警戒などから、今後は低金利政策が変更される可能性も考えなければなりません。

今のところ日銀が、現状の方針を急激に変更することはないと推測されます。しかし、今から住宅ローンを組むのであれば「変動金利」一択というのはリスクが大きいでしょう。「固定金利」を選んだ場合と比較検討しながら、より無理のない返済プランを立てることをおすすめします。 実際に変動金利と固定金利で、どのくらい毎月の返済額が変わるのか知りたい方は、当サイト内の「毎月の返済額シミュレーター」で一度試算してみましょう。具体的な金額がわかるとマイホーム購入に向けたプランを立てやすくなるはずです。

新井智美

監修:新井智美

CFP®/1級ファイナンシャル・プランニング技能士

プロフィール

トータルマネーコンサルタントとして個人向け相談の他、資産運用など上記相談内容にまつわるセミナー講師を行う傍ら、年間100件以上の執筆・監修業務を手掛けている。

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