2023年4月、日銀総裁の交代で住宅ローンの低金利時代が終わる!?

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これから住宅探しを考えている人にとって、住宅ローンの金利動向は大きな関心事の1つでしょう。その住宅ローン金利に影響を与えそうなのが、2023年4月8日に任期満了を迎える日銀総裁の人事です。2022年時点では大規模な金融緩和策を維持している日銀が、総裁変更のタイミングで今後は金融引き締め、つまり金利上昇に向かうのではないかと懸念されています。 こうした懸念の背景には世界各国のインフレによる利上げがありますが、具体的に日本の住宅ローン金利にどのような影響を及ぼすのでしょうか。そこで今回は、日銀総裁が交代する予定の2023年4月以降に住宅ローンを組むことを検討している人に向けて、借入時の注意点などを解説します。

01黒田東彦日銀総裁、2024年4月8月に任期満期!金融緩和策はどうなる?

日銀が総裁交代のタイミングで金融緩和から金融引き締めに舵を切ると噂されているのは、日本でもインフレが進みつつあるからです。もともと日銀が行ってきた金融緩和策とは、市場にお金を投入することでデフレ基調にあった日本経済を立て直し、インフレ傾向にすることを目的にしていました。そんな中、2022年10月時点で日本の消費者物価は日銀が目標としていた2%を超えるようになってきています。

また、インフレ基調が鮮明になっているのは日本だけではありません。アメリカやヨーロッパ、オーストラリアなど、欧米各国では軒並みインフレ率が5%を超え、続々と金利を上げ始めています。世界各国が金利を上げると、相対的に金利の低い日本円が売られて円安が進み、輸入品価格が上昇してさらにインフレが激しくなる悪循環に陥ることが懸念されています。実際に2022年3月上旬に115円だった円の対米ドル相場は、同年10月には150円近辺まで円安が進みました。

黒田日銀総裁は2022年10月17日の国会答弁で、「2023年度以降、日本の消費者物価は2%を下回ると予想している」と答え、現状の金融緩和策の方針転換には否定的な見解を示しました。とはいうものの、世界的なインフレによって日銀が金利上昇圧力を受けているのは事実です。このような背景から、交代のタイミングで金融引き締めを主導する新しい日銀総裁が誕生し、その後は日本も利上げに踏み切るのではないかといわれています。

02住宅ローンの金利が上がると、生活にどんな影響が出るのか?

勘違いしている人もいるかもしれませんが、日銀が金利を上げたからといって、すぐに住宅ローンの金利が上昇するわけではありません。住宅ローンには変動金利と固定金利があり、それらの金利は日銀が設定する政策金利の影響を受ける短期金利と長期金利に連動しています。具体的には、政策金利が上がるとそれまでに発行している債券価格が低下するので相対的に利回りが良くなり、先に長期金利(固定金利)が上昇し、次いで短期金利(変動金利)も上昇する流れです。

仮に日銀が金融引き締めへ方針を転換しても、住宅ローンをフラット35のような契約期間中の金利が変わらない固定金利で組んでいる人は基本的に影響ありません。しかし、短期金利が上昇すると、変動型の住宅ローンを選択している人は返済額が大きく増える恐れがあるので、注意が必要です。これは新規で住宅ローンの借り入れをする人の総返済額が増えることも意味しています。つまり、実質的に物件価格高騰と同じです。

例えば、借入金額3000万円、借入期間35年の条件で、金利0.375%と金利0.900%を比較してみましょう。すると、金利0.375%は総支払額約3202万円(毎月の支払額:7万6229円 総利息:約202万円)なのに対して、金利0.900%は総支払額約3500万円(毎月の支払額:8万3294円 総利息約:500万円)です。比べてみると、毎月の差額は7065円ですが、総利息で約300万円もの違いがあることがわかるでしょう。住宅ローンは高額な資金を長期間にわたって返済するローンなので、わずかな金利上昇でも家計に与える負担は大きくなります。そのため、少しでもお得に住宅ローンを利用したいと思うなら、目先だけでなく将来的に金利がどうなっていくかを考え、契約することが重要です。

また、これまで日銀の金融緩和によって住宅ローン金利が低く抑えられてきたことで、住宅購入者や投資家の不動産購入意欲が増し、都市部を中心としてマンション価格が上昇してきました。しかし、今度は住宅ローン金利が上がることで、これまでの動きとは反対にマンション購入のニーズが減り、マンション価格が下落する可能性も否定できません。マイホームとしてだけでなく、いつか売却する資産として住宅を購入する場合も、日銀の方針転換には敏感になっておくほうがよいでしょう。

住宅ローンの適用金利は引き渡しタイミングで決まることも!

高額な資金を借りる住宅ローンでは、わずかな金利差で総支払額は大きく変わることがあります。そのため、住宅ローンを選ぶ際は、金利決定のタイミングに気を付けておいたほうがよいでしょう。金融機関が金利を決定するタイミング、は大きく分けて「申込時金利」と「実行時金利」の2つがあります。

申し込み時金利とは住宅ローンの利用を金融機関に申し込んだ時点の金利が適用されるタイプのことで、財形住宅融資が該当します。一方の実行時金利とは、融資が実行された時点での金利を適用するタイプの住宅ローンです。こちらは、フラット35や多くの民間金融機関で採用されています。これら2つのうち、自分が利用する予定の住宅ローンがいずれのタイプに該当するかを事前に把握しておくことが重要です。

特に住宅ローンの利用を申し込んでから、適用される金利が決まるまで数カ月程度かかることもある実行時金利の場合、申し込み時点では正確な資金計画を立てにくいので注意しましょう。仮に申込み時点よりも金利が上昇すると、想定よりも返済が苦しくなるかもしれません。例えば日銀総裁交代の影響を考慮し、2023年4月よりも早くに住宅ローンを申し込んでも、実行時には金利が上がっている可能性があるということです。

金融機関の中には申込み時金利と実行時金利のうち、金利が低いほうを選べる場合があります。利用にあたっては「申し込みから実行まで〇カ月以内」などの条件が定められているケースが多いものの、融資条件に大きな差がない場合は「申込時金利」と「実行時金利」のどちらかを選べる金融機関で住宅ローンを組んだほうが得策です。

変動金利が上がったら固定金利に借り換えできる?

変動金利は固定金利よりも契約当初の金利が低い場合が多い点はメリットですが、金利上昇局面で総返済額が増える恐れがある点はデメリットです。そのため、「もしも金利が上がったら、その時点で変動金利から固定金利に借り換えればいい」と考える人もいるのではないでしょうか。

しかし残念ながら、それはあまり現実的ではありません。なぜなら、先述したように金利上昇局面において、一般的に住宅ローンの金利は変動金利に影響を与える短期金利よりも、固定金利に影響を与える長期金利のほうが先に上昇するからです。金利が上がった時点で変動金利から固定金利に変えようとしても、より高い金利で契約するしか選択肢がない場合があり、借り換えを検討するタイミングとしては遅いといえます。ただ、それ以上の金利上昇リスクを回避できるメリットは享受できます。住宅ローンの借り換えについては、長期的視野で考えることが大切です。

将来的な金利の動きは、日本政府であっても予測することは困難です。このような状況下で一般消費者が金利タイプを選択する際は、以下の3点に気を付けてみてください。

  • 金融政策:消費者物価指数の推移などを参考に、継続的に利上げが実施されるかどうか
  • 金利状況:実際に固定金利(長期金利)はどれくらい上がっているか。変動金利(短期金利)への影響はでているかどうか
  • 家計負担:金利タイプの選択によって、毎月の支払い額にどれくらいの影響が出るか

無理のない返済計画を立てるためにも、ニュースなどを通じて日頃から経済情報に関心を持っておきましょう。

03変動金利と固定金利の両方で、住宅ローンのシミュレーションを試しておこう

住宅ローンの金利は日本の物価上昇率にも影響されるので、将来的な推移を個人が予測することは難しいです。そのため、これから住宅ローンを組む予定の人が、固定金利と変動金利のどちらを選ぶかで迷ってしまうのも無理はありません。ただし仮に金利が上昇したら、どれくらい返済額が変わるかを事前にシミュレーションしておくことは可能です。 当サイト内には、金利タイプ別にどれくらい毎月の返済額が変わるかがわかる「毎月の返済額シミュレーター」や現在の家賃から借入可能額を判定できる「借入可能額シミュレーター」など、各種シミュレーターをご用意しています。入力は最小9項目、最短3分で適切な予算をシミュレーションできるので、住宅ローンの予算に悩んでいる方は試してみてください。

新井智美

監修:新井智美

CFP®/1級ファイナンシャル・プランニング技能士

プロフィール

トータルマネーコンサルタントとして個人向け相談の他、資産運用など上記相談内容にまつわるセミナー講師を行う傍ら、年間100件以上の執筆・監修業務を手掛けている。

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