住宅ローン、死亡リスク以外の備えは大丈夫?団信の特約を付けずに後悔した人が約4割も!
カーディフ生命保険が行った「第4回 生活価値観・住まいに関する意識調査」によると、「住宅購入後の後悔」で住宅ローン利用者のおよそ4割が、「団信の特約を付ければよかった」と回答しています。円安や世界情勢不安などの影響で物価上昇が続く見込みの日本では、今後の家計負担の増加が懸念され、万が一住宅ローンの返済中に病気やケガ、失業などで収入が減ってしまったらと不安を感じている人も多いようです。そこでこの記事では、これから住宅ローンの借り入れをする人に向けて、死亡以外のリスクに備えるために大切な団信の必要性について解説します。
01住宅購入経験者の後悔、「団信の特約を付けておけばよかった」がトップに!
カーディフ生命保険が2022年12月に公表した、「第4回 生活価値観・住まいに関する意識調査」によると、「住宅購入後の後悔」という質問(複数回答可)に対する回答のトップ5は以下の通りでした。
- 団信の特約を付ければよかった:38.7%
- 住宅ローンを比較すればよかった:13.5%
- 立地条件を検討すればよかった:8.4%
- 資産価値を検討すればよかった:8.1%
- 金融知識をつけておけばよかった:7.7%
第1位になったのは「団信の特約を付ければよかった」で、第2位の「住宅ローンを比較すればよかった」を2倍以上引き離して4年連続の第1位となっています。その理由としては、「コロナ禍やウクライナ紛争など世の中が不安定になっている影響で住宅ローンの支払いができなくなるリスクが増加していること」や「回答者が年齢を重ねるごとに病気にかかるリスクが高くなることに不安を感じて保険の大切さを実感したこと」などが挙げられます。
また、同調査によると住宅ローン利用者のうち一般団信の死亡保障にプラスして病気やケガ、失業時の返済を保障する特約付きの団信に加入している人は38%と半数に満たないこともわかっています。住宅ローンの返済は長期間におよぶため、何らかの理由で働けなくなって返済が滞るリスクは誰にでもあります。団信に特約を付けていなかった人は、住宅ローンを組むときに死亡リスク以外も考慮すべきだったと後悔していることが多いようです。
一方で、年代別に見ると30代では62%が死亡以外の理由で、返済が滞った場合も保障してくれる特約に加入しています。新たに住宅ローンを組み始めた比較的若い世代は、死亡リスク以外に備えることも大切であるという情報を集めたうえで住宅ローンを契約し、返済中のリスクに合理的に備えている実情がうかがえます。特に近年ではコロナ禍もあって、病気やケガ、失業による収入減に不安を抱く人が増えており、以前よりも死亡保障に収入が減少した際の返済を保障してくれる特約を加えた団信を選ぶ人が多くなっています。
出典:カーディフ生命「第4回 生活価値観・住まいに関する意識調査」
02団信に特約を付帯できるのは「契約時」だけ!
団信に特約を付帯すれば保障範囲が広がるため、住宅ローン契約中のリスクを軽減できて安心感を得られます。しかし実際に、特約を付けて団信を契約している人は半数にも及びません。住宅ローン契約者が特約の付帯をためらう理由としては、特約付きの団信に加入することで金利の上乗せが発生し、「月々の支払いが割高になること」が影響していると考えられます。住宅購入後はただでさえ住宅ローンの返済が始まるのに、それに上乗せされる保険料を支払うのがもったいないと考えてしまう人がいるのも、仕方がないことかもしれません。
ただし、忘れてはいけないのは「団信の特約を付帯できるタイミングは住宅ローン借入時のみであること」です。死亡以外のリスクが心配になったからといって、返済が始まったあとに保障内容を変更することはできません。住宅ローンの返済が始まった後に、団信に特約を付帯したい場合は住宅ローンの条件を見直す「借り換え」しか選択肢がありません。契約に臨む前にどこまでの保障が必要かをよく検討しておくことが重要です。
金利上乗せなしで手厚い保障が付帯できる団信の特約も登場!
住宅ローン利用者の注目が高まっていることを受けて、近年ネット銀行を中心に保障内容を拡充した団信が増えてきています。例えば、ソニー銀行の「がん団信50」では、金利の上乗せなしで「がんの診断確定時に住宅ローン残高の50%」を保障してくれます。また、さらに保障を充実させたい人は、金利を年0.1%上乗せするだけでがんの確定診断時に「住宅ローン残高の100%+100万円」を保障してくれる「がん団信100」を契約することもでき、住宅ローン利用者の選択肢はこれまで以上に広がっている状況です。ネット銀行の団信の取り扱い状況については、下記の記事で詳しく説明しているので興味がある方はそちらも参考にしてください。
なお、ソニー銀行の調査によると、近年では住宅の新規購入・住宅ローンの借り換えともに保障が手厚い団信に加入する人が増加傾向にあるとのことです。特に金利の上乗せがない「がん団信50」の人気が高く、住宅ローン利用者の52%が選んでいます。
その一方で、金利が年0.1%上乗せされるものの、「がん団信100」の人気も高まっていて、2021年度の加入率は前年度より4%増の35%でした。仮に借入額3000万円、返済期間35年(ボーナス返済なし)、上乗せ前の金利年0.5%の条件で試算すると、「がん団信100」に加入しても月々の返済額の増加はわずか1400円程度です。がんにかかるリスクと月々の返済額に上乗せされる保険料を比較して、保障内容の充実を選択する人が増えているようです。
そのほかの加入率は「がん団信100」に加え、急性心筋梗塞や脳卒中の保障がプラスされる「3大疾病団信(3大疾病保障特約付き団信)」が12%、「生活習慣病団信(生活習慣病入院保障特約付き団信)」が1%(いずれも新規借り入れ、上乗せ金利は0.2%)とそれほど高くありません。このことから、団信の特約では特にがんに対する保障を選ぶ人が多いことがわかります。
出典:ソニー銀行「住宅ローンの利用動向に関するお知らせ」
03近年、医療の進歩により死亡リスクは低下!住宅ローンの団信でも病気リスクを備えよう
日本では医療技術の進歩によって、さまざまな病気の死亡リスクは低下傾向にあります。その一方で、長生きすることで病気にかかるリスクは年々増加傾向にあり、団信の契約時には死亡リスク以外も考慮して検討することが大切です。住宅ローンを選ぶ際は金利のみで比較するのではなく、団信の保障内容も含めたトータルコストで考えるようにしましょう。
近年では金利の上乗せなしで特約を付帯できる団信もあるので、それらの情報を頭に入れながら自分に必要な保障と家計に与える負担を比較して選ぶことがポイントです。とはいうものの、金利の差で毎月の支払い額や総支払額がどのくらい変わるのかをどうやって計算すればいいかわからないという人もいるのではないでしょうか。そんな人におすすめなのが、当サイト内にある「毎月の返済額シミュレーター」です。 毎月の返済額シミュレーターでは、借入希望額・返済期間・ボーナス返済の有無・金利の4つを選ぶだけで簡単に総支払額と毎月の返済額がわかります。そのほかにも、適切な予算を把握するのに役立つ「住宅購入予算シミュレーター」や現在の家賃から予算を試算できる「借入可能額シミュレーター」など、住宅ローンを選ぶ際に役立つシミュレーターを用意しています。これから住宅の購入を検討している人はぜひ試してみてください。
監修:新井智美
CFP®/1級ファイナンシャル・プランニング技能士
プロフィール
トータルマネーコンサルタントとして個人向け相談の他、資産運用など上記相談内容にまつわるセミナー講師を行う傍ら、年間100件以上の執筆・監修業務を手掛けている。
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