建材高騰、着工後に追加請求も 「スライド条項」の確認を

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2026年8月現在、中東情勢に端を発した建材高騰はなおも続いています。断熱材や塗料の値上げ、ユニットバスの受注停止といった一時期の混乱は落ち着きつつあるものの、値上がり傾向は依然解消されていません。政府は「中東情勢に伴う重要物資の安定的な供給確保のためのタスクフォース」を設置して検討を重ねるなど、対応を続けています。 建材高騰に終わりが見えないなか、今後家を建て、住宅ローンを組む人が気をつけるべきなのが、これから結ぶ工事請負契約の内容です。契約内容に「スライド条項」が設けられている場合、今後の資材価格の動向次第では、契約書に定められた条件を満たすと、着工後に費用が上乗せされる可能性があるからです。

01いま、家づくりはどんな局面にあるのか

国土交通省が実施した「建設・住宅資材の供給状況に関する一人親方・工務店等へのアンケート」によると、「一部資材の必要量が確保できない、かつ、工事の影響が大きい」との回答は第1回(6月3日〜12日)の742件から、第2回(6月30日〜7月9日)では149件へと減少しました。回答数自体の減少による影響もありますが、全体に占める割合でも17.4%から8.4%へと減少しており、混乱が解消へ向かう過渡期に入ったという見方が広がっています。

ただし、情勢が改善しても、新たな受発注や価格管理の仕組みが整うまでには数カ月程度かかる可能性があり、値上げがすぐに打ち止めになるとは限りません。実際、各メーカーは追加の価格改定を示唆しており、今後の原油価格や円相場の動向次第では、追加の価格改定が行われる可能性もあります。

現状は供給状況が改善している一方、価格や納期をめぐる不透明感は残っています。これから工事請負契約を結ぶ場合は、今後の価格変動を想定した契約内容になっているかを確認しておくことが重要です。

02政府も対応を継続——7月24日に第3回タスクフォースを開催

継続する建材高騰に対し、国も対応を続けています。中東情勢に伴う重要物資の供給確保については、省庁横断型のタスクフォースを設置し、最新の供給状況を把握するとともに、供給リスクへの対応を進めています。

2026年7月24日には、第3回のタスクフォースが持ち回りで開催されました。

政府はタスクフォースを重ね、供給の目詰まり解消に動いている

内閣官房のもとに設置された「中東情勢に伴う重要物資の安定的な供給確保のためのタスクフォース」では、4月の第1回・第2回に続き、7月24日に第3回が開催されました。

これまで政府は、原油などの代替調達や供給の偏り・流通の目詰まりの解消などに取り組んできました。タスクフォース内では、こうした取り組みによって国内での必要量は確保できた一方、供給の偏りや流通の目詰まりが一部で発生しているとの認識も共有されています。

特に住宅分野では、塗料用シンナーなどの供給不安が早い段階から言及されており、解消に向けた動きが急がれてきました。

消費者も「住宅分野情報提供窓口」で情報提供ができる

こうした状況を受け、国土交通省・経済産業省・林野庁が連携して活用する、住宅建材や設備の調達に関する「住宅分野情報提供窓口」が開設されました。住宅建材・設備の供給状況の情報を集め、流通の目詰まり解消につなげようというのが狙いです。

この窓口では事業者だけでなく、消費者からの情報提供も受け付けています。家づくりにあたって建材や設備の調達で困ったことがあれば、窓口に情報提供するのも一案です。

建材の切り替えを想定し、完了検査は柔軟に運用される

着工したものの、当初予定していた建材が入らず、急きょ別の建材に切り替えるというケースも考えられます。建築確認時から建材が変更になっていると、完了検査で指摘を受け、工事の遅延や計画変更などが発生するおそれもあるでしょう。

国土交通省はこうした事態を考慮し、建築基準法に基づく完了検査を柔軟に運用するよう、各都道府県建築行政主務部長に対して通知を出しています。なお、軽微な変更に当たらないケースでは、従来どおり計画変更手続きが必要です。

03契約前に必ず確認したい「スライド条項(価格変動条項)」

これから工事請負契約を締結する人が、必ず確認しておきたいのが「スライド条項(価格変動条項)」です。どのような条項で、どのような点をチェックすべきなのか見ていきましょう。

スライド条項は、着工後に工事費が変わりうる取り決め

スライド条項とは、契約締結後に一定以上の物価変動などが生じた際、その変動分に応じて請負金額の変更を請求できる旨を定めた条項のことです。住宅の新築においては、契約後に資材が高騰した場合、施主と施工会社で分担または協議のルールを定めます。

建設業法では、価格等の変動に基づく工事内容や請負代金の変更、その算定方法について、工事請負契約書に記載することが定められています。もともとは公共工事の契約約款で採用されてきた仕組みですが、現在では民間建設工事の契約においても、価格変動への対応を定めることが重要になっています。

つまり、工事がスタートしたあとでも、建材価格の動向次第で工事費が増額される可能性があるのです。

確認すべきは「ある・ない」ではなく、条件・分担・手続きの中身

上記のとおり、契約書に記載された価格変更の条件や算定方法を確認することが重要です。重要なのは、中身が施主にとって妥当かどうかです。妥当性を判断するには以下の3点をチェックしましょう。

  1. 発動条件:価格が何%変動した場合に適用されるのか、基準が記載されているか
  2. 分担:コストの増加分を施主と会社でどう分けるか
  3. 手続き:変更時に書面による協議や合意を必要とする仕組みになっているか

条項の内容によっては、着工後に想定以上の追加負担が発生する可能性もあります。3点をしっかりチェックしたうえで契約することが、建材高騰が続く今の時代の防衛策になるでしょう。

上振れだけでなく、下振れも確認しておこう

公共工事のスライド条項では、合理的な範囲を超える価格変動が生じた場合、発注者(行政)と受注者(建設会社)で分担するというのが基本です。多少の値上がり分は受注者で消化しつつ、一定割合を超える場合には、一部を発注者が負担するという考え方です。

公共工事の考え方はあくまで参考ですが、民間の住宅建築で使われる契約書フォーマットにも、物価変動に伴う代金変更の定めが盛り込まれています。物価変動によるリスクを一方だけが丸抱えするような内容になっていないか、チェックしましょう。

現状は上振れが問題になりがちですが、物価が落ち着けば代金の下振れも考えられます。価格上昇時だけでなく、価格が下落した場合の扱いについても確認しておくと安心です。

04代替建材を提案されたら?確認したい3つのポイント

建材高騰に加え、そもそも目的の建材が手に入らない事態も考えられます。もし施工会社から代替品を提案された場合、施主としてどのように判断すればよいのでしょうか。

性能・価格差・保証の3点で「納得できる代替か」を見極める

特定の建材が入手できず、施工会社から「同等の別製品に変更したい」と提案を受けることがあります。後悔のない判断をするため、次の3点を冷静に確認しましょう。

  1. 性能の同等性:熱伝導率・熱抵抗値、耐久性、防水性など、住宅に求められる性能が当初の商品と同等以上か
  2. 価格の扱い:代替品は当初の建材に比べて高いか安いか、差額は契約金額にどう反映されるのか
  3. メーカー保証:保証の条件やアフターサポートの内容が変わらないか

大切なのは、その場ですぐ拒否したり承諾したりせず、3点を見極めたうえで慎重に判断することです。

安易に拒否せず、代替建材を慎重に検討することが工期と品質を守る

先述のとおり、国土交通省は完了検査の柔軟運用を通知しています。つまり、行政側も建材の差し替えが現実に起き得ることを認識しているのです。

住宅工事は工程やスケジュールが厳密に組まれており、小さな部材が一つ届かないだけで、工程がドミノ式にストップしてしまうことがあります。代替品を端から拒否するのではなく、上記3点を基準に「納得できるかどうか」で可否を判断するほうが、工期と品質を担保しやすいでしょう。

05契約前のチェックリスト

ここまでの内容を含め、工事請負契約書を結ぶ前に確認したいポイントを箇条書きでお伝えします。以下のポイントを押さえておけば、今後さらなる建材高騰が起こったとしても、後悔を防ぎやすくなるでしょう。

【契約前のチェックリスト】

  • 見積書の有効期限
  • 有効期限を過ぎた場合の価格の扱い
  • スライド条項の中身
    • (1)発動条件(2)分担(3)手続き
  • 資材が入らないときの代替建材の判断基準
    • (1)性能の同等性(2)価格の扱い(3)メーカー保証
  • スケジュールが遅れた場合の住宅ローン実行時期への影響
    • (1)二重家賃の発生有無(2)金利の適用時点
  • いざというときの公的窓口(住宅分野情報提供窓口など)

特に注文住宅では、建物の完成や引き渡し時期に合わせて住宅ローンが実行されるケースがあるため、建材不足などで工期が延びると、現在の住まいの家賃やつなぎ融資の利息など、当初想定していなかった費用が発生する可能性があります。

06建材高騰時代の家づくり、差がつくのは「契約」と「ローンの組み方」

建材価格に関する報道は「いくら値上がりしたか」という、金額の話に終始しがちです。しかし、これから家を建てる人が気をつけるべきなのは金額の大きさではなく、その上昇分を誰が負担するのかを決めるのは契約書であるという点です。

一時期の混乱が落ち着きつつある今は、契約の中身を丁寧に確認し、今後来るかもしれない第2・第3の値上がりの波に備える好機です。自分の契約のスライド条項を読み解き、代替建材への対応の仕方をあらかじめ決めておくことで、さらなる高騰に左右されることなく、後悔のない家づくりを実現できるでしょう。

また、建材の調達遅れによって工事スケジュールが変われば、住宅ローンの実行時期に影響する可能性もあります。工事請負契約と資金計画はセットで確認するのがおすすめです。

建築費の先行きが不透明な今、金融機関から借りられる金額だけでなく、建材価格の上昇や工期延長などの可能性も踏まえ、無理なく返済できる借入額を早めに把握しておくことが重要です。サイト内の「住宅ローン保証審査」なら、物件が決まっていなくても借入可能額の目安をチェックできます。

そして予算の目安が見えたら、スゴい住宅ローン探しの「最新金利ランキング」で金融機関選びを始めてはいかがでしょうか。

新井智美

監修:新井智美

CFP®/1級ファイナンシャル・プランニング技能士

プロフィール

トータルマネーコンサルタントとして個人向け相談の他、資産運用など上記相談内容にまつわるセミナー講師を行う傍ら、年間100件以上の執筆・監修業務を手掛けている。

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