住宅ローンの不正利用とは?ネット銀行4行の新協定と巻き込まれないための注意点
住宅ローンの不正利用と聞くと、「悪意を持った人が意図的に行うもの」というイメージを持つ人が多いでしょう。しかし実際には、消費者本人が気づかないまま巻き込まれてしまうケースも少なくありません。 こうした状況を受け、2026年6月29日、イオン銀行・PayPay銀行・auじぶん銀行・SBI新生銀行の4行が「住宅ローン不正利用に関する情報交換協定書」を締結しました。銀行同士が連携して不正利用を防ぐ取り組みですが、これはこれから住宅ローンを借りる人にとっても決して他人事ではありません。 そこでこの記事では、「何が不正利用にあたるのか」「もし巻き込まれたらどうなるのか」から「危ない勧誘の見分け方」まで、これから住宅ローンを借りる方の目線で解説していきます。
- 01そもそも「住宅ローンの不正利用」とは?何が違反になるのか?
- 02なぜ「知らないうちに」巻き込まれてしまうのか?
- 03発覚時のリスクは甚大。すべての責任は「契約者本人」に
- リスク①:残債の一括返済を求められる
- リスク②:売っても返しきれない
- リスク③:自己破産に追い込まれることも
- リスク④:詐欺罪という刑事責任を問われる
- 04ネット銀行4行の新協定で何が変わる?「銀行に見抜かれない」が通用しない時代へ
- 05これが出たら要注意!危ない勧誘のチェックリスト
- ① 利用目的をごまかそうとする
- ② 書類や数字を作ろうとする
- ③ 契約者を情報から遮断しようとする
- ④ 重要な内容を太字、その中でも重要な内容には斜体にしてください。
- もし当てはまったら? ―― その場でやるべき3つのこと
- 06「転勤でやむを得ず貸す」のは不正になる?
- 07住宅ローンを安心して借りるために、まずは「自分で比較・確認」から
01そもそも「住宅ローンの不正利用」とは?何が違反になるのか?
住宅ローンの不正利用のほとんどは「融資の目的外利用」です。
住宅ローンは一般的な融資に比べて長期かつ低金利で借りられますが、これは「本人や家族が自ら住む家を買うため」に用途が限られているからこそ成り立つ条件です。
つまり、住宅を第三者に貸すいわゆる投資用物件の取得には本来使えません。自らが居住する意思がないのに「自分が住む」と偽って住宅ローンを利用すれば契約違反にあたり、悪質な場合は詐欺罪が適用される恐れもあります。
代表的な不正利用の類型は、以下の3つです。
- 居住偽装
- 物件価格の水増し
- 居住用以外の利用・流用
①居住偽装は、投資用物件を自己居住用と偽って住宅ローンを申し込む手口です。低金利が適用される住宅ローンを投資用物件の購入に利用することから、不動産業界では「なんちゃって不動産投資」と呼ばれることもあります。
②物件価格の水増しは、実際より高い金額の売買契約書を作成し、物件価格を上回る融資を引き出す手口です。上乗せ分は業者の紹介料や、購入者が抱える別の借金の肩代わりに流用されます。
③居住用以外の利用・流用には、大きく2つのパターンがあります。1つは住居としてではなく事務所や店舗として建物を利用するケース、もう1つは融資で得た資金を自動車の購入やカードローンの返済にあてるなど、物件購入以外の用途に流用するケースです。いずれも住宅ローンの目的から外れるため、不正利用にあたります。
02なぜ「知らないうちに」巻き込まれてしまうのか?
住宅ローンの不正利用には、最初から悪意を持って実行に移す人もいます。しかし実際には、不正利用するつもりがないのに、知らないうちに巻き込まれてしまうケースも珍しくありません。
なぜ、そのようなことが起こるのでしょうか。多くのケースで不正利用の仕組みを主導するのが消費者ではなく、悪質な不動産会社および投資勧誘グループ側です。あらかじめ用意された流れに乗せられてしまうため、本人の自覚がないまま加担する形になってしまいます。
たとえば、街頭アンケートやSNSのプレゼント企画で個人情報を収集し、後から営業電話をかけたり、投資セミナーを装って勧誘したりする手口が挙げられます。また、近年ではSNSやマッチングアプリを介して知り合い、恋愛感情を利用して購入を促すデート商法的な手口も増加しており、一般消費者が巻き込まれる入り口が身近になってきています。
特に狙われやすいのは「自分には関係ない」と思っている20~30代の会社員や、年収がそれほど高くない層です。悪質業者は年金など将来への不安をあおったうえで「手続きは任せて大丈夫」という手軽さを前面に押し出して契約につなげようとします。
勧誘の場では「説明を聞くだけ」という当初の話とは違い、長時間の拘束で契約を迫られるケースもあります。これは消費者の「恐怖感」や「面倒くささ」といった、断り切れない心理を突く手口です。一度サインしてしまうと内容をよく理解しないまま話が進み、知らないうちに虚偽申告に加担させられてしまいます。
こうした事例が頻発する背景には、不正利用を金融機関に見抜かれにくい構造があります。住宅ローンは審査の段階で提出する住民票が旧住所のままでよく、「自分で住むかどうか」は基本的に本人申告です。金融機関としては、購入物件を投資用に流用するつもりかどうかを審査段階で見抜くのが難しいのが実情といえます。
融資実行後に新住所の住民票を確認する「入居確認」で自己居住のチェックはできますが、悪質業者は消費者に「住民票だけ移して」と指示することで、確認をすり抜けようとしているのが現状です。
03発覚時のリスクは甚大。すべての責任は「契約者本人」に
不正利用は知らないうちに巻き込まれてしまうことも多く、仮にそれが発覚したときは本人が困る程度の問題では済まない場合があります。悪質性にもよりますが、勧誘した業者ではなく契約者本人の人生設計を揺るがすほどのリスクがあることは理解しておきましょう。
ここでは、不正利用発覚時に本人へ降りかかる代表的なリスク4つを整理していきます。
リスク①:残債の一括返済を求められる
契約違反が発覚した場合、一般的に金融機関は残っているローンの一括返済を請求する権利を持っています。つまり、数千万円単位のお金をまとめて返さなければならない可能性があります。しかし、それほどの現金をすぐに用意できる世帯はほとんどないでしょう。
現金を用意できなければ、取得した物件を売却して返済にあてることになります。ただし、リスク②で述べるとおり、その売却も思いどおりにいかない可能性があります。
リスク②:売っても返しきれない
不正利用の物件は、相場より高い価格で買わされているケースが多いのが実情です。そのため、銀行から一括請求された金額に実際の売却額が届かず、物件を手放したにもかかわらず借金だけが残る恐れがあります。
特に競売にかけられた場合は、市場価格の5〜7割程度でしか売れないのが一般的です。競売では買主に通常の売買で認められる権利が及ばないため、評価額から3割ほど減額して売却基準価額が定められます。さらに民事執行法第60条により、そこから2割を差し引いた「買受可能価額」以上でなければ入札できない仕組みになっているためです。
たとえば5000万円で購入した物件(残債4800万円)が競売で3000万円でしか売れなければ、物件を失ったうえに差額の1800万円が借金として残ることになります。
リスク③:自己破産に追い込まれることも
一括返済を求められたものの現金を用意できず、物件を売却しても返済額に届かない。そうなれば、最悪のケースでは自己破産に追い込まれるかもしれません。実際、過去に起こったフラット35の不正利用問題では162件の不適正利用が確認され、契約者は残債の一括返済を求められました。なかには自己破産に至った人もいます。
さらに注意したいのは、不正利用が詐欺にあたる行為とみなされた場合、自己破産をしても免責が認められないことがある点です。借金だけが残り続ける事態にもなりかねません。
リスク④:詐欺罪という刑事責任を問われる
仮に不正利用の手続きを業者任せにしていたとしても、それによって銀行に損害を発生させたと判断された場合は詐欺罪に問われる恐れがあります。詐欺罪は刑事罰の対象であり、仮に適用されて逮捕・起訴されると前科が残る可能性があります。
その際に責任を問われるのは契約者であると、フラット35を提供する住宅金融支援機構も明言しており、「知らなかった」「自分は被害者だ」と訴えても、契約違反と詐欺の責任が本人に及んだ実例もあります。
投資用物件への不正利用が発覚すると、悪質業者は最終的に「勧誘した人間はうちの社員ではないから関係ない」と責任逃れを始め、やがてサブリース契約で入っていた家賃収入も途絶え、そのまま連絡が取れなくなるというのが典型的なパターンです。
だからこそ、契約してしまう前の入り口の段階で「この話はおかしい」と気づくことが有効な防御策だといえます。
04ネット銀行4行の新協定で何が変わる?「銀行に見抜かれない」が通用しない時代へ
ここまで述べてきた不正利用の実態を受けて、各金融機関はさまざまな対策を打ち出しています。そのうちの1つが、イオン銀行・PayPay銀行・auじぶん銀行・SBI新生銀行の4行が2026年6月29日に締結した「住宅ローン不正利用に関する情報交換協定書」です。これにより、不正への関与が疑われる不動産会社などの企業情報や、その手口・傾向が参加銀行の間で共有されます。
協定に参加した4行は、いずれもネットやスマホで手続きが完結するネット銀行です。対面での確認機会が少ないぶん悪質業者に狙われやすい面がありましたが、今回の協定で銀行をまたいだ「検知の網」ができたことで、チェック体制の強化が期待できます。
この仕組みは、不正利用を防ぐだけでなく、消費者を守ることにもつながります。悪質業者の情報が複数行で共有されれば、不正が疑われる契約を早い段階で排除しやすくなるためです。なお、共有されるのは業者側の情報のみで、顧客の個人情報は含まれていません。
すでに4行は他の金融機関にも参加を呼びかけていく方針で、検知の網は今後さらに広がることが期待されています。
05これが出たら要注意!危ない勧誘のチェックリスト
悪質業者に対する情報共有の仕組みが整いつつあるとはいえ、参加しているのはまだ一部の金融機関にとどまっています。トラブルに巻き込まれないためには、消費者側が悪質業者を見分けるアンテナを張っておくことも重要です。
幸い、悪質業者の誘い文句には共通のパターンがあります。ここからは、公的機関の注意喚起や実際の被害で確認されている勧誘事例を4つ紹介します。
① 利用目的をごまかそうとする
もしも、不動産業者が「投資用物件の取得にも住宅ローンが使えますよ」などと言ってきたら、それは疑ったほうがよいでしょう。前述のとおり、住宅ローンは自己居住が大前提のローンです。原則的に投資用物件への資金流用は契約違反かつ詐欺罪になりうる行為だということを忘れてはいけません。
「銀行には“自分で住む用”と説明すればOK」などと言われても、安易に納得しないでください。
② 書類や数字を作ろうとする
契約を進められたときに「契約書は2通作りましょう」「収入が少なくても、こちらでうまく調整します」などという言葉が出たときも要注意です。前者は「二重売買契約・価格水増し」、後者は「収入資料の改ざん」に該当する恐れがあります。
また、「住民票だけ先に新居へ移してください」「カードローンや車のローンも上乗せしてまとめられます」と告げられた場合も入居偽装や住宅ローンの目的外利用となり、いずれも金融機関への虚偽申告にあたる可能性があります。万が一それが不正利用だった場合、一括返済や詐欺罪のリスクが契約者本人に及ぶ可能性があることは常に頭に入れておきましょう。
③ 契約者を情報から遮断しようとする
不動産取得や住宅ローンの手続きは慣れていない人にとっては煩雑なので、つい業者任せにしてしまいがちです。もちろん、正規の不動産会社にも煩雑な手続きを代理で進めてくれるところはあります。
ただし「全部こちらでやります」とすべての手続きを一方的に進めたうえ、「銀行とは直接やり取りしないでください」とまで言ってくる業者は怪しいと考えてよいでしょう。本人と金融機関との連絡を過度に遮断しようとするのは、契約内容を理解させたくないために誘導している可能性があるためです。
手続きをすべて業者任せにすることは、不正の温床になりかねません。こうした言葉が出たら、最大限の警戒をしてください。
④ 重要な内容を太字、その中でも重要な内容には斜体にしてください。
住宅ローンの不正利用は、投資用物件を探している人が引っかかることも多いです。特に「自己資金ゼロでOK」「年収250万円からでも大丈夫」「サブリースで35年家賃保証、滞納の心配なし」などといった甘い言葉ばかりを並べて勧誘してくる業者には注意してください。
うますぎる話に乗った結果、その実態は住宅ローンの不正利用で、当初説明があった家賃保証や高利回りが途中で崩れ、返済だけが残る事例はこれまでにもたくさんあります。
もし当てはまったら? ―― その場でやるべき3つのこと
ここまで紹介した4つのポイントに1つでも当てはまった場合は、次の3つを実行してください。
1. その場でサインをしない
話を持ち帰ることに、担当者への後ろめたさを感じる人もいるかもしれません。しかし、あとで取り返しのつかない事態になるより、一度落ち着いて冷静に判断する時間を作ることのほうがはるかに重要です。
2. 銀行に自分で直接確認する
住宅ローンの話がすでに進んでいるのであれば、該当する金融機関に自分で問い合わせましょう。業者を介さず直接確認することが、不正利用に巻き込まれないための有効な対策になります。
3. 消費生活センターに相談する
自分では判断できない場合は、消費者ホットライン188に相談してください。専門の相談員が対応してくれます。
06「転勤でやむを得ず貸す」のは不正になる?
自己居住用で買った家を転勤でやむを得ず賃貸に出す場合、通常は不正利用にはあたりません。重要なのは「借りた時点での意思」だからです。最初から住む気がないのに偽って借りれば居住偽装を問われますが、自分が住む前提で借りたあとに事情が変わって貸す場合はこれにあたりません。
たとえばフラット35では、転勤などやむを得ない事情で一時的に居住できない場合、融資住宅に戻ることを前提に賃貸することが認められています。ただし、金融機関の窓口で住所変更の手続きが必要です。無断で貸してしまうと目的外利用と判断され、借入額の全額を一括返済するよう求められることもあります。賃貸に出す前に、必ず借入先の金融機関に相談してください。
なお、「戻ることを前提に」という条件がある以上、契約形態にも注意が必要です。一般的な普通借家契約では貸主側の都合で明け渡しを求めるのが難しいため、あらかじめ期限を区切れる「定期借家契約」で貸し出しておくと安心でしょう。
07住宅ローンを安心して借りるために、まずは「自分で比較・確認」から
SNSの普及に伴い、これまでよりも住宅ローンの不正利用の入り口は身近になっています。それに巻き込まれないように、手続きや判断を業者に「丸ごとお任せ」にすることは避けましょう。他人任せにせず内容を理解したうえで住宅ローンや物件を選べば、そうした被害に遭いにくくなるはずです。
とはいえ、ほとんどの人にとって住宅ローンは初めての経験です。自分で判断するといわれても、「どの銀行がよいのか」「いくらまで借りられるのか」といった細かい部分までは分からなくて当然でしょう。
そんなときに役立てていただきたいのが、「スゴい住宅ローン探し」です。各金融機関の住宅ローンをすぐに比較できる「最新金利ランキング」や、借入可能額をスピーディーに確認できる「スゴ速住宅ローン保証審査」など、条件に合った住宅ローンを探すのに役立つサービスを提供しています。 安心して住宅ローンを借りるための第一歩として、まずは金利ランキングで複数の金融機関を見比べてみることから始めてみてはいかがでしょうか。
監修:新井智美
CFP®/1級ファイナンシャル・プランニング技能士
プロフィール
トータルマネーコンサルタントとして個人向け相談の他、資産運用など上記相談内容にまつわるセミナー講師を行う傍ら、年間100件以上の執筆・監修業務を手掛けている。
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