
道路陥没・水道・ガストラブルを未然に防ぐ!住宅購入前に確認すべきインフラの安全性

これまで、住宅の安全性といえば地震や大雨などの自然災害によるリスクに注目されることが一般的でした。しかし、2025年1月28日に埼玉県八潮市で発生した道路陥没事故は、そうした災害とは異なる、目に見えにくいインフラのリスクが日常の中に潜んでいることを浮き彫りにしました。このニュースに衝撃を受けた人も多いのではないでしょうか。 住宅購入では、立地や間取り、価格などに目が向きがちですが、インフラ整備状況まで確認しないと、快適な暮らしが損なわれる可能性があります。そこで本記事では、住宅購入時に「安全なインフラ」を見極めるためのチェックポイントを詳しく解説します。

01住宅購入時に確認すべきインフラのチェックポイント
住宅で快適に暮らすには、上下水道、ガス、電気などのインフラが整備されていることが重要です。しかし、エリアごとの整備状況や供給方式によって、注意すべき点が異なるため、事前に確認しておく必要があります。安全で快適な住まいを選ぶためにも、これから紹介するチェックポイントを参考に、購入予定の住宅付近のインフラ状況を確認してみましょう。
水道の整備状況を確認しよう
住宅の水道インフラには、主に「公営水道」「私営水道」「井戸水」の3種類があります。それぞれの特徴を理解し、住宅購入前に適切な水道環境が整っているかを確認することが重要です。
- 公営水道:自治体が運営し、給水の安定性や水質が比較的良好で、水圧も一定であることが多い
- 私営水道:マンションや団地内などで独自の水道システムを利用し、管理会社によって水質や料金が異なる
- 井戸水:水道料金がかからないのがメリットだが、水質管理が自己責任となり、定期的な水質検査が推奨される
住宅購入前に確認すべき水道インフラのチェックポイント
【老朽化した水道管による問題】
- 水道管の材質や耐久年数を確認(古い地域では鉛管や鉄管が使われていることがあり、水質悪化や水圧低下の原因となる)
- 水圧の確認(水圧が低いと、2階以上のトイレの水が流れにくいなど水の供給が不安定になる可能性あり)
- 赤水や異臭の発生(老朽化した水道管では、サビや異物混入が起こる可能性あり)
【水道の引き込み工事の必要性】
- 土地に水道管が引き込まれているかを確認
- 未整備の場合は工事費用が必要(引き込み距離が長いほど費用が高額になる)
- 自治体によって補助金制度が存在する場合もあるので、事前に確認
現地での目視チェックで気になる点があれば、不動産会社の担当者に確認するのも一つの方法です。また、自治体の水道局の担当課で入手できる「上下水道配管図・台帳」を活用すると、以下の情報を確認できる可能性があります。
- 水道の種類(公営・私営・井戸水)
- 配管の引き込み状況
- 水道管の種類(老朽化のリスクがないか)
インフラの整備状況をしっかりチェックし、安心して暮らせる住宅を選びましょう。
下水道と排水設備を確認しよう
住宅の下水処理方法には、「公共下水」と「浄化槽」の2種類があります。
- 公共下水:自治体が管理する下水処理施設へ直接排水する方式で、個人の維持管理が不要で、衛生面でもメリットがある
- 浄化槽:住宅ごとに設置し、定期的なメンテナンスや清掃が必要。年間の維持費がかかる点に注意
現在、多くの地域で公共下水が整備されていますが、一部では浄化槽が利用されているエリアもあるため、事前に確認しておくことが重要です。
また、下水道には雨水を排水するための「雨水管」も含まれます。大雨時の冠水リスクを防ぐためにも、排水設備の整備状況をチェックしておきましょう。
住宅購入前に確認すべき下水道と排水設備のチェックポイント
【下水処理方法の確認】
- 公共下水か浄化槽かを確認(浄化槽の場合、敷地のどこかに埋設されており、マンホールが目印)
- 浄化槽を利用する場合、年間で数万円ほどのメンテナンス費用がかかることもある
【雨水排水の設備が整っているか】
- ハザードマップを確認し、浸水リスクがある地域かどうかを把握
- 集中豪雨時に冠水しやすい地域では、雨水排水の整備状況を確認
- 排水溝や側溝の詰まり、傾斜の有無をチェック
雨水排水の処理能力は目視だけでは分かりにくいため、可能であれば近隣住民や不動産会社の担当者に、物件周辺の過去の冠水状況を確認するのも有効です。
- 過去に敷地周辺が冠水したことがあるかを聞く
- 冠水歴がある場合は、雨水排水の処理能力が十分でない可能性がある
事前に下水道と排水設備の状況を把握し、安心して暮らせる住環境を選びましょう。
ガスの供給方式を確認しよう
給湯器やコンロなどの燃料となり、寒い時期でも暖かく快適な暮らしを支えるガスインフラ。ガスの供給方式には、主に「都市ガス」と「プロパンガス(LPガス)」の2種類があり、それぞれにメリット・デメリットがあります。
- 都市ガス:プロパンガスと比べて料金が安いのがメリット。ただし、供給エリアが限られており、住宅の立地によっては利用できない。
- プロパンガス(LPガス):各戸にガスボンベを設置するため、地震などの災害時でも供給が途絶えにくいのがメリット。しかし、都市ガスよりも料金が高いケースが多い
住宅購入前には、どちらのガスを利用できるのか、またそれぞれの特徴を理解したうえで選ぶことが大切です。
住宅購入前に確認すべきガスインフラのチェックポイント
【都市ガスの引き込み工事】
- 新たに引き込み工事が必要か
- 本管(低圧管)が前面道路にあるか(ない場合はガス会社に延長工事を依頼できるが、高額な自己負担が発生する可能性あり)
引き込み工事の費用は、本管との距離によって異なり、数十万円以上かかることもあります。自治体やガス会社によって補助金が出るケースもあるため、事前に調べておきましょう。
【プロパンガスの料金システム】
- 供給会社によってガス料金が異なるため、事前に確認が必要
- ガスボンベの設置や管理が必要なため、維持費も考慮する
都市ガスとプロパンガスは、それぞれ一長一短があります。都市ガスは料金が安いため、長期的なコストを抑えたい人に向いている一方で、プロパンガスは災害時に強いため、ライフラインの安定性を重視する人に適しています。
住宅の立地やライフスタイルに合わせて、最適なガスの供給方式を選びましょう。
電気の供給を確認しよう
電気は、照明から空調、家電の使用など、日常生活に欠かせない最も重要なライフラインです。2016年4月の電気自由化により、民間業者による電力小売業が可能になり、多くの事業者がサービスを提供するようになりました。送電網自体は従来の大手電力会社のものを利用するため、どの電力会社を選んでも電気の品質や信頼性は変わりません。そのため、各社の料金やプラン(ポイント還元・キャッシュバックなど)を比較し、ライフスタイルに合ったものを選ぶとよいでしょう。
住宅購入前に確認すべき電気インフラのポイント
【電力会社の料金システム】
- 契約する事業者によって電気料金プランが異なるため、比較検討が必要
- ポイント還元やキャッシュバック、セット割引などの特典を考慮する
【電柱の位置と移設の可否】
- 敷地内に電柱がある場合、移設が可能なケースがある(ただし、自治体や電力会社の許可が必要で、自己負担が発生する可能性あり)
- 電線の引き込みがされているかを確認(不足している場合は、追加工事が必要になることも)
住宅購入予定地を確認した際、駐車スペースや建物の配置などの関係で敷地内の電柱が邪魔になる場合があります。このようなケースでは、自治体や電力会社の許可を得ることで移設できる場合があるため、事前に問い合わせてみるとよいでしょう。
また、中古住宅の場合、電気配線が老朽化していたり、現行の基準に合致していなかったりする可能性があります。その場合、追加工事が必要になることもあるため、事前に電気設備の状態を確認することが重要です。
快適で安心な暮らしを実現するために、住宅購入前に電気インフラの状況をしっかりチェックしましょう。
道路のインフラと陥没リスクを確認しよう
国土交通省の「道路の陥没発生件数とその要因(令和2年度~令和4年度)」※によると、全国で毎年約1万件の道路陥没が発生しています。主な要因として、下水道の施工不良や老朽化、地下への水の侵入などが挙げられます。
もし自宅周辺で大規模な道路陥没が発生すれば、ライフラインの断絶や通行の制限など、日常生活に大きな影響を及ぼす可能性があります。そのため、住宅購入時には周辺の道路インフラの状態をしっかり確認しておきましょう。
住宅購入前に確認すべき周辺道路のチェックポイント
【過去の被害の有無を確認】
- 住宅購入予定地の周辺で過去に陥没事故が発生していないかを調査
- 近隣住民や不動産会社に聞く、またはインターネットで検索
【周辺道路の目視チェック】
- 道路のひび割れやマンホールのズレがないか現地で確認
- 雨が上がった後も水が溜まり続けている場所はないかをチェック(地盤が緩んでいる可能性がある)
道路陥没事故は、水はけが悪く地盤が緩い場所で起こりやすいため、道路のインフラを確認するときは晴天時だけでなく、雨天時にも現地を訪れることをおすすめします。
また、住宅購入前に周辺の道路インフラの安全性を確認する方法について、さらに詳しく解説した関連記事もあるので、そちらもぜひ参考にしてください。
02インフラ状況を確認して後悔しない家選びを!
住宅を購入する際、デザイン性や立地の利便性、価格に目が行きがちですが、周辺のインフラ状況を確認しておかないと、いざというときに不便な生活を強いられるかもしれません。特に、道路インフラが老朽化している地域では、長期的に道路陥没や地盤沈下のリスクが高まり、住環境に影響を及ぼす可能性があるため、注意が必要です。安心して快適に暮らすためにも、今回紹介したインフラの安全確認方法を実践し、住まいの安全性をしっかりチェックしましょう。
また、インフラの安全性と確認するのと同じぐらい、しっかりした資金計画を立てることも重要です。土地や建物のチェックに加え、住宅ローンの適正額や将来の生活設計を見据えた資金計画を立てることで、お金の面で心配することなく暮らせるでしょう。
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これから住宅購入を検討している方は、ぜひ活用してみてください!

監修:新井智美
CFP®/1級ファイナンシャル・プランニング技能士
プロフィール
トータルマネーコンサルタントとして個人向け相談の他、資産運用など上記相談内容にまつわるセミナー講師を行う傍ら、年間100件以上の執筆・監修業務を手掛けている。