事故物件は住宅ローン審査が通りにくい?金融機関の担保評価に影響も

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高齢化社会を迎えた現在、日本では一人暮らしの高齢者が自宅で亡くなるケースが増えています。東京都監察医務院が公表しているデータ※によると、東京23区内における一人暮らしで65歳以上の人の自宅での死亡者数は、2012年には2618人でした。しかし、10年後の2022年には4868人となり、2倍近い増加が発表されています。 一人暮らしの場合、発見が遅れがちなために特殊清掃が必要になり、事故物件扱いになるケースが少なくありません。こうした物件は一般的に敬遠されがちで、売却は難しいとされていました。しかしながら近年、住宅価格の高騰という背景もあり、あえて事故物件を購入する人が増えているといいます。なぜなら、事故物件は格安で販売されることが多いためです。 ここで注意したいのは、事故物件は「住宅ローンの審査に通りにくい」ということです。いくら格安とはいえ、不動産を現金一括で購入するのは難しく、ほとんどの方は住宅ローンの利用を検討するのではないでしょうか。そこでこの記事では、事故物件を購入するメリット・デメリットや、住宅ローンを利用して購入する際の注意点について解説します。事故物件に抵抗がなく、選択肢の一つとして考えている方は、ぜひ参考にしてください。 ※出典:東京都保健医療局

01事故物件を住宅ローンで購入する際の注意点

事故物件を住宅ローンで購入する際の大きな注意点は、物件の担保価値が低く見積もられることです。金融機関の住宅ローン審査では、借り手の返済能力に加え、物件そのものの担保価値がチェックされます。万が一返済が滞った場合に、物件を競売にかけてローン残債を回収する必要があるためです。

事故物件の場合、重要事項説明書や売買契約書に「告知事項あり」と記載されるのが一般的です。不動産の告知事項とは、取引において相手方に伝えるべき重要な情報のことを指し、宅地建物取引業法第47条により告知が義務付けられています。告知が必要な内容については後ほど詳しく紹介しますが、物件に何らかの欠陥や不具合があることを表すため、不動産としての評価は低い傾向にあります。

金融機関は、貸したお金が回収できなくなるリスクを避けなくてはなりません。そのため、事故物件は融資審査に不利にはたらくことが多いようです。もちろん、借り手に十分な返済能力があると判断された場合など、審査に通る可能性はゼロではないでしょう。ただし、希望額を借りられないなど、条件が厳しくなる可能性があることには留意する必要があります。

02そもそも「事故物件」の定義とは?

法律上明確な定義があるわけではありませんが、事故物件とは、購入や賃貸契約を避けたくなる事情を抱えている物件を指します。前述のとおり、物件に隠れた瑕疵がある物件については、売主・貸主から買主・借主に対して、その内容を告知しなくてはなりません。告知が必要とされる事項は、次の4つです。

要因 内容
心理的瑕疵 事故死や病死、自殺、他殺などにより室内で人が亡くなった
物理的瑕疵 ・雨漏りやシロアリ被害、アスベストなど、建物に欠陥がある
・土壌汚染や地盤沈下など、土地に問題がある
法的瑕疵 違法建築や再建築不可など、現行の法令・規制に従っていない
環境的瑕疵 騒音や悪臭、不快な施設など、周辺環境に問題がある

このうち、一般的に事故物件と呼ばれるのは、心理的瑕疵がある物件です。ただし、基本的に自殺や他殺、事故死が対象となり、自然死や病死は事故物件に含まれません。とはいえ、自然死でも一人暮らしの場合は発見が遅れるケースが多く、特殊清掃が必要になった場合には事故物件として扱われます。

なお、事故物件の売却価格は、通常の物件よりも10〜50%程度低くなるのが一般的です。死因によっても価格が異なり、自然死で約10%、自殺で20〜30%、殺人の場合は30〜50%もの価格の下落が見られます。

03「孤独死や自然災害死の事故物件なら問題ない」と4割が回答

相場より安く購入できることで注目を集めつつある事故物件ですが、実際のところ需要はどの程度あるのでしょうか?以下に紹介するのは、2024年9月に株式会社クランピーリアルエステートが行ったアンケートの結果です。(対象:全国の男女969人)

事故物件に住むことについて

男性 女性
抵抗がある 45.7% 69.1%
やや抵抗がある 27.9% 23.3%
73.6% 92.4%

上記のみを見ると、事故物件に抵抗を持つ人がほとんどです。特に女性は抵抗が強いですが、原因や事故後の状況によっては印象が異なることが分かりました。

どの事故物件なら住めるか

原因 住めると回答した割合
自然災害死(特殊清掃済み) 21.6%
孤独死(特殊清掃済み) 20.1%
共有部分での死亡 15.8%
事故死 12.3%
孤独死(死後数日以内) 12.0%
火災 9.5%
自殺 4.2%
殺人 2.4%
その他 2.1%

全体の約40%が「事件性のない不慮の死で、特殊清掃済みなら住める」と答えていることから、事故物件でも一定の需要は期待できるといえるでしょう。

04事故物件を購入するメリットあり!ただしデメリットにも注意しよう

事故物件の購入については、価格面に大きなメリットがあります。ただし、住宅ローンでの購入を考えている場合は、事故物件であるがゆえの注意が必要です。ここからは、事故物件を購入するメリットとデメリットについて解説します。

【メリット】一般的な相場より安価で家が手に入る

事故物件の最大のメリットは、相場よりも安価で購入できる点です。住宅価格の高騰が続いている昨今、通常の物件よりも割安で購入できる事故物件は、選択肢の一つになるでしょう。過去の事故や事件に起因する心理的瑕疵によって価格が大きく下がるため、予算内で良質な物件を購入するチャンスといえます。

近年は、事故物件に特化した不動産業者も登場しており、事故物件に抵抗感が少ない購入希望者とのマッチングやリノベーションで付加価値をつけて販売を行っています。市場に出る事故物件は基本的に特殊清掃が終わっており、リフォームやリノベーションで新築同然になっているものも少なくありません。そのため、事故物件であることを承知のうえで、割り切って購入する人が増えています。

【メリット】賃料を下げて賃貸物件として活用できる

事故物件を安く購入して、賃貸物件として活用する方法もあります。特に都市部の駅周辺など、利便性の高い人気エリアは賃貸需要も高く、賃貸経営を行うのにおすすめです。このような好立地の物件は販売価格も高額ですが、事故物件なら格安で手に入る可能性があります。事故物件という特性上、購入の競争率も低めで、価格交渉がしやすいこともメリットにあげられるでしょう。

予算が浮いた分、リフォームやリノベーションにお金をかけるのも、入居希望者の需要アップにおすすめの方法です。ニーズを捉えた間取りや最新設備を取り入れることで、入居希望者の注目を集めることができるでしょう。告知義務があるため、事故物件であることは伝えなくてはなりませんが、相場よりも安い賃料で新築同様の部屋に住めるとなれば、比較的スムーズな入居付けが期待できます。

なお、賃貸用物件をローンで購入する場合、住宅ローンではなく、不動産投資ローンやアパートローンなどの事業用ローンを利用する必要があります。住宅ローンは「自ら居住すること」を前提としており、低い金利や住宅ローン控除などの優遇措置がとられています。住宅ローンで賃貸用物件を購入すると不正利用と見なされ、発覚した時点で全額返済を求められるので注意してください。

【デメリット】将来的に売却や賃貸しにくい

事故物件の売却や賃貸については、取引の際に告知義務が生じます。そのため、事故の内容や価格によっては契約締結につながりにくいことがデメリットです。

2021年に国土交通省が策定した『宅地建物取引業者による人の死の告知に関するガイドライン』※によると、告知事項について「事案発生から概ね3年が経過した後は、原則として告げなくてもよい」とされています。ただし、経過期間や死因に関係なく、「買主・借主から事案の有無について問われた場合や、社会的影響の大きさから買主・借主において把握しておくべき特段の事情があると認識した場合等は告げる必要がある」とも記載されています。

なお、前述のイエコン(株式会社Clamppy)のアンケート調査では、「持ち家の金額いくらなら事故物件に暮らせるか」という質問に対し、最も多かったのが「50万円未満」という回答でした。多くの人ができれば事故物件を避けたいと感じているため、売却は難しくなることが予想されます。

【デメリット】実際に暮らすとストレスを感じることも 

事故物件であることに納得して購入したにもかかわらず、実際に住んでみると心理的なストレスを感じる可能性があります。事故当時を知る近隣住民から詳細を聞かされた場合など、内容によっては購入を後悔することにもなりかねません。

持ち家は賃貸のように気軽に引っ越すことができないため、購入の検討は慎重に行う必要があります。特に事故物件の場合、売却しにくいという側面もあり、スムーズに住み替えができないかもしれません。購入を決める前に事故の内容をできるだけ集め、それでも住めるかどうかをしっかりと考えることが重要です。

05住宅ローン審査が通るか不安な人は「住宅ローン保証審査」がおすすめ

事故物件を住宅ローンで購入する際に最も重要なのは、金融機関がローンを承認してくれるかどうかを事前に確認することです。事故物件は市場価値が低く評価されやすく、売却や賃貸が難しいと考えられているため、融資を拒否される可能性もあります。

もし不安な点がある場合は、まずサイト内の「住宅ローン保証審査」を受けてみることをおすすめします。簡単な審査で、物件を決める前にローンが通るかどうかを確認できるので、安心して次のステップに進むことができるでしょう。スムーズに住宅購入を進めるために、お気軽に「住宅ローン保証審査」サービスを利用してみてください。

新井智美

監修:新井智美

CFP®/1級ファイナンシャル・プランニング技能士

プロフィール

トータルマネーコンサルタントとして個人向け相談の他、資産運用など上記相談内容にまつわるセミナー講師を行う傍ら、年間100件以上の執筆・監修業務を手掛けている。

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