「孤独死保険」ってどんな商品?持ち家があっても加入できるの?

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近年、一人暮らしの高齢者が増加し、孤独死が深刻な社会問題となっています。警察庁の発表※によれば、2024年1~6月に自宅で亡くなった一人暮らしの高齢者(65歳以上)の数は約2万8000人にのぼります。 遺品整理や特殊清掃、建物修繕などを業者に依頼すると、高額の費用がかかります。賃貸物件の場合、オーナーの受ける損害があまりに大きいため、リスクヘッジとして登場したのが「孤独死保険」です。 一方、持ち家の場合、残された家の処理は相続人が行います。負担を少しでも軽くするために、ある程度の備えはしておいたほうがよいでしょう。 本記事では、孤独死保険の概要に加え、持ち家で一人暮らしをする場合の孤独死対策について詳しく解説します。老後の不安を軽減するために、ぜひ参考にしてください。 ※出典:警察庁発表資料 年齢階層別(令和6年上半期暫定値)

01孤独死保険とは?

孤独死保険は、一人暮らしの高齢者が増加する中で注目されている保険商品で、賃貸物件で孤独死が発生した際に生じる金銭的損失を補償するものです。この保険は大きく分けて「家主型」と「入居者型」の2タイプが存在し、それぞれ契約者や補償内容が異なります。

家主型 入居者型
種類 単独保険 家財保険(火災保険)特約
契約者 家主または管理会社 入居者
被保険者 家主または管理会社 入居者
補償内容 ・遺品整理費用
・原状回復費用
・空室期間の家賃損失
・遺品整理費用
・原状回復費用
保険金受取 家主または管理会社 相続人

家財保険に付帯する入居者型は、上記のような死亡時だけでなく、火災や盗難などの損害も補償します。保険料の相場は2年間契約で2万円前後です。死亡時には相続人が保険金請求を行いますが、相続人がいない場合は家主や管理会社が請求できる特約がある商品を選ぶ必要があります。

02孤独死保険は持ち家でも加入できる?

独身でマイホームを購入したケースや、配偶者と死別したケースなど、持ち家で一人暮らしをする背景はさまざまです。天涯孤独でないかぎり、もしものときに「家族や親戚に迷惑をかけたくない」と考えるのは自然なことといえるでしょう。

前述のとおり、孤独死保険は賃貸物件を対象とした保険商品のため、持ち家は対象になりません。そこで、万一の備えとしておすすめしたいのが、以下の2つの方法です。

  • 相続人がいる場合
    • 少額短期保険など低額の死亡保険
  • 身寄りがない場合
    • 死後事務委任契約

少額短期保険

少額短期保険とは、手頃な保険料で加入できる少額かつ短期の掛け捨て型保険で、ミニ保険とも呼ばれています。持病・既往歴がある人を対象とした商品もあるため、一般の生命保険に加入できない場合の選択肢になるでしょう。

月々の保険料は、契約時の年齢や保障内容などで異なりますが、月々数百円程度で加入できる商品が多く、負担を抑えつつ万一に備えたい場合におすすめです。

一般社団法人日本少額短期保険協会の孤独死対策委員会が発表した「第8回孤独死現状レポート」によると、2015年4月~2023年3月までに発生した孤独死に伴う保険金の支払い実績は、以下のとおりとなっています。

平均損害額 平均支払保険金
残置物処理費用 23万7218円 23万6196円
原状回復費用 39万7158円 31万2098円
合計 63万4376円 54万8294円
出典:第8回孤独死現状レポート

上記はあくまで平均であり、実際にかかる費用は家の広さや状況によって異なります。例えば一軒家の場合、残置物処理にかかる費用は30万~70万円程度です。更地にして売却するとしたら、坪数や立地にもよりますが、家屋の解体に100万〜300万円程度の費用がかかります。もしものときにこれらの費用を保険金で賄えれば、相続人の負担はかなり軽くなるはずです。

ただし、保険に加入していることを相続人が知らなければ、保険金の請求はできません。保険会社名や連絡先、証券番号、証券の保管場所などをエンディングノートに記載しておきましょう。

死後事務委任契約

死後事務委任契約とは、死亡時に発生する諸々の手続きを第三者に委託する契約のことです。死後の対応を確実に進めてもらうために、信頼できる専門家や機関との契約を結ぶことで、自分が亡くなった後に周囲に迷惑をかけるリスクを軽減できます。死後の残置物処理や、賃貸物件の契約解除などの事務の委託も可能です。

主な依頼先

  • 弁護士、司法書士
  • 社会福祉協議会
  • 民間企業

依頼できる内容

  • 葬儀や埋葬に関する手続き
  • 病院や介護施設に関する手続き
  • 行政機関への届け出
  • 住民税や所得税の手続き
  • 公共料金の精算と解約
  • デジタル遺品の整理
  • 関係者への死亡通知
  • 銀行や携帯電話の解約手続き など

依頼先や内容によって異なりますが、死後事務委任契約にかかる費用は50万~200万円が相場です。

03おひとりさまが家を購入する際は「最終的に自宅をどうするべきか」、出口を決めておく

おひとりさまが家を購入する際には、最終的に自宅をどうするかという「出口戦略」を立てることが非常に重要です。特に一生独身で過ごす予定で家を購入する場合、老後にどのように住まいを活用するかを早めに考えておく必要があるでしょう。例えば、ある程度の年齢で家を売却し、高齢者施設の入所資金に充てるのも一つの選択肢です。

できるだけ長く自宅に住み続けたいと考える場合は、「リバースモーゲージ」や「リースバック」といった資金調達方法も検討材料になります。それぞれの仕組みとメリット・デメリットを、以下に簡単にまとめました。

リバースモーゲージ

仕組み

  • 自宅を担保にして、金融機関からまとまった生活資金を借りる
  • 融資限度額は不動産評価額の50%〜70%程度
  • 生存中は利息部分を毎月支払い、死亡時に自宅を売却して融資された金額を返済

メリット

  • 毎月の返済負担が少ない
  • 死亡後の自宅の処分に困らない

デメリット

  • 金利が割高(年3~4%前後)
  • 修繕費や固定資産税など維持費の支払いが続く
  • 土地の評価が重視されるため、マンションは対象外であることが多い
  • 将来的に評価が下がって担保割れを起こす可能性がある

リースバック

仕組み

  • 事業者に自宅を売却し、賃貸物件として家賃を払って住み続ける
  • 将来的に買い戻すことも可能

メリット

  • 物件種別に制限がない(戸建て、マンション、店舗なども可)
  • 通常の売却に比べ、売却代金が早く受け取れる
  • 所有権が事業者に移るため、修繕費や固定資産税の負担がなくなる

デメリット

  • 売却金額が相場より安い
  • 相場より高めの家賃が設定されることが多い

おひとりさまにとって、いずれも「死後の自宅の処分に困らない」という点では魅力的ですが、金利や家賃の高さが家計を圧迫する可能性もあります。資産状況や相続人の有無なども含め、慎重に検討することが大切です。

04住宅購入は「入口」と「出口」が重要!まずは資金計画をしっかり立てよう

おひとりさまが家を購入する際には、「出口戦略」をしっかり立てることが重要です。相続人がいない場合、家をどうするかを事前に考えておくことで、老後の不安を軽減できます。

同時に、購入時の「入口戦略」も大切です。余裕のある資金計画を立て、できれば頭金を多めに準備して借入金額を抑えることで、将来の負担を減らせます。また、病気などで働けなくなった場合のリスクにも備えておく必要があります。

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新井智美

監修:新井智美

CFP®/1級ファイナンシャル・プランニング技能士

プロフィール

トータルマネーコンサルタントとして個人向け相談の他、資産運用など上記相談内容にまつわるセミナー講師を行う傍ら、年間100件以上の執筆・監修業務を手掛けている。

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