中古マンション管理状況の見極め方 ポイントは「共用部分」と「議事録」

13

中古マンションの購入にあたっては物件価格だけでなく、「その物件の管理状況」を確認することも大切です。なぜなら、不動産業界では「中古マンションは管理を買え」と言われるほど、管理状況によって物件の資産価値が左右されるからです。2022年4月からは「マンション管理計画認定制度」という国の制度がスタートし、適正なマンション管理が行われている物件が可視化されるようになりましたが、まだ認定数が少ないこともあり、これから初めて不動産を買う人がマンションの管理状況を見極めるのはなかなか難しいのが現実でしょう。 そんな「これから中古マンションを購入する予定だけど、管理状況を調べる方法がわからない」という悩みを持っている人におすすめなのが、マンションの「共用部分」と管理組合が作成した「議事録」をチェックする方法です。そこで今回はマイホームの資産価値に大きく影響する中古マンションの管理状況を手軽に見極められる方法について解説していきます。

01マンションの共用部分を見れば、「住民の管理意識の高さ」が分かる

マンションの管理状況を把握するためのポイントとしてまず挙げられるのは、「共用部分」をチェックすることです。

共用部分とはマンションの区分所有者全員が所有しているエリア(持ち分は専有面積割合に応じて決められる)のことで、具体的には階段やエレベーター、廊下、エントランス、自転車置き場、ゴミ捨て場などが該当します。また、誤解されることも多いですがバルコニーやベランダに加え、壁や支柱、基礎といった建物の躯体や構造部分、メーターボックスなども共用部分に含まれます。これらの共用部分は特定の住民の所有エリアではないので、基本的にそのマンションに住む人全員が管理する義務を負います。そのため、共有部分をチェックすることで実際の管理状況だけでなく、そのマンションに住む人たちの意識やモラルについても理解を深めることが可能です。

以上のことから、購入予定のマンションを確認するときはまず「共用部分のエリアの掃除が行き届いているか」や「植栽がきちんと手入れされているか」をチェックしてみましょう。例えば、壁や廊下に虫の死骸または鳥のフンなどが放置されている物件は住民のマンション管理への意識が低いことが多いです。また、虫の死骸などと違って植栽の管理状況は住民に直接的な被害を及ぼすことが少ない反面、きちんと手入れされている場合はそれだけ管理への意識が高い物件である可能性が高いといえます。

さらに、マンションの管理状況の確認方法としては掲示板を確認してみるのもおすすめです。例えば、「夜間の騒音には注意してください」や「ゴミ出しのルールは守ってください」といった趣旨の貼り紙がある場合には、それらの問題が起こりがちなマンションであることがわかります。そのほかにも、「自転車置き場にある自転車はきちんと並べられているか」「ゴミ捨て場にゴミが散乱していないか」などもチェックしてみるとよいでしょう。

02将来的な資産価値を左右する共用部分を細かくチェックしよう

上述したようにマンションの管理状況を確認するときは共用部分のチェックが大切です。しかし、チェック項目はそれぞれの共用部分ごとに異なることは理解しておきましょう。また、マンションにある設備はその物件での暮らしの快適性に大きく影響しますが、維持管理コストがかかることも忘れてはいけません。

そこで、ここからは資産価値の観点から中古マンションを購入する際にチェックしておきたい共用部分や共用設備の細かなポイントを紹介していきます。

① エレベーターやスロープが設置されているか

中古マンションの購入でチェックしておきたい項目の1つ目はバリアフリー化です。築年数の古い4・5階建ての低層マンションではエレベーターが設置されていない物件も珍しくありません。そうした物件は高齢世帯に人気がないので売却の際に不利になりがちで、仮に売却できた場合でも査定額が安く見積もられやすいです。なお、エレベーターは地震発生時に閉じ込め事故を防止する地震時管制運転装置が付いているほうが高い評価を受けやすいので、その点もしっかり確認しておきましょう。

また、マンションの出入り口付近にスロープが設置されているかどうかも資産価値に影響することがあります。ただし、設置されていても勾配がきつかったり幅が狭かったりすると実用性に劣るとして資産価値が低くなることがあるので注意してください。

②防犯対策は万全か

中古マンションの購入でチェックしておきたい項目の2つ目は「防犯対策」です。カメラの小型化や通信性能アップなどの要因によって防犯カメラは世間的に身近な存在になっていて、すでに分譲マンションの約8割に設置済みだといわれています。しかし、マンションの防犯対策としてはすでに防犯カメラだけでは十分ではなくなってきているのが現実です。例えば、これまでは自室のカギで施錠するタイプのオートロックが主流でしたが、近年ではカードキータイプや生体認証式のオートロックを取り入れるマンションも増えています。

そのうえで、玄関ドアのカギをピッキングに強いといわれるディンプルキーのダブルロックにして、万が一のときは警備会社に通報が行くシステムを導入している物件も珍しくありません。最も安心なのは、マンションならではの防犯対策といえる警備員や管理人による24時間の有人管理であるという点に変わりはないものの、不特定多数の人が出入りするマンションではより充実した防犯設備が求められる時代になってきています。

③どんな共用施設があるか

中古マンションの購入でチェックしておきたい項目の3つ目は「施設の種類」です。共用施設のなかには生活に必須ではないものの、住民の満足度や資産価値向上を目的に設置される設備もあります。ただし、それらの施設はすべてに維持費用がかかることを忘れてはいけません。資産価値を保つよりも、多額の維持費用がかかるようでは本末転倒になってしまうでしょう。

例えば、住民利用率の高いパーティールームやゲストルームなどは実用性に優れている一方で、プールや温泉といった施設は水回りの維持費が高いうえ、入居当初は頻繁に利用しても、やがて飽きてしまう人も多いのであまりおすすめできません。またスポーツジムやカラオケ施設、カフェなども同様です。それらの設備はマンション内にあると高級感があるので憧れる人もいるかもしれませんが、長期的な視点で考えると避けたほうが無難でしょう。

④マンションの給水方式は何か

中古マンションの購入でチェックしておきたい項目の4つ目は「給水方式」です。かつて、マンションの給水方式は自治体から供給された水を一度建物内の貯水タンクに溜めてから各戸に配水する「受水槽給水方式」が主流でした。しかし、近年ではタンク内の衛生管理が問題視されるようになり、多くの自治体でマンションのタンクを通さず各戸に直接排水する「直結給水方式」が採用されるようになっています。それによって水質の安全性が担保されるほか、貯水タンクの維持点検費用がかからなくなるといった点がメリットです。そのため、直結給水方式のマンションの人気が高まっているので、内覧時などに確認しておきましょう。

03マンションの管理状況や議題をまとめた「議事録」で取り組み姿勢をチェック!

マンションは区分所有法という法律によって、最低でも年に1回は総会を開催しなければいけない決まりとなっています。総会ではマンション管理組合の決算や来年度以降の予算、課題への対応策といった事項が決議されるため、議事録をチェックすることで見た目だけではわからないそのマンションが抱えている本当の課題を知ることができます。

例えば、集金状況や修繕積立金の金額および大規模修繕工事の予定を知ることで管理費の将来的な値上げリスクを予想できるでしょう。また、近隣で空き巣事件が頻発しているのでセキュリティを強化すべきなどといった決議があれば防犯面で課題を抱えているマンションだと推測することも可能です。

一方で、毎年のように内容があまりにも薄く、目立った議論もされていないような議事録にも注意してください。なぜなら、こうした管理組合は特に問題がないように見えて、実は管理会社のいいなりで住民同士が管理に対してあまり関心がないケースがあるからです。そのため、いざ大規模修繕を行う際に必ずしも必要ではない工事が入ったり、それまでのメンテナンスを怠っていたりしたせいで想定以上のお金がかかることも考えられます。

なお、議事録は区分所有法第42条第5項の規定によって拒否する正当な理由がある場合を除き、所有者や賃借人だけでなく、管理組合の債権者、購入予定者も閲覧できる権利を持っています。つまり、物件を購入するつもりがある人なら誰でも不動産業者を通じて議事録を入手可能です。議事録の細かい内容まで確認するのは労力がかかりますが、管理組合の現状を把握するためにも、できれば過去3期分程度まで読むことをおすすめします。

04マンション住民の属性や年齢層も忘れずに確認しよう

新築マンションにはない中古マンションの利点としては、事前にマンション住民の属性や年齢層をチェックできる点が挙げられます。ここでいう属性とは「住民の経済力や信頼性、モラルの程度」などです。例えば経済力は駐車場に止まっている車種を、モラルの程度は郵便受けや玄関周りの状況をそれぞれ確認すればある程度推察できます。すれ違った住民の態度や挨拶の仕方からも管理組合の雰囲気がわかることがあるので、内覧時には積極的にコミュニケーションをとってみるとよいでしょう。

また、マンションの年齢層については住民に高齢者が多いマンションほど、近いうちに所有者不明の空室や管理費の滞納が増える傾向が高いので注意してください。そうしたマンションでは建物が老朽化しても「目先の修繕にお金をかけたくない」という思いから、住民が修繕積立金の値上げや大規模修繕工事に消極的な姿勢を示すケースも少なくありません。

それとは反対に子育て世帯や若者世帯が多く住んでいる物件は長期的な視点で管理を考え、管理組合の活動も活発であるケースが多いです。そのため、マンションの資産価値という観点からは住民の年齢層が比較的若い物件を選ぶほうが無難だといえます。住民の年齢層の確認は、自転車置き場にある自転車の種類から推測するとよいでしょう。例えば、自転車置き場に2~3人乗りの電動自転車が多数ある場合は、子育て世帯の人が多く住んでいる可能性が高いので、空室の有無や滞納状況と併せて確認してみてください。

05管理計画の認定を受けたマンションは住宅ローンの金利優遇が受けられる!

マンションの管理状況は住民の意識だけでなく、周辺環境などさまざまな要素が関係するので、見た目だけで判断するのは難しいことも多いです。そこで、国は2022年4月から「マンション管理計画認定制度」という制度をスタートさせ、適正な管理が行われているマンションの可視化を進めており、2024年7月26日時点では全国で979棟のマンションが認定されています。同制度で認定された物件は「管理状況を客観的に把握できる」「適正に管理されたマンションとして市場で評価されるので資産価値や居住価値の向上に貢献する」といったメリットがあるため、今後も増えていく可能性が高いです。

また、認定を受けたマンションはフラット35で住宅ローンを組んだ場合に金利を当初5年間にわたって年0.25%ほど引き下げる優遇措置が適用されるメリットもあります。そのため、これから中古マンションの購入を考える人は、まず同制度で認定されたマンションをチェックしてみるとよいでしょう。なお、マンション管理計画認定制度の詳細については下記の関連記事で紹介しているので、詳しい内容を知りたい方はそちらを読んでみてください。

「マンション管理計画認定制度」が2022年4月からスタート!認定を取得した分譲マンションは資産価値が上がるって本当?
[ニュース] 2022.07.08

06マンションは管理が命!資産価値の高い物件を選ぼう

マンションは一般的に築年数の経過とともに資産価値が落ちていきます。しかし、適切な管理を心掛けたマンションは経年劣化の影響をあまり受けず、インフレや地価上昇が起こると購入時より資産価値が高くなることも珍しくありません。定期的なメンテナンスを怠らなかったマンションは100年以上も維持することが可能だといわれていて、実際に国土交通省の報告書によると鉄筋コンクリート造の建物の物理的寿命は117年もあると推計されています。

新築マンション価格が高騰している昨今、これからは管理のいい中古マンションの人気が高まることが予想されますが、中古物件は基本的に早い者勝ちです。そのため、希望する物件を見つけてから住宅ローンの組み方を相談していたのでは間に合わないかもしれません。そのようなことがないように、これから中古マンションを探す人は事前に「どれくらいまでなら借り入れできるか」を試算しておいたほうがよいでしょう。

当サイト内には、家探し前でもどのくらい借り入れできるかがわかる「住宅ローン保証審査」をご用意。実際の金融機関で審査するので、シミュレーションではない本当の借入可能額が分かります。自営業・フリーランスの方は、固定金利で安心な「ARUHIの家探し前クイック事前審査」なら最短1分で借入可能額が分かります。いずれも物件情報は不要。今すぐ試してみてはいかがでしょうか。

新井智美

監修:新井智美

CFP®/1級ファイナンシャル・プランニング技能士

プロフィール

トータルマネーコンサルタントとして個人向け相談の他、資産運用など上記相談内容にまつわるセミナー講師を行う傍ら、年間100件以上の執筆・監修業務を手掛けている。

関連キーワード

ご利用上の注意

  • 本記事は情報の提供を目的としています。本記事は、特定の商品の売買、投資等の勧誘を目的としたものではありません。本記事の内容及び本記事にてご紹介する商品のご購入、取引条件の詳細等については、利用者ご自身で、各商品の販売者、取扱業者等に直接お問い合わせください。
  • 当社は本記事にて紹介する商品、取引等に関し、何ら当事者または代理人となるものではなく、利用者及び各事業者のいずれに対しても、契約締結の代理、媒介、斡旋等を行いません。したがって、利用者と各事業者との契約の成否、内容または履行等に関し、当社は一切責任を負わないものとします。
  • 当社は、本記事において提供する情報の内容の正確性・妥当性・適法性・目的適合性その他のあらゆる事項について保証せず、利用者がこれらの情報に関連し損害を被った場合にも一切の責任を負わないものとします。本記事には、他社・他の機関のサイトへのリンクが設置される場合がありますが、当社はこれらリンク先サイトの内容について一切関知せず、何らの責任を負わないものとします。本記事のご利用に当たっては上記注意事項をご了承いただいたものとします。

0