直近10年で急速に高額化する住宅ローン、金利1%上昇で家計負担3%増の試算も

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近年、日本では円安や人手不足による人件費高騰といった要因で消費者物価指数の上昇が続き、その影響は住宅価格にも及んでいます。実際に、三井住友トラスト・資産のミライ研究所の「住まいと資産形成に関する意識と実態調査」(2024年)によると、2014年~2023年の直近10年で住宅ローンの借入金額が急速に高額化しているとのことです。一方で日銀は、住宅ローンの年間返済額の対年収比率が高い世帯は、短期金利が1%上昇するとマイナス3%近く家計が悪化するというデータも公表しています。 一般的に借入金額が高額化すると住宅ローン年間返済額の対年収比率は高くなりやすいため、今後の金利上昇局面を見据えると不安を感じる人もいるのではないでしょうか。そこで、この記事では高額化する住宅ローンの現状を紹介したあとに、年間返済額の対年収比率が高い世帯で金利が上昇するとどれくらい返済負担が増えるのかを具体的な数値を用いてシミュレーションしていきます。

01直近10年で高額化する住宅ローンの借入金額

三井住友トラスト・資産のミライ研究所が実施した「住まいと資産形成に関する意識と実態調査」(2024年)の「住宅ローン借入金額の変遷」によると、住宅ローンの借入金額は2014年~2023年の直近10年で急速に高額化していることがわかります。もちろん、2014年以前から借入金額は増加傾向にあったものの、直近10年でそのスピードが加速しています。

ここでいう高額化とは3000万円以上の借り入れを指し、住宅ローン利用者のうち、そうした借り入れをしている世帯が単独ローンでは1993年までの14.8%から2014年~2023年になると2倍以上の38.3%を占めるようになったとのことです。一方、ペアローン利用者の割合は1993年までの22.7%から2014年~2023年では60.1%とおよそ3倍に膨らんでおり、単独ローン以上に高額化が進んでいる状況です。

また、同調査では3000万円以上の借り入れをしている世帯を年収別に調査しており、年収500万円未満の世帯で1993年まで11.1%だった高額借入は2014年~2023年で23.6%とおよそ2倍でした。それに対して、年収500万円以上の世帯では1993年までの19.8%から2014年~2023年の54.0%と3倍近く増加しています。以上のことから、比較的所得が高い層を中心として住宅ローンの高額化が進んでいることがうかがえます。

毎月の返済額を抑えるために返済期間も長期化

上述のように近年の住宅ローンの借入金額は増加傾向にあることから、家計に占める住宅費の負担も増えつつあるのが現状です。そこで、近年の住宅ローンの特徴として借入金額の増加に合わせ、返済期間を長く設定することで毎月の返済額を抑える傾向が高まっています。同調査の「住宅ローン利用形態の変遷」によると、1993年まで当初借入設定期間を30年以上にしていた世帯は21.7%でしたが、2014年~2023年になると約3倍の61.0%まで増加しています。

一般的に年収に占める年間の住宅ローンの返済割合を示す返済比率は3割以下(できれば2割程度)に抑えないと家計が苦しくなるといわれています。返済期間を長くすると支払利息を含めた総返済額は高くなりやすいものの、毎月の返済額を抑えて家計にゆとりを持たせることを優先する世帯も増えているようです。

02短期金利1%の上昇で返済比率が高い世帯の手取り額が3%減る!?

住宅ローンの家計に占める負担割合の増加は、2024年4月に日銀が公表した金融システムレポート※からもうかがえます。同資料によると、金融機関同士の競争が激化したことによる借入条件緩和などの影響もあって、年収に対する住宅ローン残高の比率は特に30代以下の若年世帯を中心に水準が上がっており、返済比率が3割を超える人の割合も増加中です。

これまで日本の住宅ローンでは、低金利が長く続いたこともあって元利均等払いの変動型を選ぶ人が多い傾向にありました。変動型の住宅ローンは借入当初の適用金利が固定型に比べて低くなりやすいメリットがある一方で、金利上昇局面になると返済金額が増加するのがデメリットです。

ただし、一般的な住宅ローンでは「5年ルール」や「125%ルール」といった返済金額の激変緩和措置が設けられていることから、急激な返済負担の増加は避けられるような仕組みとなっています。また、金利上昇局面では預貯金などの保有資産の利息収入が増えるため、住宅ローンの返済負担を部分的に相殺できる場合もあるとされています。

とはいえ、日銀の同資料の試算では仮に短期金利が1%上昇した場合、住宅ローンの返済負担率が高い世帯で金利関連収支がマイナス3%となり、家計が悪化する可能性が高い結果になったとのことです。近年、住宅ローンは若年世帯を中心に高額借入が増えつつありますが、返済比率が高い世帯ほど金利上昇時の耐性が弱い恐れがある点には留意しておいたほうがよいでしょう。

03金利1%上昇でどのくらい手取り額が減るのかシミュレーション

それでは、実際に住宅ローン金利が1%上昇した場合にどれくらい金利負担が増えるのかについて、具体的な数値をもとにシミュレーションしてみます。

まず、今回のシミュレーションの条件は、年収500万円(手取り額)の世帯が返済期間35年、元利均等払いの変動型(金利は年0.3%)で5000万円の住宅ローンを借り入れしたと想定します。このケースにおける毎月の返済額は12万5421円(年間返済額約150万円)で、返済負担率は約30%です。

上記のケースで仮に金利が年1.3%まで上昇した場合、毎月の返済額は14万8241円(年間返済額約178万円)で、返済負担率は約35.6%まで上がりました。つまり、今回の条件で金利が1%上昇すると、毎月の返済額は2万2820円、返済負担率は5.6%(35.6% – 30%)ほど増える計算です。年間の返済額は27万円強も増えることになり、世帯での手取り額が500万円の場合においては、5%以上の負担増となります。住宅ローンで高額な借り入れをする人は、特に金利動向に敏感になったほうがよいでしょう。

04金利上昇に備えて借入金額の見直しを!

2024年3月、日銀によって長らく続けられていたマイナス金利政策がついに解除されました。とはいえ、今後の金利政策は消費者物価指数や市場動向を慎重に見極めて判断すると予想されており、住宅ローン金利の急激な高騰が起こる可能性は低いといわれています。そのため、これから住宅ローンを組む予定の人も慌てる必要性はそれほど高くないでしょう。

ただし、直近でのリスクは低いとはいえ、住宅ローンを組む際は将来的なことを考えて1%ほどの金利上昇を見込んだ資金計画を立てておいたほうが無難です。本文中でも述べていますが、特に返済負担率が高い世帯ほど金利上昇による家計負担への影響は大きいので、慎重な返済計画の作成が求められます。当サイト内には住宅ローンで気になりがちな「適切な予算」「借入可能額」「毎月の返済額」といった3つの項目を手軽に確認できる便利なシミュレーターがあるので、これから住宅ローンを組む予定の人はぜひ試してみてください。

新井智美

監修:新井智美

CFP®/1級ファイナンシャル・プランニング技能士

プロフィール

トータルマネーコンサルタントとして個人向け相談の他、資産運用など上記相談内容にまつわるセミナー講師を行う傍ら、年間100件以上の執筆・監修業務を手掛けている。

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