販売価格550万円、シニアに人気の3Dプリンター住宅!専用ローンが登場

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2024年4月、信販業界大手の株式会社オリエントコーポレーション(以下、オリコ)は、3Dプリンター住宅メーカーのセレンディクスと提携し、同年5月中旬以降に「3Dプリンター住宅ローン」の販売を開始することを発表しました。これまで3Dプリンター住宅の購入に利用できる住宅ローンは少なく、需要増加の妨げとなっていましたが、3Dプリンター住宅ローンの開始によって今後は3Dプリンター住宅の普及が進むことが予想されます。それに伴いセレンディクスでは大規模量産できる体制を整備していくとのことです。この記事では技術革新によって注目度が増している3Dプリンター住宅の概要や専用ローンの詳細などについて解説していきます。

01販売価格550万円(税別)の「3Dプリンター住宅」とは?

3Dプリンターはもともと1980年に名古屋市工業研究所に在籍していた児玉秀男氏が発明したものだといわれており、アメリカでは1980年代前半から製品化がスタートしていました。一方、日本では二次元図面文化が定着してしまっていたことなどが原因で、近年まであまり普及していないのが実情です。しかし世界中で、さまざまなスタートアップ企業による企業努力の結果、よりスピーディかつ高精度な3Dプリンターが開発されたことで日本でも徐々に身近なものとなってきています。

実際に、2018年8月には3Dプリンター専業住宅メーカーのセレンディクスが設立され、2022年に10平米の3Dプリンター住宅「Sphere(スフィア)」の販売が始まりました。「Sphere」は販売価格が330万円(税別)という超低コストなうえ、完成までにかかる時間が24時間以内という工期の短さも話題となり、世界中から大きな注目を浴びました。

セレンディクスによる3Dプリンター住宅への挑戦はその後も続き、「年齢を重ねるとともに審査が厳しくなることから、賃貸物件が借りにくくなった」といったシニア世代の要望を受け、慶應義塾大学と共同して夫婦2人が住める平屋の3Dプリンター住宅(約50平米)の開発にすでに成功しています。この「serendix50」は販売価格550万円(税別)という住宅としては手ごろな価格設定もあって、限定で売り出された6戸は即完売し、あらためて3Dプリンター住宅のニーズの高さをうかがわせました。

現在は建築基準法を遵守するため鉄筋や鉄骨を骨組みに使用しているものの、将来的には無筋コンクリート造での施工を目指しているほか、もう少し大きい住宅が欲しい人のニーズに応えるため、ファミリー世帯向け(約70平米)の3Dプリンター住宅である「serendix70」の開発も進められています。

02日本初、3Dプリンター住宅ローンが登場

上述したように、3Dプリンター住宅は低コストかつ、短期間で建築できる住宅として世界中で注目が集まっていますが、あくまでも新しいテクノロジーであり日本国内ではまだ実績が十分ではありません。そのため、3Dプリンター住宅に対応した住宅ローンが少なく、購入するうえでの大きな制約となっていました。

もともとセレンディクスの飯田最高執行責任者(COO)は「30年の住宅ローンをなくすことで、自由で明るい未来をつくる」という思いで3Dプリンター住宅の開発を進めており、実際に「新車を買う感覚で購入できる価格帯」を消費者に提案しています。とはいえ、数百万円単位の買い物を住宅ローンの利用なしに購入するのは、一般消費者にとってハードルが高いのもたしかです。

そうした課題を把握したオリコが、セレンディクスによって提供される3Dプリンター住宅の購入に対応した無担保消費性ローンを2024年5月から商品化しました。当該ローンは個人のみが対象で、上限金額1000万円、利用期間最大15年という既存の住宅ローンに比べてかなりコンパクトなのが特徴です。サービスの提供は各金融機関が窓口となり、オリコはその保証を担う仕組みとなっています。なお、オリコでは今後、上限金額500万円、利用期間最大5年で、法人もしくは個人事業主を対象にした融資の開始も予定しているとのことです。

033Dプリンター住宅を購入するメリット

3Dプリンター住宅が世間一般に広く普及するにはまだ時間がかかるといわれていますが、将来的に普及すれば日本の住宅事情が大きく変わる可能性があるのも間違いありません。3Dプリンター住宅の具体的なメリットとしては、「従来の一般的な工法で建築される住宅に比べて工期が短く、安定した価格で購入できること」が挙げられます。

3Dプリンター住宅は機械そのものを現場に持ち運べば、その場で必要な資材を作りだすことが可能であり、これまでのように壁や柱などといった重量のある資材を運搬する費用や手間がかからないため、大幅なコスト削減と工期短縮を期待できます。また、構造によっては固定資産税などの税金がかからないケースがあり、建築後のランニングコストも含めた費用面で従来の工法に比べて大きなアドバンテージがあるのが特徴です。

そのほかにも、3Dプリンター住宅の特徴として、「柔軟性のあるデザインに対応しやすいこと」も挙げられます。3Dプラインター住宅はあらかじめ作成された設計図にしたがって、コンクリートなどの材料を一層ずつ積み重ねて住宅にします。そのため、従来の柱や鉄筋が主流の工法に比べて曲線が含まれる複雑なデザインでも建築できる場合が多く、土地の形状に合わせた意匠性の高い住宅を建築しやすいのもメリットです。

043Dプリンター住宅を購入するデメリット

3Dプリンター住宅を購入するうえで注意したいのは、「設計や仕様によってはコストが高くなる」「建築基準法の整備が追い付いていない」の2点です。誤解されることもありますが、3Dプリンターで建築されるのはあくまでも建物部分だけとなっています。つまり、快適に暮らすために必須な給排水管や電気の配線、内装などといった工事は別途必要です。

また、3Dプリンター住宅は新しい技術であり、国内では実績に乏しいので、3Dプリンター住宅をそのまま建築すると「建築基準法が定める耐震性や耐火性の基準をクリアしていない建物」となってしまう場合があります。そのため、日本で販売される3Dプリンター住宅は基本的に建築基準法をクリアするためだけに鉄筋が入れられているのが現状です。こうした法整備が追い付いていない状況も、3Dプリンター住宅の普及が思うように進まない原因となっています。

さらに、特に都市部を中心とした土地で注意点として挙げられるのが、「施工場所に3Dプリンター本体を設置するためのスペースが必要」だという点です。これは日本の都市部で見られがちな狭小地での施工が難しいことを意味しており、3Dプリンター住宅を建てる際には、土地の購入時に前もって「3Dプリンター本体を設置するだけのスペースがあるか」を確認しておく必要があります。

053Dプリンター住宅、将来的に老後の住み替え先の選択肢にも!

3Dプリンター住宅は既存の工法で建築される住宅に比べて、とても短い期間に低コストで建てられる住宅として世界中で注目されつつあります。とはいえ、まだ新しい技術なので、現状としては課題が残っているのも事実です。以上のことから、3Dプリンター住宅がすぐに普及するとは言えないものの、技術革新とともに対応する住宅ローンの取り扱いも増えることで、将来的には住み替え先の有力な選択肢になるかもしれません。

なお、将来的な住み替え先を検討する際は老後の資金計画を立てておくことが重要です。実際にどれくらいの蓄えがあれば老後の生活に支障がないかを事前に確認しておきたい人は、サイト内にある「老後のお金シミュレーション」がおすすめなので、ぜひ試してみてください。

新井智美

監修:新井智美

CFP®/1級ファイナンシャル・プランニング技能士

プロフィール

トータルマネーコンサルタントとして個人向け相談の他、資産運用など上記相談内容にまつわるセミナー講師を行う傍ら、年間100件以上の執筆・監修業務を手掛けている。

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