【2024年】タワマンがないのは9つの県!地方都市の事情と今後の動向を探る

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タワマンは東京や大阪などの大都市に多いイメージがありますが、実際には実はほぼ全国の都道府県に存在します。今や地方でもタワマンの建設計画はどんどん進んでおり、毎年のように全国各地で新たなタワマン建設計画が進行中です。 その一方で、タワマンのない都道府県も9つ存在します(2024年時点)。こうしたエリアでは歴史的景観の保護など地域特有の事情があり、なかなかタワマン建設が進まないようです。 そこで今回は地方都市でのタワマン事情を中心に、今後開発が期待されるエリアの動向、タワマン建設の進まない地域特有の事情、今後のタワマン建設状況についてわかりやすく解説します。

01全国のタワマンのストック数、首都圏や近畿圏に集中

超高層マンションのことをタワ―マンション(通称タワマン)と呼びますが、法律上の明確な定義はありません。ただ便宜上、建築基準法20条1項にある「最も大規模な建築物の基準(一号区分:高さ60mを超えるマンション)」をタワマンと呼ぶことが多いようです。階層にすると地上20階以上の建築物のことで、これが一般的なタワマンの基準となっています。

大手不動産調査会社「東京カンテイ」の調査によると、2023年時点で全国のタワマンのストック棟数は1515棟でした。そのうち最もストック棟数が多かったのは東京都の479棟、続いて大阪府の273棟です。ベスト10位までのランキングは、以下のようになっています。

全国都道府県別のタワマンのストック棟数(2023年時点)

  • 第1位:東京都479棟
  • 第2位:大阪府273棟
  • 第3位:神奈川県144棟
  • 第4位:兵庫県95棟
  • 第5位:千葉県86棟
  • 第6位:埼玉県83棟
  • 第7位:愛知県67棟
  • 第8位:福岡県50棟
  • 第9位:宮城40棟
  • 第10位:北海道34棟

やはり人口の多い大都市圏に集中する傾向はありますが、注目したいのが現在人気上昇中の「札仙広福」です。10位に北海道、8位に福岡県、9位の宮城県と軒並み上位にランクインしており、ベスト10に漏れた広島県も11位29棟と大健闘していることから、あきらかにこの4県はタワマン開発が進んでいる地域といえます。ちなみに宮城県はさらに2棟、広島県は1棟、福岡県は4棟、2024年竣工予定のタワマンが控えており、今後も順調にストック棟数が増える見込みです。

この他にも茨城県が13棟、関東圏と名古屋にアクセスできる静岡県も26棟となっています。大都市圏への通勤アクセスの良い地域では、タワマン開発が進む傾向にあるようです。

一方、少数派とはいえタワマンのない都道府県は全国に9つ存在します。その9県とは、青森県、石川県、三重県、奈良県、鳥取県、島根県、徳島県、大分県、宮崎県です。

この9県は地域特有の事情もあってタワマン建設が進まなかったのですが、2024年に入り、なんとこのうち3県でタワマン建設計画が進行中です。

02今後、タワマン開発が期待・建築されるエリア

これまでタワマンがなかった9県のうち、現時点でタワマン建設計画が進んでいるのが青森県、宮崎県、大分県です。この3県では不動産需要が高くなってきており、今後はタワマン需要が急速に増えると期待されます。

また、能登半島地震からの復興を目指す石川県もタワマン開発で注目される都道府県です。北陸新幹線の延伸に加え、金沢市は観光都市としてのポテンシャルが高く、国からもタワマン建設を後押しする動きがみられます。

青森県初!2028年度の完成を目指す22階のタワマン

青森市は2020年代に入ってから、再開発に力を入れ始めた都道府県の1つです。新青森駅が東北新幹線と北海道新幹線の乗り入れ駅になったことで、JR青森駅周辺を中心に商業ビルやタワマンの開発計画が進んでいます。

現在注目されているのが、旧青森国際ホテル跡地に建設予定となっている22階建てタワマンです。約8000平方メートルの敷地に商業施設や医療関連施設の入った集合住宅となる予定とのことで、2028年度の完成を目指します。

また2024年には、JR青森駅の旧駅舎跡地に建つ「JR青森駅東口ビル」が誕生する予定で、商業施設や美術館が2024年春に、ホテルが2024年夏にオープンするとのことです。JR青森駅周辺はショッピングモールやホテルなども次々に開業しており、今後も再開発地区として大きな注目を集めそうです。

宮崎県、大分県にも初タワマンが完成予定

アジア各地からのアクセスの良さや海外の大企業の進出など、九州は世界から注目される人気エリアとなっています。やはり九州経済の中心である福岡県が目立っていますが、ここ最近はその人気が周辺に波及しており、マンションの売れ行きも九州各県で好調のようです。

これまではタワーマンションと縁のなかった宮崎県と大分県でも、タワマン開発が進行中です。宮崎県では県内初のタワーマンションがJR宮崎駅(宮崎市)近くに完成予定で、建物は20階建ての分譲マンションとなっており、2026年1月の完成を目指します。

また大分市では、JR大分駅北口広場に面した敷地にタワマンの建設計画が進んでいます。計画によると建物は27階建てと14階建ての2つのビルで構成される予定で、商業施設と分譲住宅が入るとのことです。2024年に建設工事を始め、2027年度中での完成を予定しています。

金沢駅周辺の高さ制限緩和で開発が期待される石川県

2024年元旦の能登半島地震で大きな被害を受けた石川県ですが、もともと観光都市としても注目されていた金沢市では、大規模な再開発が計画されていました。2024年3月16日に北陸新幹線が福井県敦賀市まで延伸されたこともあり、さらなる不動産需要を満たすべく開発が急ピッチに進められているようです。

震災復興の観点からも国からの強力なバックアップも決まっています。2024年2月に金沢都ホテル跡地の再開発について、国が都市再生特別措置法に基づく緊急整備地域の候補地に選定しました。

古都としても知られる金沢市では、「都市景観条例」による建設物の高さ制限が設定されていました。ところが、国が都市再生特別地区に指定したことで高さ制限や延べ床面積などの建築制限を気にせず、自由に開発できるようになっています。いわば国がタワマン建設を後押しした形です。

03地方都市のタワマン建設計画、景観への影響に懸念の声も

タワマンのない都道府県のなかでも、歴史的景観の保護を理由に一定の建築制限が設定されている都道府県があります。代表的な都道府県が奈良県と島根県です。

奈良県は県内各地に歴史的建造物が多く、その景観を壊さないように「景観条例」が定められています。条例の定めにより、約60メートルを超える高さの建造物は基本的に建てられません。奈良県は県内全域でタワマンに限らず、高層建築そのものが少ない傾向にあります。

島根県は、松江城に近い島根県庁前に19階建ての高層マンションを建設する計画があります。しかし、松江城の天守閣から見える景観を損なう恐れがあるとして、住民グループによる反対運動が起きてしまいました。松江城は世界的に人気のある観光資産ですので、その価値に影響する建設計画は今後も難しくなりそうです。

徳島県でもタワマンの建設計画が持ち上がっていますが、こちらは「景観を損なう」「公益性のない民間の高層マンションに税金を投入するのはおかしい」などの声を挙げた住民による反対運動が起こっています。現在、徳島市内の「新町西地区市街地再開発事業」による14階・15階建て高層マンションの建設が計画されていますが、周辺住民からは日照権侵害などを問題視されており、建設計画は難航しているようです。

その他にタワマンのない三重県、鳥取県の都市部でも再開発計画そのものは進行中ですが、現状タワマン開発の動きはありません。

このように、タワマンのない地域で新たに高層建築物を建てる計画は、景観問題や地域住民と合意を得るうえでのハードルが高くなります。やはり巨大な建造物ですので、1棟目が建つまでに乗り越えるべきハードルは高そうです。

04資産価値の高いタワマン、ただし人口減リスクも考慮しよう

マンション需要の高い人気エリアでは、複数のタワマン建設が進む傾向にあります。タワマンは通常のマンションに比べて高値での売却が期待できるので、居住目的だけでなく投資先としても人気です。

ただ、どのタワマンも将来的に資産としての優位性を保てるかどうかは未知数といえます。特に人口減少が進む地域においては、何十年後にマンション需要が落ち込むかもしれません。さらに懸念されるのがタワマン価格の高騰です。歴史的な円安、建材費や人件費の高騰などの影響で、最近のタワマンは地方でも1億円を超える金額で売り出されるケースも増えてきました。このような価格の高騰が適正価格なのかは議論の余地のあるところでしょう。

資産価値としての将来性を期待してタワマンを購入する場合は、資産価値の減少リスクを考慮したうえで、無理のない購入計画を立てることが大切です。まずは自分たちの予算を把握し、その範囲内でマンションを探すことから始めてください。当サイトの住宅ローンシミュレーションなどを活用し、マンション購入に向けた具体的な計画を立ててみましょう。

新井智美

監修:新井智美

CFP®/1級ファイナンシャル・プランニング技能士

プロフィール

トータルマネーコンサルタントとして個人向け相談の他、資産運用など上記相談内容にまつわるセミナー講師を行う傍ら、年間100件以上の執筆・監修業務を手掛けている。

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