蓄電池として注目のEV、住宅ローンに組み込んでお得に購入

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住宅ローンでも、脱炭素化に向けた新たな取り組みが注目を浴びています。大手家電量販店の1つ、ヤマダデンキでは、二酸化炭素の排出量を抑えられるEV(電気自動車)と住宅をセットにした住宅ローンの提携を始めました。 EVはガソリン車に比べて高額である点がデメリットですが、住宅ローンの低金利を活用できれば別でマイカーローンを組むよりも総支払額を抑えられ、デメリットの軽減につながります。そのため、今後はEVと住宅のセット買いが普及していくかもしれません。そこでこの記事では、新築住宅に環境に配慮した設備を導入したい人に向けて、EVを住宅ローンに組み込むメリットや注意点について解説していきます。

01蓄電池として注目を集めるEV

もともとEVは、ガソリン車の排気ガスに多く含まれる二酸化炭素の排出量を削減する効果を目的に開発されてきました。しかし、EVの進化とともに蓄電量が増えたことから、現在では災害時の備えとしての役割にも注目が集まっています。

実際に2024年元旦に発生し、北陸地方を中心に大きな被害をもたらした能登半島地震でも、EVが非常用電源として機能したという報道を目にした人もいるのではないでしょうか。例えば、40kWh/62kWhのバッテリーを備えた日産のリーフ(ZE1型)は、フル充電すれば一般家庭の約2~4日分の電力をまかなうことが可能です。

万が一、大地震などで被災し停電が長期間続いた場合であっても、自宅に太陽光発電装置とEV、EVから自宅へ給電するために必要な「V2H」という設備があれば、しばらくの間は電気を使えます。V2Hがない住宅の場合、自宅からEVへの充電は可能でもその反対(EVから自宅への給電)はできないので、災害・停電時にEVを蓄電池の代わりとして使用できません。

また、EVは日常的な電気代の節約や購入時に補助金などの税制優遇措置を受けられる点もメリットです。例えば、電気代の安い夜間にEVに充電し、昼間はEVに溜めた電気を使用することで電気代の節約ができます。さらに、上述した日産リーフでは購入時に国からの補助金(最大85万円)の対象になるうえ、購入後の自動車税の支払いもエコカー減税で4万8500円ほど削減できるなど、実質的な負担が少なくなるように配慮されています。

02新築住宅とEVのセット販売を行う家電量販店

上述したようなEVの持つ利便性に着目して新築住宅とのセット販売を始めたのは、家電量販店最大手のヤマダデンキです。ヤマダデンキでは2024年4月以降、家具と家電の両方を販売する新店舗で日産自動車の軽自動車EV「サクラ」などのEVの実車を展示し、個人向けに新築住宅とのセット販売を行います。実際に販売されるのは太陽光発電設備などを兼ね備えた「スマートハウス」になる予定で、住宅の断熱性能や蓄電池の有無などによって、価格の異なる3種類の住宅(2980万~3980万円)を用意するとしています。

セット販売の対象となるEVは展示されている車種のみではなく、購入者の要望に応じてディーラーから仕入れる仕組みです。そのため、複数の自動車メーカーを回らなくてもその場でさまざまな自動車メーカーのEVを比較検討できる点はメリットでしょう。

さらに3000万円のスマートハウスなら100万円分、3500万円なら200万円分など、住宅価格に応じてヤマダデンキで使えるポイントが付与されるほか、ヤマダデンキと提携している住宅ローンを利用すれば、通常では難しいEVや太陽光パネルを借入金額に組み込むことが可能になります。

03住宅ローンにEVの購入費用を組み込むメリット

一般的に住宅ローンは契約者が自宅として住むための土地の購入費や建物の建設費のみが対象で、家具や家電といった住宅以外にかかる費用は借入金額に組み込むことはできません。

しかし、上述したようにヤマダデンキと提携している住宅ローンでは、EVの購入費用を借入金額に組み込むことが可能です。EVの購入にあたってはディーラーや金融機関で契約するカーローンを利用する方法もありますが、住宅ローンを利用したほうが低い金利が適用され、毎月の返済額を抑えやすい点は大きな魅力でしょう。

例えば、ディーラーでカーローンを契約する場合の金利相場は年4~8%程度です。一方、銀行のカーローンでは循環型社会に貢献するといった名目でディーラーより低い金利を適用しているところもありますが、住宅ローンの変動金利ほど低くはありません。

また、ヤマダデンキと提携している住宅ローンでは「家電や家具の購入費用の一部を組み込める」や「返済期間を最長50年に設定できる」といった点も魅力です。前者は「ヤマダデンキで購入予定の家電・家具の500万円」または「住宅購入資金総額×10%のいずれか低い額」が対象で、仮に借入期間35年、金利年0.50%の住宅ローンで100万円の家電・家具の購入費を借り入れした場合、毎月の返済額は2600円程度となります。

一方、後者は借入期間を最長50年に設定することで毎月の返済額を抑えられます。例えば、3000万円を金利年0.50%、35年で借り入れすると毎月の返済額は約7万7000円ですが、50年間で借り入れした場合、毎月の返済額は約5万6000円と2万1000円の負担軽減になります。

実際には契約した時点での金利が適用されるため、ここで紹介した毎月の返済額はあくまでも目安に過ぎません。しかし住宅購入時の出費を抑え、一時的にでも家計負担を軽減したい人は返済期間を長く設定するのもよいでしょう。

04EVを蓄電池として使う際の注意点

EVは交通手段と蓄電池という、2つの使い方ができる便利な自動車です。しかし、これまで幅広く普及してきたガソリン車と違う点もあります。そこで、ここからはEVを蓄電池として使う際の注意点をまとめてみたので、購入を検討してみようと思った方は一緒に確認してみましょう。

家庭用蓄電池より購入費用が高額

EVを蓄電池として購入する際は、価格に気を付けましょう。住宅に設置することを目的にした家庭用蓄電池の価格は一般的に高くても400万円ほどですが、EVはそれに比べると高額になりやすいです。

例えば日産リーフの本体価格はグレードにもよるものの、400万~590万円と一般的な自動車としては高額な部類に入ります。また、EVから自宅へ給電するための装置であるV2Hの設置費用は設置場所によって価格が変わり、一般的には30万~40万円ほどかかることが多いです。それらを加味して考えると、初期費用は家庭用蓄電池に比べて高くなりやすいでしょう。

ただし、カーボンニュートラルは日本政府が掲げる方針であり、購入を支援する目的で国や都道府県などから補助金をもらえる場合があります。例えば、V2Hはクリーンエネルギー自動車導入促進補助金で対象となり、令和6年度は設備で最大75万円(税抜き購入価格×2分の1が上限)、個人の設置工事で40万円ほどの補助金が出ます。

一方の家庭用蓄電池も子育てエコホーム支援事業などの国の補助金(申請は2024年12月末まで)を利用すれば、1戸あたり6万4000円が補助金の対象です。環境に配慮した住宅や設備には、そのほかにも都道府県などが独自に補助金を創設している場合があるので、まずは住宅を購入する予定の自治体のホームページなどをチェックしてみることをおすすめします。

昼間、EVでの外出が多い場合は蓄電池として使いづらい

EVを蓄電池代わりとして使用するなら、自宅にEVが停車していることが条件です。当然のことながら、EVを自動車として使用しているときは自宅に給電することはできません。そのため、毎日の出勤や日常的な買い物などで頻繁にEVを使用する場合は、蓄電池としての役割を果たすことは困難になります。ただし、複数台自動車を所有している場合や普段は電車通勤をしていて、EVをメインの自動車として使用していない場合はこの限りではありません。EVの購入にあたっては自身のライフスタイルをよく考慮したうえで検討してみてください。

使用環境や使い方によってはバッテリーの寿命が短くなる

一般的にEVには、リチウムイオン電池が使用されています。しかし、リチウムイオン電池にはサイクル数という、いわば寿命のようなものがあり、EVを家庭用蓄電池の代わりとして使用した場合は自動車としてのみ使用するよりも消耗が激しくなる可能性があります。一般的なリチウムイオン電池の寿命は6000~12000サイクル(15~20年程度)です。それに対して、EVを駆動させるためのリチウムイオンバッテリーは「8年または走行距離16万km」が目安だといわれています。

国内メーカーの中には販売時に「8年または走行距離24万km」という保証をつけているところもありますが、基本的にバッテリーは使用すればするほど徐々に劣化するものだと認識しておいたほうがよいでしょう。

一般的にリチウムイオン電池の寿命を延ばすには、「過充電や過放電を避ける」「直射日光の当たらない場所や高温・低温ではない場所に設置する」などといった対策が有効です。蓄電池として使用する場合はどうしてもサイクル数のカウントが進みやすくなるので、寿命を延ばすためにも、それらの対策を頭に入れて活用することがポイントになります。

海外メーカーのEV車は災害時の非常用電源としては使えない

EVを自宅で蓄電池代わりに使用する場合は、あくまでも国内メーカーの中から選ぶのが基本になります。なぜ海外メーカーのEVを選んではいけないかというと、V2Hの充電口は日本の規格だからです。つまり、たとえ自宅にV2Hの設備があっても海外メーカーのEVから自宅に給電することができず、蓄電池として使用することはできません。その場合でも、災害時の非常用電源としての役割は期待できますが、蓄電池として自宅で日頃から使用したい人は国内メーカーのEVを選びましょう。

05住宅ローンを借り入れするならまずは予算から!シミュレーターで試算してみよう

日本では建築物省エネ法によって、2025年4月からすべての新築住宅は省エネ基準に適合することが義務付けられています。省エネ基準の適合要件はさまざまですが、太陽光発電や蓄電池などもその対象です。それらの設備と蓄電池の代わりとなるEVを組み合わせれば平常時は電気代の節約につながるうえ、災害時には非常用電源としても使用できます。そんな便利なEVですが、日本ではまだそれほど普及していないこともあって、価格は一般的なガソリン車に比べると高額になる場合が多いでしょう。

ただし今回紹介したように、住宅ローンにEVの購入費も組み込めれば低金利の恩恵を受けられ、総返済額を抑えられるかもしれません。そこで、これから新築住宅と同時にEVの購入を検討している人は、まず住宅ローンのシミュレーターで毎月の返済額や年収に応じた予算を確認してみることをおすすめします。 当サイト内には、月々の返済額から予算を考えたい人に向いている「借入可能額シミュレーター」や金利の違いで毎月の支払いがどれくらい変わるかがわかる「毎月の返済額シミュレーター」など、各種シミュレーターがあるので、これから住宅の購入を検討している人はぜひ試してみてください。

新井智美

監修:新井智美

CFP®/1級ファイナンシャル・プランニング技能士

プロフィール

トータルマネーコンサルタントとして個人向け相談の他、資産運用など上記相談内容にまつわるセミナー講師を行う傍ら、年間100件以上の執筆・監修業務を手掛けている。

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