湾岸2024年問題で中古物件が供給過多に?買い手・売り手への影響は?

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マンションは住宅として住む場合であっても資産としての価値を持つため、これからマイホームを購入予定の人は資産価値に影響を与えそうなニュースにも敏感になっておいたほうがよいでしょう。近年、東京・湾岸エリアのマンション購入希望者の間で特に話題になっているのが、いわゆる「湾岸2024年問題」です。これは2024年上旬に湾岸エリアの2つの大規模マンションが、ほぼ同時期に入居開始となることで起こるかもしれないさまざまな問題を指しています。 そこで、今回は「湾岸2024年問題」を取り上げ、東京都市部のマンション市場にどのような影響があるかを解説します。

01今話題になっている「湾岸2024年問題」とは?

「湾岸2024年問題」とは、主に東京都中央区や江東区の湾岸エリアに建つ大規模マンションの入居が2024年上旬から次々に始まり、それによって引き起こされるさまざまな問題を指します。具体的には「晴海フラッグ」「パークタワー勝どき」などの大規模マンションが該当し、両マンション合計で4000戸以上の入居が一気に始まる点です。

ここで考えなくてはいけないのは、入居をする人のうち、相当数で住み替えが発生するということです。それだけ多くの人が住み替えにあたって現在住んでいる住居を売却すると、一時的に都内の中古マンションが供給過多となり、それによって物件価格が下落する可能性があります。こうした問題を「湾岸2024年問題」と呼んでいます。

02「湾岸2024年問題」が及ぼす、マンション市場への2つの影響

湾岸2024年問題はあくまでも市場関係者の間で心配されている段階なので、今後、必ず起こるとは限りません。しかし仮に起こった場合には、主に不動産の中古市場に大きな影響を及ぼすことが予想されます。具体的にどのような影響が及ぶのか、これから住宅の売買を検討している人は、一緒に確認してみましょう。

中古物件の供給過多で買い手にとって選択肢が増えるチャンス

湾岸2024年問題が起こると、住み替えによって一度に大量の住宅が売りに出され、都内を中心に中古住宅の供給過多が発生し、物件価格が値崩れする可能性があります。そうした状況は、中古物件を購入する予定がある人にとっては、有利になるかもしれません。2024年1月から引き渡しが予定されているのは、板のように横長の外観と建物の一面に住戸が並ぶことが特徴の「晴海フラッグ」板状マンションが2690戸、湾岸エリアの中では都心・銀座に近いことが魅力の「パークタワー勝どき」が1715戸で、総戸数は4405戸に及びます。

仮に入居者の20%がエリア内の住み替えで、そのうち60%が現在住んでいる住宅を売りに出すと、500戸以上(4405戸 × 20% × 60%)の中古住宅が一挙に市場へ流出する計算です。また、2025年10月下旬には晴海フラッグのタワーマンション「HARUMI FLAG SKY DUO」の引き渡しも予定されているため、中古住宅の価格下落は一時的なものとはならず、しばらくの間続くかもしれません。近年、都内の新築マンション価格は右肩上がりを続けていて、予算の関係上、購入が難しくなっている人もいるでしょう。そのような人にとっては、価格が下がった中古マンションを購入するという選択肢も増えるため、湾岸2024年問題は絶好のチャンスとなりえます。

売り手は注意!供給過多で一時的に物件価格が下がる可能性あり

湾岸2024年問題で中古物件の価格下落が起こると、物件を売却しようと考えている人にとっては不利になる可能性があります。もともと、2023年の不動産市場は過去に例を見ないほどの売り手市場となっており、売却価格や引き渡し条件などで、売り手の希望が通りやすい状態でした。これは日本銀行による金融緩和や東京23区におけるワンルームマンション規制による供給不足などが影響していますが、いずれにしても売り出し価格が高額でも買い手がつきやすい、売り手にとって有利な状況です。

しかし、そうした状況も湾岸2024年問題で大量の中古物件が売りに出されることで供給過多に陥り、これまでとは反対に売り手にとって不利な状態になることが予想されます。また、晴海フラッグでは2023年9月下旬から賃貸棟「PORT VILLAGE(ポートビレッジ)」(1487戸)の入居者募集も始まります。その結果、中古マンションの価格が高いと湾岸エリアを中心に「賃貸にシフト」する人も増加し、より一層マンションを売却しにくい状況が生まれる可能性もあるでしょう。

もちろん、湾岸2024年問題が必ず起こるとは限りませんし、2023年8月末時点では中古市場と賃貸市場でそれに起因する大きな動きはありません。しかし、湾岸エリアでマンションの売却を考えている人は、念のため早めの実行も考慮したほうがよいでしょう。もしくは晴海フラッグの全棟引き渡しが終わり、マンション市場が落ち着いてから売りに出すという選択肢もありますが、数年後に現状のような中古マンションの高騰が続いているか不透明であるという点は留意してください。

03晴海フラッグの転売住戸、高額でも人気!一方で注意すべきことも

湾岸2024年問題のなかでも発売戸数が多く、東京オリンピックの選手村として話題になっていたこともあって注目を集めているのが晴海フラッグです。晴海フラッグは2023年8月現在でも人気が高く、当初の販売価格より2倍近い金額で転売されても買い手がつく状況となっています。もともと、晴海フラッグは高騰が進む都心マンションのなかでは割安感があり、抽選の際には最高で266倍もの応募が殺到しました。

価格については東京オリンピックが延期され、引き渡しが本来の時期よりも1年半以上遅れたことや、最寄駅である「勝どき駅」まで徒歩20分程度かかる立地条件が影響しているといわれています。一方、応募が殺到した背景には、晴海フラッグの板状マンションは第1希望の部屋に限って当選確率を2倍にするものの、第2希望以降は当選確率を半分に落としたり、一定期間内に転売していることが確認された場合に販売価格で買い戻すことができる「買い戻し特約の付与」といった、転売規制がされていなかったりすることが挙げられます。そのため、最初から転売を目的とした投資家たちによる大量の申し込みがあったことも応募倍率が上がった要因です。

こうした問題を受けて、晴海フラッグ2棟のタワーマンションでは、個人法人を問わず申込みを1名義につき2戸までに制限する新たな措置を講じましたが、規制のなかった晴海フラッグの板状マンションは販売時7000万円代だった部屋が1億円台で転売される事例もあるなど、高騰を続けている状況です。価格が高くなっても晴海フラッグの人気が衰えない理由としては、新築マンションの価格高騰対策として近年の新築マンションが専有面積の縮小傾向にあるのに対して、晴海フラッグは80平方メートルを超える広い部屋が多く、快適に暮らせる環境が整っていることが挙げられます。

ただし晴海フラッグに限らず、転売住宅はマンションを建設したデベロッパーによるアフターサービスなどの保証が受けられない恐れがある点には注意してください。また、晴海フラッグは海沿いに建てられているため、海風による塩害を受けやすく、将来的な大規模修繕工事による費用負担が大きくなる可能性がある点も頭に入れておいたほうがよいでしょう。

晴海フラッグは長期優良住宅・低炭素住宅で住宅ローン減税の対象

晴海フラッグが住宅購入を検討している人たちから注目を集めている理由には、「2024年以降の入居に適用される新しい住宅ローン減税にも対応した住居だから」という点も挙げられます。

住宅ローン減税は年末時点での住宅ローン残高に控除率をかけて控除額を算出し、所得税や住民税から差し引く制度です。しかし2022年に制度が改正され、2024年以降に入居する場合では、一定程度の省エネ性能を有する住宅のみが対象となりました。つまり、省エネ性能を有していない一般的な住宅に2024年以降に入居する場合は、住宅ローン減税を利用することはできません。

その点、晴海フラッグは一定程度の省エネ性能を満たしている長期優良住宅、低炭素住宅という住宅タイプになるため、引き続き住宅ローン減税を利用可能です。長期優良住宅、低炭素住宅なら、どちらも借入限度額4500万円、控除期間13年(控除率0.7%)が適用され、最大で年間31.5万円、13年間トータルでは最大で409万5000円もの節税を期待できます。

なお、住宅ローン減税の利用にあたっては「省エネ基準適合住宅に該当することを証する書類」などのほかに、「自らが居住するための住宅」「引き渡しまたは工事完了から6カ月以内に入居」といった諸要件があるので、事前に不動産会社の担当者などに確認しておくと無難です。また、住宅ローン減税については、下記の関連記事でも紹介しているので、参考にしてください。

【2022年最新版】「住宅ローン控除(減税)」の基本と計算方法
[税金] 2022.01.12

04共用スペースが充実したマンションは管理費が高め!資金計画をしっかり立てよう

晴海フラッグには、全戸がベイビューの「SEA VILLAGE」、商業施設や都営バスの発着駅に近い「SUN VILLAGE」といった複数の街区がありますが、それらを超えて庭や共有スペースを誰でも自由に利用できるように工夫された仕組みを備えています。そうした斬新なデザイン性もあって高い人気を維持していますが、一般的に共有スペースが充実しているマンションほど、管理費は高額になりがちです。

晴海フラッグのように共有スペースが充実しているマンションの購入を検討している方は、購入価格だけでなく、管理費や修繕積立金などのランニングコストもしっかり計算に入れたうえで資金計画を立てたほうがよいでしょう。

当サイト内には、住宅購入予算を把握するのにぴったりな「住宅購入予算シミュレーター」「借入可能額シミュレーター」「毎月の返済額シミュレーター」といった3つのシミュレーターを用意しています。一般的な諸費用の計算や金利の違いによる月々の返済額の違いも簡単にシミュレーションできるので、住宅購入を考えている方はぜひ試してみてください。

新井智美

監修:新井智美

CFP®/1級ファイナンシャル・プランニング技能士

プロフィール

トータルマネーコンサルタントとして個人向け相談の他、資産運用など上記相談内容にまつわるセミナー講師を行う傍ら、年間100件以上の執筆・監修業務を手掛けている。

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