住宅ローン、変動金利でいいのか迷ったら「ミックスプラン」も検討しよう!

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日銀は2022年12月に開いた政策決定会合で、長期金利の変動幅の上限を0.5%へと引き上げました。それによって、若干ではあるものの住宅ローンの固定金利は上昇傾向となっています。そのため、「これから短期金利も上昇していくのではないか」と不安を感じ、これまでのように「変動金利だけで住宅ローンを組んでいいのか」と悩む人もいるのではないでしょうか。 今後の金利上昇リスクを憂慮する人は低金利の恩恵を受けつつ、変動金利のリスクを抑えられる「ミックスプラン(ミックスローン)」を選ぶのも選択肢の1つです。そこで、この記事ではミックスプランのメリット・デメリットから、どんな人に向いているかを解説します。

01金利上昇に備えてミックスプランを選ぶ人が増えている

上述したように、2022年末に日銀が金融政策を修正した影響で、住宅ローンの固定金利は上昇傾向にあります。2023年3月時点では変動金利に影響を与える短期金利が上昇する兆しはないものの、この先「変動金利も上昇するのではないか」といった懸念を抱く消費者も少なくありません。そうした状況で注目を浴びているのが、住宅ローンの「ミックスプラン」です。

ミックスプランとは、固定金利と変動金利という2つの異なる金利タイプを組み合わせて借り入れる住宅ローンを指します。例えば、借入金額4000万円のうち、固定金利と変動金利でそれぞれ2000万円ずつ借り入れるケースです。固定金利と変動金利にはそれぞれメリット・デメリットがあります。それら2つの金利タイプを組み合わせることで得られるメリットが注目され、検討する人が増えています。

02ミックスプランのメリット

ミックスプランは固定金利と変動金利の良い部分を組み合わせた住宅ローンで、「変動金利の金利上昇リスクが軽減される」「固定金利より低金利の恩恵を受けられる」の2つが魅力です。ここからはミックスプランのメリット2つを具体的に紹介していきます。

変動金利の金利上昇リスクが軽減される

変動金利は固定金利に比べて金利が低く設定されているのが一般的で、金利が上昇しなければ契約時点での固定金利より返済総額を抑えられるのが魅力です。そのため、住宅金融支援機構の「住宅ローン利用者の実態調査(2022年10月調査)」でも、約70%の人が変動金利を選択しています。ただし変動金利は、金利上昇局面において固定金利より返済総額が高くなるリスクがあるのを忘れてはいけません。

万が一、返済途中で金利が急激に上昇すると、返済当初の計画が大幅に狂うことも予想されます。月々の返済額が未払い利息分にしかならず元金が減らなくなると、最悪のケースではせっかく手に入れたマイホームを失う可能性すらあります。その点、ミックスプランは固定金利の割合を自由に選ぶことができ、金利上昇リスクを抑えられるのが魅力です。仮に借入金額4000万円のうち全期間固定型を2000万円にすれば、その分だけ金利上昇の影響は受けなくなり、リスクを半減できます。

固定金利より低金利の恩恵を受けられる

ミックスプランを利用すると、借入金額のすべてを固定金利の住宅ローンで組むよりも低金利の恩恵を受けやすいのも魅力です。固定金利の住宅ローンは契約時に金利も含めた総支払額が確定するのが特徴で、返済期間中の金利動向に返済計画が左右されなくなるというメリットがあります。しかし、そうした安心と引き換えに変動金利に比べて契約時の金利が高く、総支払額も増えてしまいがちなのがデメリットです。

それに対して、ミックスプランは借入金額の一部に変動金利を含めることで、「借入当初の金利が低い」という変動金利の恩恵を受けることができます。たしかに、完済までの期間中ずっと低金利が続いた場合は、借入金額の全額を変動金利で契約した場合に比べて低金利の恩恵を受けられないかもしれません。とはいえ、ミックスプランでは金利タイプ別に借入金額を自由に設定できるので、低金利が続くと思うのであれば変動金利の割合を高くして月々の支払いを減らすこともできます。

03ミックスプランのデメリット

ミックスプランには大きなメリットが2つあり、金利上昇リスクが話題になってきた昨今、注目を集めています。しかし、デメリットがまったくないわけではありません。ここではミックスプランのデメリットを紹介するので、よく理解したうえで利用を検討してください。

2本分の住宅ローン契約が必要で、費用も2倍かかる

ミックスプランは変動金利と固定金利という2つの金利タイプを併用する住宅ローンなので、住宅ローンの契約も2本になります。これは単純に記入する書類が増え、かかる労力が2倍になるというだけの話ではありません。契約書が2通いるということは、作成に必要な印紙代もそれぞれにかかるということです。印紙代の金額はそれほど大きくない(契約書に記載されている金額によって異なり、例えば1000万円超え5000万円以下なら2万円)ものの、1通ごとに課されることは覚えておきましょう。

金融機関によってはミックスプランを1つの契約で取り扱っているところもありますが、その場合は金利タイプ別に異なる返済期間を設定できないケースが多いようです。例えば、Aタイプの返済期間は10年、Bタイプの返済期間は35年といったような契約はできない場合もある点に注意してください。

2つの金利タイプが合わさることで繰り上げ返済の判断が難しくなる

ミックスプランは変動金利と固定金利の良い部分を合わせた返済プランである一方、そのメリットゆえに繰り上げ返済の判断が難しくなるという欠点があります。仮に金利が上昇して変動金利が固定金利よりも高くなった場合は変動金利を先に繰り上げ返済したほうが得ですが、金利が下落する場合は契約当初の金利が高い固定金利を先に繰り上げ返済したほうが利息も含めた総支払額は少なくてすみます。

現在の日本のように日銀の方針が明確であれば、一般消費者でも1年や2年といった短期的な金利動向を予測することはそれほど難しくないかもしれません。しかし住宅ローンは、一般的に30年程度にわたって返済が続く商品で、それほど長い期間の金利予測を素人がするのは難しいです。そのため、ミックスプランを選択した人で繰り上げ返済を考えるならば、金利動向を踏まえたうえで「変動金利のリスクを減らす」もしくは「金利が高い固定金利の総支払額を減らす」のうち、どちらを重視するかで決めるとよいでしょう。

04ミックスプランの住宅ローンがおすすめの人

ミックスプランのメリットとデメリットを踏まえたうえで、ミックスプランに向いている人を整理しておきましょう。ミックスプランに向いている人として挙げるのは、「子供がまだ小さく(もしくはこれから生まれる予定)、数年後などある程度の期間経過後に教育費の支払いがピークを迎える人」です。

住宅資金とともに人生の三大支出に数えられる教育費は、特に私立大学に進学したときの費用負担が大きく、文系であっても4年間トータルで入学・在学費用を合わせて700万円程度かかることも珍しくありません。そのようなときに全額を金利の高い固定金利で住宅ローンを組んでいると月々の返済が苦しくなってしまうでしょう。かといって、全額を変動金利で組むと、子どもの在学中に金利が上昇したときに困ってしまうリスクがあります。

そこで、例えば4000万円の借り入れをする場合、「全期間固定型(返済期間35年)2000万円」「変動型(返済期間10年)2000万円」のように契約してみるのも1つの方法です。この場合では借り入れ当初10年間は全期間固定型と変動型の両方で返済をしなければいけないものの、変動型の完済後は月々の返済額が減ります。残った全期間固定型の住宅ローンならその後に返済額が変わることはないので資金計画も立てやすくなり、教育費に回すお金の計算もしやすくなるはずです。

ミックスプランと固定期間選択型との違い

住宅ローンを組むにあたって、これから本格的な教育費の支払いが始まるという人はミックスプランではなく、固定期間選択型の住宅ローンを選ぶという方法もあります。固定期間選択型は「借り手が選んだ期間だけ固定金利が適用されるタイプの住宅ローン」です。選択期間の終了後は、残り期間のすべてが変動型に移行するのが一般的ですが、中にはそのときの状況に応じてそのまま継続するか、変動型に乗り換えるかを選べる商品もあります。

固定期間選択型のメリットは、固定期間中の「資金計画が立てやすいこと」です。例えば固定期間選択型(10年)を選べば10年間は固定金利が適用されるので、その間に本格的な教育費の支払いなどの大きな出費があっても金利変動リスクにさらされることなく、資金計画を立てられます。一方で、デメリットは「固定期間終了後の適用金利が高くなりやすいこと」です。固定期間選択型(10年)の場合、11年目以降の適用金利が大幅に高くなるケースが多いので、契約する際にはよく確認しておくことが大切です。

ミックスプランと固定期間選択型にはそれぞれメリット・デメリットがありますが、例えば「借入当初から10年間は月々の返済額を一定にしたいなら固定期間選択型(10年)」「借入当初から10年後に月々の返済額を一定にしたいなら全期間固定型35年、変動型10年のミックスプラン」のように選ぶとよいでしょう。

この場合、ミックスプランは借入当初2本分の支払いがあるため、10年間は支払いを頑張らないといけませんが、その後の返済は楽になります。教育費の支払いがいつピークを迎えるかによって選ぶべき金利タイプが異なることは頭に入れておきましょう。

05金利タイプで毎月の返済額がどのくらい変わるのかシミュレーションしてみよう!

日銀の方針転換の影響を受けて住宅ローンの固定金利は上昇傾向にあるものの、まだ変動金利が上昇する兆候は見られません。とはいえ、もし変動金利だけで住宅ローンを組んでいた場合に金利が急上昇すると、貯蓄に余裕がない世帯では家計を圧迫し、生活にゆとりがなくなる恐れもあります。変動金利が抑えられた状態が今後もずっと続くとは限らないので、金利タイプの選択に迷っている人はミックスプランも検討してみるとよいでしょう。特にこれから教育費の本格的な支払いが始まる人は、返済計画の自由度が高いミックスプランがおすすめです。

サイト内には固定金利と変動金利のタイプ別にどれくらい毎月の返済額が変わるかが簡単に分かる「毎月の返済額シミュレーター」や、月々の返済額から住宅購入の予算を逆算できる「借入可能額シミュレーター」があるので、これから住宅探しを始める人は事前に試してみてください。

新井智美

監修:新井智美

CFP®/1級ファイナンシャル・プランニング技能士

プロフィール

トータルマネーコンサルタントとして個人向け相談の他、資産運用など上記相談内容にまつわるセミナー講師を行う傍ら、年間100件以上の執筆・監修業務を手掛けている。

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