資産価値にも影響するマンション管理!「理事会なし」物件が増える背景とは
マンションの維持管理を担う管理組合は、組合員による理事会で方針決定する「理事会方式」が一般的です。そのような中、管理会社や専門家が組合員に代わって管理組合運営の中核を担う「第三者管理方式」を導入する分譲マンションも増えてきています。 第三者管理方式を導入すれば、従来マンションの管理組合に置かれていた理事会がなくなり、マンション住民の維持管理に関する負担が軽減するという点はメリットと言えるでしょう。一方、管理会社や専門家に対する費用負担が発生するなど、いくつかの懸念点もあります。 そこで今回は、今後増加が見込まれるマンションの「第三者管理方式」のメリット、デメリットについて解説していきます。
01マンションの「第三者管理方式」とは?
「第三者管理方式」とは、マンションの維持管理を担う管理組合の運営をマンションの住民ではなく、管理会社やマンション管理士といったプロの第三者に委ねる管理方式のことです。
現行のマンション管理は「住民による自治」という観点を重視しているため、区分所有者(マンション住民)からなる理事会を中心に行うというのが一般的ですが、これに対して第三者管理方式においては、理事会なしで管理を行う点が特徴です。
国土交通省は以前から、第三者管理方式のあり方について提言・議論をしてきました。背景として、小規模で築年数が経過したマンションにおいて理事会役員のなり手がおらず、管理費の滞納や修繕積立金の不足といった事態が発生し、維持管理の「機能不全」を起こしている物件が多いという問題が挙げられます。こうした問題の解決策として、第三者管理方式による専門家の活用が必要という意見も出ていました。
そこで、2011(平成23)年にマンションの標準管理規約が改正され、理事会役員の資格要件から「現に居住する区分所有者に限定」という内容が撤廃されました。さらに2016(平成28)年の改正では、第三者管理方式に関する条文が追加されています。
実際に投資型ワンルームマンションをはじめ、リゾートマンションや高齢者が多く住むマンションなど、理事長の選任が困難な分譲マンションでは第三者管理方式が採用されてきました。
しかし近年では、三井不動産や住友不動産が都内を中心とした分譲マンションで試験的に導入。2021年には長谷工コミュニティが、本格的な第三者管理方式の管理受託サービスの提供をスタートしています。
第三者管理方式のメリット
築年数が古い物件を中心に、多くの分譲マンションでは理事会の役員のなり手が不足し、専門的な知識を必要とする管理上の課題を抱えているケースが多くなっています。
第三者管理方式を採用すれば、マンション管理に精通した専門的な知識を持った人を役員に据えることができ、スピード感を持って課題解決が行える点は大きなメリットです。また、管理業務そのものの品質向上も期待できるでしょう。
理事会を開催する必要がなくなるため、マンション住民(区分所有者)の時間的・精神的な負担が軽減されるのもメリットです。毎年持ち回りで理事会役員が変わることによる、住民の活動レベルの不安定さが解消されるという点も、第三者管理方式のプラス面と言えます。
第三者管理方式のデメリット
導入事例が増えている第三者管理方式ですが、デメリットもあります。
まず、管理者となる管理会社や専門家への委託費支払いが必要となるため、マンション住民の経済的な負担が増えるという点が挙げられます。運営業務を第三者に任せる形になるので、管理会社が適切なコストで運営しないと、最終的に管理費・修繕費が高騰してしまう恐れもあるでしょう。
全てを管理者に任せきりで、マンション住民が維持管理に全く関与しない状態となれば、住民の意見が適切に反映されず、望む方向と異なる管理方針が採用されるリスクも否定できません。住民の意図を組んだ運営管理ができる、つまり信頼できる管理会社や専門家を選ぶことが重要なポイントになります。
また、第三者管理方式を導入するためには通常管理規約の改定が必要となるので、マンション住民の合意形成が難しいという事態も想定されます。しかも一度、第三者管理方式を採用すると、理事会方式に戻すことが困難な点にも注意が必要です。
02今後増えていく「第三者管理方式」の分譲マンション!購入時に注意したいことは?
従来、投資型ワンルームマンションやリゾートマンションでの採用が一般的だった第三者管理方式ですが、近年では通常のファミリータイプの分譲マンションにおいて、新築・中古を問わず採用される例が増えてきており、今後は第三者管理方式がマンション維持管理の主流になるかもしれません。
しかし、現状では第三者管理方式の採用例はまだ少ない状況です。「マンションは管理を買え」と言われるほど、マンションにとって維持管理は大切な要素であり、将来にわたる資産価値にも直結します。
第三者管理方式には、住民自身の住まいの維持管理に対する関心低下を懸念する声もあるため、第三者管理方式のマンションの購入を検討する際には、慎重に検討する必要があるでしょう。
03マンション購入時は管理費・修繕積立費込みで月々の返済計画を立てよう!
マンションを購入すると、毎月支払う必要がある費用は住宅ローンの返済だけではありません。購入後は、理事会方式か第三者管理方式かにかかわらず、管理費や修繕積立金も支払う必要があります。
マンション1戸あたりの管理費の平均月額(全国平均)は、単棟型マンションで1万6213円、団地型マンションで1万4660円と言われています。これは、駐車場等の使用料や専用使用料からの充当額も含んだ金額です。
さらに、マンション1戸あたりの修繕積立金の平均月額(全国平均)は、単棟型マンションで1万1875円、団地型マンションで1万4094円となっています。管理費と修繕積立金の両方を合わせると、月3万円程度は追加支出を見込んでおく必要があります。 月々の返済額の目安を知りたいという人は、当サイトが提供する「毎月の返済額シミュレーター」を活用するといいでしょう。管理費や修繕積立費と合わせて、月々どのくらいの返済なら無理がないかを確認できます。
監修:新井智美
CFP®/1級ファイナンシャル・プランニング技能士
プロフィール
トータルマネーコンサルタントとして個人向け相談の他、資産運用など上記相談内容にまつわるセミナー講師を行う傍ら、年間100件以上の執筆・監修業務を手掛けている。
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