分譲マンションの「管理費」の相場とは?「修繕積立費」との違いを合わせて解説

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分譲マンションの所有者に、毎月支払いが義務付けられている「管理費」。いったい何に使われるお金なのでしょうか?管理費の相場や管理費を安く抑えるためのマンション選びのポイントについてもあわせて解説します。

01マンションの管理費は何のためのお金?

マンションの管理費とは、分譲マンションの共用部分の日常的な維持・管理のために使われるお金で、国土交通省がマンションの管理規約の基準として定めている「標準管理規約」では、管理費を以下の管理に要する経費に充当するものとしています。その中には、管理員の人件費や共用部分の火災保険料やその他の損害保険料なども含まれます。

  • 管理員人件費
  • 公租公課
  • 共用設備の保守維持費及び運転費
  • 備品費、通信費その他の事務費
  • 共用部分等に係る火災保険料その他の損害保険料
  • 経常的な補修費
  • 清掃費、消毒費及びごみ処理費
  • 委託業務費
  • 専門的知識を有する者の活用に要する費用
  • 地域コミュニティにも配慮した居住者間のコミュニティ形成に要する費用
  • 管理組合の運営に要する費用
  • その他、建物並びにその敷地及び附属施設の管理のために要する費用(単棟型マンションの場合)、団地内の土地、附属施設及び専有部分のある建物の管理のために要する費用(団地型マンションの場合)

出典:国土交通省マンション標準管理規約
単棟型 27条
団地型 27条

02「管理費」と「修繕積立金」はどう違う?

分譲マンションの区分所有者は、原則として管理費とは別に毎月「修繕積立金」も負担しなくてはなりません。管理費が共用部分の日常的な維持・管理のためのお金であるのに対して、修繕積立金は共用部分の大規模な修繕に備えて積み立てておくお金のことで、修繕の必要が生じた際にその都度使われます。一般的な修繕の例としては、外壁の塗り替えやエレベーターの交換など経年劣化に対応する工事や、エントランスやロビーの改装、バリアフリー工事などマンションのグレートアップを目的とした工事、自然災害や事故による被害を受けた際の修復工事などがあります。なお、国土交通省の標準管理規約では、主に次の用途に当てる場合のみ修繕積立金を取り崩すことができる旨を定めています。

  • 一定年数の経過ごとに計画的に行う修繕
  • 不測の事故その他特別の事由により必要となる修繕
  • 敷地及び共用部分等の変更(単棟型)・土地、附属施設及び団地共用部分の変更(団地型)
  • 建物の建替え及びマンション敷地売却(以下「建替え等」という)に係る合意形成に必要となる事項の調査
  • その他敷地及び共用部分等の管理に関し、区分所有者全体の利益のために特別に必要となる管理

※この他に建て替えに関連する経費やマンション敷地売却等のためなどに取り崩すことができます。

出典:国土交通省標準管理規約
単棟型 28条
団地型 28条

03「管理費」と「修繕積立金」の平均相場

管理費はマンションごとに管理規約で定められており、同じマンション内でも区分所有する部屋の面積(専有面積)に応じて管理費の負担額が異なり、面積が広いほど高くなります。また、コンシェルジュが常駐するマンションや、便利な共用施設やサービスが充実しているグレードの高いマンションは、人件費や施設維持費がかさむ分、一般的なマンションに比べて管理費が高く設定されています。

では、一般的なマンションの管理費はどのくらいなのでしょうか?国土交通省が行った「平成30年度マンション総合調査」によると、マンション一戸あたりの管理費(駐車場などの使用料や専用使用料からの充当額を含む)の平均月額(全国平均)は単棟型マンションが1万6213円、団地型マンションが1万4660円でした。なお、管理費の相場には以下のとおり地域差も見られましたが、ほとんどの地域で月額1万5000円以上の管理費がかかることがわかります。

<地域別 平均管理費>

北海道 1万5190円
東北 1万6550円
関東 1万6096円
北陸・中部 1万6947円
近畿 1万6240円
中国・渋谷 1万4590円
九州・沖縄 1万5057円

出典:国土交通省「平成30年度マンション総合調査」P176

また、同調査によると1戸あたりの修繕積立金の平均月額(全国平均)は単棟型マンションでは1万1875円、団地型マンションでは1万4094円でした。管理費と同様、修繕積立金の平均月額にも以下の表のとおり、地域による差異が見られました。

<地域別 平均修繕積立金>

北海道 1万4206円
東北 1万1739円
関東 1万4421円
北陸・中部 1万1421円
近畿 1万1537円
中国・四国 9948円
九州・沖縄 1万1804円

出典:国土交通省「平成30年度マンション総合調査」P205

なお、管理費・修繕積立金ともに新築当時は低めに設定されていますが、築年数を経て管理・維持費が増えたことによって管理費が値上げされたり、大規模修繕後に次の修繕に備えて修繕積立金が値上げされたりするケースも珍しくありません。

04管理費を抑えるためのマンション選びのコツ

管理費と修繕積立金は原則としてマンションを区分所有している限り、毎月支払わねばならない固定費です。住宅ローンを利用してマンションを購入した場合は、月々のローン返済に加えて管理費と修繕積立金を支払わねばならないことになります。管理費や修繕積立金が家計を圧迫してしまわないように、マンションを購入する際には管理費と修繕積立金の金額を必ず確認し、無理なく支払える物件を選ぶようにしましょう。なお、修繕積立金がマンションの安全性や資産価値を保つのに欠かせない出費であるのに対し、管理費は生活を快適・便利にするサービスに使われている部分も大きいため、サービスの取捨選択次第では、安く抑えられる可能性があります。管理費の安いマンションを探したい場合は、以下の点に着目してみましょう。

  • 共用施設が充実したマンションは管理費が高くなりがち

ライブラリーやゲストルーム、ジムなど共用施設が充実している物件やコンシェルジュによるサービスが受けられる物件は、施設の管理費や人件費がかさむため、その分、管理費が高くなりがちです。共用施設やサービスが本当に自分のライフスタイルに必要なものかどうかを見極めなくてはなりません。

  • 低層マンションを選ぶ

建築基準法第34条では高さ31メートルを超える建築物(概ね10階建て以上に該当)には非常用のエレベーターを設置しなければならない旨が定められていますが、非常用ではないエレベーターについては特に建築基準法上、階数の規制はなく、4階建て以下の低層マンションにはエレベーターが設置されていない物件も珍しくありません。エレベーターがない物件はエレベーターの維持・管理費がかからないため管理費も安い傾向にあります。ただし、エレベータがない物件は、売却するときに不利になる可能性もあるため注意が必要です。

一方、タワーマンションに代表される高層マンションは、エレベーターが複数設置されている上に、共用施設が充実しているケースが多く、同じ立地条件でも低層のマンションに比べて管理費が高額になります。国土交通省の「平成30年度マンション総合調査」でも、単棟型マンションの「3階建て以下」の物件は 1戸あたりの管理費の平均月額が1万4965円と平均(1万6213円)を下回っているのに対し、20階建て以上の高層マンションは2万5069円と平均を大きく上回っています。

出典:国土交通省「平成30年度マンション総合調査」P176

  • 管理人が常駐していないマンションを選ぶ

管理人が24時間常駐しているマンションは、人件費がかかる分、管理人が日勤のマンションや巡回管理のマンションに比べて管理費が高くなる傾向にあります。防犯面やサービス面では24時間管理人常駐のマンションが勝りますが、管理費の負担抑制を優先させたい場合は管理人常駐ではないマンションを視野に入れても良いでしょう。

  • 戸数の多いマンションを選ぶ

全体の戸数が少ないマンションは、一般的には1戸あたりの管理費の負担が高くなりがちです。国土交通省の「平成30年度マンション総合調査」でも、20戸以下のマンションは1戸あたりの管理費の平均月額が1万9237円だったのに対し、500戸以上のマンションは1万5224円という結果に。ただし、戸数が多いマンションでも豪華な共用施設があるマンションや便利なサービスが充実しているマンションは、当然管理費が高くなります。

出典:国土交通省「平成30年度マンション総合調査」P175

  • 駐車場料やテナント料などの収入があるマンションを選ぶ

マンション内の駐車場やトランクルーム、専用庭やルーフバルコニーなどを居住者に貸したり、共用エリアの一部をテナントに貸したりしてマンションの管理組合が賃料を得ているケースがあります。管理組合によっては、この賃料収入を管理費の一部に当て、足りない分を区分所有者が負担する方式をとっているケースもあり、この場合、区分所有者の管理費は一般的なケースに比べて軽くなります。

ただし、マンションの管理費は決して安ければ良いというものではありません。「マンションは管理を買え」と言われることがありますが、マンションの価値は管理状態に左右されると言っても過言ではなく、管理状態の良し悪しは日々の生活の快適さはもちろん、マンションの将来的な資産価値にも影響を及ぼします。いくら管理費が安くても共用部分の清掃や防犯対策などが不十分だと安心・快適に暮らせないばかりか、将来、売却したり賃貸に出したりする際の条件も悪くなってしまいます。検討しているマンションの管理費が、上で示した平均よりも極端に低い場合は実際に物件を見に行き、管理状態が適切かどうかを確認した方が良いでしょう。

相山華子

監修:相山華子

ライター、OFFICE-Hai代表、2級ファイナンシャル・プランニング技能士

プロフィール

1997年慶應義塾大学卒業後、山口放送株式会社(NNN系列)に入社し、テレビ報道部記者として各地を取材。99 年、担当したシリーズ「自然の便り」で日本民間放送連盟賞(放送活動部門)受賞。同社退社後、2002 年から拠点を東京に移し、フリーランスのライターとして活動。各種ウェブメディア、企業広報誌などで主にインタビュー記事を担当するほか、外資系企業のための日本語コンテンツ監修も手掛ける。20代で不動産を購入したのを機に、FP(2級ファイナンシャル・プランニング技能士)の資格を取得。金融関係の記事の執筆も多い。

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