住み替え時はリースバックが便利!住宅ローンの審査も通りやすくなるって本当!?
2022年6月、国土交通省は消費者向けに「リースバックガイドブック」を公表しました。このガイドブックでは、ここ数年でリースバックの利用者が増加していることを背景に、リースバックの適切な活用方法や留意点について紹介しています。 リースバックと聞くと、老後資金を調達する手段として高齢者が利用する仕組みというイメージが強いかもしれません。しかし、原則として売却資金の資金使途に制限がないため、30代、40代といった若い世代が自宅の「住み替え」で利用しているケースも多いのが実態です。 そこでこの記事では、住み替え時におけるリースバックの利用方法やメリット、利用時の注意点などについて詳しく解説していきます。
- 01リースバックの仕組み
- リースバック対象・対象外の不動産
- 02住み替えでリースバックを利用するメリット
- 現金化までの期間が早い
- 売却後も自宅に住み続けられる
- 新居のダブルローンにならず、住宅ローンの審査が通りやすくなる
- 03住み替え時のリースバック利用の注意点
- 売却価格が市場価格より低くなることが多い
- 家賃が周辺相場より高くなることも
- 04注意!リースバックでトラブルも!対処方法も紹介
- 【ケース1】市場価格よりも著しく低額な代金で売却してしまった
- 【ケース2】思っていた賃貸借条件と実際の条件が違い、住み続けられなくなった
- 05住み替え時にはリースバックが便利!新居探しの前に予算計画をしっかり立てておこう
01リースバックの仕組み
まずは、リースバックの仕組みや流れについて簡単に紹介していきましょう。
リースバックとは、不動産を売却して現金を得ながら、売却後も家賃を支払うことで同じ不動産を利用し続けるという仕組みです。リースバックの大まかな流れは次のとおりです。
- リースバックを取り扱う不動産会社等に所有不動産を売却する
- 売却代金を受け取る
- 売却先の不動産会社と、売却した物件の賃貸借契約を新たに結ぶ
- 契約に基づき、不動産会社に毎月賃料を支払い利用する
ちなみに、リースバックによって賃貸で利用している物件(元マイホーム)を再度買い戻すことも可能です。
リースバックは「セールス・アンド・リース・バック」の略称であり、もともとセールス(売却)・リース(賃貸)・バック(買い戻し)の3点がセットのサービスでした。近年ではリースバックと一口に言ってもさまざまな商品があり、買い戻しがオプション扱いになっているものもありますが、仕組みの成り立ち上、最初から買い戻しまで組み込まれている商品も存在します。
買い戻しの付いている商品を選ぶと、賃貸借契約時に「再売買予約権」という権利が付与され、将来買い戻しができます。買い戻し価格は「家の売買価格×1.1〜1.3」というのが一般的な水準です。
一旦リースバックして自宅を売却したものの、退職金などまとまった資金が手元にできたことで、買い戻しを希望するといったケースでの利用が多くなっています。
リースバック対象・対象外の不動産
リースバックには対象となる不動産、対象外となる不動産があります。
リースバックの対象となるのは、以下の不動産です。
- 戸建て
- マンション
- 土地
- オフィス、店舗をはじめとした事業用不動産 など
幅広く活用できる仕組みと言えるでしょう。ただし、次のような不動産は対象外となるため注意が必要です。
- 未登記の不動産
- 建物に欠陥があるなど、買い手がなかなかつかない物件
- 法律上建て替えが困難な再建築不可物件
- 建て替えなどに制限のある借地権付きの物件
- 市街化調整区域にあり、建て替えに制限のある物件 など
02住み替えでリースバックを利用するメリット
リースバックの基本を確認したところで、続いては住み替えにおいてリースバックを利用するメリットについて紹介していきます。
通常の住み替えでは「今住んでいる家の売却」と「新たな家の購入」という2つの手続きを、ほぼ同時並行で進めなければなりません。売り先行だと仮住まいの手配や複数回の引越しが必要となり、買い先行だとダブルローンが発生して経済的な負担が生じます。
こうした両者のデメリットを解消する方法として、住み替えでのリースバックの利用が注目されているのです。
現金化までの期間が早い
1つ目のメリットとして、リースバックは現金を得られるまでの期間が短いという点が挙げられます。
売り先行で自宅を売却する場合、買い手が見つかるまで時間がかかるケースもあり、現金化にある程度の時間を要します。一方、リースバックであれば不動産会社が一括で買取してくれるケースが大半のため、スピーディーに現金を得られます。
売却後も自宅に住み続けられる
住み替えにおけるメリットの2つ目として、リースバックなら売却後も自宅に住み続けられるという点が挙げられます。
売り先行で住み替えを進めると売却後に自宅を引き渡さなければならないため、新居を購入するまでの間、仮住まいの手配や引越しの手続きをしなければなりません。引っ越しも2回に渡るため、その費用負担も高額になります。
対するリースバックなら、売却後でも売却先の不動産会社と賃貸借契約を結び、元の自宅に住み続けたままで新居探しをできるのがポイントです。月々の家賃を支払う必要はありますが、自己所有ではなくなるため、固定資産税などの税負担がなくなります。
新居のダブルローンにならず、住宅ローンの審査が通りやすくなる
売り先行で住み替えを進めるメリットとして、売却で得られる資金が確定するため、新居購入の資金計画が立てやすいという点が挙げられます。この点は、リースバックによる住み替えにも共通のメリットです。
リースバックによる売却益で旧居の住宅ローンを完済できれば、新居購入時に新たな住宅ローンを借り入れたとしても、ダブルローンを回避できます。ダブルローンにならず借入金額を抑えられる結果、住宅ローンの審査が通りやすくなるというのは大きなメリットと言えるでしょう。
03住み替え時のリースバック利用の注意点
売り先行・買い先行のいいとこ取りができるリースバックは、住み替えを検討している人にとって魅力的なサービスと言えます。一方、利用時には注意すべき点もあります。
ここからは、住み替えにおいてリースバックを利用する際に気をつけたい注意点を2つ紹介しましょう。
売却価格が市場価格より低くなることが多い
リースバックにおける家の売却価格は周辺相場の60〜80%が目安とされており、一般的に市場価格よりも低くなるケースが多いという点は要注意です。
これは、リースバックで買い取る不動産会社が利回りを重視しているため。不動産会社は、元の所有者から得る賃料収入を目的に投資用不動産として物件を購入します。そのため、物件の利回りを重視して物件を査定するのです。
利回りは「物件から得られる1年分の家賃収入÷買取価格」で計算されるので、利回りを高くするには家賃を高くするか、買取価格を抑える必要があります。
利回りを重視するために買取価格を低くしようとする業者もあるため、リースバックの利用時には、複数の不動産会社に価格を提示してもらい、比較検討することも大切です。売却価格が低すぎると、住宅ローンが完済できないケースも出てくるため注意しましょう。
家賃が周辺相場より高くなることも
リースバックによる売り先行で新居が決まらない場合、見つかるまでの間は家賃を支払い続けなければなりません。しかし、リースバックにおける家賃は周辺相場よりも高くなる場合があります。
通常リースバックの家賃月額は「売却価格×期待利回り÷12カ月」で計算され、周辺相場では決まりません。リースバック物件の期待利回りの相場は6〜13%とされており、たとえば売却価格2000万円で、期待利回り6%であれば家賃月額は10万円、期待利回りが13%であれば月約22万円にもなります。
前項で紹介したとおり、利回りを高くするには、買取価格を抑えるか、家賃を高くするかしなければなりません。売却価格が高くなれば家賃も高くなり、反対に売却価格が安くなれば家賃も安くなるというわけです。
最近では、住み替えをはじめ、決まった期間のみ利用したい人向けの短期のリースバック商品もあります。また、1年間家賃無料といったサービスも提供されているので、合わせて検討してみるといいでしょう。
04注意!リースバックでトラブルも!対処方法も紹介
冒頭でも紹介しましたが、2022年6月、国土交通省が消費者向けに「リースバックガイドブック」を策定・公表しました。
これには、リースバックの利用者が増えるにつれ、トラブルも増加しているという背景があります。ガイドブックを策定することで、消費者に対し適切な活用方法や注意喚起を促しているのです。
住み替え時にリースバックでトラブルに遭わないために、よくあるトラブルの事例や対処法について紹介していきます。
【ケース1】市場価格よりも著しく低額な代金で売却してしまった
トラブル事例の1つ目は、年金で生計を立てている高齢者が自宅を700万円で売却し、月15万円の家賃でリースバック契約をしたものの、後から当該物件の市場価格が売却価格を大きく上回る1億2000万円にもなるということが判明したケースです。
不動産はエリアや築年数などによって相場が決まります。周辺相場を知らないと、不動産会社が提示した買取価格が妥当なものだと思い込んでしまい、疑いもせずに低い価格で契約してしまうというケースがあるのです。
不動産買取やリースバックを利用する際には、あらかじめ周辺相場をしっかりとリサーチしておかなければなりません。また、複数の業者に相場観や価格の根拠など意見を求めるようにしましょう。
【ケース2】思っていた賃貸借条件と実際の条件が違い、住み続けられなくなった
続いて紹介するのは、売却代金が手元に入ってきた後も住み続けられると思ってリースバック契約を結んだものの、期間満了が近づき賃貸借契約を更新しようとしたら、定期借家契約であるために再契約できないと言われてしまったケースです。
賃貸借契約には、大きく分けて「普通借家契約」と「定期借家契約」があります。このうち定期借家契約は、定められた期間で契約が終了することを前提とした契約であり、借主が再契約を希望しても住み続けられない場合があるので要注意です。
住み替えでのリースバックは短期利用を想定するケースが多いですが、まれに新居がなかなか見つからず、賃貸借契約の期間満了を迎えることもあります。賃貸借契約時には、契約の種類や期間についてもしっかりとチェックしておくのが大切です。
05住み替え時にはリースバックが便利!新居探しの前に予算計画をしっかり立てておこう
リースバックは住み替えにおけるデメリットをカバーできるため、使い方次第では便利なサービスと言えます。
ただし、通常の住宅売却と異なり、相場よりも売却価格が安くなったり、高額な家賃を支払わなければならない場合があったりするので、メリットだけでなく注意点もしっかり把握しておくようにしましょう。
注意点を認識したうえで、適切にリースバックを利用すれば、住み慣れた家で余裕を持ちながら新居探しができます。 新居探しをする前には、どのくらいの予算が妥当なのか資金計画を立てておくことも大切です。資金計画を検討する際には、当サイトのシミュレーションを利用してみてはいかがでしょうか。
監修:新井智美
CFP®/1級ファイナンシャル・プランニング技能士
プロフィール
トータルマネーコンサルタントとして個人向け相談の他、資産運用など上記相談内容にまつわるセミナー講師を行う傍ら、年間100件以上の執筆・監修業務を手掛けている。
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